二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 東方神隠詩 ( No.2 )
日時: 2010/04/07 10:54
名前: みかんうた (ID: raanz7.S)

零 〜序章〜 Ⅰ








…………なんでこうなっているんだっけ?
——難しいのは、現実(いま)を認める力。

…………なんでここにいるんだっけ?
——難しいのは、過去を振り返る力。

…………なんでだろうね?
——知らないよ。








病んでいた。とにかく病んでいた。
両親の離婚、複雑な人間関係。次から次へと押し寄せる壁は私の心を追い詰めていった。


誰にも相談出来なくて。それがまた、私を追い詰めていって。頭の中は白く濁ったまま、気づいたら近所の裏山にいた。


足元を見れば、そこは崖。ミニチュアみたいに小さくなった車や建物、人間が見える。
その時私は何を考えていたのだろうか。覚えているのは、私があの時いた場所のみ。


泣くこともできない。叫ぶこともできない。何かにあたることをできなければ、誰かの為になることもできない——。
ならば、私にできる事はこの世からいなくなる事。私一人がいなくなったって、何も変わらない。寧ろ、いい方向に動き出すのではないか?


……そんな事でも思ったのだろうか。
気づいたら、私の世界が止まっていた。














「……大丈夫か?」


——眩しい。……あれ? ここは……病院かな?
そんなわけはない。確かに私は、崖から飛び降りた。あそこから飛び降りて、助かる人間などいるわけがない。


……じゃ、ここは……どこ?
あ、そっか。これは夢だ。夢を見ているんだ——。


「藍さま! タオル持ってきました!」
「ありがとう、橙」


と、私の額に冷たい何かが濡れた感触。
……となると夢ではない!? 


今、やっと意識がはっきりしてきた。
私はゆっくり布団から起き上がり辺りを見渡す。そこは何にも無い、和があふれる畳の部屋だった。
額においてあったタオルが私の膝元に落ちた。


「あ、大丈夫か? まだゆっくり安静して——」


金髪の女の人が、私の膝元におちたタオルを拾う。
綺麗な人だなー……。この人が私を看病してくれたんだな。


「ッ!?」
「ど、どうした!? 傷が痛み始めたのか!?」


いいいいいいいやや、私は、そそそそそそそそ、そんな事はどうでもいいいいんですよ。
私は震えた手で、女の人の「お尻」を指差した。


「?? これが、どうかしたか??」
「あああああああ、いいいや、そ、そそその」


女の人は、そのお尻についてある「尻尾」を触る。
美しいともいえるその尻尾。昔、絵本でみた九尾という妖怪みたいな尾。
今気づいたけど、女の人の隣にいる女の子にも耳と尻尾がついているし!!!


もう頭はパニック状態。
まさかの妖怪、妖怪ですか!? 変わったアクセサリーだと嬉しいのですがッ!! 


恐怖で声もでない。
そんな私に、あちらがわは戸惑っている様子。


いやいや、落ち着け私。私を看病してくれた恩人だよ? いい人に決まっている。
そう、これはきっと変わったコスプレにちがいないんだーーー!!


「あははははは。か、変わったコスプレですねぇ。その帽子はそういう形なんですか?」
「?? これは私の“耳”だ」


と、帽子をとって耳をヒョコヒョコ。
あはははは。



オワタ。



「失礼しましたあぁぁぁぁぁぁぁぁああぁあぁぁあああッッ!!!!!」


私は、ダッシュで逃げた。運よく、縁側になっていてそこから外に飛び出した。
絶対私を食べる気だ!! 早く、早く逃げないと食べられちゃうよぉおぉお!!!


私はとにかく走り、逃げた。

Re: 東方神隠詩 ( No.3 )
日時: 2010/04/07 11:40
名前: みかんうた (ID: raanz7.S)

零 〜序章〜 Ⅱ






「はぁっ、ハァッ」


私はどこだか分からない、山道をとにかく走り続けていた。
息は苦しいし、足は痛い。てか、裸足。でもそんなの気にしなかった。
人の形をした妖怪が、今すぐにでも私を食べてしまいそうで。……単純にいえば、死にたくなかった。


……おかしい。ついさっきまでは、あれ程死にたがってたのに。
結局、その程度の覚悟ってことか。


「ぅわっ!!」


その時だった。木の根っこかなんかにつまづいたのか、丁度斜面になっていた坂から私は勢いよく転がり落ちる。
体中泥だらけ。髪の毛もぐしゃぐしゃ、体中痛む。


「……なにやってんだろ」


つい、そんな言葉が漏れた。
もうよく分からなかった。自分自身も、そしてこの世界も。


「なんの音〜?」


木の陰から少女の声がする。
なんだかよく分からないけど、見つかったらヤバイ気がする。でも、足が痛くて立ち上がれない。


「……人?」


ひょこっと木の陰から現れた少女。
私より幼そう。ピンクのワンピースを着て、とっても可愛いんだけど……やはりなぜかウサギの耳が生えています☆


やっぱり妖怪ですか、この世界にはこういう人達しかいないんですか!?
この人も、私を食べる気なんだろうか? 逃げたい、逃げたいけど逃げられない。体が思うように動かない。


「人間だよね? ……なんで、こんなところに?」


私が聞きたいです。
兎少女は一回、考え込むとにやりと不気味に笑った。……寒気。


や、ややややっぱり食べる気なんだぁぁぁぁぁあぁぁあぁああ!!!


「うわぁぁあぁぁぁああぁぁあああ!!!」


私はまた猛ダッシュで逃げました。
人間、いくら疲れていてもいざという時には頑張るんだね。

















「てゐー、どうしたの? さっきの子、人間でしょ?」
「鈴仙……。分からない、私の姿を見て突然逃げちゃった」


「ふーん……。またあんたが変な事やったんじゃないの?」
「やってないから! どんだけ信用されてないの私!!」


「それより、師匠呼んでたわよ」
「はいはーい」