二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ぼくらの Crisis[新章開始]
- 日時: 2013/01/11 19:21
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
初めまして、tawataと申します。
この小説は「ぼくらの」の二次創作となっております。
とは言っても原作の設定のみを使用したほぼオリジナルの作品となっているので原作を知らなくても読める作品です。
読んでくださった方はコメント等下さると嬉しいです。
励みにもなるので是非お願いします。
【目次】
プロローグ
>>1
1 ココペリ
>>2
>>3
>>4
>>5
>>6
>>7
>>8
2 尖塔
>>9
>>10
>>11
>>12
>>13
3 命の秤
>>14
>>15
>>16
>>17
- 2 尖塔 ( No.13 )
- 日時: 2012/12/06 23:37
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
「……終わった」
ふぅ、とウラノは息をつく。
と、同時に歓声が起きた。
「わーっ!」
「やった!」
「凄ぇじゃん!」
「俺も操縦したい!」
歓声を受けるウラノは少し照れくさそうに頭を掻く。
「外へ、出られる?」
「別に構わねぇぜ」
ゆっくりと呟いたウラノに、コエムシが答える。
次の瞬間、子供達の視界が切り替わる。
「これ……カイザーの上……?」
子供達が立つ場所の真上には仮面がある。
そこからして、それがカイザーの胸部である事は明らかだった。
「凄ぇ景色……」
果てしなく広がる海。
カイザーの後方にある旅館の方は見えないが、その海の景色だけで十分だといえた。
「……ん?」
ふと、一人が声を上げる。
「どうしたの、カオ?」
「私……呼ばれた……?」
「え?」
カオに視線が集中する。
「どういう事だ…? コエムシ」
ウラノがコエムシに問いかける。
「何だお前、ずっと自分一人が操縦するとでも思ってたか?」
「という事は、敵が十五体だから、一人一回?」
「そういう事だ。ま、お疲れさん」
そう言ってコエムシは全員を見渡す。
「さて、そろそろ下に転送するぜ。次の戦いになったら呼ぶからな」
その言葉を最後に子供達が見ていた景色が切り替わる。
旅館前の海岸へと転送された子供達は呆然と海を見ていた。
「カオが呼ばれたって事は、次のパイロットはカオって事かな?」
「そうじゃない? ウラノもそうだったし」
「そ、そうなの? 良っし、がんばっちゃうよ!」
ガッツポーズをとって意欲をアピールするカオ。
それに対する激励や、早く操縦したいという声が上がる中、異変に気付いたのはトヨだった。
「あれ……? ウラノは?」
その言葉で全員が会話と止めた。
この場に居るのは十五人、の筈だった。
しかし、数えてみると十四人。
先程パイロットとして戦いを繰り広げたウラノの姿が無かった。
「一体どこに——」
カイザーの外に出たときには確かにウラノは居た。
海岸に転送された後、姿が見えなくなった。
そう考えた子供達は半ば反射的にカイザーを見上げる。
夜の闇で黒い装甲の上部は見えない。
しかし見えてしまった。
カイザーから「何か」が落ちていくのを。
その速度は速くも、遅くも感じられた。
速く、というのはそれを見ただけの速度。
遅く、というのはその事実を受け入れられない脳の判断なのかもしれない。
海に立っているカイザーから落ちた「何か」は誰しもが考える通り、海に落ちた。
小さな、小さな飛沫が上がる。
音は子供達までは届かない。
波の音と風の音以外に音は無く、それらも子供達にとっては蚊帳の外だった。
子供達が気にしていたことは唯一つ。
たった今カイザーから落ちた「何か」は一体何なのか。
行き着く先は一つしかなかった。
しかし、その真実を受け入れることは出来ない。
出来るはずがない。
子供達は静まり返った海を、唯呆然と眺めていた。
- 3 命の秤 ( No.14 )
- 日時: 2012/12/09 22:36
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
第二次特別災害と名づけられた事件から三日が経った。
二体の巨大怪獣による戦闘。
内一体は前日にも確認された二体の怪獣の一体と同一のものと確認された。
戦闘は海上で行われたため近隣の住民への被害もほぼ無し。
第一次特別災害での被害者は国防軍の兵四人。
第二次特別災害では幸いなことに死傷者は一人も出なかった。
と、思われていたが、昨日昼過ぎ、一人の遺体が浜辺に打ち上げられているのが発見された。
検死の結果災害現場付近の観光地の観光ツアーに参加していた十四歳の少年と特定された。
少年は災害当時、同じツアーに参加していた子供十四人と浜辺に怪獣の戦闘を見物に行っていたという。
当事者の子供達曰く戦闘の際に起きた波に巻かれたとのこと。
しかし十五人の内一人だけが波に巻かれるというのは余りにも不自然。
さらに検死により、水や白色細小泡沫が見られない事から溺死ではない事が分かった。
骨折や挫創も見られたがこれらは死後のものと判明。
警察は他の子供達による殺害も視野に入れて調査を進めている。
不幸な事件によりツアーは中断、参加していた家族は帰宅した。
ウラノの葬儀も行われた。
子供達は一通り警察に職務質問を受けた。
事前の話し合いにより決まった「嘘」により辻褄合わせには成功。
今後疑われないように一応は平静を装う事に。
しかし、
「まだ疑われてるって事かな……?」
新聞に『巨大怪獣出現』という大見出し記事と共に書かれた被害者の情報を見ながら、カオが呟く。
「ま、死んだ人間と一緒に居たってんだから疑われてもしょうがねえわな」
それに対して、ふわふわと浮きながらコエムシが答える。
カオがコエムシを睨む。
「……コエムシ」
「あ? どうした?」
「何でウラノも一緒に海岸に転送しなかったの?」
次のパイロットとして選ばれたカオ。
彼女には一つ、コエムシに聞いておきたいことがあった。
それは彼女がパイロットを務めるにおいて、絶対に聞いておかなければならなかった。
「——、違う?」
コエムシの丸い耳に手を当て、呟く。
「……何だ、ココペリのやろーから聞いてねえのか」
「誤魔化さないで」
真剣な表情だった。
コエムシはしばらくの間黙っていたが、
「その通りだよ」
あくまでも表情は崩さずに言った。
「……やっぱりね」
新聞を畳み、カオが立ち上がる。
自身が座っていた椅子を見る。
簡素な作りの木製椅子。
カイザーのコックピットに現れたものと同じものだ。
「……母さんが来る。もういいわよ」
「あいよ」
コエムシが消えると同時、部屋の扉が開く。
「乙女、ユウのお見舞いは行ったの?」
「ん、まだ。今から行く」
真実を知った故、やるべき事が決まった。
部屋を出て、歩きながら携帯を取り出す。
『もしもし』
「もしもし、サク?」
相手は、ツアーも一緒だった幼馴染。
「病院、来れる?」
『……あぁ、行けるよ』
「それじゃ、ロビーで」
『分かった』
それだけの短い会話で、通話は終わった。
- 3 命の秤 ( No.15 )
- 日時: 2012/12/19 23:00
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
*
周辺では最も大きい、市立の病院。
様々な病人が入院している。
ユウはそこの入院患者の一人だ。
突発性心筋症という難病を患っている。
心臓移植以外に治癒の道が無いといわれている。
移植をしたとしても、拒絶反応を抑える薬の副作用が一生付きまとう。
ユウにマッチする心臓を提供するという人は出てこない。
去年の秋にに余命一年と宣告された。
ユウに残された時間は大体二ヶ月。
その間にマッチする心臓を提供してくれる人が果たして現れるか。
万に一つ、いや、百万に一つくらいにしか確立なんてないだろう。
そう考えると、望みは薄く感じる。
そういえば、この病院には同じ病気を患ってる人がいたっけ。
何だったか……確か、ナギ君と言ったか。
その友人と思しき子たちと病院のロビーで話したことがある。
モジ君とツバサちゃんという、私達の一歳年下の中学一年生。
随分としっかりしてて、特にモジ君はとても勘が良い子だった。
同じ境遇なだけあって結構話が合い、別の学校ながら仲が良くなった。
この病院に入院している二人。
彼らを守らないといけない。
私はそのために戦って、そして……
うん、それは今は考えないことにしよう。
お見舞いの時に暗い事を考えてては駄目だ。
明るく、あくまで明るく居よう。
*
「サク」
「カオ、おはよ」
しばらくロビーで待っていたカオがサクを見るなり病室に向かう。
ユウの病室に向かう最中、廊下の向こうから二人の子供が歩いてきた。
「モジ君、ツバサちゃん。久しぶり」
「カオさん、サクさん。お久しぶりです」
同じ病気を患った友を見舞いに来た計四人は、挨拶程度で、他に特に話すことも無く別れる。
「ナギ君のドナー、まだ見つからないのかな?」
「見舞いに来てるって事はそうじゃないか? それに……」
ユウの病室の前に着く。
「ユウのドナーの心配の方が先だろ」
「……そう、だね」
病室内のベッドでは短髪の少女が本を読んでいた。
薬袋 唯(みない ゆい)。
ユイと呼ばれるその少女は二人に気付くと笑顔を向ける。
発病するまでは元気ハツラツとした性格だったものの、発病してからはすっかり塞ぎこんでしまった。
「おはよう……カオ、サク……」
痩せ細った身体は発病のショックによるものだ。
時間が残り少ないという事はユイ自身分かっている。
たった二ヶ月でドナーが見つかるなんて思ってすらいない。
残った時間を精一杯生きる気力も無く、ただ毎日を無気力に過ごしていた。
「具合、どう?」
「良く……見える……?」
薄らと笑みを浮かべながら答えるユイは既に諦めている。
死ぬのが当たり前だと思っている。
「……諦めちゃ駄目だよ」
「希望を持ち続けて死ぬなら、最初から諦めていたほうが良い」
きっぱりとしていた。
最高の友人である二人といえども、彼女の意思は変えられない。
「ユイ……」
「私なんかの為に心臓を提供してくれる人なんて、居るはずない……」
「そんな事っ……!」
ない、とは言い切れなかった。
移植をするという事はつまり、その人が死ぬという事で。
例えドナーが見つかっても、それを本気で喜ぶことは出来ない。
ユイが生きる代わりに誰かが死ぬ。
平等な命として、それは二人の最高の結果ではない。
ユイの病気が完治するというのが、最高の結果。
しかしそれは、叶わない。
どれだけ悲しもうとも、ユイが死ぬのは「仕方がない」。
三人はそう確信していた。
- 3 命の秤 ( No.16 )
- 日時: 2012/12/25 19:03
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
半円状に並んだ椅子。
一人の席が空いたそれの内、一つが中央に移動する。
「さて、来るぜ」
宙に浮かぶ白い鼠——コエムシの声と共に、コックピットから外の景色が映る。
「此処は、カオの地元?」
「そう。多分戦いはパイロットのいる場所で始まるんじゃないかな」
カイザーの全貌が現れ、地に足を付けると、下敷きとなった家が粉々になる。
幸いな事にカイザーが出現してまもなく近隣の住民は避難を始めたため、その場で下敷きになった人は誰一人居なかった。
カイザーの出現の直ぐ後、もう一体の巨体が出現を始める。
中央にある球体から上下に伸びる突起。
上方の突起から左右に伸びる関節のない腕。
さらにその先端にから重く垂れ下がる分銅。
天秤の様な全貌が明らかとなると下方の細い突起、そして二つの分銅が地に着く。
分銅は広い範囲、突起は狭い範囲(といっても分銅との比較なだけで突起自体かなりの範囲)を押し潰した。
「背後に病院か……」
カイザーの真後ろはユウが入院している病院だった。
「万が一があるし、移動しとこう」
カオはそう言い、カイザーを動かす。
動きを見せない天秤を一先ずは安全と判断し、病院とは遠く離れた場所にカイザーを移動させる。
「……まだ、動かない?」
さすがに子供達が怪訝に思い始める。
「先制攻撃出来るじゃねえか。動かないなら速攻で決めちまえ」
コエムシが言う。
「とりあえず、一旦は……」
カイザーの胸部が光り、閃光を放つ。
それは狙い違わず天秤に当たったものの、それらは全て弾かれ街に被弾した。
「あっ!」
真っ先に声を上げたのはサクだった。
自分の街に被害が来たのだから、当たり前だろう。
「カオ、気をつけて!」
「……」
カオは答えず、再びカイザーの胸部に光を溜める。
「なら、あの装甲の隙間に……!」
閃光が走り、装甲と装甲の合間に突き刺さる。
僅かながら、損傷はあっただろう。
「これなら効果はあるみたいね」
接近戦をしないのは慎重さ故か。
確かに近づきすぎれば戦闘で病院へ被害が行ってしまう可能性も高い。
かといってレーザーだけで急所を撃ち抜けるほど甘い敵ではない。
「でも、どうしよう……」
接近戦を躊躇うカオだったが、事態は動いた。
「あっ!」
巨大な天秤が、回転を始めたのだ。
「待っ——」
球体の下方に伸びる突起を中心に回転する天秤は分銅を引き摺りつつ、少しずつ速度を上げている。
分銅はやがて遠心力で外側に伸び、天秤は分銅を振り回す駒のように高速回転し出す。
「っ、あ……」
既に天秤の真下は押し潰され、轢き潰され、或いはその風圧で吹き飛ばされの惨状となっていた。
「カオ!」
「分かってる!」
これ以上街に「こんな」被害を出すわけには行かない。
そう考えたカオはカイザーを動かす。
「このっ!」
無理だと分かっていて、それでもカオはカイザーの身体中から閃光を放つ。
しかしそれも大して損傷を与えず、弾かれた閃光は街に降る。
「何やってんだよ! 効かないの分かってるだろ!」
「分、かってる、よっ!」
天秤は軸を少しずつ移動させ、カイザーに近づいていた。
それに迎え撃ち、カイザーも近づこうとするも、高速で回転する天秤の分銅はかなりの威力となっており近づくのは困難だ。
「どうにか、しないと……!」
何かを思いたのか、カオはカイザーを一歩下がらせる。
そして背中の装甲を剥がして剣を作り出す。
しかしその剣のリーチでは分銅を潜り抜け、本体に攻撃することは出来ない。
「これでも——」
カオはそのリーチを考えて尚、剣で攻撃する。
正攻法ではない。
大きく振りかぶり、
「喰らえ——っ!」
剣を力いっぱい、投げた。
- 3 命の秤 ( No.17 )
- 日時: 2013/01/11 19:20
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
全力を込めて投げられた剣は回転する分銅の下、回転の軸となる下方の突起を打ち崩した。
天秤は浮遊していたわけではない。
軸を失った駒は回れない。
落下し、大きな振動を起こした天秤は動きを止めた。
「っ……はぁ……!」
カオが一息つく。
倒れた天秤は動く気配がない。
「カオ、今の内に急所を壊せ!」
「……」
サクの言葉は聞こえていたのだろうが、カオは答えない。
代わりに、胸部から放つ閃光で、それを否定した。
「カオ!?」
天秤に当たったものは弾かれ、そもそも当たらなかったものは街に降り注ぐ。
カオの表情は苦痛に歪みながら、しかしその攻撃を止めない。
「何やってんだ! もうレーザーを撃つ必要もないだろ!」
「——このまま人が死ねば、もしかしたら病院に運ばれる死体にユウにマッチする心臓の持ち主がいるかもしれない」
「っ——!?」
「病院に伝えてはいるの。マッチする心臓を持った死体があったらその人の親戚に話をしてほしいって」
巨大怪獣の戦闘による無差別破壊。
それによって死んだ人間の中からでもユウにマッチする心臓がある可能性は低い。
分かっていて尚、カオはこれに賭けている。
パイロットに選ばれるのは一度きり。
我を通し、ユウを救う道は、これきりしかなかった。
まさかサクにこれをしろと言う訳にもいかない。
故に自身が悪者になる道を選んだ。
崩れていく建物に、人が飲み込まれていく。
権力を持った人も、無職でその日の生活もままならない人も。
子供も、大人も。
赤子も、老人も。
差別無く、平等に死んでいく。
それらはカオの意思によってコックピットに映像として鮮明に映し出されていた。
「あ…ぁぁ……」
子供達は目を背ける者もいれば、それを黙って見続ける者もいる。
「……?」
しかし、その死はカオの望んだものではなかった。
ドナーとするには、心臓が無傷である事が必須。
閃光により吹き飛び、砕けた建物に押し潰され。
その大体はドナーとして相応しくない死に方をするものだった。
「これで分かったろ!? こんな事でユウが救われると思うか!?」
「……ぁ」
カオが小さく声を漏らした。
その現実を受け入れたくない。
絶望は、別の悲劇を生む。
「来るぜ」
「え?」
コックピット内の誰が出したとも言えない声がコエムシの言葉を聞き返す。
「っ——カオ!」
その声はカオの起こした惨状を見ることなく、ただ敵に注目していたユズだった。
「あっ!」
驚愕の声は、カオのもの。
軸を失い倒れていた天秤が、折れた部分を軸として再び立ち上がっていた。
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