二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: アヴァロンコード ( No.514 )
- 日時: 2013/02/01 17:18
- 名前: めた (ID: g7gck1Ss)
「困ったなぁ、手がかりはグラナトゥム森林だけだもんね。場所も、何も分からない」
ティアは自分の家に帰りながらつぶやく。
その周りに精霊たちが連れ添って、どうしたものかと考えている。
このまま引き下がっては、確実にファナと言う小娘はこの世からいなくなり、墓地に1つ墓が増える。
ティアは嘆き悲しむだろう。
だがまだ救えるのではないかと言う手だてが存在するならば、骨折り損でもやる価値は在る。
「悩んでもしょうがないね、とりあえず薬花について知っている人がいないか、聞き込みをしよう」
家の目前でそう決心したティアは、くるりと身を反転させて再び街へと駆けていく。
まだ日は沈まない時刻。
ティアは沢山の人に話しかけた。
小説家で病弱なカムイ、お師匠様のグスタフ、物知りのシルフィなどに話を聞くと、どうやらシルフィは何か知っている様だった。
「森の宝?あぁ、あの花のこと・・・」
シルフィの家、ホワイトハウスのようなこの広い庭にて、この会話はなされた。
「何か知ってるの?」急いで聞けば、シルフィは頷いた。
「森に在る奇跡の花の伝説なら、けっこう昔に文献を呼よんだわ。それでよければ教えるけど、タダってわけには行かないわね!これが終わったら協力してもらいたいことがあるの!」
ティアは困り顔で頷く。何を要求されるか分からないが、これもファナのため。
頷いたティアを満足げに見てから、シルフィは着いてくるように合図した。
シルフィとティアが移動した場所はゲオルグのホワイトハウスの中。
一階に在る広い間取りのリビングで、家の西側に置かれている本棚コーナーの一角だった。
そこに寄りかかりながら、シルフィは目当ての本を取り出してページをめくる。その様子を見ながら、ティアは精霊たちと顔を見合わせた。
「あった、これよ」
ようやく目当てのページを見つけたようにシルフィが本を開いた状態で差し出す。
それを受け取って、ティアは目をしばたいた。
少し茶けた古い本のページに書いてある言葉が読めないのだ。古い言語の様で、版画しかわからない。
一角を切り取ったように桜の花のような凛とした花の版画が書かれている。それはどこかで見たような気がした。
「あ、これ・・・ファナのアルバムに写ってた造花ににてる!」
一気に記憶がよみがえって、在る光景が脳裏に掠める。
以前まだ世界がクレルヴォの脅威にさらされていたとき、ファナがアルバムを見せてくれたことがあった。
そこに写る数々の写真の内、桜色のきれいな花の造花写真があったのだ。
この世に存在しない花なの、とファナは教えてくれた。
それが、目の前の本と同じ姿で姿を現している。
「そう・・・あなたの言うとおり、造花でしか存在しない花よ。つまり、存在しないの」
シルフィが腕を組みながら言う。ティアはえっと声を上げて顔を上げた。
「そんな、だってこの花がないとファナは・・・」
必死に言うが、シルフィは首を振るばかり。
「“伝説上存在した、美しい桜色の花。高い生命力の在るところにしか咲かず、どんな万病をも癒す。”そうかいてあるのだけど、伝説は伝説よ」
ティアはうなだれたように本をシルフィに返した。
シルフィは本を受け取ると、もとあった棚にストンと戻した。
「諦めることね、探したって存在なんてしないわ。それじゃ、私の問題を解決してもらおうかしら」
沈み込むティアに、シルフィはそういった。
- Re: アヴァロンコード ( No.515 )
- 日時: 2013/02/02 13:45
- 名前: めた (ID: g7gck1Ss)
参照 10500 行きました!!ありがとうございます!!
この小説自体、2月中には終わってしまうのかな?
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「え?ゲオルグさんにプレゼント?」
「しーっ!声が大きいわね!」
ティアが驚いたような声を上げると、慌ててシルフィが怒鳴りつける。
幸いにもゲオルグは庭できれいに咲き並ぶバラたちに水をやっているところだった。
窓のそとのゲオルグは相変わらず如雨露を手にしてこちらを見ようともしない。シルフィはホット胸をなでおろした。
「そうよ、何か文句ある?」へぇーシルフィが・・・などとつぶやいているティアに、シルフィは絶対零度の視線を浴びせる。
「いや、滅相もないけど・・・何をあげるの?」
その視線に引きつつも、ティアは首をかしげて問う。
その言葉を聴いてシルフィがポケットからしわくちゃの紙を取り出してティアに差し出す。
「エルフの涙!」
かさついた紙にはエルフの言葉で書かれている文字が躍っている。
ティアにはちんぷんかんぷんで、シルフィにその紙切れを返した。
「これはエルフの間に伝わる秘薬なの」
秘薬、と聞いてティアはハッと顔をこわばらせる。
そして勢い込んで叫ぶように聞いた。
「それってどんな病気も治す?!」
「疲労回復に・・・まぁそうね・・・そうだと思うけど」シルフィがティアを押しのけながら言う。
「ファナの病気にも効くかな?!」
だがシルフィはきっぱりと言った。
「無理ね。これを人間が飲んだら、ショック死しちゃうわ」
「そっか・・・」ティアがまたもや沈み込むと、シルフィは肩をすくめてもう一度ティアに紙を押し付けた。
それを受け取り見てみると、今度はティアでも読める字で書いてあった。
「材料をかいておいたから、作ってきてほしいの。用はそれだけだから、ほら、さっさと作る!」
そして追い出されるように家から出ると、困ったように眉を寄せるティア。
「どうしよう・・・」いろいろな意味が含まれたこのため息に、精霊たちも黙り込む。
「1つ・・・薬花について提案があります」
そんな彼らを励ますように、ウルが声を上げた。
皆そろってウルを見上げ、首をかしげている。
「森から離れたところで審議を問うでも意味がない。ですから、森にすむものに聞いてみたらどうでしょう?」
「あぁ、あのルドルドとか言うむさいおっさんか!」
そうです、とウルが頷き彼らはルドルドを尋ねるために—エルフの涙の材料採取もかねて—太陽の棚を目指した。