二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: アヴァロンコード ( No.259 )
- 日時: 2012/10/31 00:50
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
第五の流派に行く前に上にちょっと省略したラウカとティアの話を書こうかと。
この『イーストカウンセル』はカレイラ諸事情とおなじくやじるし分類されます。
本編入りの小省略話と思ってください。
時間軸はレクスが来る前、ラウカとティアが森に散歩しにいった後です。
何故こんなタイミングで書くかというと、完全に書き忘れてたからです・・・。
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あいかわらずベットに座り込んでいたティアはラウカに呼ばれてふと顔を上げた。
先日の散歩の後から、ラウカはよくティアの気分転換をしようと試みている。
そのためか、今日もティアの気を紛らわせる何かを持ってきたらしい。
「ラウカ、いいものもってきタ!」
満面の笑みのラウカが、ティアの座るベットに頬杖をつきながら言う。
ティアは首をかしげた。
それもそのはず、ラウカの姿を見れば分かるが、何かを持っている様子ではない。
「・・・・・」
ティアが黙っているとラウカはそんな視線に気づいたようで物じゃないゾ、と言う。
「ラウカの持ってきたのは、森に伝わる面白い話ダ」
ティアはちょっとだけ期待しながらラウカを見つめた。
一体どんな話だろう・・・。
「聞きたいカ?」ラウカの声にティアは頷く。
ふふっと満足げに笑ったラウカは、ベットに座りなおした。
「じゃあ、よく聞いていロ。それは、ここから少し離れた森の話ダ」
ティアはそれがグラナトゥム森林ではないか、と想像する。
ラウカの住む、東の巨木の森でなく、緑豊かで美しい西の巨木のことだろう。
それは緑美しい森の話。
満月が輝くきれいな月夜に、ある男が森に足を踏み入れた。
迷いの森と呼ばれている森は、珍しい客を見て早速森に誘い込む。
男はそんなこともしらずに、森の奥へどんどん引き込まれていった。
そして月の光だけを頼りに歩いていた男はやっときずく。
出口さえ分からない森の中で、迷ったということに。
どこを見ても深い緑と暗い夜。
空を見上げれば、ひときわ美しい満月とかすかに光る星たち。
風は冷たく、迷った男をもう帰れないよとあざ笑っている。
男は震え上がり、とにかく出口を探した。
走り回ったけれどやがてここで自分は死ぬんだとさとった。
そして座り込んだ男は泣き出した。
どこが面白い話なんだろう、とティアはラウカにいいたくなった。
とんでもなく悲しいような話だけど。
だがラウカは先を言う。
その男にどんな結末があるんだろう・・・
泣き崩れていた男の前に、鈴の音のような声が響いた。
とこはビックリして顔を上げる。
すると目の前に、羽の生えたかわいらしい少女がいるのだ。
不思議そうに男を見て、なんだか目を輝かせている。
何故ここにいるのか、と少女が聞いてきたので男は迷ったのだと答える。
すると少女は名前、すんでいる場所、家族の名、この森の名前、何故この森に入ろうとしたのか、など沢山質問をしてくるのだ。
男は律儀に答えていたけれどだんだん恐ろしくなった。
そして妖精に背を向けて逃げ出した。
後から追ってくる要請はまだ質問をしてきて、男はもうだめだと思ったらしい。
そして意識を失うと、次に目覚めたとき森の出口だった。
「これがラウカの持ってきた話ダ」
話し終わったラウカはティアを見上げた。
ティアはなんとなく怖いようなその少女を見てみたいような、不思議な気分になった。
「面白かったカ?」
「うん・・・」
ティアが言うとラウカはにこっとした。
「そうカ!よかっタ。ラウカ、あまり東の森に行かないかラ、その妖精に会ったことはなイ。けど、一度見てみたイ・・・」
言いながらくるりとこちらを見る。
「ティアもそう思うカ?」
「・・・うん。あってみたいかな・・・」
するとラウカが二っと笑う。
「ラウカ、そいつ見つけたら捕まえてくル。ティアが元気になるなラ!」
そして物騒なことに槍を携えて出かけていった。
だがもちろん帰ってきたラウカはエモノのみを手にしており、妖精は今だ捉えられていない・・・。
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参照 3100行きました!ありがとうございます!!
火曜日はどうしても更新が24時過ぎになってしまう・・・
- Re: アヴァロンコード ( No.260 )
- 日時: 2012/10/31 16:03
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
その翌日ラウカは再び張り切っていた。
ティアの元に訪れて、ティアに誘いかける。
「今日はラウカとティア、一緒に森に行くゾ」
ぼけっとしていたティアは、ラウカを無言のまま見上げる。
別に森へ行くのはいいが、何故こんな早朝から・・・という視線である。
森へ来てからというもの、ティアにはやるべき事はなかった。
食事調達はラウカとヒースくらいしか出来ないし(ここでの食事は狩り式)ティアに出来ることといえば、もろく崩れかけた心の修正と、記憶の整理くらいなものだ。
朝目覚めてから月が出て夜が訪れるまで、ティアにはその仕事だけだった。
しかし、それはとても時間がかかり、また無理に進めようとすると治りかけた心はまた崩れてしまう。
よって、その生活リズムにより、朝は早く目覚めてしまうのだ。
「昨日は妖精獲れなかっタ・・・だから今日はもっといいものをとりに行ク!」
ラウカはティアの手を引っ張ってベットから立たせるとティアの格好をじっと見る。
ティアはその視線に戸惑いながらもラウカを見返す。
「人間には早朝の寒さはこたえル。これを羽織っていケ」
ラウカに差し出されたのはラウカのまとう服のような毛皮のケープ。
明らかに猛獣だったものの毛皮をまとうと、とんでもなく暖かい。
「ふわふわ・・・あったかい」
それにくるまるとなんだか幸せだ。
「では、行くゾ。少し遠いけれど心配するナ」
そしてティアの手を引いて家から出ると、猟師の道へと—森の中へと進んでいった。
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イーストカウンセル002
- Re: アヴァロンコード ( No.261 )
- 日時: 2012/10/31 16:43
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
ラウカは森に入ると耳をピンと立てたりくるくると首を回すように耳が音を拾っていろいろな方向に向く。
例えばティアが背後ですっ転んだときや、鳥が木々から飛び立ったとき、獣が地面を踏みつけたときなどさまざまだ。
とにかくラウカの聴力はとてもよいようだ。
「ラウカ、何を探しに行くの?」
ティアが朝もやの中聞くと、ラウカは秘密ダ、といって教えてくれない。
ティアはラウカの後につきながら、一体何を探しているのだろう、と考えをめぐらせていた。
妖精よりも凄いもの・・・とは?
想像もつかない財宝の山だろうか?
けれど思い直してラウカの後姿を見てみる。
ラウカがそんな成金をいいものとは言わないだろう。
では一体何を。
ラウカがいいものと思うもの。
一体なんだろうとティアは首をひねる。
その間にもラウカはティアの数歩先をすばやい身のこなしで進んでいく。
そして鋭いまなざしで何かを探している。
その視線が地面に近いことを目ざとく見つけたティアは、それが地面に生えているもの、もしくは地面付近においてあるものと判断した。
ラウカが好きそうなもので、地面付近にあるもの。
それは花だろうか、それとも石造・・・?
「まだないナ・・・」するとラウカがつぶやく。
1キロほど歩いたのだが、目的の物はないようだ。
「だいじょうブ。まだ時間はあル」その表情を見てラウカが言う。
「絶対に見つけるからナ、安心しロ」
そしてきびすを返すと再び鋭い視線であたりを探っていった。
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イーストカウンセル003
- Re: アヴァロンコード ( No.262 )
- 日時: 2012/10/31 17:10
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
時を少しさかのぼり、カレイラから逃げてきたレクスはというと—
ひとり心細くグラナ平原に身を潜めていた。
カレイラより近いこの平原は、あまり身を隠すところがない。
けれど遺跡跡地など、ひどく古い建物で夜を明かしたりして空腹と後悔と孤独感をひとりかみ締めていた。
今日もカレイラより出来るだけ離れようとレクスは夜になって遺跡から這い出した。
日が出ていると、誰かに見つかってしまう。
もしかしたら、とレクスは震える。
ティアが俺を責めに来るかも知れない・・・。
事の元凶として俺を・・・カレイラ国民全員で責めに来るかもしれない。
(あぁ、俺はどうしてティアを裏切ったんだろう・・・)
妹を生き返らせたかった、という理由だといわずとも分かっている。
けれどそう自分を責めずに入られなかった。
(時間が戻せたら・・・俺はあんなことしなかったのに!)
奥歯を思いっきりかみ締めてレクスは拳を握った。
その拳を何かに殴りつけたい気分だったが、今は殴るものもない。
親友と、妹の墓も、少ない財産もすべてカレイラにおいてきてしまった。
いや、そのすべてをもう失ってしまった。
取り戻すことは出来ないだろう・・・。
改めて思うとレクスは悲しくなり、同時に怒りがわく。
何故あんなことを!
そして唇を思いきり噛み、血が出ようがお構いなしに痛みを受け入れ続けた。
つぐないも、今になっては仕様がない・・・。
けれど、戻るほどの勇気も、レクスにはなかった。
「・・・!」
ばさばさっと草を掻き分ける音がしてレクスは慌ててそちらを振り返る。
(まさか・・・!)
カレイラの兵士たちが探しに来たのかと真っ青になる。
けれど月明かりに照らされてこちらを見ているのは、レクスの知り合いではなかった。
カレイラの兵士でも、フランネル城の騎士達でもなかった。
「あ・・・・」
けれど知っている存在。
レクスの目の間にいたのは、間紫の鎧に身を包むヴァイゼンの魔物兵だった。
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イーストカウンセル004
- Re: アヴァロンコード ( No.263 )
- 日時: 2012/10/31 17:40
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「なんで・・・魔物兵がこんなところに・・・っ」
レクスは震えつつつぶやく。
ここで殺されるのか、俺は。
これが償いか・・・それとも天罰か・・・。
「あれを、どこへやった」
ヴァイゼンの魔物兵はレクスに詰め寄りながら問う。
その目はぎらぎらと黄色にひかり、星のように発光している。
だがきれいだとは思わない。
ぞっとするきらめきである。
「あれ・・・?」
相手からなるべく距離をとろうと後ずさりながらレクスは言う。
ヴァイゼンのヴァルド皇子に協力したが、だからといって一切の安全を得たわけではない。
むしろ協定決裂。ヴァルド皇子は妹を生き返らせるという交換条件を無視し、レクスを完全に利用した。
「とぼけるな・・・」
魔物兵は眼光を強めながらレクスに言う。
その視線に殺気さえ感じる。もしかしたら、殺そうとしているのかもしれない。
(こんな・・・こんな奴らに俺は協力したなんて!)
レクスには罪の意識はあったが、死ぬ気はさらさらなかった。
死んで償えるものではない。
生きて罪をあがなうか、一生その罪を背負うつもりでいたのだ。
だからここで死ぬわけには行かない。
「だから、そのあれってなんだよ・・・」
レクスは後ろ手を腰に回していう。
挑発しているのではない。
ただ、何時も持ち歩く、最後の彼の持ち物である小ぶりの短剣を手に取ろうとしているのだ。
ブラックフェザーという真っ黒の刀身は、闇夜の中、ありがたいことにあまり目立たない。
きっと魔物兵は“あれ”のありかを聞いた後、襲い掛かってくるのだろう。
レクスは迎え撃ち、隙を作って逃げる気でいた。
「・・・・」魔物兵は一端黙り、そしてある名前を口にする。
レクスが一番聞きたくなかったその名を・・・。
「預言書をどこへやった」
・・・・・・・・・・・・・・・
イーストカウンセル005
- Re: アヴァロンコード ( No.264 )
- 日時: 2012/10/31 18:28
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「言え、預言書をどこへやった」
魔物兵の言葉にレクスは頭をめぐらせる。
(こいつらが預言書を手に入れたんじゃないのか・・・?)
レクスはいち早くその場を去ったため、預言書の行方を知らないでいた。
けれどコレを聞いてほっとする。
奴らの手に渡って、またカレイラが破壊されることはない・・・。
ということはティアが取り戻したんだろうか?
(ちょっとカマ駆けてみるか・・・)
レクスは平静をおよそおって魔物兵に言う。
「預言書?あれならティアが持ってるだろ?」
いえば、魔物兵はぎらついた目でレクスに言い放つ。
「なにをいう。あの人間は預言書どころかすべてを失っている・・・はったりを言うな。さぁ、言え!」
だがレクスは聞いていなかった。
ティアが、すべてを失っている?
(どういうことだよ・・・なんで、あいつが・・・英雄が・・・)
レクスの思考は一瞬止まりかけ、新たな情報を得ようと魔物兵に目を向ける。
(こいつはなんだかやけに詳しそうだ・・・聞き出せるまで利用させてもらう)
「ふーん?じゃあいいよ教えてやるよ」ただし、とレクスは挑発するように魔物兵に言った。
「カレイラの様子を教えてくれたら・・・ね」
魔物兵は一瞬目を細めたが、野太い声でいった。
なんとなくカレイラをバカにするように。
「ふん。カレイラは今や我が救世主様によって壊滅状態だ。そして英雄殿がその罪を着せられて投獄中だ・・・コレで動きやすくなったというものよ」
どうやら笑っているようだった。
レクスの表情を見て楽しむような笑い方。
「英雄の迫害、ふん、当然だ。ただの人間が預言書を持つこと自体が間違っているのだからな。あの預言書はクレルヴォ様が持つべきなのだ」
レクスは話を聞いているうちに不可思議な問いが産まれてくる。
(ただの人間・・・?クレルヴォ様・・・?なんでだ?こいつらの主人ってヴァルド皇子じゃないのか?それなのに人間を小ばかにしている・・・しかもクレルヴォって誰だよ?)
だが、それを聞くことはできない。
もういいだろ、と魔物兵はレクスを見て黙ってしまった。
「あぁ・・・そうか・・・」
当然のことながらレクスは預言書のありかを知らない。
さて、どうするか・・・。
うまく巻けたらいいけれど・・・・。
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イーストカウンセル006
- Re: アヴァロンコード ( No.265 )
- 日時: 2012/10/31 18:49
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「その前にもうひとつ・・・ティアはどうして投獄された?」
さっさと教えろというオーラをまとう魔物兵はイラついたように早口で言った。
「預言書の暴走を起こした張本人、そしてヴァイゼンの兵士と共にいたからだ。もういいだろう、はやく言え」
「冤罪だ・・・なんてことだ・・・」
悲しげな顔でレクスが言うが、魔物兵はそんなこと気にしない。
「ああ、場所ね・・・あんたの後ろの岩陰だよ」
いうと、不審げに魔物兵が振り返る。
レクスはその隙を見計らってブラックフェザーを思い切り魔物の鎧ののつなぎ目に突き刺す。
腹部なので魔物でも痛手を負うかと思ったのだ。
けれど、魔物はぎろりと黄色の目を向けてきただけだった。
「おいおい、マジかよ・・・」
ブラックフェザーはありがたいことに二対の短剣だ。
なのでもう一つ短剣は残っているけれど・・・これはやばい。
後ずさりしつつ、何かないかとあたりに視線を走らせる。
けれど、グラナ平原にはたいしたものはない。
これまでか・・・?
腹部のつなぎ目に剣を突き刺されたまま、魔物兵は憎しみを含んだ声を出す。
「そうか、おまえも知らないのだな・・・」
使えない、とつぶやきつつ魔物兵は本来の姿を取り戻しつつあった。
声も出ないレクスの目の前で、魔物兵は紫の鎧を脱皮するかのようにはいでいく。
そして本来の姿—真っ青のバケモノ馬になったヴァイゼンの兵士は、甲高いいななきを一つした。
その声は不気味に平原にとどろく。
「おまえなど、一ひねり・・・いや足の一踏みで終わらせてやる」
バケモノ馬—ナイトメアは不気味にそう笑った。
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イーストカウンセル007
- Re: アヴァロンコード ( No.266 )
- 日時: 2012/10/31 19:21
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
レクスは軽い身のこなしで何とか一撃目を避けた。
さっきまで身体があったところに今は分厚いひづめが振り下ろされている。
その光景に冷や汗をかきつつどうやってこの場を切り抜けようか考えていた。
相手は馬だ。しかもかなり巨大の。
そんなヤツ相手に走って逃げたところで、後ろから蹴り殺されるだけだ。
「ったく・・・・どうしろってんだ・・・」
こんな目に合うのも自分のせいだ。
因果応報だろう・・・自分のやったことが自分に降りかかってくる。
「しかたない・・・魔王が簡単にやられてたまるかよ」
ミーニャとデュランと幼少に遊んだ勇者サマごっこ。
ミーニャがお姫様、デュランが心外にも勇者サマ、そしてレクスが魔王役だった。
(このまま死んだら妹に・・・ミーニャに顔向けできない・・・罪を償うまで俺は死ねない・・・)
レクスは決心しつつブラックフェザーの片割れを構えた。
するとナイトメアはバカにしたように鼻を鳴らす。
今は真っ赤になった目がぎらついている。
「ふん、人間はドイツもコイツも馬鹿だ。そんな短剣で私を倒せるとでも!?」
そして語尾と共に急にギャロップするとレクスめがけて両足を振り下ろす。
<ギャロップというのは馬が後ろ足だけで立つこと。フェラーリという名の車のエンブレムにも用いられている格好>
「うお!」その強烈な一撃をすんでのところでかわし、レクスはじめんげぐられたと頃を見る。
無残にも平原に1トン近くのひづめ落としが炸裂し、ぽっかり穴が開いている。
「やべぇなこれ・・・」
ナイトメアから数歩はなれ、つぶやくレクス。
こんなのに勝てるのかよ・・・。
突進によって突き飛ばされたレクスはよろめきながら立ち上がった。
その直後、彼のしりもちをついたところに前足キックが落とされる。
背後に回ったレクスに後ろ足のキックをしようとリバースギャロップをするナイトメア。
<リバースギャロップは、前足だけで馬が立つこと。その状態からの蹴りは殺傷能力が極めて高い>
だが空を蹴るばかりで手ごたえがない。
すると首筋に痛みが走る。
太い首筋にレクスが懇親の力で刺したブラックフェザーが突き刺さっている。
痛みと怒りのイナナきをしたナイトメアは再びレクスに頭突きを食らわせる。
「ぐっ」
ありえないほどの重みが腹部を襲い、レクスは鈍い痛みでうめく。
痛みで顔をしかめたまま、かろうじて目を開けるとひづめが迫ってくる。
赤い目がぎらぎら光っている・・・。
レクスは何かないかとあたりをまさぐると・・・慣れた手触りのあるものが手に触れた。
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イーストカウンセル008
- Re: アヴァロンコード ( No.267 )
- 日時: 2012/10/31 19:54
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
ナイトメアは勝利を確信していた。
赤い目をぎらつかせながら前足を振り下ろす。
レクスの手に触れたのは一つ目のブラックフェザー。
人型の状態のときに突き刺したもので、紫色の鎧たちと共に転がっていた。
「感謝するよ、ミーニャ」
そうつぶやいた後、レクスはナイトメアの目を中心に円形の的を想像する。
狙うはブル—もちろんインナーブルだ。
その瞳を中心に見立ててダーツのごとく投げた。
ブラックフェザーは中心に、ナイトメアの真っ赤な目に付き刺さった。
そして痛んだ身体を酷使して、さっと身を転がして避けると、悲鳴を上げながら倒れてくるナイトメアの巨体が今度は転がった。
目は身体の中で一番神経が通うところである。
痛みも半端じゃないだろう。
けれどレクスももうつかれきっていた。
とどめを刺す体力もなく、ナイトメアのそばにひざを付く。
正直ミーニャがブラックフェザーを手にとらせてくれたんだと思っていた。
まだお兄ちゃんはこなくていいよ、とミーニャの声が聞こえた気がした。
けれど、俺もそろそろ潮時か。
背後で悶絶していたナイトメアが立ち上がる気配がする。
そしてひづめで殴られるんだろうか。
諦めようかと思ったが、ぼとっと背後に何か落ちる音で振り返る。
目に付き刺さったブラックフェザーをとろうと頭を振り回すナイトメアの喉から、ブラックフェザーが落ちたのだろう。
レクスの目の前で血に濡れた黒い短剣がひかっている。
「まだ死ぬなってか・・・わかったよ」
その短剣をつかんだレクスは暴れ狂うナイトメアの胸部にけりを入れた。
ふらついた足取りのナイトメアはものすごい音と共に倒れる。
「分かったよ、ミーニャ。俺にはまだやることが残ってるんだよな」
そして倒れたナイトメアの頭に掴みかかるともう片方の目に深く突き刺した。
脳にまで達し、ナイトメアが硬直してやがて力が抜けていき、動かなくなった。
「たおした・・・のか」
そのまま後ろ向きにぶっ倒れたレクスはふっと力を抜いた。
もうだめだ、このままつかれきって眠りたい気分だ。
そして目を閉じようとしたとき、馬のいななき。
「!!」
慌てて顔を上げると黒々としたオーラをまとったナイトメアがこちらを見ていた。
見ているのか分からないけれど、顔はこっちを向いている。
「うそだろっ」
殺される・・・そう思った瞬間、じゃキンッと言う音と共にナイトメアがふらふらと倒れた。
「?!」
くず折れたナイトメアはきらきらした光と共に浄化された。
その背後に、見たこともない人がいた。
大きな剣を構え、眼光は月の光を受けて黄色く光っている。
異国のひと・・・?
紅色の髪、肉食獣のような黄色の目、身の程もある剣、さばく風情の格好。
「おまえがレクス・・・だな。俺はアンワール。預言書について話がある」
目の前に立つ少年は、そう無表情のままレクスに告げた。
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イーストカウンセル009
- Re: アヴァロンコード ( No.268 )
- 日時: 2012/10/31 20:27
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
「アンワール・・・」
聞き覚えの無い発音に、レクスは表情を硬くする。
「預言書なら、俺は持ってないぞ」
さばく風情が預言書を狙いに来たのかと思いレクスは地面に座った状態からきつく言う。
するとアンワールハそうではないと続ける。
「俺が言いたいのは、ティアのこと、そして預言書の行方についてだ」
ティアと聞いてレクスはびくりとして即座に立ち上がった。
だが痛みにうめいて地面に伏せる。
「ムリをするな。まだオマエにはやってもらわないといけない事があるからな・・・」
意味深な言葉と共にアンワールがレクスのそばに腰を下ろす。
そしてレクスの赤い目をひたと見据えながらいった。
「ティアはカレイラで投獄された。そしてヴァイゼンの将軍と共に脱獄した」
「なにっ?っ・・・」
思わず叫んで痛みにうめくレクス。
その表情を無表情でみたあと、アンワールは頷く。
「そうだ。そしてどこか・・・森の中へ行った。東の森に行くと言っていた気がする」
顎に手をあてて言うアンワールにレクスは詰め寄る。
「どういうことだ。言っていた気がするって・・・〜っっ」
またも痛みにうめくレクスにアンワールは少々あきれながらつぶやく。
「後をつけた。・・・おちつけ」
ティアの命を狙うやからかと判断されて、レクスが殺気立った目で見てくるので、アンワールはレクスをなだめた。
「俺は預言の名の下にいる神官の命令でここへきた。アイツをどうこうしようってわけではない」
きっぱり言うと、レクスはしぶしぶながら頷く。
「で、ティアの居場所を教えて俺にどうしろと?いまさら・・・俺、アイツにひどいことしたんだぞ・・・」
「そうだな」
さらりと受け流してアンワールは続ける。
「預言書のありかを知っているといったら・・・・どうする?」
ミステリアスな視線にレクスは悪魔と取引しているような感じに陥る。
コイツは人間だろうな?
悪魔なんかじゃないよな?
一気に不安になる。
「・・・わかった、おしえてくれ」
「その代わりに、お前の役目はい決まるぞ。ティアを探し出し、ヴァイゼンの者につかまって殺される前に預言書のありかを伝えると、約束しろ」
レクスは頷いた。
「コレがアイツのためになるなら・・・約束する」
いうと、アンワールは少し不適に笑った気がした。
確認する間もなく再び無表情になったアンワールはレクスに告げた。
「預言書はいまサミアドという砂漠の地にある。砂漠の魔女オオリエメド・オーフが持っている。そして、シリル遺跡にそれはある」
「サミアド?どこだ・・・そこ」
遠い記憶に探りを入れてみるが分からない。
はるか昔にまだ両親が生きていた頃、外交官の息子として地理の勉強をしていたけれど・・・。
「ティアならば知っている・・・さて、俺はもう行こう」
するとアンワールは立ち上がった。
「おまえはどこに?」聞くとアンワールは振り返りもせずに言う。
「俺は預言書を見張らないと・・・そして魔女をな」
いうなりそよ風と共に去っていってしまった。
「・・・サミアドに預言書・・・ティア。待ってろよ!」
こうしてレクスの必死の捜索は始まった。
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イーストカウンセル010
- Re: アヴァロンコード ( No.269 )
- 日時: 2012/11/01 20:33
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
早朝から探しに出た結果、すきっ腹をもてあましたティアとラウカは一端昼休憩をとることにした。
すでに道は消えており、獣道ですらない。
ラウカは完全にどこに“あれ”があるのか知らない様で完全なる野生の勘を頼りにしていた。
「・・・待ってロ。何か探してくル」
つかれきったティアを倒れた巨木に座らせると、ラウカは森に消えていった。
その後姿を見送った後、ティアはぐーっと惨めそうになる腹をなだめようとその辺を歩き回った。
目印の巨木はそのままに、そのあたりをぐるりと散策してみる。
「っあー・・・・おなか減った・・・」
そして試しにその辺りに生えている植物に目を走らせる。
ラウカが獲物が無いときに、植物やら果物を持ってくるのだ。
それらは食べられ、意外にもおいしいのだ。
くるくるしたぜんまいや、独特の風味があるにらの葉など無いかと探してみるも、ティアには分からない。
視界には食べられる植物がいくつも入っているのだが、ティアは食べられる植物を判断できない。
物欲しげな目は、その植物の頭上を通り越していく。
「・・・・・」
ティアは空腹に耐えられずその場に座り込んだ。
そして、ふと視線を落としたとき、茶色の深い色の土に、奇妙な植物が生えてるのに気づく。
「・・・?」
大柄な植物に保護されているようなその植物が、ティアに向かってトウモロコシのような不可思議な形態の房を伸ばしている。
その色は黄色やオレンジ、茶色と秋を彩る植物である。
山に燃える紅葉のようできれいだ。
「きれいだな・・・これ。なんていう名前なんだろう・・・」
それをじっくり眺めていたティアはあぁそうだとつぶやく。
「あ、そだ。コードスキャンしなきゃ—」
そして身にしみた癖より、手をその花に向けてコードスキャンしようとし、むなしい空虚な気持ちになる。
何も持たないその手のひらを見て、一瞬眼を見開いた後、その目に悲しみと喪失の色が移る。
「そっか・・・無いのに・・・無いの、忘れてた・・・」
悲しげにつぶやくと広げていた両手をぐっと握り締めた。
忌まわしい記憶を握りつぶすかのように。
「ティア!」するとラウカの声がティアを呼ぶ。
ティアは座り込んでいたところから立ち上がり、ラウカを見た。
「ほら、食べるゾ」
ラウカは紫色の葡萄(ぶどう)のような果物をティアに差し出す。
その紫のふくよかな房を見て、ティアは空腹感がむせ返すのが分かった。
「ありがとう、ラウカ」
二人で一房を分けながら食べていると、ラウカがぼやいた。
「本当は、昼にはある植物を食べようと思っていタ。それを探していタ・・・」
ラウカは紫がかった口元をぬぐう。
「それはな、無臭なんダ。だからラウカの鼻でも分からなイ。でも食べるととてもおいしいんダ」
残念だというようにみみがひょこんッとたれる。
「ティアに食べさせたかっタ。元気出ると思ったかラ・・・」
ティアはつまむ手を休めてラウカに聞く。
「もう探すのやめるの?」
「うン。もう引き換ええさないと日があるうちに家につけなイ」
そして食べ終わったら帰るゾ、とちょっと悔しそうに言った。
うん、とティアもちょっと残念そうに頷くと、果物を食べだした。
食べ終わると、ラウカはすぐにティアをつれて、来た道を引き返していく。
その間にも草達の合間をラウカはその植物を探して視線を走らせていた。
そこでふと、ティアはラウカに声をかける。
「あのね、さっき果物を食べたところに変な植物があったんだよ」
ラウカは振り返らずに相槌を打つ。
まだ植物を探そうと躍起になっている様だった。
「その植物ね、そうだな、トウモロコシみたいで植物に守られているように生えてたんだ」
するとラウカがピタリと動きを止める。
「何色ダ」振り返らずに聞いてくるラウカの声はちょっと殺気立っている。
その声音に戸惑いながらもティアは見た感じを伝えた。
「黄色、オレンジ、茶色が入り混じってた・・・」
「それダ!ティア、それを探していたんダ!!」
急にくるりと振り返ったラウカは心底悔しそうな表情をしていた。
すでに帰路につき着た道を半分戻ったところで実は見つけていたことに腹だたしさを隠しきれないようだった。
ティアもビックリして唖然としている。
「あぁ、しょうがなイ。明日とってくル・・・でも見つかってよかっタ」
悔しいような安心したような表情でラウカはティアに言った。
「あれはな、テンジンツバキというもので森に住む人たちはその花を鳥が飛び立つ様子に似ていると言って、この名前にしたそうダ」
ティアは思い返してみて別にそうでもなかったけどなぁと思いつつ、ラウカの後についていった。
翌日ティアの元に約束どおりテンジンツバキの房が持ってこられ、ラウカ、ヒース、ティアの三人で食べた。
その味は実に木の実。
どんぐりのような食感さながら風味は落花生であり、栗でもあった。
ただ、甘みが強くとてもおいしい。
「うまいじゃないかコレ」ヒースは酒のつまみにしたいなどといっているが森に酒は無い。
それを残念がっていた。
「とってもおいしいよ、ラウカ」ティアが言うとラウカは照れたように笑った。
「そうカ。でも珍しい花だからすぐにはとって来てやれなイ・・・だけど、見つかったらすぐ持ってくル!」
「そのときには、酒があればいいんだけどな。無職の俺にはかなわぬ夢か・・・」
ヒースのぼやきに耳を貸さずラウカはティアとまた指きりげんまんをした。
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イーストカウンセル011
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ありがとうございます!
そしてイーストカウンセルもコレで終わりです。