二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 丸の内サディスティック
- 日時: 2011/06/11 09:57
- 名前: しょしゃーん (ID: 42M2RXjr)
どうも、しょしゃーんです。
椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」を聞いて感動して勝手に小説を書いてしまいました。
ちなみに主人公は男です。
おそまつながら、どうぞ。
- Re: 丸の内サディスティック ( No.10 )
- 日時: 2011/06/15 16:58
- 名前: しょしゃーん (ID: 42M2RXjr)
「はいよ、朝飯」
明美さんが僕に出してくれた昼食は、スクランブルエッグだった。いい香りが鼻のあたりを漂う。
「いただきます・・・」
「元気ないねぇ。男の子なんだからもっとはきはきしなさいよ」
「は、はぁ・・・」
苦笑いを返してスクランブルエッグを口にほおばった。とてもおいしかった。東京に来てからは、手料理など食べたことがなく、いつもコンビニの弁当や、インスタント食品ばかりだったから、こういう手料理には感動すら覚えた。
「どうだい?」
「お、おいしいです、すごく・・・」
すると、明美さんが娘同様、はじける笑顔でうなずいた。
そして、僕が朝食を食べ終えて洗い物を終えたころ、昨日の男———葛原宗司が店にやってきた。
「おーっす。お、やってるなぁ、真人。さまになってるぜ?」
この人の勝手な提案により、僕はここの一家にお邪魔になっているのによく言う。
「あの子の周りには、昨日結界を張っておいたから、帰ってきたら悪魔除去だな」
「・・・僕みたいに、自動で悪魔を返すことはできないのか?」
「あの術を使えるのは、クレナイだけだ。だから、学校から帰ってくるときには、結界の周り中に悪魔がついているだろうぜ」
「普通の、一般人には害はないのか?」
「ないさ。悪魔が狙ているのはカルマだけだからな」
そっか、と相槌を打った後に気付く。
ここには宮野の母親の、明美さんがいるじゃないか。
「ちょ・・・き、聞かれたらまずいんじゃないの?」
僕はこそこそと、葛原に耳打ちするが、葛原は何も気にせず話をしだした。
「この人は、もう知っている。知らなかったら俺が怪しまれるところだろ?」
葛原がそういうと、明美さんは優しく微笑んでうなずいた。
「知っているさ。あの子のことはね。あの子がカルマだってわかったのは、ちょうどあの子の父親が死んだときさ。あたしには見えないけど、悪魔があの子の周りにうろちょろいるんだろ?」
それから、僕を見た。その瞳は、真剣そのものだった。何かを訴えるかのように、強いまなざしで。
「あの子を助けられるのは、真人ちゃんしかいないんだろ?あの子のこと、頼むよ。あたしには見えないけれど、あんたは見えるんだろ。ちゃんと守っておくれよ」
そうか。
この人は、悪魔が見えないんだ。だからどうすることもできない。
すごくすごく、切ないんだろうな。
「————はい・・・」
- Re: 丸の内サディスティック ( No.11 )
- 日時: 2011/06/15 17:50
- 名前: しょしゃーん (ID: 42M2RXjr)
「悪魔っていうのは、人間の心に忍び込んで、悪くなれば殺してしまう危険な奴らだ」
一通り、店の仕事が終わって葛原と街を歩いていた。
「ぽっかりと空いた心・・・。悲しみや憎悪のある心を狙って、奴らは忍び込んでくる。そんな奴らを魔界へと返すのが、俺たちエクソシストの役目だ」
「俺達っていうことは、ほかにも誰かいるの?」
「いるさ。まさか、俺だけだと思ったか?自営業じゃあるまいし」
ふぅん、と一応相槌を打っておく。いるならいるで、説明や紹介をしてくれてもいいじゃないか、と思ったからだ。
「ここの地区を担当しているのは、確か七番隊隊長だったな」
「た、隊長?」
僕のイメージだが、隊長という言葉を聞くと、自衛隊とかのキッチキチの軍服を着た厳格そうな人を思い浮かべてしまう。
「カルマがこの地区にいるからな。隊長が直々に担当している。個々の悪魔は、上級悪魔が多いんだよ」
「上級?中級とかもいるのか?」
「そうだ。中級、下級もある。3段階に分かれている。お前が会ったのはまだ下級だけだったな。中級になると、物理攻撃をしてくる。上級はもう、怪物だ」
「悪魔って時点で怪物だ」
「そういうレベルじゃない。破壊力がすさまじい。きっと、隊長格でも束になってかからないと、倒せないぜ」
そうなこと言ったら終わりじゃないか、と思う。だったらだれがその悪魔を倒すんだ?
「シリウスは、そういうやつらと手を組む。契約ってやつだ。より、強い悪魔と契約をして、悪魔の力を借りて自分を強くする」
「どうして、悪魔なんかと・・・?」
一瞬、葛原が言い淀んだような気がした。
「強くなりたい、だそうだ。強くなってどうするのかねぇ?その先に何があるっていうんだ?俺には、まったく理解できないよ。今も、昔も」
「・・・え・・・?」
今も・・・昔も・・・?
さらに質問を加えようと思ったが、やめた。葛原の表情が、いつもとは違う。重く、何かを思いつめたような表情だった。いつもへらへらしているイメージが強かったけれど、こういう表情をされて、気まずい雰囲気になってしまった。
「え・・・と・・・葛原は、この地区の担当のエクソシストじゃないのか?」
この場の雰囲気を変えようと、話をそらす。
「元、な。今はカルマの監視役だから。上の申しつけだから、逆らうわけにもいかんし」
「上?やっぱり、そういう隊長をまとめる団体とかあるのか?」
「ああ、話していなかったか。聖騎士団っていってな。ダッサイ名前だろ?」
「え、あ、ああ、まあ・・・」
何とも言えないネーミングセンスに、肯定するしかなかった。
「でも、僕はぴったりだと思う。」
「聖騎士団、ねぇ。聖と相反することを普通にやってのける集団が、名乗っていい名前じゃないさ」
「え?」
「気にするな、独り言だって。それより、会いに行ってみるか?」
「会いに・・・?誰に?」
「そりゃあ、もちろん七番隊隊長様に」
葛原が、人差し指を向けてきた。
- Re: 丸の内サディスティック ( No.12 )
- 日時: 2011/06/15 18:16
- 名前: しょしゃーん (ID: 42M2RXjr)
「そ、その、隊長って、どんな人なの?」
僕は今、葛原に連れられて、聖騎士団の七番隊隊長のもとに向かっている。はっきり言って、僕なんかが会いに行っても、怒られないだろうか、心配だ。
「ああ、ちょっとキッツイ性格してるけど、根はいいやつだから。なんっつーか、まじめすぎんだな」
軽く言ってくれるが、それだけの情報じゃ、僕の不安はぬぐえない。
と、その時。
「あ・・・」
悪魔の姿があった。ものすごい勢いで横を通り過ぎて行った。
「葛原っ、あ、あれ・・・」
「おお、悪魔だな」
「おおって・・・」
そして次の瞬間、次は別のものがすごい勢いで通り過ぎて行った。
かすかに認識することができたのは、金色の髪だけ。
目で追った時には、すでにその姿をあらわにしていた。
あの、悪魔を、巨大な三叉槍のような武器で、仕留めていた。それを仕留めたのは、なんと女性だった。
「おー、カティア。久々だな」
金髪美女は、可憐に振り向くと不愛想にこちらを睨みつけた。
「久々じゃない。先週あったばかりだろう」
「あー、そうだったな。ま、とりあえず、ご苦労さん」
カティアと呼ばれた金髪美女は、悪魔から巨大な三叉槍を引き抜いた。すると、悪魔が灰のように消えて行った。
違和感を感じる。これだけすごい武器を振り回している彼女に誰一人見向きもしないことに。そればかりか
「・・・えっ」
行きかう人が、彼女の体をすり抜けていく。
「い、今、す、すり抜けて・・・」
「ああ、ダイアグラムって言って、発動すると姿かたちが俺らみたいな悪魔の見える奴ら以外には無になる術だ」
すると、カティアが鋭い目つきでこちらを睨んできた。
「クズ。誰だそいつは」
クズ、とは葛原のことだろう。ひどいニックネームだ、と心の中でつぶやく。
「成瀬真人ってやつ。原因はわからないが、クレナイの保護術がこいつに移転していた」
「何・・・?」
「こっちのことを今、いろいろと教えていたところだ。真人、こいつはカティア・レグナス。七番隊の隊長だ」
「え・・・この人が・・・?」
と、もう一度彼女を見たら、彼女は武器をしまい、僕らに背を向けた。
「どこへ行くつもりだ?」
「決まっているだろう」
彼女は信じられない言葉を発した。
「カルマを殺しに行く」
- Re: 丸の内サディスティック ( No.13 )
- 日時: 2011/06/15 21:42
- 名前: しょしゃーん (ID: 42M2RXjr)
カルマ・・・宮野を?
「ちょ、ちょっと、待ってください!」
僕はそう叫びながら、カティアの腕をつかむ。
「触るな!」
カティアにそう鋭く言われてびくっと怖気づいてしまう。
「な・・・なんで彼女を殺す必要があるんですか・・・?」
「生かす必要がないからだ。カルマは悪魔を呼び寄せる。エクソシストにとっては敵なんだ」
敵?宮野が?
納得できない。宮野だって好きでカルマになったんじゃない。それをこちらの都合で殺すっていうのが納得できない。
彼女が—————何をしたっていうんだ。
「納得できません」
カティアが軽蔑したのは、聞かずとも分かった。
「貴様の意見など知らん」
「宮野が・・・エクソシストに何をしたっていうんです?」
「何もせずとも、あいつはカルマだ。理由はそれだけで十分だ」
「本当にそうですか?」
彼女の眉が、ぴく、と動いた。
「何・・・?」
「カティア、上からもカルマを殺せなんて命令は来ていないだろ。勝手な行動は身を滅ぼす。やめとけ」
葛原をキッと睨み返したが、戦意を失ったかのようにため息をついた。
「・・・昨日から悪魔の様子に異変があったのは気づいていた。・・・お前はこのことを上に連絡したのか?」
「いや、まだだ。もう少し待ったもいいだろ?」
すると、いきなり、カティアは武器を出して葛原の喉元にあてる。あまりの速さに、僕は何もできなかった。
「はぐらかすな。お前はただ—————本部に行くのが嫌なだけだろうが」
「・・・・・」
葛原の表情は無表情だった。ただ、それが何を意味するのかは僕にはわからない。
「いずれは行かなくてはならない。避けては通れぬ道だ。これは、忠告だ。上に勘づかれるまえに、報告するんだな」
そう言って、彼女は武器を下ろした。その慣れた動きに僕は魅入ってしまう。
- Re: 丸の内サディスティック ( No.14 )
- 日時: 2011/06/15 22:00
- 名前: しょしゃーん (ID: 42M2RXjr)
家に帰るまで、葛原は何も話してはくれなかった。とても気まずい雰囲気だった。
帰ってから、数時間後に宮野は学校から帰ってきた。葛原の言うとおり、悪魔が結界の周りに5体ほどまとわりついていた。
宮野は悪魔が見えない。だから、ぼくは彼女に気付かれないように、悪魔を除去していった。どの悪魔も下級だったが、一度に5体も除去したので、どっと疲れて倒れこんでしまった。
子供のころから友達がいなかったわけじゃない。
小学生の時までは、まだ友達がいたんだ。僕は、クラスの中じゃ明るいほうだったし、笑いの中心になった時もあった。
中学生になってから、僕の周りには友達が一人もいなくなった。
原因はわかっている。
弟の死だ。
僕には、3歳年下の弟がいた。
成瀬一月。(いつき)僕が小学六年生の時に、死んだ。
原因はわからない。
家に帰ってきたら、一月は口や目から大量の血を噴き出して死んでいた。
分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。分からない。
分かりたくない。
一月が死んでいるなんて、分かりたくない。
なんで————————。
それから、僕は心を閉ざした。閉ざしたんだろう。
最初のうちは、無理して笑顔を作った。でも、無理して笑顔を作るたびに、弟との思い出が脳裏によみがえって、かえって辛くなった。
つらくて、かなしくて、くやしくて、僕は何もできなかった。
切り替えることができなかった。
弟の死を受け入れることができなかった。
きっと、今も弟の死を受けいることができていないんだ。
だから僕は、今も—————
「・・・真人・・・?」
目を覚ますと、目の前に宮野の顔があった。
気づくと、頬に濡れた感触があって、手で拭ってみる。
「どうして・・・泣いていたの?」
ああ、そうか。これは涙だったんだ。
「・・・なんでだろうね」
僕は、そう言うことしかできなかった。
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