二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第十一幕 朽葉《くちば》 ( No.21 )
- 日時: 2012/07/08 21:10
- 名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)
*高杉フルボッコ&キャラ崩壊注意!
「ん・・・・・。」
海底から日の光が差しこむ海面へと出たような感覚の中、銀時は目を覚ました。
一瞬自分がどこにいるのか分からず、ぼんやりした目つきで緩慢に辺りを見回す。
畳の敷かれたそこそこ広い部屋に酒瓶や紙が散らばっている。昨日はあの後、高杉と仲直りしたり、乱入してきた緒方と新岡によって高杉がフルボッコにされたりして結局桂の拠点で夜を明かしたのだ。
意識が少しずつはっきりしてきた銀時は二日酔いで痛む頭を押さえた。
「また、懐かしい夢見たな・・・。」
高杉という昔の絆を取り戻したからなのか、数年前仲間と別れた時の夢を見たのだ。
あれ以来彼等とは一度も会っていない。
「生きて・・・るよなぁ。あいつ等なら。」
月華隊は、隊長である銀時の命令を違えることは決してない。それ程彼等の銀時への忠誠は厚いのだ。
銀時は目をこすりのろのろと起き上がる。
肩に掛けられていた毛布がずり落ち、畳の上にぱさりと落ちた。
「なんだ、起きたのか。」
銀時の寝ぼけたきった目が部屋の入り口に立っている長髪の男の姿を捕える。
長髪の男———桂は部屋の中に踏み入り、床の上で死んだように眠っている(というか転がっている)高杉を軽く揺すって覚醒を促す。
「なあヅラ、辰馬は?」
「ああ、奴なら快援隊の船に帰った。・・・部下にも色々説明せねばいかんからな。それとヅラじゃない、桂だ。」
そんなやり取りをしつつ、桂は高杉を揺すり続けていたのだが、全く起きる気配が無いので眠っている高杉の足を思いっきり踏みつけた。
「・・・!いっつ!!」
「さっさと起きて顔を洗ってこい。武士たるもの生活習慣には気を遣え。」
「るっせぇな。テメーは俺の母ちゃんか。」
「母ちゃんじゃない、ヅラだ。あ、間違えた桂だ。」
少し前まで敵対していた二人がこんな仄々とした会話を繰り広げるなど、誰も予想しなかったことだ。
だが、これも銀時にとっては昔から見慣れた光景。その「見慣れた光景」が戻ってきたことが、銀時はうれしかった。
「あ、そうだ。」
高杉を足蹴にしたまま桂が銀時の方に顔を向けた。
「銀時、貴様に客だ。」
「客?誰よ。会わねーとまずい?」
「行けば分かる。」
有無を言わせぬ真剣な目が銀時を射抜く。
その目を見て、銀時はふうと溜息をついて客に会うことを了承した。
「なあヅラ、」
部屋を出る直前、銀時は少しだけ桂の方に振り向いた。
「いい加減に足どけてやれよ。よく見てみ?晋助また寝てるぜ。」
桂が足元を見ると、足蹴にされていた高杉がうつ伏せのまま夢の世界の住人となっていた。
それから約四十三秒後、苦無が畳に刺さる音と高杉の悲鳴が青嵐隊の拠点にこだました。