二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: アヴァロンコード ( No.455 )
日時: 2013/01/05 23:13
名前: めた (ID: g7gck1Ss)

 
 第十一章 魔王

—滅びの炎はますます広がり
 暁の空より
 燃え輝く星が墜ち
 天を引き裂き地を沸かせる
 
 
エルオス火山のふもと付近に帰ってきたティアたち一行。

オレはこんなとこにいたのかーと振り返っているレンポをよそに、ティアたちはカレイラへ急ごうとする。

と、急に再び不穏な音が頭上から響き渡り、ティアはあまりの轟音に岩場にひざを着いた。

「な・・・に・・・?」

あたりを驚いたような顔で見回すと、視界に何かが掠めていく。

エルオス火山が邪魔だが、その背後から金色に燃える岩の塊・・・星が耳を劈く音を立てて落下してくるのだ。

「!!」

息を呑んでみれば、その星たちは轟音を立てながらティアの良く知る場所たちに激突していく。

そしてひときわ大きな爆音が空より落ちてくると、ティアはかがんだ状態から声を上げることしかできなかった。

線を引いたように突進していく巨大な星が、カレイラ王国を目指していくのだ。

「星が!天空塔に!」

ミエリが叫び声を上げる。

轟音を上げる星は、カレイラの下町の頭上を通り過ぎ裕福な街をも、興味ないというように通り過ぎる。

狙いは、ただひとつ。

フランネル城にそびえる、立派な白亜の塔のど真ん中に、爆音を響かせてクリーンヒットしたのだ。

沢山の瓦礫がカレイラの町に降り注ぎ、騒ぎを聞きつけた兵士たちの上へ無常に降り注ぐ。

人の上にだけでなく、きれいに立ち並んでいた家々の屋根の上にも激突し、すべてをなぎ倒し破壊していく。

まだ早朝だというのに、叫び声がいっせいに上がり、人々は叫びながら逃げ惑った。

そして、白亜の塔に封じ込められていた悪しき遺産があらわになった。

カレイラに古くから突き刺さっていた天空槍から、真っ赤な暴風が巻き起こる。

その悪しき暴風は、はるか遠くの火山にまでとどき、凄まじい威力で思わず顔を覆うほど。

「いままでの異変はこの前触れに過ぎなかったのか!」

ウルが息が詰まりそうなほどせまりくる暴風に抗いながら強い口調で言う。

空中にいる他の精霊は飛ばされないように必死に抵抗している。

『…クレルヴォが復活する…』

顔をかばいながら、ネアキがカレイラの天空槍を見据えてつぶやく。

5人は黙って風のおさまった高台より、カレイラを見つめた。

かつてクレルヴォを封じた場所、カレイラ。

その地で、今クレルヴォが復活する・・・。過去に共に世界を創ったクレルヴォが。

「これが宿命ってか・・・おもしれぇ!」

暗い表情を振り切って、レンポが強い口調で言う。強がっているのかもしれない。

他の精霊は、なんともいえない表情で思いつめたようにカレイラを見つめている。

だが、ティアに近づく足音がしてティアは身体をそちらに向けた。

見れば、ウルが口を一文字に結んで意を決したようにそこにいた。

「時が迫っています。これから我々は新しい世界を創るために、最後にやらなければならないことがあります」

(もしかして・・・)

そんな苦痛のような決心した表情に、ティアは最後にやらなくてはいけないことを思い浮かべる。

ウルが察したように、頷く。

「新しい世界を創るための障害・・・そう、クレルヴォを倒すことです」

言い切った精霊に、ティアは複雑は心境でその顔を見ていた。

かつて仲間であり、一緒にこの世界を作り上げた、大事な人を倒さねばならないことを口に出す上、それを実行するのは精霊にとってつらいはず。

本当に倒すことでしか、解決できないのだろうか?

(本当にそれでいいのかな?この世界を救うために、仲間を倒すことが、正解なの?)

ティアが何も言えずにいると、ミエリが悲しげな表情で言う。

「クレルヴォは預言書を使って新しい世界を創ることを望んでいるの」

どこか遠くを見つめる彼女の緑の目は、悲しみでいっぱいだ。

すると後を引き取るように、ネアキがつぶやく。

相変わらず無表情で、舞い上がりながらカレイラを見つめている。

『…クレルヴォは人間を憎んでいる…彼が勝利すると…』

ネアキはカレイラから目を離し、ティアを覗き込む。

その黄土色の目には、すっかり暗い表情をして戸惑うティア自身がしっかり写りこんでいた。

『…新世界は人間のいない世界となる…どういうことか、わかっている…?』

「預言書に記されているあなたの愛すべき人々もすべて抹消されてしまいます」

ネアキの問いはそのままウルの言葉になった。

ティアは悲痛そうに眉を寄せた。

(精霊の大切な人を倒さなくては、自分の大切な人を守れない。だけど、精霊が悲しむのは・・・一体どうすればいいの?)

「ティア」

ティアが大いに悩んでいると、ウルが名前を呼ぶ。

他の精霊たちも、ティアをじっと見つめている。

「あなたは、クレルヴォと戦えますか?」

静かなその問いと、四人の精霊の視線を受けてティアは黙り込んだ。

クレルヴォを倒せますか、という問いには沢山の思いが詰まっている。

裏切りの怒りや、苦しみに嘆き、悲痛な後悔も。だが、もう一つ。

なによりも大きく、底知れないクレルヴォへの思いがあふれていた。

クレルヴォと沢山の時をすごし、沢山の価値あるものを一緒に選び、そして使命を共に果たしてきた。

大好きだったに違いない。そんな仲間が、彼らと共に作り上げた世界を自らの手で壊すのを・・・優しかった心を失うのを—止めてくれ、と。


“あなたは、クレルヴォを止めてくれますか”


きっと、そういう意味なのだろう。

ティアは、ゆっくりと頷いた。

いっせいに精霊たちが、微笑む。そして何かを託したように言う。

「クレルヴォは今の肉体では預言書を扱えないことを知ってしまった。ゆえに、次に彼が目指す場所は・・・」

ウルがカレイラを指差す。

「本来の肉体がある場所です。現在カレイラ王国の地下、大牢獄ヒドゥンメイアの更に下・・・天空の槍が刺さる場所にクレルヴォの肉体があります」

一度ヒドゥンメイアにいたティアは、その更に下に仇敵がいたことを知って息を呑む。

カレイラの今はあらわになった槍を眺め。

「その肉体は槍に貫かれ封印されていたようです。しかし・・・」

いいにくそうに言葉を切ったウルの後をミエリが引き取る。

「さっきの星で槍が折れちゃったみたい」

ミエリの言ったとおり、槍はいびつに変形して少し曲がっているようだ。それを見上げてネアキがつぶやく。

『…クレルヴォの肉体が復活する…』

それまで黙り込んでいたレンポが、吹っ切れたように大きな声で言う。

「じゃあ、城の地下に行って、すべてを終わらせようぜ!この神話の最終決戦というこうじゃねぇか!」

精霊たちは頷き、ティアは預言書を硬く握り締めた。



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今回長いw
そしてゲームでの最終章である 第十一章が始まります!
さぁホントに後半になってきましたよ!