二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: アヴァロンコード ( No.398 )
- 日時: 2012/12/21 14:46
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
第九章 森の精霊
—森が大いに萌え育まれる時
御使いは再び見出される
ネアキの力を借りてワーグリス砦に戻ってきたティアたち一向。
肌寒い氷洞はマルカハトゥの消滅と共に、徐々に本来の温度に戻っていっている。
だが寒いのには変わりなく、ティアはぼろぼろのマントを着込んでいた。
やっとマントが脱げる、そう思って出てきたとき、ティアの耳にずんと重たい不吉な鐘の音が響いてきた。
「なに、この音?」
ティアは唖然として辺りを見回す。
まるで死人が出たときの、教会の慰霊の鐘の音のようでゾッとする。
しかも、世界がまるで暗くなるように、光を失っているのである。
「なんで、なんでこんな・・・!」
世界が滅びていく・・・?ティアは血の気が引いた。
脇の精霊たちを見れば、黙って空を見上げている。
その表情は…
ティアはそんな彼らが何を見ているのか、とそっと顔を空に向けた。
丁度真っ赤に光る太陽が見えた。
元気よく輝き、終焉を迎える世界に励ますように光を投げかけている太陽。
だが、その太陽に影が忍び寄っている。
丸い、黒い、何か。月、だろうか?
それがやがて太陽に噛み付き、徐々に飲み込んでいく。
「日食・・・」
ウルがつぶやいた。日が月に食われていく天体現象。
本当は太陽が隠れるように月の影に入る現象なのだが・・・。
今はなぜか、月が太陽を食らうようにしか見えない。
太陽が飲み込まれてゆけば行くほど、終末の鐘の音は大きくなっていく。
誰かが、鳴らしているのだろうか。
それとも、終わる世界が自らを弔いに、鳴らしているのかもしれない。
完全に太陽が飲み込まれ、真っ黒い月の背後から手を伸ばすように光を放つ太陽。
でもどうもがこうとも、月の裏から出られない。
その瞬間薄暗くなった世界。
ティアは声も出ず、ただそれを見守っていた。
何も出来ない。そのまま見ているしかない。
すると、ティア耳にネアキの声が響く。
『…滅びのときが…近づいている…』
静か口調で言うネアキ。ティアはネアキに目を向ける。
ネアキはティアにぴったりと視線を合わせて先を言った。
『…この世界は…もうじき死ぬ…』
精霊の言葉は真実である。彼らが死ぬといえば、世界は死ぬのだ。
反射的に預言書をかかえたティアに、今度はウルが言う。
「世界が滅ぶ前に、真に価値あるものを—預言書に書き記すのです」
光を失い、心が重くなる鐘の音をさえぎってネアキがもう一度言った。
今度はティアではなく、預言書に問うように。
『…本当に価値あるものなんて…この世界にあるの…?』
かつてオオリがいった言葉に戸惑ったように、ネアキもそうなのだろう。
——教えておくれ 本当に価値あるものって、なんだい?
いや、精霊たち全員がそうなのかもしれない。
心の中に、ティアと同じ疑問が浮かんでいるのだろう。
本当に価値あるものとは、何?