二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: アヴァロンコード ( No.371 )
- 日時: 2012/12/14 18:43
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
エウィグ 001
我々は長い間一緒であり、最初から四人だった。
けれど、それも定かじゃない。
気づいたら、ただそこにいた。二番目の世界に。
「なーなー、これってなんだよ?俺の火でも溶けないし・・・」
手を封印されたレンポがうっとうしいという表情いっぱいに問う。
彼の手はひじまですっぽり石のような何か・・・鉄だろうか?それに飲み込まれている。
「わかんない。私も足を縛られて・・・満足に動けない」
ミエリが足に絡みついた鎖を取ろうと引っ張っている。
だが足首をがっちり固定されて鎖は取れる気配がない。
「疲れた・・・もうだめ」
ミエリは諦めたように羽を休めた。
そして真っ暗に近い岩に座り込んだ。
「ネアキ・・・?どこにいるの?」
そして薄暗い中でネアキの返事を待つ。
だが聞こえてくるのは苦しそうに息をする音。
「ウル?ネアキ?」
「怪我でもしたのか・・・?」
暗い中、仲間の姿が見えないととても不安だ。
だがその姿が徐々に見えてくる。
あれは・・・ネアキ?
暗いのでよく見えないけれど誰かうずくまっている。
「何だネアキ、いるなら返事しろよ」
腕をかせで縛られて不機嫌そうにレンポが言った。
だが、こちらを見たネアキはやはり何も言わない。
「ネアキ・・・?それ、その首、一体・・・」
ミエリがそっと近寄って手で首もとの枷に触れた。
びくともしない。ネアキは黄土色の目でミエリを見つめ返している。
「しゃべれないの・・・?」
こくんと頷いたネアキ。精霊たちは不安げに顔を見あわせた。
「誰がこんなこと・・・ウル、は?」
憎憎しげに言うレンポが、ウルを探そうときょろきょろする。
すると、ネアキが黙ったまますっと青白い指で奥を指した。
『…あ…っち…』
かなり苦しい声音で言うネアキ。しゃべりずらそうにいらだっている。
「あっち・・・?って言ったんだよな?よし、早く合流しようぜ」
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エウィグ 精霊たちの疑問の話
- Re: アヴァロンコード ( No.372 )
- 日時: 2012/12/14 19:31
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
エウィグ 002
我々の記憶はあった。
けれどそれはお互いのことと、自分が誰かということ。
だが、肝心なこと—誰も覚えていない・・・
「ウル?」
暗闇の中、発光するような金髪が見える。
「レンポですか?ミエリやネアキは・・・?」
地面に座り込み、震える手であたりに触れている。
「ああ、ちゃんといるぞ!でもネアキが声が出せねぇ」
「声が出せない・・・?」
薄暗い中、こちらを見ないウルに精霊たちは近寄った。
ウルは相変わらず何か不可思議な行動を取っている。
手であたりを探る・・・まるで、目が見えないような・・・
「オレ達、手足とか鎖で縛られてるんだ・・・おい?どうし—」
近寄ってビックリした。ウルの顔。
目の付近に大きな何かが縛りついている。
これでは目が見えないではないか。
「!! 目、みえて、ないのか?」
「・・・はい。どうなっているのですか?何故こんなことに?」
ウルがその枷に手で触れる。外れる気配もない。
「私たちも分からないの。ネアキもしゃべれないし・・・誰がこんな酷い事を・・・」
ネアキをつれてそっと飛んできたミエリ。
その足からは常に鎖のこすれる音がする。
「オレの火でも溶かせないんだ。どうすれば取れるんだよ?」
完全にパニック状態のレンポが言う。
今まで溶かせないものは何一つなかったはず。
「わかりません・・・ただ、なにか、気配を・・・」
ウルは見えない目でのろのろと這い上がった。
そして躓きながらどこかに歩いていく。
「気配?」
「何か感じます。行かなくては・・・」
精霊たちは引っ張られるような感覚で何かに惹かれていった。
- Re: アヴァロンコード ( No.373 )
- 日時: 2012/12/14 20:14
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
エウィグ 003
二番目の世界を創った。
預言書を開いたのは我々。
ということは、一番目の世界—始まりの世界は滅んだらしい。
身体の一部を縛られた精霊たちは不自由な身体を引きずって自分達を呼ぶものの元に行った。
『…これ…は…』
ミエリに寄りかかりながら、ネアキが苦しげに声を出した。
その黄土色の視線の先には光を浴びて輝く書物がある。
赤い表紙に目玉のついた書物。
それはとても分厚く、目玉は不安げにきょろきょろしている。
「なにかしらあれ?」
ネアキの声に反応してミエリがそれを覗き込む。
ウルは悲しげに目元に手をやって、説明を求めた。
「すみません、誰か状況の報告を・・・」
「あぁ、真っ赤な本だな。それに目がついててけっこう分厚いぜ」
それをつつくように手枷で触れると、突如本が開いた。
ページがばらばらと開け、精霊たちは痛みに悲鳴を上げた。
『…な、に…した…の…!』
枷が一掃深く食い込むような痛みに精霊たちは痛みに息を詰まらせた。
ばさっと音がして、預言書から四つの真っ黒の鎖が飛び出してきてそれぞれに精霊を縛りつけた。
「一体・・・なにを—」
目の見えないウルは何が起こったかわからない。
仲間の悲鳴と苦しげな悲鳴に、みんなにも同じことが起っているらしいとわかる。
真っ黒の長い鎖が完全に絡みついて鍵のかけられた音がしたと思うと、ふっと黒い鎖が消えた。
身体を解放された彼らは赤い本を眉根を寄せてにらむ。
「なんだよ、今の!」
「黒い鎖が・・・でも消えて・・・」
すると、目の前で真っ赤な本がぴかりと光った。
「?!また何か起こるの?!」
すると突如ふわりと本が空中に浮き出し、何もかも頭の中ですることが入ってくる。
<<預言書に縛られし罪深き精霊よ その力を持って正しき世界を>>
まばゆい光の中、預言書から沢山の価値あるものがあふれ出す。
「なんだよ、これ・・・」
それらをあっけに取られてみていると、またも頭の中に。
<<すべてのそろった いずれ来る正しき世界を 創造するのだ>>
- Re: アヴァロンコード ( No.374 )
- 日時: 2012/12/14 20:58
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
エウィグ 004
我々は預言書に縛られ、預言書に命じられた。
いずれ来る正しき日まで世界を創ることを。
—なぜ、我々を預言書は 罪深き精霊と呼んだのだろうか・・・
そしてその直後、預言書に取り込まれていた価値あるもので満たされた世界は、我々の力あって世界として成り立った。
二番目の世界だと分かった。
その世界が出来上がると、急に中間達が消えていく。
「!?」
ミエリもネアキもウルも、みんな目の前からどこかに飛び去った。
「どこいくんだよ!?」
叫んで手を伸ばそうとしても、じゃりっと鎖の音がして動きが取れない。
「え?」驚いてみれば、赤い預言書がレンポの手枷の重石に食いついている。
ぎょっとして目を見開くも、預言書はぎろりとした目で見返すのみ。
徐々に噛み付くように飲み込まれる枷。
このままでは・・・食われる。
「オマエ・・・なんなんだよ・・・!」
<<役目を終えたなら 大人しく眠りにつけ>>
預言書からそんな声が聞こえた気がして歯を食いしばる。
抗えない。抵抗するほどの力も、預言書にセーブされて使えない。
<<世界の終わりに 役目は再び来る>>
「力を奪いやがって・・・解放しろ!」
容赦なしに預言書は炎の精霊を引きずり込んだ。
そしてしおりごと飲み込んで、その姿を薄れさせていく。
<<罪深きおまえ達を 受け入れる主人が来るとき 枷は外れるだろう>>
そのときから何度も繰り返した。
世界を創っては滅ばせ、また創るのだ。
「いつまで繰り返すの」
「いずれ来る正しき日まで・・・誰のために・・・?」
「オレ達の罪って何?」
『…どの世界に…満足するの…?』
沢山の疑問。わからない、分からないことだらけ。
あれ以来預言書は何も教えてくれない。
数え切れないほど世界は創られた。だがまだ満足しないらしい。
枷はもう外れないのでは?
いずれ来る正しき日も来ないのでは?
我々を縛りつけた張本人とその思惑も分からないのでは?
なくした記憶。
最初の世界で一体何が起こったのか。
罪深きとはどういうこと?
分からないことだらけ。
分からないことは嫌いなのに。
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エウィグ 終わり
四大精霊ということで『エウィグ』は四つで終わりです。
なにこれ、解決してないじゃん、と思われて当然です。
まだ解決はしません。なぞについて整理しただけです。
どうやって預言書に縛られたのか、いつ枷のことを知ったのか、の話です。
エウィグ=永遠
エターナルってフランス語だったんですね。はじめて知った
そして参照が 6 3 0 0 越えました!!
見てくださってありがとうございます!
次回より本編再開。