二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

1人と999人の戦争
日時: 2012/06/06 20:23
名前: のー (ID: vOtDHV5I)







大切な者を護る為の力





†        †
木々が葉を芽吹かせ、暖かい日差しが照らし出す。
一人の老婆が木陰に据わり、その息吹を慈しむように眺めていた。
耳を澄ませていた。

脈々と芽生える草木。嬉しそうに跳ね回る子供達。
流れる川のせせらぎ。鳥の声。

嬉しいのだろう。老婆は微笑む。穏やかに、穏やかに微笑む。
その姿に近づく者が一人。真剣な、真剣な顔をして。
一歩、そして一歩歩く度、カチャン、カチャンと金属音を鳴らす。
木陰にたどり着くと、その者が老婆に尋ねる。
「良き語りべがこちらにいらっしゃる。そう聞いたのですが・・・お婆さん、貴女ではありませんか?」
老婆がその者に顔を向け、口を開いた。
「こんな老婆の下に…一体何の御用でしょうか?若い騎士様。」
騎士は、見るからに若そうな顔立ちをしていた。
しかし、その表情は暗い。歳相応の活力が感じられない。
「1人と999人の戦争・・・その真相を伺いにきました。ご存知ありませんでしょうか?」
騎士は、最後の希望とでも言わんばかりに、慎重に、慎重に訪ねた。
「・・・1人と999人の戦争…レレンタスの町の物語ですね。」
「ご存知ですかっ!」
若い騎士は、驚いたように声を高くする。
「えぇ…あれは酷く悲しい、残酷な戦争でした。」
老婆は、目を伏せる。
「…語って…いただけませんか?」
騎士は、真剣に、真剣に老婆を見据えていた。
「どうして、そこまで求めるのですか?」
「それは・・・」
騎士は、必死に・・・必死に歯を食いしばり、言葉を連ねた。
「大切な者を、護りたいからです。」
その真意でも悟ったのだろう。老婆は言の葉を紡ぎ始めた。
「・・・その思いは、1人の騎士の思いに似ています・・・語りましょう。1人と999人の戦争を。」
ゆっくりと、老婆は口を開き始める。
「語りましょう。その戦争の歴史を。呪われた地の悲しい出来事を。」
騎士は、老婆の横に腰を落とし、その話に耳を傾けていた。熱心に。一言も聞き漏らさぬように。
「レレンタスの町に戦争が起こりました。奪い合う刃、狂った欲望が、人を狂わせたのです…そこを通った偉大な魔導師が、
光の加護をもって、神を出現させました。」
「偉大な…魔導師…?…神?」
「…神は敵を殲滅しました…しかし、呪われた戦争は終結しましたが、レレンタスの町には何も残っては居なかったのです。」
「何も…残っていなかった・・・?」
「えぇ…そこで神は、生贄を捧げる事と引き換えに、町の繁栄を約束しました。その、魔の神奉り立てる町の門の端、歌姫と騎士の少年が二人暮らしていたのです。」
「歌姫と…騎士?」
「…そうです。幼き頃、共に孤独を持ち合った二人の子。一人は、先の戦争で両親を無くした。そしてもう一人は、捨てられた孤児だったのです。」
「どちらも…辛い…ですね。」
「…そうでしょうね。二人は、同じ痛みを持っていたのです。導かれるように、すぐさま仲睦まじくなりました。」
「…少しだけ・・・分かるような気がします…。」
騎士は、再び歯を食いしばり、目を伏せる。
「二人の仲の良さは、町中で知らぬものは居ない程でした。」
「それほどに…仲が良かったのですね・・・」
コクン−と、老婆は静かに、しっかりと頷く。
「やがて、二人は共に暮らし始めました。両親を失った子は騎士となり、孤児だった子は歌姫と言われ多くのものに親しまれました・・・その時までは。」
「…その…時?まさか、どちらかが生贄だったということですか?」
何かを決意するかのように、ゆっくりと、呼吸する老婆。
「歌姫は、神の姫…すなわち、生贄に選ばれた者だったのです。捨てられた孤児だったからなのかも、しれません。」
目を瞑り、苦い思いを吐くように老婆は紡ぐ。
「少年は、意を決して…魔神に挑みました。愛する者一人を護るために。」

Page:1



1人と999人の戦争 ( No.1 )
日時: 2012/06/06 21:10
名前: のー (ID: vOtDHV5I)

今日こそは…今日こそは渡すんだ。手の内に光る指輪をみて、僕の胸は高鳴っていた。
いつもよりちょっと足早な気がするけど…多分気のせいじゃないけれど、とにかく受け取ってほしい。ラプランカが喜んでくれると、嬉しい。
それだけで、僕は満たされる。それだけで構わないんだ。だから…
「神よ、今しばらく、この平穏な日々を彼女に与えてくれ。」
生贄だというのは知っている。分かってる。町の人たちの為に、死ぬ事。神に捧げられる事。
せめてその時までは、彼女に幸せであってほしい…ん、この歌は…
「この歌声は…ラプランカ。」
家の前で、また子供達に…変わらないな。本当に。
「あ、お帰りなさい。ほらほら、皆、騎士様が帰って着たよ。そろそろ帰る時間だね。」
「騎士が帰って着たから帰る時間って…」
間違ってはいないけれど。もう夕暮れだし。
「えー、やだよー!もっとおねーちゃんの歌聞きたいー!」
「わたしもー!」
「ぼくもぉー!」
「むむ、皆ー我侭は良くないよー!」
「だってー!おねーちゃんの詩、家のかーちゃんよりもキレーなんだもん!」
「すっごくきれいなんだもんっ!」
「もういっかい、もういっかいだけでいいからっ!そしたらかえるから!」
全く…皆、ラプランカのことが好きなんだな。もちろん、僕もだけれど。
「ラプランカ、僕も聞きたいな。」
「むー…しょうがないなぁ。もう一曲だけだよ?」
「やぁったぁ!」
「ラプランカおねーちゃん大好きっ!」
微笑ましいな。なんだか僕も嬉しい。楽しい。
「ほら、静かにね。ラプランカが歌い始めるよ。」
ラプランカが僕を見て、微笑む。それが嬉しくて、嬉しくて僕も思わず、微笑ってしまう。
ゆっくりと、静かに、ラプランカの歌声が響き始めた。
夕焼けに染まる空に響き渡る。風の音に乗って心に染み渡る。
穏やかで…優しい詩…。
「…ふぅ。おしまいっ!」
「えー!みじかいよ!」
「一曲は一曲。皆のお母さんやお父さんを心配させるわけにもいかないからね。また今度。」
「やくそくだよー!」
「えぇ。約束する。」
「わかった。じゃあかえる!ばいばーい!」
「気をつけてねー!っと。おかえりなさい。それとおめでとう。第13騎士団の団長に任命されたんだね。町中で噂になってたよ。最年少の団長が任命されたって。」
「ただいま。ありがとう。ラプランカ。」
ラプランカは、いつものように僕を出迎えてくれる。暖かい声で。お帰りなさい。と。それが嬉しくて、たまらない。いつもの事なのに。
「もう団長さんなんだね。」
「まだまだ未熟だと思うんだけどね…」
そうだ。まだまだ未熟。これで満足しちゃいけない。
「練習とはいえ、騎士団団長を倒した人がそんなことをいうのかな?」
「あれは…偶然だよ。」
「歌姫としては、とっても心強いよ。」
歌姫か。同時に、神の姫でもある…。
「そんなこと顔しないで。私は、貴方だから心強いの。他の人じゃあダメだね。」
「ラプランカ…」
そうだ。決まってる。後はこれを渡すだけなんだ。決めたじゃないか。団長に任命されたら渡すって。
「ちょっと散歩に出よう。ラプランカ。」
「今から…?」
「そう、今から。」
夕暮れに沈む町並みを、二人で歩く。懐かしい感じがする。
「ねぇ、覚えてる?初めてあったときのこと」
「もちろん。両親が戦争で死んで、墓に前に立つただ一人の僕に、君が声をかけてくれた。」
そう、それが始めての出会いだった。
「そうね。捨てられた子犬みたいな目をしていたもの。放って置けないじゃない?」
つまり、僕は子犬みたいで可哀想だったってことだね。
「も…もうちょっと言い方っていうものがあるんじゃないのかな?」
「本当の事だもの。それに…」
ラプランカも、一人だった。
「君も、一人で寂しそうだった。」
「もうっ。」
「仕返しだよ。」
「歌姫を怒らせたなー」
「ゴメンゴメン。」
コツンーと、額がくっつく。
どちらともなく、僕等は笑い出していた。
「あ、あの木、懐かしいね。」
「そうだね。よく二人で遊んでたっけ。」
「うん。いっぱいお話もした。」
「そうだね。」
うん…ここだね。やっぱり。
「ラプランカ…」
「何?」
「僕と…結婚してほしい。君を幸せにしたい。」
指輪を…これは僕なりのケジメだ。
「ありがとう。でも…ごめんなさい。」
「ラプランカ…」
「貴方には、もっと相応しい人が見つかるよ。私は、生贄に選ばれた人間なんだもの。いつまでこうしていられるのかも分からない。」
彼女は、悲しそうな顔でそう言った。
「…それでも、持っていてほしいんだ。僕は、君を愛しているから。」
コクン…と頷いて、彼女は言の葉を紡ぐ…
「時の歯車止めて、永久に二人過ごせたら…」
ラプランカが呟く。透き通った詩を。キレイで、悲しい詩を。
…届かぬ願いは…神の姫…生贄だからなのだろうか。
「なんてね。」
すぐに繕い笑顔を出す。嘘だと分かってるんだ。分かりきっているんだ。でも…何もできない。
「さ、戻ってご飯にしよっ!お腹空いちゃった!」
「そ…そうだね。」
「そんな悲しい顔しないで。その日が来るまで、私は貴方と一緒にいる。離れたりなんかしないから。」
しっかりと握った手が、暖かくて、優しい。
その温もりを、僕は失いたくなかった。でも、決められたことだった。何もできない自分が…辛い。
僕は、ラプランカを護る為に騎士になったのに。
ラプランカを護りたい。その為に強くなりたいと…そう願ったのに。
何の為の力なんだ。分からない…分からない。

1人と999人の戦争 ( No.2 )
日時: 2012/06/06 21:09
名前: のー (ID: vOtDHV5I)

もう朝なんだろう。
こんなにも暗いけど…曇っているからか。
…この胸騒ぎはなんだろう?
なんでこんなに不安なんだ?
分からない…なんで…どうして?
とりあえず起きよう。
体を動かしていれば、不安も紛れるかもしれな…なんだ…この地を割くような・・・音…?
まさか…まさか…?
何故…どうして…?
「…ラプランカ?」
「起きてるよ。おはよう。もしかしたら…その日なのかもしれないね。」
「ラプランカ…」
有無を言わさぬうちに、僕は彼女の手を握っていた。
カチャカチャと外でせわしない音する。耳障りだ。
「失礼致します。13騎士団団長…神の姫をお預かりに参りました。」
何が、失礼致しますだ。何が、神の姫をお預かりに参りました…だ。
「分かってる…けど、もう少しだけ…もう少しだけでいいんだ!待ってくれ!!」
「事は、急を要しますので。」
くそっ…こいつ、ふざけるな…殴らないと気がすまないっ!
「…分かりました。今行きます。」
なっ・・・
「ラプランカ!」
ダメだ。行かないでくれ!行かないでくれ!!
「…これが、私の運命だから…」
温もりが離れる…連れて行かれる…ラプランカがっ…
「団長…ご無礼を」
そう言った直後、僕とラプランカの間に剣が交差した。カチャンと、鍵をかけるような音を立てて。
「…何のまねだ、剣をしまえ。」
「なりません。町長直々の命です。万が一でも、団長が狼藉を働かぬようにと…」
ゆっくりと、ゆっくりとラプランカが離れていく…?
何故…なんで…どうして…
「ラプランカ…?ラプランカ!ラプランカー!!!」
「団長…すみません。」
くそ…なんなんだ…なんなんだよ…
「ラプランカーーーーーーーーーーー!!!」
ゆっくりと、彼女は振り向いてくれた。けれど、そこにあったのはいつものような暖かい笑顔ではなく、酷く悲しそうな笑顔で…
「ありがとう…ごめんね。」
彼女が歩き続ける。連れて行かれる。その姿をただただ見つめる。何も考えられない。何も考えたくない。
「団長、失礼致します。くれぐれも、粗相無きよう。町の…999人の幸せの為に。」
コイツが何を言ってるのか分からない。
…涙が…途切れない。当たり前だ。途切れるはずもない。
悲しいんだ。苦しいんだ。辛いんだ。
僕は、また一人になってしまった。大切なものを失ってしまった。
もう…もう…生きている意味なんか無い。それだけ大切なんだ。
愛しているんだ。ラプランカのことをっ…なのに、それなのにっ!僕は愛する人1人すらも護れない!
なぜラプランカが生贄なんだ!僕にとってかけがえのない大切な人なのに…
何が騎士だっ!大切な人一人も護れずに!!
世の中にはこんなにたくさんの人がいるのに何故、僕独りが罪で苦しいのか…こんなにも絶望するのか……
ふざけるな…ふざけるなよ…
神よっ!何故ラプランカを生贄に選んだ!何故僕の大切なものを奪うんだ!!
ラプランカ…君も望んでいるのか…?犠牲になることを…
999人の為に死ぬ事を望んでいるのか!!
止めてくれ…止めてほしい…
「ラプランカ…ラプランカ…ラプランカっ……」
墓の前で、声をかけてくれた
何度も遊んだ
何度も笑った
何度もケンカした
何度も…何度もっ!
私、大きくなったらあなたのお嫁さんになるんだって…
「…あれは、嘘だったのかい…ラプランカ…」
こんなのって…ないだろ…
何が…歌姫だ…
何が…神の姫だ…
運命なんて…
「何がっ…時の…歯車止めて…永久…に…二人……過ごせたら…だっ」
何が…何が…
……待て…時の歯車止めて、永久に二人過ごせたら……?
ラプランカも…望んでいる?
生きることを…僕と…一緒にいることを?
なんて…
「なんて馬鹿だったんだろう…僕は…」
そうだ…ラプランカは生きることを望んでいる。
でも…間に合うだろうか…
「違うだろ!!」
そうだ、違うっ!まだ間に合う!今行く!ラプランカ!!
剣を手に取り、僕は掛けた。町中を走り中央広場へと疾走する。
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ!
儀式は始まっているのか、声が大きくなってる。
「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
煩い…

「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
煩い煩い煩い煩い…

「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い…

「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」
「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い煩い…
「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ…
「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ…!

「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」
一人の人も救えずして何が騎士だ!何が力だ!何が富だ!
「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
一人の者を幸せにできず見殺しにして何が力だ!何が富だ!

「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ…!!!!!!!

「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」

「神よ!共鳴せよ!」
静まり…返った…?

『生贄をよこせ!飢えた肉体で貪り喰らう』
何だ…このどす黒い声は…これが…魔神の声!?

「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」
「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」
「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」
「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」
させるものか…ラプランカの自由を開放したい…

『生贄をよこせ!飢えた肉体で貪り喰らう』
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
お願いだ、生きていてくれ、愛しい人よ!

「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」
「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」
「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」
「はあぁっっつはぁ、はあぁっっはああ、はあぁっっつはあああぁ、ようやく…はぁ…はぁ…ラプランカ!」
台座…階段の先にラプランカがいる。生きてる。その横の化物は…あれが…魔神っ!
姫の…ラプランカの命を奪おうとするものっ!僕の大切な者を殺そうとする者っ!!
許せない…許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!!
「そんなことさせてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!行くぞ!!鋼鉄の魔神!!!!」
既に体は駆け出していた。剣を引き抜き、魔神を殺す為に。ラプランカを救う為に。

1人と999人の戦争 ( No.3 )
日時: 2012/06/06 21:08
名前: のー (ID: vOtDHV5I)

カチャン、カチャンと鎧を鳴らす騎士に囲まれ、私は儀式の場所へ向かう。
私一人の命で、この町の繁栄が約束される。この町の人々が幸せになる。
きっと、あの人も幸せになる。
その為に、私は生贄となる。
神の…姫。
神の…災いの神の生贄。
なんでだろ。死ぬっていうのに、何でこんなに落ち着いているのかな。私。
やり残した事、いっぱいあるのに。
あぁ、朝ごはんも作ってこなかったな。大丈夫かな?
「…辛い役目を…させます。歌姫。いえ、ラプランカ様。」
「いえ。いいんです。この町の人達が幸せになれるなら。私一人の命くらい。」
私一人ので済むのなら、安いんじゃないかな。
「貴女は、この町で多くの者に尽くしてくれた。それなのに…残念で…仕方がない。」
「…そう言ってもらえて、とても嬉しいです。」
「儀式の後…我々にできる事、何かはないでしょうか?」
「ならば、是非一つお願いしたい事が。」
「何なりと。」
私の願いなんて、最初から決まってる。
「あの人を…13騎士団の団長を。よろしくお願い致しますね。」
「その願い、引き受けた。約束する。」
いつの間に。気づかなかった。落ち着いているって思ったけど、動揺してるのかな。私ー…
「騎士団長様。」
「…もう、10数年になるのか。妻と娘を失って、更には、娘同然のように接してきたお前を、町の為に捧げなければならなとは・・・」
私も、父のようだと。実の父のように。優しかった。嬉しかった。
「そんなこと言わないで。もう1人、残る人が居るじゃない。息子同然に接したあの人がね。」
独りと、独り。私達に、父のように接してくれた。
「そうだな…そうかもしれん。世界に名だたる者へ育てて見せよう。立派な騎士に育てて見せよう!」
そんな事を望んでいるわけじゃ…ないんだけど…。
「とにかく、お願いします。頼みましたからね。破ったら、化けて出てやるんだから!」
「それは…怖いな。」
「うん、だから、約束。破らないでね。」
「…誓おう。父として。騎士団を束ねる者として。」
うん。嬉しい。
「…ありがとう。」
「騎士団長…そろそろ」
「あぁ、すまない。必ず…見取るからな。ラプランカ。お前の犠牲を、決して無駄にはしない。」
「うん。ありがとう。お父さん。」
辛そうだったな。辛いのかな。あの人も、そうだった。何度も、何度も私を呼んでた。
「姫…あちらです。」
「あぁ、ごめんなさい。」
台座…か。広場に台座なんて、不釣合いだよね。それに…人もいっぱい。
「周囲の町の者が、儀式の邪魔をするかもしれません。その為の騎士です。姫には、危害を与えません。」
きっと、この騎士様も、内心では穏やかじゃないんだろうな。
「そういう顔してました?違うんです。広場に台座なんて、似合わないなぁって。それだけです。」
「これは…失礼致しました。」
「ここからは、一人で行きますから。」
「はい…畏まりました。」
私は進む。死するであろう場所に向かい、歩み始めた。
そんなに、哀れむような目を向けなくてもいいのに。
悲しむような顔をしなくてもいいのに。
辛そうにしなくてもいいのに。
「…階段…か。」
一歩、そして一歩。
あぁ、そういえば…あの人にちゃんと伝えそびれちゃったな。
私も、大好きだよって。愛してるよって。
いい忘れちゃったな。
でも−もう無理かな。
お父さんにも頼んだ。回りの人たちも、きっとあの人が幸せになるために尽くしてくれる。
もうー迷う事すら許されない。
ならーもう迷う事はない。この人達の為に、この町の為に、私は命を投げ出そう。
「神よ、我が命を持って、この町の者達を幸せに導きたまえ!この町を栄えさせたまえ!」
そしてーあの人を幸せにしてみせたまえ!
私の声が、儀式の始まり。

「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
多くの人達が木霊する。
次第に大きく、大きくなっていく祈り。

「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
神よ…私が生贄です。

「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
この命を持って…

「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」
「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
この町と、この町の人達を、幸せに導きたまえ

「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
そして…許されるのならば

「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」
「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
あの人に、私が愛して止まないあの人を

「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」「災いの神よ、災いの神よ、花嫁ラプランカを贄に捧げん」
この世界の誰よりも、幸せに導きたまえっ!

「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」「この地を支配する力を!永遠の力と富を!」
「神よ!共鳴せよ!」
闇が…集まる。きっと、魔神。
『生贄をよこせ!飢えた肉体で貪り喰らう』
これが、魔神の声。私の命を奪う者。災いの神の声。

「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」
「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」
「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」
「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」「一人の『嫁』の血を啜り貪り喰らい賜え」
私…私は…あなたのお嫁さんじゃないんだけれどね。
単なる、生贄なんだけれどね。

『生贄をよこせ!飢えた肉体で貪り喰らう』
あぁ…これが神。災いの神。なんて…なんて醜いのだろう。
私と、一緒。父と母に捨てられた私と一緒。醜い。酷く醜い。
…そうね。私を喰らい尽くして下さい。そして、この町に…

「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」「愛する999人の幸せを約束せよ!!」
幸せをー…約束してください。

「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」
「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」
「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」「魔神よ来たれや!」
「そんなことさせてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!行くぞ!!鋼鉄の魔神!!!!」

あぁ、着ちゃったんだ。着てほしくなかったのに。私の死ぬところなんて、見せたくなかったのに。
醜い死体になる私の姿なんか、見せたくなかったのに。気持ちが、揺らいじゃうよ。
町の皆の為に、死ぬ事を覚悟したのに。
本当に…本当に嬉しいよっ…
…もし、もし許されるのならば…もう少しだけ…もう少しだけで構わないの。
あの人と…共に居たい。
神様…それは…許されない事なのでしょうか?
願ってはいけない事なのでしょうか?
こんなにも、あの人を愛してる。
「世界で一番愛してる…」
私が呟いた一言は
争いと騒乱の中に飲み込まれ
静かに、静かに消えていった。

1人と999人の戦争 ( No.4 )
日時: 2012/06/06 21:25
名前: のー (ID: vOtDHV5I)

走れ!走れ走れ走れ走れ走れ!!!!!!
「団長っ!」
「邪魔をっするなっ!」
邪魔だ!邪魔なんだ!
「邪魔するのならば斬り捨てる!」
「貴方は!1人の為に999人を犠牲にするつもりか!」
だからって!ラプランカを殺させてたまるものか!!
「うるさいっ!僕はラプランカを幸せにしたい!死なせたりなどするものかっ!」
「馬鹿がっ!止めろ!殺しても構わない!団長を止めるんだ!絶対にいかせるなっ!!」
槍兵…!?くそっ…邪魔だ!邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ邪魔だ!
「邪魔だぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
死を恐れるな!ラプランカを想え!死を恐れるな!ラプランカを想え!死を恐れるな!ラプランカを想え!死を恐れるな!ラプランカを想え!
体勢を低くしろ!そのまま突っ込め!あの隙間を潜り抜けろ!
「なっ…何をしている!抜けられたぞ!!!」
「押さえるんだ!皆!奴を止めろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
『贄たる嫁我の全てに!」
させるか!
「逃げるんだラプランカ!!」
逃げるんだ!ラプランカ!!逃げてくれ!!!
「くっ…人が邪魔で団長を止められない!」
「止めろ!この町の繁栄の為に!!」
「神が居てこそ、この町があるんだっ!」
「馬鹿なことは止めろ!!」
「俺達を殺すつもりかっ!!」
「私には家族がいるの!!止めて!お願い!!!」
どいつもこいつも…どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつもっ!!!!
「うるさい!」
何がこの町の繁栄の為だ!何が999人の為だ!!
「役立たずがっ!999人の命がかかっているんだぞ!」
「騎士団は何をしてるの!早くあの人を止めてよっ!!!!」
『叶わぬなら地に災いを!!』
知った事か!
「この地に移数多の御霊、定め破りて呪われよ!」
「なっ!くっそっ!!止めろ団長ー!!」
走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!
「騎士団長!助かった!!奴を止めてくれ!!!」
「騎士団長!お願い!」
騎士団長…立ちはだかるのかっ!
「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁっぁどけぇぇぇえぇぇぇぇえぇ!!」
「…ならぬ!!!!!!!!」
怒声。罵声。くそっ・・・くそくそくそくそくそ!!
「ならばっ…斬るっ!」
「やってみせよ!!」
走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!走れ!
こんなところで立ち止まってなんかいられないっ!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「ぐぬぅぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
一瞬。すれ違いの一瞬。僕はそこで騎士団長の首を刃で削ぎ駆け抜ける。
「見事だ…進め。愛する者を護ってみせよ!!!!」
騎士団長…っありがとう…ございましたっ!!
「なっ…騎士団長がっ!!!くそっ!何が何でも止めるんだ!!!多少の犠牲など気にするな!!」
「止めてっ!!お願い!!止めて!!!!!」
「よせ!何でもする!頼むから止めてくれ!!!」
「殺せ!あいつを殺してくれ!!!!!」
「止めるんだ!!何が何でも止めろ!!!!」
もうすぐだ!もうすぐだ!!!
ラプランカを想え、神の懐に飛び込め!!!
ラプランカを想え、神の懐に飛び込め!!!!
ラプランカを想え、神の懐に飛び込め!!!!!
「血塗られた町が栄える為に、ラプランカに課し贖罪、解き放て!!!」
恐れるな!恐れるな!恐れるな!恐れるな!恐れるな!恐れるな!恐れるな!恐れるな!恐れるな!恐れるな!恐れるな!恐れるな!恐れるな!
走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ走れ!!
ラプランカを想え、神の心臓を貫け!!!!
ラプランカを想え、神の心臓を貫け!!!!!
ラプランカを想え、神の心臓を貫け!!!!!!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっつ!!!!」
肉を裂き、刃が突き刺さる感触。確かに突き刺した。剣を。そして引き抜く。
音を立て、噴出す。噴水のように…神も赤い血をしていたのだ。血の飛沫が、降り注ぐ…
雨か…静かになったな。どうなった…どうでもいいか。ラプランカは…?
「はぁ……んっはぁぁ…・はぁぁぁぁぁぁ…・」
ラプランカ…ラプランカ…ラプランカは…?無事…だ。良かった…良かった…良かった。
「…13騎士団、団長…貴様っ!我等が神をっ!」
「神が…死んだ…」
「何もかも…おしまいだ…」
「この町は…どうなるんだ?」
「神が…神がお亡くなりに…」
「もう…おしまいだ。この町は…」
「あの人を殺して!誰か!!!」
…そこまですがるのか。神に…神か。生贄を求める魔の神…そうだ、殺した。僕が殺した。
「幾千の…魂裂いて…万の剣…受けようと…」
ラプランカが、そこにいる。泣きそうな顔をして。
「構わない…君だけが…世界の全て。」
ラプランカ…ラプランカ…僕の、愛しい人。今、目の前にいる。共に…生きて行きたい。
「…・・あぁ…うわあああああああああぁぁぁぁぁあああああああああああぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁん」
護りたい…幸せにしたい…彼女を、ラプランカをっ!!
「贄の血啜る魔は…皆焼き尽くせばいい!」
そうだ。焼き尽くせばいい。生贄の血を啜るのは、他でもない。残った999人だ。
こいつ等もあの魔神と何一つ変わらない。何が違うのか!
「何をバカなことを…たった一人の…ただ一羽の小鳥のような娘の為に…っ!!」
ラプランカのことが小鳥…?構わないさ。だけどな…
「お前が言う、ただ一羽の小鳥でもっ!僕には世界そのものだ!!」
ずっと、共に居るから。
そう誓って、僕はしっかりと彼女を抱きしめる。
もう二度と離さない。離してなるものか。
人を殺めることになっても、世界中を敵に回すことになっても、それでラプランカが助かるのならしてみせる。
僕の…たった一人の愛する女性なのだから。






†        †
「この後、レレンタスの町は他の町に攻められ、草木生えぬ荒野となりました…これが、1人と999人の戦争。その全貌なのです。」
老婆が語り終える頃、日は既に沈みかけていた。
「そんな…事が。」
自身が考えていた以上だったのだろう。騎士は、必死に拳を握り締めている。
「大切な者を護る。とある少年は、その為に999人を敵に回したのです。そして、999人の幸せを奪ったのです。どちらも正義であり、どちらも悪であったのですよ。」
悲しそうに、悲しそうに老婆は呟く。暫しの沈黙。口を開いたのは騎士だった。
「…僕にも…できるだろうか。」
と、虚ろな表情を出す騎士に老婆は語る。
「貴方にとって大切な人ならば、諦めない事です。諦めてはなりません。誰かの幸せを奪うことになろうとも。」
「…ありがとう…ございました。御代を…」
革の袋から硬貨を出そうとする騎士を、老婆はすっと手を出して止める。
「いいえ。頂戴しております。」
「そんな…僕は何も…」
「…涙を浮かべていらっしゃるでしょうに。それで十分です。」
「感謝…致します…。」
「あぁ、お待ちになってください。若い騎士様。」
身を翻し、去ろうとする騎士を老婆は止めた。
「何かー…?」
「最後に、伝えそびれておりました。どうぞー…手を。」
差し出された騎士の手を、老婆がしっかりと両手で握り締める。強く…強く。
「このお話を伝えた者に、最後にもう一つだけ。せめて…せめて貴方の大切な人を、幸せに…してあげてください。」
老婆は、切に、切に願った。涙を浮かべ。それに呼応するかのように騎士は吼える。
「誓いますっ。大切な者を、幸せにしてみせますっ!」
騎士は頬に涙流し、己が剣を胸に掲げた。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一通りやった所で改めて、のーと申しますです。
自分で言うのもなんだが…否、なんじゃないくらい(日本語なってねぇ)自己満乙って感じで。
駄菓子菓子、もとい、だがしかし、反省はしている。後悔はしてない(笑)
いやーもう本当にもう自己満足です。
因みに元ネタは「謳う丘〜Salavec rhaplanca.〜」
少しでも雰囲気とかでてればいいんだけど・・・ともかく、楽しんで読んでもらえりゃ幸いです。
ではではっ


Page:1



この掲示板は過去ログ化されています。