二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 勿忘草【イナズマ短編】リク受付中^^ ( No.97 )
日時: 2011/07/09 10:20
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)
参照: テストが近いorz遅くなってすいませんでしたっ!

「でね、そうそう!」

 部屋の中に明るい声が響く。
 窓の縁に腰かけた蓮は、耳に携帯電話を当てながら楽しそうに声を弾ませた。声同様顔もにこやかで、相手がいるわけでもないのに何やら手を動かしている辺り、かなり興奮しているようだ。先程から縁に座ったり立ったりを不定期に繰り返している。
 しばらくは他愛もない世間話を相手としていたが、話題が蓮の身近なことに移ったらしい。今日も練習はハードだけど楽しかったよ、と蓮が短く言ってから、何か思い付いた顔になる。
そういえば僕の幼馴染みがさ……と、急に前置きを述べた後、今日南雲と涼野にされたことを、相手に愚痴りはじめた。時折相手が相槌を入れているのか、蓮もうんうんと当然そうに頷いている。

「ここ最近、蓮は誰と話しているのだ?」

「サッカーの友達なんだろ」

 そんな蓮の姿を、僅かに開かれたドアの隙間から、覗く人間が二人。言わずとした幼馴染み——南雲に涼野だ。彼らは蓮に気付かれないよう、小声でひそひそ話をしていた。

「……にしては、長話をしすぎだろう。蓮は、あまり親しくない人間と長話を好まないのは、晴矢も知っているだろう」

「確かに、相手はただの友達じゃなさそうだな」

 ここ最近、蓮は毎晩のように誰かと携帯電話で話している。短い時で数十分、長いときは一時間近く話していることもある。
 相手が気になる二人は蓮に誰と話していたかをよく聞くが、毎回「サッカーの友達」と言う答えしか返ってこない。それ以上追及しようとしても、「秘密」とはぐらかされてしまうのがオチでいつも聞き出せない。だからこうして”盗聴”を昨晩からしているわけだが、聞こえてくる話は、南雲と涼野が知らないサッカーチームの名前と選手の話ばかり。あの選手のドリブルの抜き去り方がかっこいいだの、監督の采配が素敵だの、蓮がまくし立てるように話続けている。だが、その合間に「やっぱり!?」や「だよねだよね!」と興奮した様子で相槌をうっているあたり、相手も蓮の話についていけているようだ。

 相手がわからず二人は、考え込んでいる。特に普段はあまり頭を使わない南雲は、もはや頭がショートしかかっているようだ。両手で、赤い髪の毛をくしゃくしゃにしている。涼野も思い付かないらしく、青緑の瞳を悔し気に細めながら、宙に視線を泳がせていた。と、そこに考えこむ二人とは正反対に馬鹿みたいに明るい声がかかる。

「彼女に違いない!」

 南雲と涼野がうんざりした顔付きで声の方に顔を向けると、やはりチナンがいた。何やら楽しそうに笑い、手には手鏡程の大きさがある虫眼鏡を持っている。もしかしなくても探偵の真似だろう。チナンは、無駄に空気が読める男なのだ。

「どういうことだ? チナン?」

 南雲は一応、早く言いたくてうずうずしているチナンに質問をしてやった。チナンは、持っていた虫眼鏡を右目に当てると、

「あのなー。男が夜に呼び出されるとしたら、殺すつもりの相手、もしくは密会したい女って相場が決まっているんだよ。どうだ、オレの推理!」

 自信満々に、見事な迷探偵ぶりを披露してくれた。南雲は、その意見を聞いたとたん、チナンに質問したことを激しく後悔する。あまりの馬鹿らしさに全身から力が抜け、倒れそうになる。意思の力で、下がる身体を必死に起き上がらせる。

「……推理小説の読みすぎじゃねえのか」

「なるほど。前者は有り得ないとすると、蓮に彼女ができたと考えるのが妥当だ」

 南雲が憔悴しきった声で呟く横で、涼野は何故か納得していた。おい、何で常識はずれな意見に納得できるんだよ……と南雲は、立ち眩みに近い感覚を覚えるが、涼野に意見する。

「ちょっと待て、風介。蓮に彼女だと? お前がバカなのは知っているが、どう考えたらそうなるんだ?」
むっとした涼野は、表情を一変させ、南雲を睨み付ける。

「ならば聞き返すが、彼女がいないと言う証拠はあるのか?」

 南雲は、うっと詰まった声を出した。反論の言葉が出てこない。ふっと前を見れば、勝ったような憎らしい笑みを浮かべる涼野の顔。思わず涼野を殴りたい衝動に駆られ、南雲が一歩踏み出した時、タイミングよくチナンが口を挟んでくる。

「それにな、俺やチームメイトは見たんだよ」

 勿体ぶるようにゆっくりとチナンが話し、せっかちな南雲はイライラして大きな声で聞いた。

「なにをだ!?」

「あいつ、このまえ金髪の女と歩いてたんだよ!」

「……海外の彼女か」

 納得したように溢す涼野。中国か韓国か日本か、と明らかに金髪人口が少ない国を挙げ独り言を言っている。真面目に考える涼野と違い、南雲は、アホらしいと鼻で笑う。金髪で女らしいやつといえば、このチームにいるではないか。

「どうせアフロディだろ。見間違いじゃねえのか」

「ん? 南雲、ボクを呼んだかい?」

 そこにひょっこりとアフロディが現れ、南雲は金の瞳を大きく見開いた。

「っておい。アフロディじゃねえのかよ!」

「何のことだい?」

「あのなー! 白鳥に彼女が出来たらしいんだ!」

 状況がわからないアフロディにチナンが説明を入れ、アフロディは目を丸くする。本当に何も知らないようだ。一応、南雲が蓮の彼女に心当たりはあるかどうか聞いたが、本人は首を横にふった。長い金髪が、静かに揺れていた。

「くっそーオレの中じゃ、アフロディ×白鳥がやっと盛り上がってきたところなのにつまんねえなぁ……」
と謎の言葉を独りごつチナンは、放置し、アフロディは小声で南雲と涼野に話しかける。

「今の話は本当かい?」

「さあな……」

 好奇心に満ちた瞳で話に乗ってくるアフロディを南雲が前にした時、部屋の中で蓮がそんなことないよ!
と反論している声が聞こえ、アフロディたち四人は、扉に張り付いてそっと中を覗きこんだ。
 蓮は、アフロディたちに背中を向けるように立ち上がって、悲しそうな顔付きをしていた。やがて、悲しげな顔が真剣な顔に変わる。黒い瞳に明確な意志が宿る。

「遊びじゃないって。僕は、本気だよ? 本気でキミとやるのが好きなんだ」


Re: 勿忘草【イナズマ短編】リク受付中^^ ( No.98 )
日時: 2011/07/09 10:24
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: PODBTIS5)

 蓮は、勢いで言ってしまったらしく、自分が言ったことに気がついてから、凍り付いた表情で頬を赤らめている。そのまま、やっけになって電話の相手に食ってかかっている。
ドアの外でアフロディたちは、呆然としていた。

「ほ……本気なのか?」

 と普段は冷静な涼野が顔に驚きの色をはっきり表し、

「か、彼女としかも……やったと言うのかよ!」

 と蓮を非難するように南雲が叫んで、

「修羅場だね」

 とアフロディが他人事のようにくすくすと笑い、

「オレの聖書(エロ本)読むと気絶するあいつが、もう大人の世界に足を踏み入れたのかよ!」

 チナンは、うるさく叫んでいた。相変わらず、方向性が間違っているが。
 とここで、涼野が待て、と話の流れを変える。

「しかし、そうなると蓮が心配だ。もし、サッカーに支障をきたした場合、ファイアードラゴンは確実に終わるぞ」

「もしかして、その彼女もそれを狙ったかもしれないね……」

「くそ、よくも蓮にてを出しやがったな! 今すぐに女を探して<カオスブレイク>を打ち込んで、蓮に近付かないようにしてやる!」

 脱線した挙げ句、三人は不気味に微笑みあった。

「私たちは、蓮の保護者だ。お人好しな彼を守るためには、これがいい」

「そうだね」

「これが龍の怒りだ!」

 三人は非常に乗り気だ。ちなみにこの三人は、蓮の保護者を自称している。まあ実際の立場は逆で、問題行動が多いアフロディたちを、はらはらしながら蓮が見守っていたり、事後処理を担っていたりする。

「ん、話の流れが変だぞ?」

 チナンが言ったが、結束した三人を止められるのは、チャンスゥか怒っ
た蓮を除いていないのだった。

***

 しばらくして、蓮が噂の彼女を大胆にも、宿舎に誘った。驚いたことに、チャンスゥにも許可をとったと言うのだ。アフロディたちは驚きを隠せなかったが、彼女が来ると言う時間も盗み聞きしたので、先回りをした。玄関近くの部屋にサッカーボールを持って隠れ、僅かに開いた扉から息を殺して、彼女の到着を待っていた。宿舎内で<カオスブレイク>を打ったら、宿舎が壊れるとか誰も突っ込まなかった。
 やがて、軽い足取りの蓮が宿舎の入り口まで降りてくる。——そして。彼女は来た。緑のジャージに身を包んだ小柄な背丈。蓮の胸ほどの高さか。ふんわりと膨らんだ短い金髪。耳より下の髪は、羽根のように広がっている。頭には、天使がつけるのに似た白い輪。ぱっちりとした緑の瞳は、人形みたいだ。中々なやつだと、チナンが鼻を伸ばした時、

「あ、待ってたよ。アンジェ”ロ”」

 蓮が、嬉しそうに相手の名を呼びながら駆け寄り、アフロディたちが同時に声をあげながら、部屋から飛び出る。

「「「「アンジェロ!?」」」」

 勢いがありすぎたのか四人はバランスを崩し、そのまま前に倒れた。一番初めに飛び出たアフロディとチナンが、哀れにもうつ伏せの体勢で倒れた南雲と涼野の下敷きになっている。早く離れてとチナンとアフロディが手足をばたつかせるが、南雲と涼野は、うつ伏せの体勢のままアンジェロをにらみ据えていた。

 今の音に蓮が振り返り、「大丈夫!?」と四人に駆け寄り、南雲と涼野を叱咤してチナンとアフロディの背中からどかせる。南雲と涼野は、アンジェロを睨み付ける。が、当のアンジェロはきょとんとし、

「ねー、彼らは蓮の友達?」

「そう。僕のチームメイトだよ」

 蓮が、アフロディたちを紹介するとアンジェロはにこりと笑った。子供が浮かべるあどけない笑顔そのものだ。

「じゃあ、初めまして! ぼくは、イタリア代表オルフェウスのMF、アンジェロ・ガブリーニ。今日は、蓮に招待されて、遊びに来たんだっ」

「イタリアって、海に沈んでいるから寒いよね?」

「蓮、イタリアは地中海に面してるのっ!」

「地中海って海の底?」

「海は海なの!」

「あ、思い出した。イタリアって、アトランティスの末裔が……」

「海の上にあるの!」

 アンジェロの自己紹介で、アフロディたちの怒りと熱は急激に冷やされていった。急に虚無感が身体全体を包み込み始める。そして、サッカーの上手さと反比例する地理の能力に——アンジェロと蓮の掛け合いに思わず絶句してしまう。韓国を北朝鮮と勘違いしたり、韓国はアマゾン川に面しているだの言う蓮だから仕方がないが、やはりファイアードラゴンの恥さらしになるだろう。
 オルフェウスの名は、アフロディたちでも知っている。そのチームにいると言うことは、「男」に間違いない。まあ、アンジェロも男のなではあるが。

「ややこしい外見だな……」

 アフロディがぼそりと呟いて、

「お前が言うな」

 チナンに突っ込まれた。

「みんなをびっくりさせたくて、内緒にしてたんだ。……ま、バレバレだったけどさ」

 蓮は、いたずらっぼく舌を出しながら笑うと、ぼうっとするアフロディたちを他所にアンジェロと話始める。その様子を、四人は黙って見つめていた。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 もう口を聞きたくない程にだるいし、疲れた。やがて、

「……寝るか」

「そうだね」

「だな」

「寝るぜーアルパカ先生の写真を枕の下に入れるか」

 南雲が脱力した声で呟き、アフロディたちは次々と賛成の声を上げて、部屋に引き上げていった。

〜FIN〜
待たせておいてこの堕落しきったありさまで申し訳ありません;;
彼女=大好きなアンジェロたんしか連想できません。アンジェロが何で韓国にいる&蓮と知り合いになったわけは妄想にお任せしますw
リクエスト有難うございました^^:二段目も頑張らせていただきますっ。