二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄—
- 日時: 2010/12/30 15:16
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
初めまして。
お久しぶりです。
学園アリスを書いていた時計屋と申します。
今回はテイルズシリーズ唯一プレー経験のあるテイルズ・オブ・ジ・アビスを書きたいと思います。
なお、自分はご都合主義なので赤毛二人とも生存しております。それと、設定が未来となっておりまして子供が主役です。
色々、矛盾点があると思われますがスルーして頂ければ幸いです。
では、オリキャラ達を紹介します。
人物紹介
ローラン(女)
『唄われる音』
年齢 15ぐらい
性格 天然
容姿 白のロング 栗色の瞳
その他
ローレライに創り出された存在。一時期ユリア達に預けられていたが、ダアト裏切り時にユリアの手によってローレライの元へと返される。その為、ユリアを裏切ったオリジナルをとても憎んでおり、侮辱する事もしばしば。存在が似ているレプリカ達には寛容で優しく、酷い扱われ方をしているレプリカを見ると後先考えず喧嘩を売ってしまう。現在の社会情勢には疎く、スコールに教わりながら日々勉強している。口調が少し可笑しいユリア大好きっ子。
台詞集
「それに何の問題が有りけるの。」「お前は、嫌いだ。」「失せろと言うのが分からぬか?」「願いは叶わぬのが私という存在なのだから。」
スコール・フォン・ファブレ(男)
『闇を照らす光』
年齢 16
性格 温厚
容姿 朱色の短髪 翡翠の瞳
その他
ルークとティアの息子。ファブレ家の長男であり、リルカの兄。家を継ぐ気はあるが、一人旅をしてみたいという夢も持っている。ルークとティアから訓練は受け、実戦経験も豊富なため戦闘は強いが本人はあまり好きではない。勉強は好きだが、事実を確かめたいと外に遊びに行く事も。ユリアの譜歌も歌える第七音譜師。
台詞集
「世界は外に広がってるんだ。」「お前が犠牲になる世界が本当に正しいのかよ!!」「信頼しなくても良いから信じろ。」「お前が好きだよ。」
ギルフォード・レア・キムラスカ・ランバルディア(男)
『守り通す者』
年齢 17
性格 冷静沈着
容姿 紅の長髪 蒼の瞳
その他
アッシュとナタリアの息子。キムラスカ王国の王位正当後継者でリルカの婚約者。頭が良く物事を判断する能力に長けている。戦闘訓練を受けているため、スコールと同等の腕前を持つ。幼馴染みのスコールとリルカに振り回され頭を抱えながらも、自由な彼を尊敬もしている。表情は豊かだが、演技力抜群。リルカと結婚し国を支える事が目標。常識人な第七音譜師。
台詞集
「お前らは考えて行動しろよ。」「この国を誇りに思ってくれる人が一人でも多くいて欲しいんだ。」「俺は守りたいんだ。大切な奴らを。」「ほんと馬鹿だよな。救われるけどさ。」
リルカ・アウラ・ファブレ(女)
『清らかなる旋律』
年齢 14
性格 世話好き
容姿 栗色のロング 翡翠の瞳
その他
ルークとティアの娘。ギルフォードの婚約者でスコールの妹。何かに付けてサボろうとする兄を叱るのが日課。自立心は高く王家に連なる者としての自覚もあるため、日々民に尽くしている。ヒーラーとしての腕が高く、医療施設に泊まり込みで働くのが好き。将来はギルフォードと結婚し、国のために役立つのが夢。スコールと一緒にギルフォードを込まらせる事もある。
台詞集
「お兄様!!サボりはいけません!!」「いつか私と結婚してくださいね?」「こんなに傷ついて、平気なわけ無いでしょ!!」「精一杯お役に立ちます。」
もう少し出て来ますが、一応主要キャラです。
- Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.23 )
- 日時: 2011/06/25 13:52
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第二十一幕〜側にいたいのは僕の我が儘〜
浮かぶ想いは揺れ動き 告げる事すら戸惑う
それは唯の逃げと知りえど
恐怖は常にまとわりつく
もし君に想いを告げれば
側にいる事も叶わない
もし君に想いを告げれば
消えてしましそうな気がする
だから 云えない
どんな結末だろうと 優しい君はきっと泣いてしまうから
いつもより数時間も早く起きてしまった原因には、心当たりが有りすぎる。が、最大は先週届いた返事だろう。
ローランの批判への回答は、ファブレ家子息からの正式なモノとして返答をしたはずだった。勿論レプリカへの制限も行う意志はないと明確に記して。しかし、何が気に食わなかったのか再度届いた抗議文には直談判を要求されたのだ。俺としては懇切丁寧な説明文と裏のないギルのお墨付きの実証を提示したはずなのに、それの百分の一も理解しようとせず文句だけ言いに来る貴族様の相手などしている暇はない。が、相手が貴族様では無下にも出来ないとギルからの脅し、もとい助言で嫌々ながらも時間を作った訳である。
「たく・・・ややこしい真似しやがって。」
悪態を吐くも事態が好転する事もなく、約束の時間は変わらない。整備士によって完璧に整備されている時計の針は、狂いもせず無情に時を刻む。ため息を吐き、仕様がないと諦め意識を切り替える。
「速めに終わらせればローランと市街地に遊びに出掛けられるしな。」
ギルの計らいで今日の業務は確か無かったはず。ならば、貴族様の相手は適度に片付けて久々の休暇を満喫しよう。思えば早い話だが、思うまでに時間が掛かる。やっぱり人間誰でも面倒は嫌だよな。
ふと 何気なしに中庭を見渡せる窓へと目をやると、白が揺れて見えた。見間違うはずもない。今の今まで思っていた人物なのだから。
「ローランか。何やってんだあいつ?」
ローランが中庭にいること自体はそう珍しくもない。セレニアの花が気に入っているのか、ことある事に中庭へ出て四六時中眺めている。
そう。珍しくないのだ。例えば、今日のように朝早くからなんて一度や二度ではないのだから。
なのに何故か胸騒ぎがする。
「・・・今日は、タタルにでも行くかな。」
不安を押し切るかのように思い出深い光景を思い出す。
幼い頃両親と共に出掛けた渓谷。きっと喜ぶ。彼女はあの花が好きだから。
予定に耽っていると、見つめていたローランの異変に気が付いた。
突然頭を抱えその場に膝を突く。一見するとよく見えるように屈んだとも取れるその行動は、けれど不安を増長させるモノでしかない。
「・・・・寒いし、肌掛けだけじゃ心配だしな。」
誰にした言い訳なのか、兎も角ローランの元へ行こうと上着に手を伸ばした瞬間聞こえた悲鳴が全身に緊張を走らせた。思うより速く体が動き、中庭へと駆け出す。途中ですれ違った騎士の言葉など無視し、一心に中庭を目指した。
心に在ったのは唯一つだけ。
「ローラン!!!!!!!!!!!!!!!」
扉を開けた俺の目に映ったのは倒れる寸前のローランだった。保てなくなった身体がゆっくりと崩れを散る。その様に恐怖しか生まれなくて。
ス・・・コー・・・ル・・・
間際に届いた名を呼ぶ声と儚い笑顔は別れの言葉のように思えた。
必死に手を伸ばし地面にぶつかる寸前で抱き留めた身体は温かく、過ぎた予感を一蹴してくれた。少し力を込め痛くならない程度に抱きしめると、小さく呻き声が聞こえ閉じていた目蓋が震えた。
「ローラン・・・・・・」
自分でも驚くほど優しく出た彼女の名を何度も繰り返す。抱きしめる力はそのままで、ひとまず休ませる為部屋へ連れて行こうと抱え上げた時、走り寄るリルカが見えた。
「お兄様!!!!今の悲鳴は・・・・・」
上がる息のまま駆け寄るリルカは、抱えられたローランを見た瞬間息を呑み狼狽の色を見せたが直ぐ立て直し、瞬時に近くのメイドへと指示を飛ばす。我が妹ながら流石だなぁと思っていると、服が引っ張られている感じがし目を下ろすと薄らと目を開けるローランが力なく、それでも必死に服を掴んでいた。
「・・・・すこー・・る・・・・?」
「ローラン大丈夫か?」
こくん と頷く仕草がまた可愛い。弱々しい声には不安を隠せないが、頷けるほど意識が戻ってきたのなら直ぐどうなる心配も今のところは無いだろ。準備が整ったのか、リルカが早々と呼びに来る。
何か言いたげなローランを後回しにし、用意された部屋へと急いだ。
真新しいシーツは皺一つ無く敷かれ、枕元には水が置かれている。
元々、乖離を起こし掛けたローランには何が起こっても良いよう初めから用意されていたモノらしい医療器具が部屋に置かれている。
「今日は休んどけよ。」
「・・・けど・・・・昼から・・・遊ぶんじゃ・・・」
「倒れた奴が何言ってんだ。中止だ。」
「そうですわ!!また行けばいいのですもの。急ぐ必要はありませんのよ?」
途切れ途切れのローランに中止を宣言すれば、何処で覚えたのかしょげるような仕草を見せる。何故か悪い気がしてため息を吐き、頭を掻いた。
「あぁ〜!!!分かったよ!!今日の予定が終わったら連れっててやるから!!」
「お兄様!!!何を仰いますの!!!」
「正し!!!行くのは良いが無理はするなよ。」
途端に目を輝かせ嬉しそうに笑うのだから仕様がない。はぁ・・・俺も相当やばいよなぁ・・・・。
隣で抗議を上げるリルカを無視し、ローランの頭を撫でてから部屋を出た。何だかんだで早起きしたにも関わらず、約束の時間が迫ってきている。
「・・・速めに終わらすかな・・・・」
立ち会いのギルには悪いが、戦意喪失させる程度は許して貰おう。
一度気合いを入れる為伸びをすると、タイミングが合っているのか客人の来訪を告げにラムダスが走ってくる。
「さてと・・・お手並み拝見と行きますか・・・・」
今後こんな馬鹿らしい話し合いでローランとの時間が潰されないよう、相手には十分に釘を打っておかなければ。
にやりと零す笑みは、挑戦的な光が隠っていた。
つづく
- Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.24 )
- 日時: 2011/07/02 12:28
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第二十二幕〜配役は整った〜
ギルと伴って現れたのは二十代半ばの男性だった。黄金色の癖毛を後ろで短くまとめ上げ見るからに上物な服を纏い気品を漂わせる彼は、なるほど噂通りだと見つからないようにため息を吐く。
「お待ちしていました、ウェーズ卿。」
名を呼び笑みだけで迎え入れれば、恭しく下げる彼の目の強気な光を見逃しはしない。たく、面倒だな。
「本日はお呼び下さりました事、誠に光栄に存じます。常からあなた様のお噂を聞き及んでおります故お会いできましたこと、至上の喜びでございます。」
よく此処まで口が回るなと思うほどに、胡散臭い社交辞令をつらつらと喋る。正直鬱陶しい。ここで、けりを付けたいとギルを見やるが返ってきたのは厳しい視線。一応貴族だしそれなりのお持て成しをしろって事か?
「ウェーズ卿。此処では何ですし、応接間にご案内しますよ。」
「・・・・これはこれは。」
区切りがつくタイミングを見計らい場所替えを言い渡せば、未だ言い足りないのか不機嫌に顔を顰めたが逆らう事はしない。此処で逆らっても自分に良い状況にはならないと分かっているのだろう。けれど、分かっているなら最初から手を打たねば行けない。勿論、顔を顰めるなんて以ての外。それは、教わらなかったのか?
中途半端な彼に内心苦笑を漏らしつつも、応接間に移動した。
「さて、前置きは要りません。本題を聞きましょうか?」
暗に『下らない時間を割いている余裕はない』と言い表したのだが、焦っているとでも思ったのかウェーズ卿は不敵な笑みを浮かべる。
「そうですな。・・・私から申し上げたい事は一つ。即刻レプリカ達の扱いに対し見直しを進言したいと存じます。」
「見直し?何を改めろと?」
聞き返せば、馬鹿にしたような呆れたような目で見やられた。
今まで数々の貴族に会ったが、直接此処まであからさまに表へ感情を露わにした貴族などには会った事がない。作戦か唯の馬鹿か、恐らく後者だろが微塵もそんな事を悟らせない笑顔を返す。と、一瞬たじろいだが咳払いをすると変わらない調子を保つ。
「現在、我が国でもマルクトでもレプリカの扱いは我々オリジナルと何ら変わりありません。」
言葉を句切りじろりと目を向けるウェーズ卿は、俺の言葉を待っているのか先を話そうとはしない。面倒くさいから目線だけで先を促すと、どう伝わったのか笑みを深くする。
「それは、陛下とルーク様、ナタリア様方がマルクトと協力しお決めになった。レプリカ達も自国の民だと。そうですね?」
此処は頷いておく。先が見えそうな気もするが、今言葉を発せば相手の思う壺だろう。ギルも何だかんだで喋っていないのだから。
「ですが、本当にレプリカは『民』なのでしょうか?」
「何を仰りたいので?」
ギルが睨むように問うが、その視線すら気付かず、ウェーズ卿は続ける。鈍感は命取りになると思うんだけどな・・・?
「レプリカは人と呼ぶには異質すぎると私は思うのです。人の腹から生まれず、構成される音素も異なっている。魔物と呼ぶにも人に近すぎる彼らを、国は『人』と呼ぶべきでしょうか?」
持論に余程の自信があるのか、曇りのない瞳で語るウェーズ卿は止まらない。
「それは否だ。オリジナルはオリジナルとして、レプリカはレプリカとして扱われるべきなのです。ましてや公爵家でレプリカを保有するなど考えられない。先の舞踏会での一件もレプリカが大勢のオリジナルの命を危険に晒した。己の力程度修められない危険な存在なのです。ですから・・・・・」
ウェーズ卿が口にした『保有』の言葉に、怒りが湧いてくる。何気なしに言ったのか、本人は気にも止めず危険性やら隔離の必要性やらを語っているが、最早耳には入ってこない。ギルに止められる前にと行動を起こそうと口を開いた。
「では、オリジナルなら危険はないと?己の力量も器も全てを完璧に修められていると貴方は仰るのですかウェーズ卿?」
想像よりも低く出た自分の声は、真っ直ぐに彼を捉える。隣でギルが何かを言ったがそんなの知ったこちゃない。よりにもよってローランを引き合いに出し、俺の前で貶した。それも彼女が一番囚われている言葉で、俺が一番聞きたくない台詞を口にした。覚悟はできてるんだろ?
笑みを消し少々の殺気を込め睨みつければ、この鈍感にも分かるだろう。自分が貶した相手が俺にとってどれ程の相手なのか。
「わ・・・私は・・・・」
此処に来て初めて危機感を覚えたのか、顔が幾分か青白く染まっている気がする。が、俺もギルも逃す気など微塵もない。その為に連れてきたのだから。
「レプリカが生まれる前。預言の時代でも、危険や犯罪は当然ありましたし、今現在でもレプリカの犯罪件数よりオリジナルの方が事を起こしていますよ?これは、貴方が仰った『己の力も修められない危険な存在』と云う事にはなりませんか?」
「しかし・・・それは!!!!」
「それに、『魔物とすら呼べない曖昧な存在』のお陰で助かったという事例もありますよ?」
「で・・・・ですが・・・」
反論の余地すら与えない。確かにウェーズ卿が言った事も当てはまる事にはそうだが俺の言う事も本当だから言い分的には弱い。どれもが可能性や危険性と云ったモノで実例など舞踏会の事しか上げない。これが、あの抗議書を作った張本人なのかと疑いたくなるほどの低レベルさだ。
「そうそう、貴方が上げられた舞踏会の一件。もしレプリカの方が止めて下さなければ被害はもっと酷い事になったでしょう。」
これも本当の事。
事実奴らが最期に放とうとした爆弾、事後検証をしたジェイドさんが言うには殺傷能力が極めて高く、あそこで食い止めていなければ城は免れず生き残りなど居るはずもなかっただろうと、付け加えていた。そうあの貴族達も目の前の男も、ローランに救われたのだ。
最もこの事を公表はしておらず、知らないのも仕方のない事なのだが。
「それと、もう一つ。この件に関して貴方を調べていたのですが意外な事が判明しましてね。・・・・ウェーズ卿。貴方を拉致監禁の常習犯として捕らえます。」
一気にウェーズ卿の顔が蒼白になる。信じられないと語る目は見開かれ、握る拳が端から見ても分かるほど震えていた。
「貴方が批判を唱えた頃から、レプリカの行方不明者及び不審な金の流れが報告に上がってきていました。そのどちらにも貴方の名が噂程度ですが囁かれていた事、ご存じなかったですかな?」
「そ・・・・そんな・・・馬鹿な・・・」
「バレ無いとでも思って居ましたか?見くびらないで貰いたい。」
証拠である数枚の書類を手に取り見せれば崩れ落ち膝を突いた。
「さてこれらを踏まえ、それでも貴方はレプリカが危険だと仰るのですか?」
蒼白にしながら顔を俯かせるウェーズ卿に、さっきまでの勢いはありはしない。
兵を呼ぶようギルに目配せをし、とっととこの茶番劇を終えさせた。
つづく
- Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.25 )
- 日時: 2011/07/09 12:36
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第二十三幕〜世界の蒼〜
項垂れるように連行されていくウェーズ卿を見送ると、何か言いたげなギルと目が合う。
「・・・・・何だよ。」
「・・・・いや、分かっているならいい。」
ため息混じりの呆れた声に強気で反撃出来ないのは、それが的を射てる証拠に他ならなくて。黙り込む俺を面白そうに眺めるギルにムカッと来るも言い返せるほどの言葉を俺は持っていない。
「ま、良いんじゃないか?お前らしくて。」
「どーゆー意味だよそれ。」
「そのままの意味だが?」
絶対楽しんでいるギルは、睨みつける俺をさらりとかわし、しれっと癪に障る事を言う。けど、その奥に隠れている気持ちが分からない俺たちじゃない。こんな茶番に付き合わせた礼も含めて言う事は言っておこう。
「ありがとな。」
「気にするな。お前の我が儘に付き合わされるのは慣れてるからな。」
言いながら既に歩き出しているギルには、これからの予定も伝えてある。ローランと遊びに出掛けると言った時の彼は嬉しそうな心配そうな複雑な顔をしながらも、自分も着いていくと言ってくれた。それが少し嬉しくいつもなら言い争いになりそうな場面でも、ぐっと堪える。
けど・・・・
「一言多いんだよお前は!!!!」
これぐらいは良いだろ?
ギルも分かっていたのか、怒りもせず皮肉も言わず、ただ不敵な笑みを浮かべている。
先に行くギルの歩調に合わせ、待って居るであろうローランの部屋へと急いだ。
「全く!!!ローラン、貴方は倒れたのですよ?それを分かっているのですか!!」
現在アルビオールの中では、厳しい顔をしたリルカが延々と声を張り上げ、それが狭いコックピットの壁に反響し俺とギルの頭を揺さぶっている。お小言を言われている当の本人は初めて見るのか、離陸直後から窓の外に目を奪われリルカの声も俺たちの存在も忘れたかのように広がる海と空を見つめていた。
「ローラン!!!聞いているのですか!!!」
「リルカ落ち着け。良いじゃないか何ともなかったんだろ?」
「ですが!!」
怒り心頭寸前のリルカを何とかギルが宥め、俺はそんな二人を横目にローランに近づく。
「面白いのか?」
「・・・・初めて見るんだ。」
集中していたようだから返ってこなくても可笑しくはないと思っていたのに、意外にも声は届いていたらしい。少し興奮気味のローランは、上ずった声で過ぎるモノの説明を求めながらも、目を輝かせ映る全てを焼き付けようと景色から視線すら逸らしはしない。それに少し嫉妬するも、見聞を広めようとする彼女はとても輝いていた。
ウェーズ卿の相手を早急に終わらせ、ローランが待っている部屋へと戻った俺たちを待っていたのは楽しそうに話すリルカと、何故だか頬を赤らめているローラン、それを微笑ましそうに見守る母上の三人だった。昨日から城に呼ばれていた母上が何故居るのかと困惑している俺たちを見つけた母上は意味ありげな笑みを浮かべた。曰く、ローランが倒れたとラムダスから連絡を受けた父上は、医者と共に仕事が一段落していた母上を一休みの名目で屋敷に帰したらしい。幸いにも軽い貧血と診断されたローランは遊びに行く旨を母上と医者に話し、無理しないなら という条件付で許可が下りたようだった。しかし、何故あんな意味ありげの笑顔が向けられたのか不思議がっていると、リルカがコロコロと笑いながら嬉しそうに話した。
「お兄様ったら、屋敷中に響くのではと思うほどの大声でローランの名を叫ばれるのですよ。」
愛されていますわねローラン。と優しくローランの頭を撫でるリルカに母上も同調している。その瞬間、母上の笑顔もローランが赤くなっている理由も簡単に分かり、思わず脱力してしまった。あぁ、暫くはからかわれるかな・・・・。想像し、憂鬱になるも嫌ではないと感じている事に苦笑してしまう。
「そうだわ。折角タタルに行くなら、グランコクマやケテルブルクにも行ってきなさい。」
ナイスアイディアとばかりに満足げで頷く母上は、既に荷造りを始めようとしていた。
「ちょっ!!!母上!!それは遊びではなく旅行になってしまいます!!!」
「あら?良いじゃない。折角だし一週間位遊んでこれば?」
一向に荷造りの手を休めない母上は、何だか楽しそうだ。ローラン用の服をクローゼットから引っ張り出し、次々と入れていく。
「それとも、ローランとじゃ旅行に行きたくないの?」
「えっ!!いや・・その・・・」
それを言われ、ぐっと黙ってしまう。
行きたいか と聞かれれば直ぐさま行くと答えたい。が、ローランは病み上がりだし、それに今週末には視察が予定されているはず。嬉しい提案だが行けない。
「・・・・母上。俺週末に仕事が入って居るんですよね?」
視察の事は当然母上もご存じの筈だが。
「その事なら心配ないわ。再来週に延期になったのよ。」
事も無げに大事な事をさらっと放つ母上に、笑顔付で服が詰め込まれた鞄を はい と渡されると同時に、いつ呼んだのか使用人がノエルさんを連れて入ってきた。
「お久しぶりですね皆さん。」
いつもの礼儀正しいノエルさんは、笑顔で入ってきた。
ノエルさんは、現役のアルビオール操縦者兼教官を務めている。量産が可能となったアルビオールは、定期便も出され船よりも幾分料金が高いが今では大事な交通手段として使われていた。
「急にごめんなさい。ノエル。お願い出来るかしら。」
「勿論です。タタル渓谷まで皆さんをお届けいたしますよ。」
嬉しそうに遣り取りする二人を見て、俺たちは諦めるようにそれぞれの準備に掛かった。
斯くして母上のお膳立てで、俺たち四人はアルビオールに乗り込み、六泊七日の旅行へと旅だった。目的は骨休めとなっているが、多分本音はローランの為なのだろ。安全の為とはいえバチカルに閉じ込めておくのはあまり良い事ではないし、世界を知った方が後々役立つ事もあるだろという所だと思う。それに対して俺も反対はしないから良いんだけどね。
「・・・・スコールは、迷惑だったか?」
黙り込んだ俺をローランが不安そうに見上げる。うっすらと潤んだ栗色の瞳と少し赤く染まる頬に とくん と胸が鳴り内心動揺するがそれを表には出さず、しかし、視線を逸らすように俺も外を見つめた。
「迷惑じゃないよ。俺も、最近は屋敷に籠もりっぱなしだったからな。丁度よかった。」
出来るだけ優しく答えれば、不安そうだった色が嘘のように満面の笑みに変わり、それにまた鼓動が速くなってしまう。
隠すように くしゃり と前髪を上げ、外に広がる蒼を見つめた。
つづく
- Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.26 )
- 日時: 2011/07/16 12:06
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第二十四章〜渓谷の秘密〜
「わぁ〜!!!」
タタルに降り立ち、第一声を発したリルカはこれでもかと言う位目一杯に目を見開き、広がる白の間を駆ける。
「奥まで行くな!!落ちたら怪我じゃ済まないんだぞ!!!」
嬉しそうにはしゃぎ回るリルカを追いかけるギルは、お転婆な婚約者が怪我をしないように従者のように付き添い、折角の景色を楽しむ余裕なんか無い。
「相変わらずだな。」
最早定番となっているその光景と俺の呆れたような声に、ローランがくすくすと笑い声を上げた。笑われた事にムッとし、隣のローランを見やれば、今までにない程優しそうに目を細め白の花畑と奥に佇む戦場の跡地を慈しむように見つめていた。
「ローラン?」
「時が流れれば・・・・・」
「え・・・?」
「時が流れれば変わる事は必然。変化する事を止められる程人に力はない。けれど、変わらないものも確かにある。・・・・私は、知らなかったんだ。」
突然発せられたその声は、しかし、当たり前のようにその場に馴染んだ。その言葉がローランによって云われるのが必然とでも云いたいのか、空気も光も影も音も、まるでそれら全てが彼女だとでも言うように違和感などなく溶け込む。
風が凪がれ優しくローランの長い髪を持ち上げた。流れるように広がるそれは咲き誇る白と同調し彼女を朧気にさせる。消えてしまうような感覚を覚え咄嗟に手を伸ばし抱き寄せると、不思議そうに、でも、受け止めてくれている瞳と視線がぶつかる。
「・・・どうした?いきなり。」
「・・・」
「スコール?」
急かすような勢いではなく、促すような穏やかさを持った声色が俺たちを包む。駆られていた不安が跡形もなく拭い去られ、変わりに云いようのない幸福感と切なさが胸を満たす。
突発的な行動の理由を説明出来ないで居ると、再び鈴を転がしたような笑い声が抱きしめたローランから零れる。
「いいよ。貴方が安心するなら。それ以上の理由は要らないから。」
ローランの言葉に腕の力を少し強める。
最近になってロ−ランの口調には以前の堅さが無くなってきていた。気遣う柔らかさも含むようになり、特に俺たち三人には笑って話すようになっていた。それは喜ばしい事ではあるが、ギルに対しても俺と同じように笑いかけるローランを見るたび、焦りや不安を感じなくもない。原因がはっきりしている分悩まずには済むが、あまり居心地が良いとも云えない現状な訳だ。
「・・・悪い。もう大丈夫だから。」
名残惜しいが、これ以上は我慢しきれない。ゆっくりと離せば、未だ不安そうなローランが俺を見上げている事に気が付き、思わず笑みが零れる。
「ありがとな。」
「・・・礼など要らない。」
不器用ながらも歩み寄ってくれているローランが、とても愛おしく想えたんだ。
「さてと。そろそろ行くか。」
タタル到着から約二時間。十分すぎるほど景色も楽しみ、用意しておいた弁当も食べ終えた俺たちは、次なる目的地へ向かおうと立ち上がる。日は未だ高いが移動手段が辻馬車なだけに速めに移動しておいた方が良い。少し離れたところで、一人瓦礫の山を見つめるローランを呼び止め、来るように促す。が、ローランは振り向き少し視線を投げるだけで、その場から動こうとしない。
「ローラン?どうしたんだよ。ギル達はもう行っちまったぜ。」
花を傷つけないように注意して進み、ローランの肩を掴むと今まで笑っていたのが嘘のように哀しそうに顔を歪める彼女と目が合う。
「な!!!!おい!!どうした!?」
涙こそ溢してはいないが、辛そうに揺れる瞳は空ろだ。
「ロー・・・」
「ここで。産まれたんだ。」
「産まれた?」
「私が・・・・産まれた・・・・」
零れるのを堪えているのか、俯くローランの顔が分からない。
「ここで、私が産まれた・・・・?・・・・どうして・・・・私は・・・何の為に・・・?」
脈絡なく続く言葉達は意味など分かる訳もない。ただ、それを発するほどローランの苦しみが増している気がした。
「・・・私は・・・・私は・・・・・望まれていたの・・・?どうして・・・・・・産まれた・・・・・・?」
辛そうにそれでも止めないローランからこれ以上聞きたくなんかなくて、力任せに身体を引き無理矢理に目を合わせる。
「しっかりしろ!!!お前は此処にいるだろ!!!」
「・・・私は・・・・産まれない方がよかった・・・・?」
不安を湛え、けれど、何かを期待しているようにも見えるローランに苛つく。
「未だ言ってんのか!!!お前はお前だ!!云っただろ。産まれ出でた存在を否定する事なんて誰にも出来やしない!!お前は此処にいる!!それ以上何が必要なんだよ!!!」
否定して拒絶して遠のけて。
そんなの終わったと思っていた。式典を抜け出した日に、舞踏会で踊った時に。壁なんて飛び越えられた気がしたのに。
肯定して受け入れて赦して。
やっと近づけてと思ったのに。側にいる事を赦してくれたと思ったのに。また君は勝手に境界を造ろうとする。
「・・・・それでも・・・いつか傷つける・・・・私は・・・不幸にしてしまう・・・・あの人達と同じように・・・・・それが怖いの!!!!」
揺れる瞳は俺ではない遠くを見ているようで。叫ばれた言葉は悲鳴のように木霊した。
苛つく 苛つく 苛つく 苛つく!!!!!
何を言っても信じようとしないローランに。
信じさせるだけの力がない自分に。
彼方で見ているであろう彼女の主人に。
「・・・・っんで・・・何で信じようとしない!!!自分を!!傷つける事なんてしないって!!不幸にさせないって!!!何で・・・・・」
「信じられないよ!!!!!!」
「!?」
「信じられないよ・・・・保証も確証も、何もないのに・・・・曖昧なこの世界を・・・・不安定な自分を・・・・信じる事なんて出来ないよ・・・・・」
流れるモノなんて何もないのに、泣いてるんじゃないかって思うほど哀しく響くその声は、初めての本音?
「・・・・怖いよ・・・怖くて怖くて溜まらない。」
身体を抱え座り込むその姿は、拒絶の証のようで。
マタ 君カラ離レヨウトスル
頑なに顔を背け漏れる声すら殺すように唇を噛む。
ケド 僕カラ離レルコトナンテ赦シハシナイ
だから。
「・・・だから・・・」
「・・・云ったじゃん。」
「え?」
「『俺を信じる』って。そう決めたんだろ?」
ばっ と上げられたローランの顔は驚愕の色がありありと広がっている。
「忘れたなんて云わせない。俺はすっげー嬉しかったんだ。それが嘘になるなんて事俺は赦さない。」
ぱくぱく と開かれては閉じるローランの口を否定の言葉が出てくる前に自分のそれで閉じる。
初めて触れたそれは、微かに震えていた。
狡くたって構わない。
ローランが側にいてくれるなら、何だってしてやる。
つづく
- Re: テイルズ オブ ジ アビス —誰が為の唄— ( No.27 )
- 日時: 2011/07/19 14:00
- 名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)
第二十五幕〜約束は風に〜
昼食を終え、次なる目的地へと移動を始めようとした時、懐かしい声に呼ばれた気がして振り向く。が、当然そこには人の影すらなく風に揺れるセレニアが静かに咲いている。空耳かとも思ったが、呼ぶその声は次第に大きくはっきりと聞こえるようになり、自然と呼ばれるようにスコール達から少し離れ、海に墜ちた大地を見つめる。
嘗て『栄光の大地』と呼ばれたそれは今や瓦礫と化し、草花が多い茂るその様には当時の面影はあまり感じられない。その内人の記憶も風化し、本来の意味すら薄れ失われるだろう。けれど、私は知っている。その地で何が失われ何を人は得られたのかを。『朱』を持った青年が何を願い希望を残したのかを。知っている。忘れるはずがない『記憶』。滅べばいいとさえ願った世界の大きな変革の時を、私は確かに視た。
「マスター・・・」
弱々しく呟いたその『音』は、キーン と甲高い音の後何かを私の内に呼び込む。
『ユリア!!この花は?』
『セレニアよ。』
『セレニア?』
巡る映像は産み落とされたばかりの私。白の花を両手に沢山抱え走り寄る本は優しく微笑むユリア。
『そう、セレニア。貴女と私を繋いでくれる大切な花。』
慈しむように花を見つめる彼女は、まるで母親のようで。『親』を持たない私には彼女が唯一の家族。
『この花が咲くこの場所で貴女に逢えたの。』
『ユリア?』
『産まれてきてありがとう。』
笑顔だったはずの彼女の顔が突然歪む。別れの言葉のように何度も礼を繰り返し、辛そうな顔を隠すように天へと向けた。
『この優しい風は何処まで行くのかな?』
手を広げ凪ぐ風に翳す。その姿は、祈るように神聖で不安になる危うさを持っていた。
思わず彼女の服に手を伸ばし小さく摘む。消えてしまいそうな彼女を少しでも世界に留めたくて。不安そうに見上げる私に気が付いたのか、見下ろされる顔に先程の辛そうな表情はなく、いつもの穏やかな笑みを浮かべるも、揺れる瞳は切なさを隠し切れてはいなかった。
『ローラン、約束しましょう。』
握られた白の花に手を伸ばし、優しく包み込む。
『もし私が世界に融けたら、風に乗って貴方に逢いに行くわ。』
何かを決意したように、大切そうに言葉を紡ぐ彼女。
『だから、その時は出来るだけ笑っていて。約束よローラン。』
足下に落としていた剣を拾い上げ、天に掲げる。
『私はこの世界が、生きる人達が大好きよ。だから、私は幸せだった。この世界で生きられて。』
静かに微笑む彼女は、迷いもなく唄を口ずさむ。その意味とこれから起こる出来事に思い当たり、止めようと彼女の剣に手を伸ばすが、その直前紅く揺らめく炎のようなモノに包まれた。
『これから私がする事は、もしかしたら貴女を酷く傷つけるだけなのかもしれない。』
『ユリア!!!!』
『それでも、私は信じているから。世界と未来を。』
『嫌だ!!!止めて!!!!』
『貴女にもきっと見つかるわ。・・・・・・が。』
『ユリア!!!』
包む炎の意志に逆らう事も出来ず、私の意識はそこで途切れた。
身体から離れていた意識が戻るような感覚と、肩を掴まれている触覚で私は現実に戻ってきた。
「ロー・・・」
「ここで。産まれたんだ。」
「産まれた?」
「私が・・・・産まれた・・・・」
スコールの言葉を遮り、今まで視てきた『記憶』を辿る。
「ここで、私が産まれた・・・・?・・・・どうして・・・・私は・・・何の為に・・・?」
此処で私は産まれ、そして戻された。他の誰でもないユリアの手によって、マスターの元へ。
還してしまうならどうして出会ったの?
「・・・私は・・・・私は・・・・・望まれていたの・・・?どうして・・・・・・産まれた・・・・・・?」
引き寄せられ無理矢理に合わせられた目は、怒りを含んでいた。
「しっかりしろ!!!お前は此処にいるだろ!!!」
「・・・私は・・・・産まれない方がよかった・・・・?」
少しの期待を目に宿らせスコールを見つめると、あからさまに怒りの表情を浮かべた。
「未だ言ってんのか!!!お前はお前だ!!云っただろ。産まれ出でた存在を否定する事なんて誰にも出来やしない!!お前は此処にいる!!それ以上何が必要なんだよ!!!」
不安で不安で仕方が無くて。
側にいるといってくれた貴方すら傷つけてしまう私。
「・・・・それでも・・・いつか傷つける・・・・私は・・・不幸にしてしまう・・・・あの人達と同じように・・・・・それが怖いの!!!!」
ユリアとの約束すら守れず、憎む事でしか彼女たちの繋がりを保てなくなっていた。
「・・・・っんで・・・何で信じようとしない!!!自分を!!傷つける事なんてしないって!!不幸にさせないって!!!何で・・・・・」
「信じられないよ!!!!!!」
「!?」
「信じられないよ・・・・保証も確証も、何もないのに・・・・曖昧なこの世界を・・・・不安定な自分を・・・・信じる事なんて出来ないよ・・・・・」
信じられる訳がない。
憎しみしか残さなかったこの世界を。
裏切る事しか知らないオリジナルを。
何よりも汚れた私自身を。
「・・・・怖いよ・・・怖くて怖くて溜まらない。」
信じて裏切られる事が。
信じて傷つけてしまう事が。
信じて壊してしまう事が。
貴方が離れてしまう事が。何よりもどんな事よりも恐ろしい。
「・・・だから・・・」
「・・・云ったじゃん。」
「え?」
「『俺を信じる』って。そう決めたんだろ?」
ぱっと顔を上げると、大好きな貴方が映る。
「忘れたなんて云わせない。俺はすっげー嬉しかったんだ。それが嘘になるなんて事俺は赦さない。」
何かを云いたくて。けれども、機能を忘れたかのように動く口からはどんな言葉も出ない。
震えるそれにスコールの温もりを感じ、微睡みの中目を閉じた。
つづく
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