二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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TOWRM 光り輝く少女の物語
日時: 2011/02/27 11:12
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)






どうもはじめまして。クリックして下さった方、ありがとうございます。作者の黒鳩です。

本作は、ナムコが発売しているテイルズオブザワールドというゲームに、オリジナルを追加して作成した小説です。

読まれる前に、下のご注意をお読みください。

まず、この小説はゲームの2を参考にして作ってあります。3もやりましたが、ストーリー的に2のほうがボクは好みだったので、そちらを採用しています。

次に、ゲーム内での専門用語はやってなくても分かるように解説を取り入れてやります。説明が足りねえ!と言う方は感想とかでいってください。返信致します。

キャラについてですが、基本は2のキャラが多いです。ですが、3に登場したキャラも一部登場します。ついでに設定もオリジナルです。(原作を壊さないで程度に)

何か追加でテイルズキャラを出せ!と言う方はお書きください。出せたら出します。

初心者ゆえに、感想とかめちゃめちゃ嬉しいです。酷評とかはお手柔らかに…。

最後に、更新が遅くなることが多いですが、途中で投げ出すつもりは現在ありません(多分ですけど……)


と長くなりましたが、それでもよろしければ読んで下さると嬉しいです。

それでは。









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Re: TOWRM 光り輝く少女の物語 ( No.37 )
日時: 2011/04/28 10:28
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: OSbi1pVO)

24話 化け物?違う、この人は




「な、なんだお前等!?」

「……あたし達は、アドリビトムってギルドの者だけど」

…街に入った途端、歓迎されてないのが一発で分かった。

仰々しい処刑台。

またの名を、ギロチン。

然程大きくない街の広場の中央に、ギロチンがセットされ、その周りを民衆が囲む。

近くに、ごとごとと揺れ、不自然な動きをする布の被せられた箱。

人一人ぐらいなら余裕で入る大きさだ。

「何だ、ギルドの者だと?今はこの街は立ち入り禁止だ。早々に立ち去ってもらおうか!」

若い男に脅されても、グレイシアは怯えもせずに答える。

「あれを公開処刑するの?」

「な…」

偵察として、一人で街に入ったが、3人は隠れて様子を伺っている。

「答えて。あの箱の中にいる者を、殺すの?魔物じゃないでしょ?」

「お、お前等には関係ない!」

「残念ね。あたし達、あの箱の中身に用事があるのよ」

「何だと!?まさか逃げ出したあいつの仲間——」

「邪魔」

グレイシアは容赦なく、目の前の男の腹に拳を叩き込む。

「っ」

男は悲鳴すら上げずに倒れ伏せた。

「…ふぅ」

これでハッキリした。

あの箱の中身はココナの母親だ。

多分、あの揺れ方をしているあたり、獣人化しているのだろう。

気絶した男を隠れて建物の影に運び、みんなと落ち合う。

「…って訳。急ぎましょ」

「……本当に、そうなのか?」

カイウスの疑問も当然だ。

しかし、グレイシアは言い切る。

「あの中の匂いは、獣人化しているレイモーン特有の、血生臭いエサを求めているものよ。感覚的に、間違いない。ココナ、あんたはどうする?」

アリアもカイウスも、半信半疑だが。

ココナは違った。

「…はい。あの感覚は、お母さんです」

「そう。二人とも、今回はあたし達で行くから。動けないなら見てなさい」

冷たく二人に告げ、グレイシアとココナは飛び出す。

そして箱の後ろまで、隠れながら移動する。


———殺セ!殺セ!

———悪魔ニ、鉄槌ヲ!!!

観衆からそんな声が聞こえる。

「どっちが…悪魔よ。下衆が」

グレイシアが吐き捨てる。

「お母さん…」

ココナの心配そうな声。

「大丈夫、守るわ」

「はい」

二人は、駆け出す。

グレイシアがココナを抱き上げ、箱の上に飛び上がる。

「何だ!?」

「侵入者だ!確保しろ!」

「生きて返すなぁ!!」

突如乱入した二人に、観衆の声が響く。

「本当にここはグラニデな訳…?」

グレイシアが呟く。

この世界の風景とは思えない、宗教的な感じ。

「フレイムバーストっ!!!」

ココナの魔法が炸裂する。

広場の真ん中のギロチンが、炎によって起きた爆発で、粉々に吹っ飛んだ。

「うわぁぁぁ!!」

観衆の悲鳴すら、二人には関係ない。

生憎、グレイシアはヤタもクーも連れて来ていない。

っつかあの2匹は寒いのがダメなのだ。

素早く飛び降り、布を引っぺがす。

「!」

ゴァァァァァァ————

檻。

金属製の檻の中に獣がいた。

服をきた、熊のような図体。

魔物?違う。

獣人化した、レイモーンの民。

グァァァァァ!!

と檻に太い爪を食い込ませる。

一歩下がり、睨む。

(どんだけ獣の本能に呑まれているの!?)

ここまで激しい獣人化を、初めて見た。

グレイシアは考える。

これから、どうするかを。



Re: TOWRM 光り輝く少女の物語 ( No.38 )
日時: 2011/04/30 12:43
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)




25話 食い違う正義 1



「獅子戦吼!!」

「ぐぁぁぁ!!」

グレイシアの回し蹴りが背後から襲ってきた男の顔面にのめり込むと同時、獅子の形をした闘気が大きく男を吹っ飛ばす。

「邪魔よ!」

次々と現れる男たちを一撃で沈めて行く。

結局、あれからどうこう考えている間に、武装した街の連中に襲われ、広場は乱戦状態に陥った。

広場の真ん中から黒焦げの処刑台から黒煙がもくもくと上がる。

グレイシアは素手で戦っているが、相手は草刈鎌や、剣やら斧やらを取り出して、最初から殺すつもりらしい。

「こんガキァ!!」

斧を振りまわし、グレイシアに襲い掛かる大男。

「そのガキにぶちのめされてんのは誰よ!」

グレイシアもムキになって言い返しつつ、冷静に伏せて避ける。

「なっ!」

「戦迅狼破!!」

今度は狼の形をした闘気をぶつけてブッ飛ばす。

しかも先程より強めに。

「ぎゃああ!!」

「ったく…。!?」

男が広場の街路樹にぶつかったのを確認して、すぐさま左から来た何かを避ける。

立っていた場所に弓の矢が通り過ぎる。

「ココナ!!」

「はいっ!」

狙撃兵がいる。

魔術の詠唱を持続させつつ、器用に走って攻撃を回避するココナ。

先に聞いていたが、本当に凄いとグレイシアは改めて思う。

普通魔術の詠唱は止まって精神を安定させ、それから行使するもの。

しかし彼女は移動しながら魔術の詠唱を行使させることが出来る。

そんな芸当、グレイシアだって出来ない。

本人は謙遜して、練習すれば出来ると言っていたがそんなことは無い。

「アクアテール!!」

部屋の上でグレイシアを狙撃しようとしていた男に、魔方陣が展開。

顕現した水の尾が男を弾き飛ばした。

「ココナ、次はあいつらを!!」

「了解です!!」

グレイシアの指差した方向、増援らしき連中がこちらに走ってくる。

ココナは少し精神を集中させ、すぐさま魔方陣を展開した。

「ライジングヴォルテックス!!」

何かしようとしていることに気付き、連中が立ち止まる。

それが仇となり、頭上から雷の雨が連中に降り注ぐ。

「ココナ!後ろ!」

「!?」

魔法を使っている間に、接近を許したせいで、後ろに巨大な大剣を振りかぶる女性が。

ココナは一瞬反応が遅れた。

女性が、にやりと笑う。

これで一人、葬った、と。

しかし。

がつん!

と振り下ろされた大剣は石畳を砕いた。

「あ!?」

女性は慌てて周囲に気を配る。

「こっちよ」

左右を見ている間に、ココナを救出したグレイシアが、正面で拳を構える。

「しまっ…」

「噛烈襲っ!!」

噛み砕くが如く、右手で拳を何度も叩き込む。

そして体勢が完全に崩れた所に。

「吹っ飛べぇ!!」

利き手である左手で、渾身の力で殴り飛ばす!

「がはっ!」

女性は体をくの字に折り曲げたまま背後に吹っ飛ぶ。

「やばっ…死んでないかしら」

グレイシアは一瞬心配したが。

「…まあいいわ。死んでも別に」

と頭から消す。

50名ほどいた観衆は、今やココナの魔法とグレイシアの白兵により、壊滅的なほど数を減らされていた。

増援を呼びに行く前に、ココナの魔法で足止めか、戦闘不能にされ。

彼女を狙えば、グレイシアに襲われ果てる。

初戦とは思えない程のチームワークである。

カイウスとアリアはその様子を影に隠れてそれを観察していた。

改めて、グレイシアの戦闘能力は異常だと、認識させられた。

「……ココナ、そういえば。このために護衛を雇ってるんでしょ?」

「あ、はい。旅の人なんですけど。凄い強いし、それで。多分、内容は知らないと思います」

ココナから事前から聞いていたので、警戒していたのだか。

「…それらしい奴はいた?」

「いいえ。顔を見てませんが、灰色の服を着ていて、ピンク色の髪でしたら間違えようがないです」

「…つまり、留守ね?」

「みたいですね」

なら、やる事は一つだ。

「……。今のうちに檻を破壊するわよ」

「ええ!?ま、まだお母さんは獣人化して…」

「……無理やりに解除するわ。死なない程度に叩きのめすけど、いい?」

「……」

ココナは少し考え。

答えた。

「分かりました」

「…大丈夫。アリアたちに治癒術掛けてもらうから」

「はい」

二人は、気絶した街の連中を無視して、檻に近づく。

だが、そう簡単にはいかなかった。

「光皇輪っ!!」

突如、光の輪が幾重にもなり、二人に飛来した。

「!?」

ココナは完全に不意打ちを食らった。

攻撃が直撃した。

「ココナ!」

グレイシアは何とか防御して、直撃を避けた。

その場一帯に、攻撃のせいで石畳の砂が視界を塞ぐ。

慌ててココナに駆け寄ると、ココナは気絶していた。

「わたしのいない間に、随分派手に暴れてくれたみたいだね」

聞いたことの、ある声。

「ここの人たちは、ただ魔物を駆除していただけなのに…何でこんなひどいことするの?貴女達…絶対許さない」

二度と、聞けないと思っていた声。そして、一番に会いたくて、一番に殺したくて。一番に大切で、一番に憎い相手。

「……ココナ。少し休んでて」

彼女の体を、建物に寄り掛ける。

まだ、砂埃で視界は悪い。

女の子は、答えのない問いを続ける。

「わたし、本当に頭に来たよ。何で、どうしてこんなことを…」

がたがたと、檻の揺れる音が聞こえる。

「理解できないよ。ようやく、平和の場所に来れたと思ったのに」

視界がだんだん晴れてくる。

「あんたは何も知らない。知らないくせに偉そうに言わないで」

まだ見えない女の子に、グレイシアは答える。

「知らないって何?貴女は正しいの?こんな、ひどいことをして」

「正しいわ。あんたは、偽りの真実に踊らされてるただの木偶人形よ」

突然返ってきた返答にも女の子は動じない。

「貴女は何を知ってても、わたしが騙されても……ここまで街の人たちを傷つけたことは間違ってるよ。それだけは絶対」

「……ふんっ。言葉で何とかなる程、この馬鹿共はマトモじゃないわ。言葉で分からない人間以下の畜生は、力で覚えさせるのが一番早いわ」

嘲るグレイシアの声に、返答はなかった。






Re: TOWRM 光り輝く少女の物語 ( No.39 )
日時: 2011/04/30 13:22
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)





26話 食い違う正義 2




返答が帰ってきた。

激昂した女の子の声。

「何よそれ!?貴女…今自分が何を言ったか理解してるの!?」

「……してるわ。あたしはただ事実を言ってるだけよ」

「ふざけないで!この人たちは、自分で考えて行動できる人たちよ。貴女に、そんなことを言う資格は無いわ!」

「事実を知らないだけの馬鹿にそこまで言われる筋合いはあたしにだって無いわ!あんたみたいに表面上で騙されてるお人よしに何が分かるってのよ!」

グレイシアも頭にきた。

語尾がだんだん荒くなる。

「何!?わたしがお人よしの馬鹿って事!?」

「だからそう言ってるじゃない!それとも何?もっと傷つく言葉で言った方がいいかしら!?」

かなり、砂埃が晴れるが、まだお互いは見えない。

「ムカつく!わたしの事何も知らない人にそこまで言われるのすごくムカつくよ!」

「少しは冷静に物事を見なさいカノンノ!こんなことをしている連中があんたに真実を教える訳が無いでしょ!」

「何でわたしの名前知ってるの!?調べたのね!」

「何でそこに食いつくの!」

あの時とは逆の立場————グレイシアが、彼女を説得する。

「だから、ここの連中が殺そうとしていたのは、レイモーンの民よ!あんただって知ってるでしょ!ここの連中は、そういった連中を裏で排除してきたの!」

「そんな都合のいいもの信じると思ってるの!?馬鹿にしないで!」

「真実よこのお馬鹿!」

「いちいち馬鹿って言うなぁ!!」

説得とは、微妙に違う。

子供の言い争いになっていた。

視界が、完全に晴れた。

目の前に、以前とまったく変わってない少女の姿が目に入る。

「カノンノ!あたしよ!声聞いて分かんないの!?」

視界が晴れると同時、グレイシアはいち早く走り出す。

「え、だ、誰!?」

言葉に詰まる少女———カノンノに、グレイシアは走った勢いを殺さないまま抱きついた。

「きゃあ!」

カノンノが悲鳴を上げる。

そのまま二人は、倒れこんだ。

カノンノの上に、馬乗りになった。

「あの時とは逆になったわね。カノンノ」

笑顔と怒りが混ざった複雑な笑みを浮かべるグレイシア。

「あれ?グレイシア!?何してるのこんな場所で!?」

「今更気付くなお馬鹿!」

両手を合わせ、ぽきぽきと骨を鳴らす。

「さ〜て…。さっきあんたは言ったことは、全部事実よ?」

グレイシアは真面目な顔になった。

「……話を聞いて。カノンノ」

「グレイシア…?」

カノンノが呆けた顔をした。

「……あたしは、もう間違いは起こしたくないから」

「…分かった。話を聞くから、まずはどいて」

「ええ」

カノンノの上からどき、彼女に全ての事情と事実を話す。

「……そっか。じゃああのガタガタ言ってるのは、獣人化してるから。ってことなんだね?」

「……ええ」

「うん、大体の事情は理解した。それじゃ、改めて」

「?」

カノンノは右手を差し出す。

「久し振り、シア。また逢えて嬉しいよ」

笑顔をグレイシアに向かう。

「………………」

グレイシアが呆け。

俯いた。

「………シア?」

カノンノの心配そうな声。

「…………本当、……なんだから」

「え?」

聞き取れなかった。

「あんたね………仮にも、殺しあった仲なのよ?あたしと、あんたは」

「だから?」

「は?」

キョトン、とカノンノは答える。

「だって。意見の食い違いくらい誰だってあるよ?何でそんなに気にしてるの?」

「…あんたは、気にしないの?」

「しないよ?」

「……」

言葉を失った。

彼女は、グレイシアの悩みや、後悔を一言で片付けた。

気にしない、と。

「……それとも、もうわたしは家族じゃないの?」

「んわけないわ」

グレイシアも左手を差し出し、がっちりと握手する。

「久し振りね、カノンノ。相変わらずその単純さが変わってなくて安心したわ」

「一言多いよ!」

「今は」

カノンノに再び抱きついた。

「わっ!?」

「家族に逢えた奇跡を……喜ばせて……」

グレイシアは、カノンノの胸で、静かに泣いていた。



Re: TOWRM 光り輝く少女の物語 ( No.40 )
日時: 2011/04/30 14:20
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)





26話 交わったお互いの時間




「……カノンノ。少し、手伝って欲しい」

「さっき言ったレイモーンの人を元に戻すんだね」

こくりと、グレイシアはうなづく。

先程の、涙をみせた弱々しい感じは微塵もない。

そこには、何時もの余裕と冷静さが戻っていた。

「どうするの?」

「死なない程度にぶちのめす」

「……まあ、仕方ないよね。獣の本能に呑まれてる以上、そうするしか」

カノンノは複雑そうな顔をした。

「……ただし、力加減は気をつけて。あたし達なら、簡単に殺すことだって出来る」

「うん、分かった。…そーいえば、シア。あの2匹は?」

カノンノの聞いたのはクーとヤタのこと。

過去にグレイシアと戦った彼女は、当然知っている。

「……寒さに弱いから置いてきた」

「あ、そか。え?じゃあ他の人たちは?」

「……連れは隠れてる。依頼者は、あんたに吹っ飛ばされて気絶」

檻に近づくと、近くの建物に気絶したままのココナが寄り掛かっている。

「……悪いことしちゃった」

「後で説明するわ」

しょぼんと落ち込むカノンノに、尋ねる。

「……あんた、グラニデで何してんの?」

「んー…。実は、わたしにも分かんないんだ。突然、強い力に引っ張られてここに来ちゃったから」

「…そう」

彼女が旅をしている理由、それを知っているグレイシアは深く尋ねない。

その代わりに問う。

「……何時発つ?」

「まだ無理かな。何か、この世界のマナとわたしのマナが反応してて、離れられないの」

「……オリジンのマナが?」

オリジン。カノンノの世界の名前。

それは古い言葉で、『原点』や、『始まり』を意味する。

「んー…。そうなんだよねー。シアは変な感じしない?ほら、体のマナがこう…地面に縛られる感じ」

「……無いわね。それに、あたしを構成するマナは、2割程度がこの世界のマナになってるから。純粋に、グレイシアのマナじゃないの」

自身の名前の由来。

グレイシアとは、彼女の世界の名前。

意味は、『氷原』。

「ええ!?シア、この世界の世界樹から生まれたの?」

カノンノは驚いた声を上げる。

「…そこまで驚いても仕方ないわ。あたしは、あんたと離れてから何回もディセンダーやってるもの。その度、どんどん自分の世界のマナがなくなってる」

「そんなことがあったんだ」

檻の前に立った。

中で、獰猛な唸り声をあげるココナの母。

「そいえば、依頼者の子は、レイモーンじゃないんだ?」

「……詳しくは、聞いてないから。でも、明らかに獣臭い匂いがしないから、違うと思う。ただ……違和感があるけど」

「違和感?」

「…何か、あたしに近い感じ。光は見えれば、はっきりするけど。違うマナが混じってるような…違うような…」

「まあいいね。まだ、それは」

こめかみに指を当てて考えるグレイシアを、カノンノがやめさせる。

「はじめるよ。シア、武器無しで大丈夫?」

「…平気よ」

構えを取る。

「それじゃ、行くよ!」

カノンノが言う。

ゴァァァァァァァァァ!!!!!

相手も、負けずに唸り声を張り上げる。

カノンノは怯んだが、自身の剣で、檻を盛大にぶっ壊した。




Re: TOWRM 光り輝く少女の物語 ( No.41 )
日時: 2011/04/30 15:31
名前: 黒鳩 ◆k3Y7e.TYRs (ID: Y8BZzrzX)





27話 重なり合う力



ゴルァァァァァァァ!!!!!

獣の雄叫びが夜の街に響き渡る。

それは自らの自由を喜ぶように。

「っ」

カノンノが慌てて、一歩下がる。

彼女の手には、レディアント。

その名をスノーウイングズ。

彼女のための、雪の大翼。

真っ白な天使の翼を思わせる外見とは裏腹に、内に秘める苛烈とさえ言える強大なマナをカノンノは易々と扱う。

「……やっぱりあたしも呼ぶか」

グレイシアも、自身の力を呼ぶことにした。

左手に、光の輪を作る。

それを、天に掲げる。

輪は、すぐさま広がり、空間と空間を繋ぐ。

そしてとある者を強制的に呼びつける。

「……おいで」

ぼとりと、輪の中から黒い物体が落ちてきた。

「寒っ!?」

ヤタだ。

「こ、これは一体!?私はソファーの上にいたのに!?」

ヤタはわたわたと慌てる。

「ヤタ」

グレイシアが抱き上げる。

「シア様?それに…このマナは」

ヤタは落ち着いて、目の前に背中を向ける少女に気付く。

そして驚いた。

「カノンノ様!?何故此処に!?」

「ん?その声、ヤタ?うん、久し振り!」

視線を目の前の異形に向けたまま、カノンノは明るく返事する。

「…ヤタ、すぐに戦闘準備。あのレイモーンを死なない程度にぶちのめすわ」

「了解です」

ヤタの形が一瞬で歪み、銃の形に変わる。

「あれ?シア?結局呼んだの?」

「ええ。ってカノンノ!」

「わっ!」

振り返った途端、目の前の異形の爪がカノンノを襲う。

カノンノはそれを何とか大剣の腹で流す。

「あぶな…」

「馬鹿!しっかりなさい!」

グレイシアに叱咤され、カノンノも構える。

「うん。ごめん、シア。じゃあ構えて!来るよ!」

「ええ!」

——————!!!!!!

最早、声ですらない雄叫び。

それは、戦いを始めるゴングと化す。




「光皇輪!」

「フレイムバレット!!」

カノンノの作り出す光の輪と、ヤタから撃ち出される火属性の弾丸が高速で襲い掛かる。

しかし、それは獣相手に通用するものじゃない。

滅茶苦茶な動きで簡単に回避された。

「!」

漆黒の影と化した者は、その鋭利な爪でグレイシアの首を跳ね飛ばすため、襲い掛かる。

「舐めんじゃないわよ!」

両手を交差させ、爪を防御。

かなり強い力で蹴飛ばす。

ゴァァァ!!

悲鳴じみた声を上げ撤退するが、大したダメージは無さそうだ。

グレイシアとカノンノは背中を合わせ、広場の中心に立つ。

また、相手は黒い風となった。

常に高速で動き、こちらをかく乱してくる。

「まいったわね」

「そうだね」

二人が全力を出せば、一瞬であの風を塵にできる。

「少し強い攻撃しても、ビクともしないわ。流石はレイモーン」

「でも、あんなに頑丈なのはおかしいよ」

確かに、あの頑丈さはありえない。

二人とも、レイモーンとは何回か戦闘経験がある。

でも、ここまで粘り、鋭利な攻撃、風のような俊敏性はいくらレイモーンでもありえない。

「何なのあの人…」

「さぁ…」

尚も黒い風は周りを旋回し、攻撃のチャンスを窺っている。

「……仕方ない。一か八か、やってみるわ」

「シア?何か策があるの?」

その作戦を、手短にカノンノに話す。

「……失敗したら、あんたが大怪我するかもしんないけどね」

「そんなのありえないよ。だってシアがいるもん」

「……ありがと。ヤタ」

「は」

返事を聞くと同時、カノンノは走り出した。

かなり危険だが、母の最期の理性に掛ける。

そう、気絶しているココナに攻撃するふりをするのだ。

案の定、反応した。

しかも、今までとは桁違い。

凄まじい速さで、カノンノの方向を目指して移動していった。

「ヤタ。あの人の軌道を、計算して」

「はい」

「出来るだけ、早く。そうしないと、カノンノが危なくなる」

「分かってます」

「……ついでに、動きが止まったら、あたしのマナを直接ぶっ放すわ」

「はい!?」

ヤタが驚きの声を上げる。

そんなことは一言も言ってない。

「いいから!」

「…了解」

ヤタは黙る。

何か考えがあるだと、ヤタは自分の主を信じる。

向こう側で、金属のぶつかり合う音が聞こえた。

「!」

それをいち早く気付き、地面を力一杯蹴る。

その場から、グレイシアの姿が消えた。

「…お…も…い…」

一方カノンノは、一撃を真正面から受け止めていた。

すまさじく重い一撃。

両手を使って防いでいるのに、腕が痺れ始めた。

「……私ノ……娘ニ…は…」

驚いたことに、彼女は言葉を発していた。

「あの、わたし、この人に危害を加える気は…」

「ウルサイィィィ!!!」

防いでいた剣ごと、持ち上げられた。

「きゃあ!!」

軽々と持ち上がるカノンノの体。

「死ネぃぃぃぃぃ!!」

「————目ぇ覚ませって」

無防備なカノンノに止めを刺させる刹那。

グレイシアは到着と一緒に銃口を向ける。

「言ってんのよ!!!」

躊躇いなく、引き金を引いた。

「メルトバレット!!」

自身のマナを直接ぶつけた。



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