二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第十六幕 舛花《ますはな》 ( No.26 )
- 日時: 2012/07/08 21:28
- 名前: 無雲 (ID: C5xI06Y8)
「あああ゛ぁぁあ゛あ゛!!」
突然聞こえてきた叫び声に、自室で新薬実験をしていた緒方はビーカーを取り落した。
緒方は足元で割れるビーカーには目もくれず、叫び声の聞こえた方向———台所へと全速力で向かう。
彼の耳が正しければ、あの声は部下である新岡のものだ。
青嵐隊随一の実力を持つ彼に叫び声を上げさせるなど、並の人間ができることではない。
なにか、彼にも予想できないような事態が起こったのだろうか。
「紅葉!」
台所にたどり着いた緒方が見たもの。
それは———、
「緒方先生・・・。」
手に日本茶の葉の入った缶を持ち、こちらに涙で潤んだ目を向ける新岡の姿だった。
「日本茶の・・・葉っぱが、切れましたぁ!」
時計の秒針が丸々一回回ったころ、緒方は白衣の内ポケットから試験管を取り出し、親指で栓を押し上げた。
***
「失礼します。」
月華隊と銀時のいる部屋の襖が開かれ、緒方と何故かぼろぼろの新岡が現れた。二人の手には湯呑やティーカップの乗った盆がある。
新岡の作務衣は酸で溶かされたかのようにあちこち穴だらけだったが、誰もそれに触れることはなかった。
「なあ総、さっきすげぇ声しなかったか?」
盆を受け取った銀時が緒方に尋ねる。
緒方は新岡をちらりと一瞥し、薄く微笑んだ。
「ただの野良鼬の遠吠えです。」
「・・・あ、そう。」
それ以上の追及を打ち切り、銀時は手にした盆を見下ろす。
茶が入っているのかと思いきや、その七割はコーヒーだった。
「すいません、茶の葉が無くなってしまって。湯呑も足りなかったのでティーカップも混じってますけど。」
「や、それはいいんだけどさ、コーヒーを湯呑にいれるのはどーよ。」
銀時の言う通り湯呑にコーヒーが入っていたり、逆にティーカップに茶が入っていたりと和と洋がない交ぜになっている。
何というか・・・合わない。
「大丈夫ですよ。坂田隊長のコーヒーには予め砂糖を入れてあります。」
「おい、話が噛み合ってねぇんだけど。」
言いつつ銀時は湯呑の一つを手に取る。中のコーヒーには程よい甘みがあった。
他の隊士達には新岡が配って回っていた。
「ほら、なっちゃんの分。」
新岡が棗にティーカップを手渡す。
それにより千風の説教から逃れた彼は、ほっとした表情でそれを受け取る。
そしておもむろに懐に手を入れ、白い紙袋を取り出した。
袋を開け、中に指を入れる。やがて出てきたのは白いサイコロ状のもの。
「・・・一応聞いとく、なにそれ。」
「角砂糖だが?」
棗はさも当たり前のように言う。だが、成人男性の懐から角砂糖が出てくるのはどう考えてもおかしい。
「コーヒーにはもう砂糖入れてるぞ。」
「足りん。」
一言そう返すと、棗はコーヒーの中に角砂糖を投入した。
しかも五つ。
「ちょっ、入れ過ぎだろ!」
慌てる新岡を無視し、棗はティーカップに口をつける。
しばしその味を楽しんでから、残っていた角砂糖を齧った。
「その上単品で食うのかよ!」
「先程からうるさいぞ。口を閉じろ。」
新岡を軽く睨んで角砂糖を一気に口の中へと放り込む。
「お、いいもん持ってるじゃねぇか。それくれ。」
「いいですよ。」
「坂田さんまで・・・。」
角砂糖をもらって上機嫌な銀時に、新岡は肩を落とし、棗は顔をほころばせた。
オリキャラNO・6
室井千風
髪色・黒
目色・紺
月華隊・二番隊隊士
長髪を横でポニーテールにしている。
攘夷戦争が終わってからは幕臣となり、(そのほうが銀時を探すのに都合がよかったから)その有能さから高官の地位にくい込んでいる。
佐柳とは親友。
体中に無数の暗器を隠し持つ。
好きなものは歌や和歌。
嫌いなものは雑音。