二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

+しずく様リク+ ( No.197 )
日時: 2011/05/15 18:47
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 0fWfwKh9)




          ——* 私と彼女と、恋のお話 *——


 合宿所の目の前にあるコートでは今頃、イナズマジャパンのメンバーさん達が一生懸命、サッカーに励んでいるのだろう。そんな彼等を一番近くで見ていられることが嬉しくて。食事の支度や掃除、選択は大変だけど、皆のサッカーを見ているとどうでも良いように思えてくる。さすが、イナズマジャパン。
 ふぅ、と一息吐くと手元の作業に専念することにした。もうすぐ練習が終わる。選手達が腹ペコで帰ってくるはずだ。しかも運の悪い事に、今日はいつもより人数が少ない中での準備だ。急がなくては。

「桃花ちゃん、そっちは大丈夫?」
「なんとか頑張ってます……それにしても、春奈ちゃんに冬花さん、遅いですね」
「結構、頼んじゃったもの。大変だと思うけど、そろそろ帰ってくると思うわ」

 まさか、調味料が切れちゃうなんて。苦笑交じりに呟く秋さんに、私も苦々しくはあるが笑いかけた。

 ことの始まりは、春奈ちゃんが冷蔵庫を確認した時に起こった。信じられないが、マヨネーズ、ケチャップ、コショウ、そしてタバスコ等の調味料を全て切らしていたのだ。しかも冬花さんからは、洗剤も無くなりそうだと聴き。夕食前の忙しい時間帯であるものの、急遽、春奈ちゃんと冬花さんには買出しに行って貰ったのだ。
 もちろん、残された私たちがのこのこと休めるはずも無く。

「タバスコの消費が早いのは知ってたけど……」
「皆、忙しくてそこまで手が回らなかったのね」

 誰かを責める訳でも無く、優しい口調で話すとそれっきり、まな板の上に置かれたニンジンと睨めっこを始めてしまった。そんな秋さんをちらりと見てみる。手際の良い手つき。頼りがいがあるな、なんて羨ましく思えた。

「秋さんって、絶対良いお嫁さんになれますよね」

 ストン、と。振り下ろされた包丁がまな板に帰ってきた途端、細かく刻まれていたニンジンが、大きな破片となって宙に舞う。それっきり包丁を動かす手は止まり。秋さんは、ゆっくりとこちらに振向く。ほんのりと染まった耳朶。思わず、可愛いなと思ってしまった。

「個人的に、円堂くんには秋さんが必要だと思いま——」
「桃花ちゃん、ストーップ!」

 グイっと強く引っ張られ、バランスを失う。改めて秋さんの顔を覗き込んでみると、耳も頬も真っ赤に火照っていた。瞳も不規則に泳いでいる。明らかに動揺してますね、秋さん。
 秋さんは小さく呻き、私をじっと見つめてくる。今の時間帯なら、誰にも聞かれていませんよ。そう言ってみても、恥ずかしがる姿は変わらなくて。

 それどころか、不意打ちの猛攻撃を食らってしまった。

「……も、桃花ちゃんは優しいし、癒し系の存在だから、吹雪くんとお似合いだと思うな」

 にこにこ、となんて笑っていられない。"吹雪くん"、"お似合い"という単語が私の思考を独占し、ぐるぐると廻り始める。身体の奥で何かが弾け散った、そんな熱さに襲われる。急上昇する私の体温。頑張って平然を装うとするが、簡単に砕け散った私の努力。
 波のように襲い来る羞恥心に押し流され、同時に忙しく駆け足になる鼓動は、抑えようが無かった。無意識に噛み締める下唇。

「……今は、円堂くんも吹雪くんもサッカーに夢中で私たちのことなんか、気付いてくれてないと思う」

 少し切なげに、話し出す秋さん。静かな口調だからだろうか。余計に言葉が身に沁みる。やっぱり秋さんは、皆のお母さんだなぁと改めて思った。

「でも私は、円堂くんの笑顔に——彼のサッカーに惹かれたから、今はその姿を見ていられるだけで幸せだな」

 ちょっぴり照れたようにはにかむ秋さん。鈍感な円堂くんのことだから、自分に想いを寄せてくれている存在に気付いていないのだろう。いや、その好意を違う意味で受け取っているのかも。
 そう考えると秋さん、健気だな、なんて思ってしまって。でも、秋さんがサッカーを見ているときの瞳は輝いているから、それはそれで幸せなのかもしれない。
 だって、私も同じだから。

「私は、士郎の隣にいられるだけで幸せです。昔のことを考えると、今の状況なんて願ったり叶ったりですから」

 でも、私だって。

「だけど……少しくらい欲張りになっても良いですよね」

 ずっと隣にいたい。笑い合っていたい。きみと一緒に、時間と空間を共有したい。

「私もそうだよ。だって、円堂くんのこと、」

 リップを塗ったばかりなのだろうか。光に綺麗に反射する唇が、「す」の文字を形作る。彼の前で言うのは無理だけど、自分の想いを言葉にして確認するのも悪くは無いものね。続きの言葉がほんの少しだけ作られた時、二人の空間に突然の来訪者が訪れる。

+しずく様リク+その2 ( No.198 )
日時: 2011/05/15 22:29
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 0fWfwKh9)




「どうしたんだ、二人とも? 俺が何だ?」
「え、円堂く……」

 ぷしゅー。湯気が立ち上る秋さん。あとちょっと円堂くんが早かったら。秋さんは何の覚悟も無しに告白を完了させるところだった。そう考えると、運命って——偶然って本当に恐ろしいものだ。
 わなわなと震える秋さん。不思議そうに笑う円堂さんに苦笑を向けると、私の背中に隠れてしまった秋さんを摩った。今さっきまでそういう話をしてたんだもの。仕方が無いよね。

「桃ちゃん、今日の夕飯はなぁに?」

 ひょっこりと現れた、噂の人その二。秋さんが言いかけた言葉が脳裏を過ぎり、体温が右肩上がりに突き進む。

「あ、えっと、その……ハンバーグ、だよ!」
「桃ちゃんが作ってくれるんだ。楽しみだなぁ」

 いつもマネージャー四人で作ってるのに。こんな時に限ってタラシな発言をされるものだからまともに顔を合わせられなくなってしまった。うぅ、一人だけ意識してる私が恥ずかしい……。

「もう練習、終わったからさ。じゃあ、今日の夕飯、楽しみにしてるぜ!」
「いつも美味しいご飯を有難う、マネージャーさん、桃ちゃん」

 私だけ別に呼ばれたことに、また鼓動が駆け足になる。
 けれど気付けばもう、メンバーは続々と帰ってきていて。真っ赤になって固まっている秋さんの肩を揺する。

「秋さんっ! 急がないと、間に合いませんよ〜!」
「……そうよね、うん。頑張らなきゃ……」

 無言でそれぞれの持ち場につく。居心地の悪い沈黙。だけど、もうどうしようもなくて。
 でも何か、言っておきたい。

「……秋さん」

 お互いに、同じ悩みを持つ私達だから。

「マネージャーの仕事も恋も、一途に真っ直ぐ、頑張りましょう!」

 返事らしい言葉は返ってこなかったけど、代わりに暖かい微笑が向けられた。
 思いがけず、ほっこりと暖められたココロを抱いて、今日はとびきり美味しい夕飯を作ろうと私は一人、静かに口元を綻ばせるのだった。



 -fin-

 〜反省会〜

や ら か し ま し た !

ガールズトークになっていない気がしますが、これが限界なので諦めました←
ふむ、照れる描写って難しい。てか全てが難しい……でも秋ちゃんと桃花の会話は書いていて楽しかったです^^
二度目のリクでしたが、如何だったでしょうか? しずく様の足元にも及ばない力でしたが、頑張りました(キリッ ガールズトーク難しいけど楽しいってことに気付きましたw感謝ですw
気付いたら暴走していたため、二つに分かれてしまいました;見難かったらゴメンなさいっ!

それではしずく様、リクありがとうございました!