二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: アヴァロンコード ( No.578 )
日時: 2013/04/27 14:31
名前: めた (ID: x1KEgngG)

和平条約もうまく運び、城に皇子と将軍が住み着いてからすぐのこと。

ティアは一人でお墓に来ていた。

一人といってもいつも一緒の精霊たちはちゃんといる。

預言書を抱えて歩いて目当ての墓に着くと、ティアはそこに座り込んだ。

「ミーニャ、幽霊だったんだ」

そのお墓は見慣れたユウシャノハナで飾られている。

「あそこって確か、すごい金持ちが住んでたんじゃなかったっけ?」

精霊の言葉にうーん、とティアはあいまいに頷く。

確か外交官一家が住んでいたと聞く。だが良くわからない。

「今は荒れ放題だけど・・・家族全員死んでしまうほど前の幽霊なのかしら?」

ミエリが首を傾げて言うが、ウルが今度は首を振った。

「いいえ、違うでしょう。ここに彼女が没した年表が刻まれていますが、8〜9年ほど前のようですね。五歳でなくなられたようです」

8〜9年前といえば、ティアが下町で暮らし始めた時だ。

そのとき、レクスにあった。

そういえば・・・あの時レクスは高価そうな服に身を包み、そして全身血まみれで倒れていた。

そして、何か名前をつぶやいていなかったか・・・?

「み?にゃ?なにそれ」と幼き過去の自分はうわごとのようにみとかにゃとか言うレクスに問いかけた。

それってミーニャだったのではないか?

「外交官の娘。あの館には写真立てがあって四人写ってた。ミーニャが死んでしまった年に、レクスが高価そうな服装を血まみれにして私のところへやってきた。そのときうわごとみたいにミーニャって言ってた。コレって何か関係性あると思う?」

すぐさま精霊たちがなにやらしゃべりだす。

精霊の議論大会であり、何か困ったことなどがあるといつでも開かれる。

「仮にレクスとミーニャが兄妹としたら、レクスが血まみれで下町にやってきたことが気になりますね。両親は何処に?なぜ血まみれだったか?外交官の館で何か起きたのかもしれません」

ウルが結論を述べると、ティアは思い切って村長のところへ行った。

ゲオルグならば、きっと何があったか知っているだろう。


Re: アヴァロンコード ( No.579 )
日時: 2013/05/01 00:47
名前: めた (ID: TwnK.bTA)

参照15600越えました!
あと少しで15700行きますね!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゲオルグのホワイトハウスにつくと、ゲオルグは庭にいて、きれいに生えそろうバラの花を見つめていた。

もちろん片手には如雨露が装備されている。

ティアはさっそくその姿を見つけると、声をかけて質問した。

「ゲオルグさん!外交官の館って知ってますか?」

「おぉ、ティア君か・・・知っているとも。あの空き家のことだろう?」

振り向きながら、急に声をかけられて驚きつつもゲオルグが答える。

表情はいつもの物知り顔で変わらない。

如雨露を足元において、腕を組んでティアを見下ろす。

「それがどうしたのかね?」

言われて、ティアはたずねた。

「あの空き家の・・・外交官の館は四人家族で、そのうち一人はミーニャという五歳の女の子だったんですよね?私が七歳くらいのときに死んでしまったらしいですけど・・・」

言い終える前から、ゲオルグは顔色を変えていった。

血色の良いピンク味の掛かった顔色が、暗く沈んでいく。

質問しながらティアは小首を傾げた。あの館で一体何が起こったというのだろうか。

「良く知っているね・・・君は何処まで知っているんだい?」

「えと・・・なんにも知らないけど、でももしかすると、レクスがミーニャのお兄ちゃんだったんじゃないかって思ってるんです。ミーニャの死んでしまった年にレクスが高価な服を血まみれにして私のところにやってきました。そのときうわ言の様に彼女の名前を呼んでいたから—」

最後のほうは尻すぼみになっていく。

ゲオルグが肯定するように重々しく頷いたからだ。

そして口を開いた。

「その通り、レクスはミーニャと言う少女の兄で、このカレイラの外交官の息子だったんだ。あの事件が起こるまではね」


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カレイラ諸事情でレクスの件はふれられてますが、今回はミーニャが主役のお話です。
またく同じ話ではないので安心してください。

Re: アヴァロンコード ( No.580 )
日時: 2013/05/03 19:24
名前: めた (ID: MhL4TUn6)

参照 15900 いきました!!
あと100で16000!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あの事件?首を傾げたティアに、ゲオルグは少しためらいがちに口を開いた。

「レクス君は君にも言わなかったのだろう・・・そんなことをこれから君に話すわけだが、どうか我々に失望しないでほしい。我々はあの時—いや、よそう。では始めるよ」

ゲオルグが話し始めると、ティアはすっかり時を忘れてしまった。

ここがホワイトハウスの中だということも、自分が今何歳だったのかも忘れてしまい、すっかり世界に引き込まれた。

その世界に、その時に、その現場に自分がいるような感覚を感じる。

目を上げれば、目の前にあの館がある。

一人の少年が立派な正装に身を包み、あの外交官の館から走り出てきた。

背中に茶色の革のカバンをくくりつけ、ステップをふむように来るッりと家の戸口を振り返って元気良く手を振る。

「じゃぁ、行ってくる!ミーニャはデュランと遊んでろよ!」

「うん、わかった」

戸口にて手を振り返すツインテールの少女、ミーニャだ。

ミーニャのちょっと元気がなさそうな声に、レクスがちょっと困った顔をしたが再びステップをふむように家に背を向けて走り出した。

何処に行くのか、ティアにはゲオルグの言葉でわかった。

「あの当時のレクスは、外交官の跡継ぎとして遠くまで勉強をしにいっていたんだ」

まだ幼いレクスが青緑色の髪を揺らしながら、走って町並みに消えていった。

「あ〜あ、お兄ちゃん行っちゃったぁ」

戸口に目を戻すと、ミーニャがはぁとため息をついて、ふんわりしたスカートの裾をつかんで兄の行方を眼で追うかのようにしばらくそこに立ち尽くす。

するとそこへ、白くきれいな花を帽子に飾ったデュランがやってきた。

帽子以外は見慣れない格好だが、外交官のレクスとミーニャよりは庶民派の服装に身を包んでいる。

だが優しげで気弱そうな笑顔は良く覚えている。

その笑顔のまま、デュランが今よりも幼い声でミーニャに話しかけた。

「今日は勇者サマごっこできないから・・・何して遊ぼうか?」

「そうね、隠れん坊しましょ!」

Re: アヴァロンコード ( No.581 )
日時: 2013/05/06 22:52
名前: めた (ID: NZUH8ARt)

「隠れん坊の最中だったらしい。外交官の館に、刺客がやってきた」

デュランがクローゼットの中に隠れて数十分後、探し回るミーニャとその様子をニコニコ眺めていた外交官夫妻。

ティアの目の前で戸口に刺客が現れる。

羨ましいほどの幸せな家庭はその一人の人物によってばらばらに壊されてしまった。

そしてデュランが気絶してしまうと、目の前の光景は打って変わる。

「異変に気づいた当時親衛隊体長だったデュランの父親、グスタフが第二目撃者で、すでに外交官夫妻とその娘は息が無かったという。それを王に報告すると—」

グスタフが王に報告している場面に変わった。

玉座のある謁見の間には、まだ若いグスタフとひげの短い国王が居る。

その当時の王にもグスタフにも見覚えがある。

ティアが両親を放火魔に殺害されて行き場を失っていた頃、この二人に会ったのだ。

グスタフは助けようと必死で、王は貧しい子供には用はないというそぶりだった。

「外交官の暗殺か。すぐ新しい外交官を手配、そして暗殺者の捜索をしろ」

国王はそういうと、グスタフを下がらせようとした。

だがグスタフは困ったように言う。

「陛下、暗殺された外交官夫妻には二人の子供がおりました。娘の方は残念ながら亡くなりましたが、息子が存命です。その者は現在遠くまで勉学を学びに出向いております。両親妹が死んだことを知りませんし、どうか後継人を探してあげてくださいませんか」

頭を下げて頼むグスタフに、王は鼻を鳴らす。

「またくお前というヤツはくだらないことをいつも頼みおって。数年前も孤児の少女のためにそうやって頭を下げたな。だがその少女は行方をくらまして何処かへ消えた。今回の少年も刺客の手にかかっているだろうが、見つけ次第面倒を見てやろう」

グスタフが何度も頭を下げてお礼を述べている頃、外交官の館では血まみれの少年が一人放心状態で家族を抱いていた。

レクスが帰ってきていたのだ。

扉を開けると、家中あらされてペンキをぶちまけたかのように真っ赤。

その中心に最愛の人たちが転がっていて、抱き上げても揺り動かしても二度と起きない。

信じられない光景にレクスはその場から逃げ出した。

血まみれで傷だらけで、誰も助けてくれない。

そのまま走りつかれて深い眠りに落ちた茂みで、ティアに出会った。

「我々は消えたレクス君のことを探さなかった。きっと暗殺者の手にかかったと思っていたんだ。そして数年して、その存在が君と共に生きていると知ったんだ」

ゲオルグの言葉が恥じるように終わると、ティアはハッと我に帰った。

ここはホワイトハウス。見える景色は数分前の現実に戻った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

参照が 16000こえてました!!
ありがとう御座います!!!

Re: アヴァロンコード ( No.582 )
日時: 2013/05/11 10:54
名前: めた (ID: 9KPhlV9z)

参照16200ありがとう御座います!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おねぇちゃん、また来てくれたんだ!」

外交官の館の前に来ると、館からミーニャが跳ねるように駆けて来る。

茶色の目がきらきらひかり、すぐにティアの前で止まった。

ティアはその姿にいたいたしい面影を探したが、本人は無垢で悲惨な事件など覚えていないようだ。

精霊たちはじっと黙ってミーニャのあたりに漂う。

ティアはしゃがみこむと、先ほど精霊たちと話したことを思い返す。

—ミーニャは死んだことも覚えてない
—ずっと地上にとどまるのはむなしいだけだから成仏させた方がいい
—地上に居るわけは、死んだことを自覚しないからであり何か遣り残した事があるから

—ティア、あなたが彼女を成仏させてあげてください

「ミーニャ・・・ずっとやりたかったことある?」

ティアがミーニャに聞くと、ミーニャはちょっと考えてから、ぱっと花が咲いたように笑った。

「一緒に遊ぼう!遊んでくれる?」

「もちろんいいよ」

ミーニャは目を輝かせてとてもうれしそうに飛び跳ねる。

「ずっとね、こうやって遊んでくれる人を探していたの!だけどミーニャはまだ子供だから誰も一緒に遊んでくれなかったの。だけど・・・」

飛び跳ねるのをやめて、ミーニャは期待したようにどこかを見た。

ティアはしゃがみこんだまま、ミーニャの見つめる先を見た。

だが何も見えない。外交官の館から石ブロックが敷き詰められた通りが見えるだけ。

廃墟と化した木造の小屋がいくつか見え、その屋根には風に踊る鶏型の風車が回っている。

ミーニャは一体何を見ているのだろうか、と考えていると彼女は急に走り出した。

「あ、何処行くの!」

立ち上がり慌てて追いかけると、ミーニャは思ったよりすばやい。

走る歩合と進む距離が比例しておらず、空中を滑るように歩きながらものすごい距離を進んでいく。

ティアが外交官の庭から足を出す頃には、ミーニャは木造の家々の角を曲がり、奥に広がるハオチイの実験室の前を通り過ぎている。

ただ声だけは響くように聞こえる。

「ずっと声をかけてたんだけど、その人はわかんないみたいだったの。だけどおねえちゃんが解るなら、きっとその人もわかるはず—!」


Re: アヴァロンコード ( No.583 )
日時: 2013/05/17 21:15
名前: めた (ID: 9KPhlV9z)

参照が16500に行ってました!!ありがとうございます皆様!

自分でいろいろ見直してて気づいたんですが、ヒースの御使いで語るはずだったヒースとラウカの出会い話を完 全に書き損じてしまった・・・
なのでそれは“酒屋話譚”で書きますのでお楽しみに

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ミーニャ、何処行くのミーニャってば!」

ティアが叫ぼうがわめこうが構わずにミーニャはハオチイの家まで来ると、不意に体の向きを変えた。

そしてまん丸の茶色の目をこわれたフェンスの方へ向ける。

ハオチイの家の前のフェンスは突き破られたように壊れている。

これは昔からであり、一説によるとレクスが近道をするために破壊したという。

その節が最有力なのは、その破壊されたフェンスの崖下に彼の家があるからである。

と、ミーニャがすっと足をフェンスの向こうに出す。

崖と空中の境目にかけられた小さな靴が、徐々に空中へと傾いていく。

二つに結んだツインテールがふんわりと空中を漂った。

まるで身投げする等身大人形のように。

「ミーニャ!」

ティアが全力疾走で彼女を引きとめようと手を伸ばすが、妖精のように空中に零れ落ちた彼女は振り返ってにっこり笑った。

ティアの手がミーニャをすり抜けて空中に突き出される。

ハッとしても時は遅く、そのままティアも崖の下へと重力に惹かれて落下した。

Re: アヴァロンコード ( No.584 )
日時: 2013/05/27 21:46
名前: めた (ID: 9KPhlV9z)

16700ありがとう御座います!!
まずいなーこのペースだと終わらずに一周年いっちゃうぞ・・・
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空中で腕をばたつかせるのをやめて、ティアは腕と足を思いっきり縮めて亀のように丸くなった。

重い頭が下を向く反動を使い、ティアは腹筋を駆使して空中で一回転すると、踵落としするように着地した。

荒く息をしながら、自分が今しがた行った曲芸師のようなアクロバットを信じられないというように硬直する。

精霊たちはあっけに取られ、ティアの身のこなしに目をしばたいて黙っている。

「わー、お姉ちゃんってばすごいねー!ピエロさんみたい!」

と、場違いなまでの歓声と拍手を送るのは幼い声。

見上げれば、ふんわり雪が降り下りる様にミーニャが浮遊している。

そして羽根が地面に落ちるように着地すると、にっこり笑った。

「ミーニャ・・・もう危ないことやめてね」

ティアは深くため息をついて、自分がおそるべき反射能力を備えていることに感謝しつつ、ゆっくりしゃがみこんでミーニャに言った。

ミーニャと目線を合わせて言うけれどミーニャはティアを通り越してその背後を見つめ黙りこくっている。

その目が大きく見開いて目が輝く。両脇にたれていた小さな手のひらがぎゅうっとスカートの裾を握り締め、口元が震えながら何か言おうとする。

「ミーニャ?」

ティアが小首を傾げて聞くと、ミーニャは両手をゆっくり挙げてすがりつくようにいっぱいに手のひらを広げて言う。

「おにいちゃん・・・」

振り返ると、こちらを見つめたレクスがいた。

Re: アヴァロンコード ( No.585 )
日時: 2013/05/27 22:16
名前: めた (ID: 9KPhlV9z)

「レクス・・・」

しゃがんだままレクスの事を見ていると、レクスが引きつったような顔でつぶやく。

桟橋で釣りをしていたのだろう、釣り道具を両手に抱え込んでいる。

「おにいちゃん・・・」

ミーニャがティアの脇をすり抜けて、おずおずとゆっくりレクスに歩み寄る。

レクスはじいっとこちらを見つめ、やがて激しい音と共につり道具を取り落とした。

バケツから水がほとばしり、魚が数匹ばたつきながら地面の上で踊っている。

「ミーニャ・・・って、お前なんで—」

言いながらレクスがずかずかと歩み寄り、両手を差し出しながら青ざめた顔でこちらを見る。

ミーニャが涙を溜めた瞳で跳ねるようにレクスの腕めがけて走る。

「おにいちゃん!よかった、やっとミーニャのこと見えるようになったんだね!」

後一歩、その距離まで二人が近づくと、ミーニャは思い切りジャンプしてレクスに抱きつこうとした。

だがその身体はすうっとレクスの身体を通過して、前かがみのまま勢い良く地面に転ぶ。

驚きに目を見開いたミーニャは、首だけをねじり、兄を見上げたが・・・

兄であるレクスは転んだ妹に眼もくれず、ティアの両肩をつかむと、眉を寄せていった。

「なんでお前がミーニャの事を知ってるんだよ?!」

「え・・・」

ティアは転んだまま涙いっぱいの目でこちらを見ているミーニャと目を合わせながら口ごもる。

ひどい剣幕で言うレクスに何をいえば言いか解らず黙っていると、ミーニャが泣きながら首を振って言った。

「お兄ちゃん、なんでミーニャのことみえないの?」



Re: アヴァロンコード ( No.586 )
日時: 2013/06/01 14:07
名前: めた (ID: 9KPhlV9z)

16800ありがとう御座います!
六月に入っちゃいましたね あと二ヶ月で一周年・・・終わるのか・・・?

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ミーニャはさめざめと泣き出し、跳ねるように飛び起きて駆け出した。

そして作りかけの桟橋の方に駆け出す。

そこはいつもレクスが釣りをしているポイントであり、川にせり出すように桟橋がかけてある。

川は意外と深いので、大きな魚がつれるのだ。

そこへ、ミーニャがためらいもせず飛ぶ。

「ミーニャ!」

ティアが悲鳴を上げてレクスを突き飛ばして川へ近寄ると、ミーニャは水面の上でしゃがみこんでいた。

幽霊だから物に干渉できない。枷で縛られていた精霊と同じである。

水面の上で魚が下を通過していくのを涙を溜めて見つめている。

涙は頬を転げ落ちて水面に達すると、煙のようにふわりと消えている。

「ミーニャ・・・」

改めて彼女は幽霊なのだと実感すると、ミーニャが顔を上げた。

ティアを見ているのではなく、分けが解らないという顔をしてこちらへ来るレクスを見ている。

「おまえ何見てるんだ?ミーニャってどういうことだよ」

桟橋から呆然と水面にたたずむミーニャを見るティアの視線を追って、レクスが必死に視ようとする。

だが、何も見えない。

と、ティアが口を開いた。

「私は・・・小さな女の子が見える。レクスの妹のミーニャが見えるの」

Re: アヴァロンコード ( No.587 )
日時: 2013/06/02 15:21
名前: めた (ID: 9KPhlV9z)

いきなりのカミングアウトに唖然としたレクスは意味が解らないと首を振って頭を撫でた。

本当に意味がわからん。

第一ティアにさえ過去の話をした事はない。知っているのは継続する過去から友人だったデュランや、過去から知り合いだった人々しか知らないはず。

「誰から聞いたんだ?」

イラついたように、まず順序を立ててティアの言葉を理解することにしたレクスは妹分に聞いた。

ティアはまごついたように足元を見たが、ミーニャが居るという方向を見つめ、観念したように言った。

「ゲオルグさんから・・・でも、外交官の事件やもしかしたらミーニャがレクスの妹かもしれないとは、ミーニャの墓石から推測してみた。それに、ミーニャがレクスのことをお兄ちゃんって呼んでたから」

「・・・・・・」

レクスは別に怒るでもなく無言で腕を組み、ティアから川のほうへ顔を向けた。

そして目でどこかを探るように見渡す。

「お前、ミーニャが見えるって言ったな。父さんや母さんは見えるのか?」

「え?ううん、ミーニャだけ・・・」

ティアがおずおずと返事をすると、レクスは腕を組んだまま悔しそうに奥歯をかみ締めた。

「ミーニャはずっと一人だったのか・・・どうして成仏できなかったんだ?」

レクスは桟橋にしゃがみこみ、つぶやいた。

ミーニャが怒られているのだと思って肩をすくめてごめんなさいとつぶやく。

「ミーニャはどこにいるんだ?」

レクスは顔をあげずにティアにたずねた。

ティアはミーニャにおいで、とつぶやき、呼び寄せた。

ミーニャはためらいがちにもじもじしていたが、ついには跳ねるようにティアの足元にすがり付いて、レクスのほうを見つめた。

ティアに励まされて、まだ川のほうを見つめているレクスにミーニャは歩み寄り、肩を叩く仕草をした。

だがむなしく身体をすり抜けたミーニャの手。レクスは振り向かない。



Re: アヴァロンコード ( No.588 )
日時: 2013/06/05 16:40
名前: めた (ID: 9KPhlV9z)

「ミーニャ・・・が目の前に居るのか?」

ミーニャをレクスの目の前に設置したティアは頷いた。

レクスはどこを見ていいのかがわからず、とりあえず自分のしゃがんだ目線をじっと見ている。

ミーニャは兄を見ているが、兄が自分を見ていないことがすぐにわかったようで、不満そうに足を動かした。

「ミーニャ、いる・・・のか?」

レクスがブツブツとつぶやくと、ミーニャはツインテールを揺らしながらこくんと頷いた。

「お前は・・・なんで成仏してないんだ?」

ミーニャは怒られているのだと思い、首をすくめて縮こまって兄を見た。

「死ぬ間際になんかあったのかよ、不満なことが?」

そこまで言うと、急にレクスが立ち上がって腕を組んだ。

うんざりというように手を解いて腰に手を当てると、首を振りながら言う。

「・・・何言ってるんだ俺は。幽霊なんて居るわけないのに。お前もへんな冗談はやめろよ。幽霊なんて居るわけがないんだから」

ティアが何か言おうと口を開く前に、レクスはさっさと何処かへ行ってしまった。

取り残されたミーニャは泣きべそをかいて、ティアの足元にすがりつく。

「ミーニャ悪いことした?お兄ちゃんなんで怒って帰ったの?もうやだ、お兄ちゃんなんて。会うと怒ってたり、無視するの」

ティアに慰められても、精霊たちに慰められてもミーニャは暗いままだったが、ぱっとその顔が明るくなった。

「そうだ!勇者サマなら・・・デュランならミーニャのこと幽霊だからってキライにならないはず!」

言うなり、ものすごいスピードで走り出したミーニャを、ティアが慌ててつかもうとしたが、すり抜ける。

「まって、ミーニャ!」

立ち上がって叫ぶ頃には、ミーニャの姿は路地に消えた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

16900ありがとうございます!

Re: アヴァロンコード ( No.589 )
日時: 2013/06/09 16:00
名前: めた (ID: x1KEgngG)

「あ、ティアどうしたんだい血相を変えて?」

ティアがミーニャを追ってデュランの家の前までやってくると、デュランは呑気そうに家の前でシーツを干していた。

綺麗好きのデュランは毎週シーツの日干しを欠かさずに行っているのだ。

そのお日様にあたって暖かいシーツにじゃれるようにしながら、ミーニャはくるくると動き回っていた。

「デュラン、勇者サマごっこしようよ!お仕事が終わった後で良いからさ!」

血相を変えたティアの顔を見ながら、シーツをばさばさと振るデュランはやはりミーニャが見えていない様子。

だがミーニャは穏やかな表情のデュランが自分の話を聞いていると思い込み、勇者サマにあげるお花摘んで待ってるからね、と道脇に咲く野花を採取しようとしていた。

「やり残したことは何かたずねたとき、彼女は遊びたいと言いましたよね」

花に手を伸ばすミーニャを見て、ティアの右脇に浮かんでいたウルが腕を組みながら言う。

「だったら、遊んであげたら成仏できるんじゃないかしら?」

ミエリが賛成と声を上げると、それまで黙り込んでいたネアキが杖でちょんちょんとティアの肩をつつく。

『…勇者サマごっこってなに?』

「勇者サマごっこって言うのは、魔王に囚われたお姫様を、勇者様が救う遊びのことだよ!勇者サマは魔王を倒した後、お姫様からお礼にお花をもらえるの」

いつの間にか話を聞いていたミーニャがティアの足元まで戻ってきて、ネアキに熱心にゲームの説明をする。

「お姫様はあたし。勇者サマはあそこのデュラン!お姉ちゃんは勇者サマの仲間で魔法使いね」

姫と勇者について語った後、ミーニャは魔王について語る。

「後は魔王役・・・魔王は何でもいいの、ミーニャがいつもやるときはお兄ちゃんが魔王だったけど・・・あそこの草でももちろん良いんだよ。だけどフインキないから・・・」

ネアキに魔王の例を示すために、ミーニャは首をひねりながら辺りを見回す。

岩、草、シーツ、鳥、の順に見回し、ティアの周りに浮遊する精霊に目をつけたミーニャは、あっと声を上げてレンポを指差した。

「角生えてるし、なんか魔王っぽい!赤いおにいちゃんは魔王ね!」

指を指されて魔王指名されたレンポが冗談じゃないとネアキを指差してわめく。

「!? 角生えてるって、それはネアキもそうだろ!」

「だってこの子は魔王というより妖精のフインキだし、赤いお兄ちゃんのほうが魔王っぽい」

「は〜、終わった!」

言い合っている間に、デュランが手をパンパンと叩きながら洗濯終了と満足げに言った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

参照 17000 ありがとうございます!!!

Re: アヴァロンコード ( No.590 )
日時: 2013/06/19 17:06
名前: めた (ID: TZiA0BVR)

17200ありがとう御座います!!
十日も放置してたとは

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「えっ、ミーニャがここに居るの?それで勇者ごっこしたいの?」

ミーニャが成仏しておらず、デュランと勇者サマごっこをしたいという事事実を伝えると、彼は急にしゃがみこんだ。

「ミーニャはどこにいるの?」

現実派のレクスと違い、すんなりティアの言うことを信じた気の良いデュランは、ティアに指し示された方向に向いた。

そして帽子を脱ぐと恭しく頭をたれ、やけに芝居がかった口調で言った。

きっと勇者サマごっこのセリフの1つなのだろう。

「ではお姫様、少しの間魔王の手の中に落ちてください。必ずや助けに行きましょう!」

「わーい、デュランはぜんぜん変わってないや!」

それを聞いてミーニャは飛び跳ねて喜んだかと思うと、ティアのところへかけて行き、打ち合わせのようにささやく。

「魔王役が居ないから・・・おねえちゃん代わりに魔王ね!」

言うなり、両手を組み合わせて悲鳴を上げる。コレが魔王に囚われた姫役のスタイルらしい。

「あーれー、私は魔王に囚われたお姫様。勇敢なお人よ、どうか助けて!」

「ところで、魔王って誰なの?レクス?」

だが全く幽霊であるミーニャの声が聞こえないデュランは、洗濯物叩きを片手にティアにたずねる。

おそらく勇者サマごっこが開始されたことも知らないのだろう。

ティアはそこらへんに落ちたいた棒切れをかがんで拾い上げると杖のように構えて、不敵そうに笑みを浮かべて演技してみた。

「魔王は私だ。さぁ、姫を助けたきゃ倒してみろ!」

「・・・悪役はそこで不適そうに笑うものですよティア」と横から水を指され、慌てて魔王のセリフを言いなおすティア。

杖(棒切れ)を頭上に高く掲げ、ここが真昼間の、剣術道場に通う生徒が通る道場前なのにもかかわらず、大声で演技する。

実際この国の英雄が妙なことを口走るシーンを、数人の街人たちが目撃し、眉を寄せて通り過ぎていった。

「コレまで何人もの勇者を倒してきた私に勝てるものか!・・・フ—フハハハ?」

「ティアが魔王とか全く勝てる気がしないんだけど・・・」

ティアが魔王であると聞いて完全に戦意喪失のデュランだが、聖剣(洗濯物叩き)を構え、勇者の決めセリフを言う。

「やっと見つけたぞ魔王め、覚悟しろ!姫君は返してもらうぞ!」

「お前ら何やってんだよ」

と、これから魔王と勇者の未曾有の決戦が始まるというときに、釣竿を担いだレクスがあきれたように二人に声をかけた。

Re: アヴァロンコード ( No.591 )
日時: 2014/12/05 17:06
名前: めた (ID: A1qYrOra)

?!
三万超えてる?!
一年ほど放置していたのにありがとうございます!たまたま覗きに来て参照見てびっくりしたので‥・更新予定はめどが立っていませんが…

Re: アヴァロンコード ( No.592 )
日時: 2014/12/23 22:13
名前: クリス ◆Qjs4g5tod6 (ID: kphB4geJ)

続き希望です…

Re: アヴァロンコード ( No.593 )
日時: 2015/02/05 20:35
名前: ショパン (ID: kphB4geJ)

続き・・・・・!希望!

Re: アヴァロンコード ( No.594 )
日時: 2015/05/06 10:20
名前: ソレイユ ◆g9f2Ab4.4E (ID: kphB4geJ)

やっとここまで追いついた。
続き書く予定無いんですか〜?
春休みにアヴァロンコードにはまって一週間でクリアして、この話を見つけたので…

Re: アヴァロンコード ( No.595 )
日時: 2016/03/29 01:16
名前: 野良猫 (ID: I7JGXvEN)

お久しぶりです!野良猫ことゆめです!
覚えていらっしゃるでしょうか?

最近アヴァロンコード愛が再発し始めてやってまいりました!

エヴィグとウェルトは何回見ても飽きませんねー
その文章力がほしいです(切実な願い)

更新をwktkしながらお待ちしてます(^ω^)

Re: アヴァロンコード ( No.596 )
日時: 2016/05/23 09:16
名前: ほうじょうたくま ◆vXX0cdKx3A (ID: CmU3lREQ)

ピッコロ「くらえ!!まかんこうさっぽう!!」

ベジ−タ「フンっ…、つまらん技だ…」キィィン!!

ピッコロ「なん…だと…!?」

ピッコロ「バカな!?おれの最強の必殺技が?効かないだと!?」

ベジ−タ「この程度が必殺わざとはな。ナメック星人は余程冗談がすきなんだな。まあいいこれで終わらせてやる」グウィィン

ピッコロ「な?な!?なんだこの気は!?!」足がググンと下がりヒザをつくピッコロ

ベジ−タ「フッ…これは俺のいちばんよわい技だ!くらえェェ!!」ズキュ−−−ン

ピッコロ「ぐはあぁぁぁ」ドカ−−−ン