二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.1 )
- 日時: 2010/12/06 15:37
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
第1章「選ばれてしまった家族」
日本の某所、都会の交差点に一人の女が歩いている。ビルに設置されている大型のテレビがニュースを放送している。真面目そうな男のアナウンサーがこう伝えた。
「超能力を持った人間がここ近辺に潜伏しています。注意してください。」
女は溜め息をついて、つぶやいた。
「なんで、こんな能力を持ってしまったの・・・・・」
始まりは3ヶ月前、日曜日の夕方だった。普通の主婦のフグ田サザエは母の磯野フネとともに夕食を作っている。今晩のメニューはカレーライス、子供達には好評のメニューだ。匂いに釣られたのか三人の子供達が一斉に居間に駆け込んできた。
「わーい!今日はカレーだ!」
隣の家にも響くような声でフネの息子の磯野カツオは叫んだ。
「お兄ちゃんは子供ね、カレーでこんなに喜ぶなんて」
続けてカツオの妹のワカメが大人びた様子でカツオに言った。
「いいじゃないか!カレーで喜んでも」
いつものように兄妹ケンカが始まる。それを尻目にサザエの息子のフグ田タラオは黙々とカレーを食べている。その時、居間の襖が開いたと同時に磯野波平は叫んだ。
「馬鹿もん!静かにしなさい!」
町内に響き渡るような声で兄妹ケンカを沈める。最後に居間に来たのはサザエの夫のマスオ、ちなみに眼鏡が光って格好良く見えるのはサザエだけだ。
「みんな揃ったみたいだね」
フネが優しい声で言う。彼女は、たしか先週もこのような感じで家族が集まったような気がした。頂きますの合掌をしたあと、一日を振り返る話をしながら夕食を食べる家族。その頃、上空に光るものが現れた。
食べているカレーも皿の半分になった頃、異変に気が付いたのはマスオだった。
「さっきから何か変な音がしないかい?」
震えた声で異変を伝えた。その音を聞きつけたサザエが
「そうね、何か飛んでくる音がするわね」
「怖いです〜!」
タラオが脅え始めた、謎の音は刻一刻と近づいてくる。波平を中心に家族が固まり始めた途端に轟音が響いたと同時に天井に大きな穴が開いた。
「な、何だ!?これは!?」
カツオが驚くのは当たり前だ。家族の目の前に現れたのは透明色の隕石だった。
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.2 )
- 日時: 2010/12/06 16:09
- 名前: ライアー ◆V5wAVYppW6 (ID: zQJPnDCy)
めっちゃ面白いです!頑張ってください^^
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.3 )
- 日時: 2010/12/06 16:28
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
落ちてきた隕石に飼い猫のタマは興味を示し、触れ始めた。
「これは、隕石かな・・・・・」
「こんなものが落ちてくるなんて・・・・・」
家族の動揺を断ち切ったのは波平だった。
「みんなで協力して、これを外まで運ぶぞ。」
この意見に初めに賛成したのはフネだった。
「そうですね、邪魔になるだけですからね。」
隕石で遊んでいたタマに餌をあげ、七人で隕石を持ち上げた。隕石は予想以上に重く、外に出すのに5分は掛かった。この隕石に触れるという行為がこの話の始まりだった。
夜が明けて、月曜日の朝に珍しくワカメが寝坊をした。急いで支度をし、家を出たのが遅刻5分前、必死にワカメは走った。
「このままじゃ、遅刻しちゃうわ・・・・・」
その瞬間、ワカメは意外な景色を目にしたのだ。
「な、なんで教室に居るの・・・・・」
教室には楽しそうにお喋りをするクラスメイトの姿が彼女の目に映っている。
教室に掛けられた時計を見るとワカメが家を出た時間を針が指していた。
「どうして、家を出た時間に教室に居るのかしら・・・・」
午前11時、フネは婦人会が終わり自宅まで帰る途中に財布を見つけた。
「あら、お財布が落ちているわ」
フネが財布を手にした瞬間、近所に住んでいる河野さんの顔が頭に浮かんだ。あまりにも鮮明に脳に映ったので、もしかしてと思い河野さんの家へ向かうことにした。
「これは、私の財布だわ!ありがとうございますわ!」
「いえいえ、それではまた」
どうして、河野さんの顔が浮かんだろうと疑問を抱きながらフネは自宅へと歩いていった。
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.4 )
- 日時: 2010/12/06 16:39
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
ライアーさん、感想ありがとうございます^^
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.5 )
- 日時: 2010/12/07 14:22
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
一方、サザエとタラオは我が家で親子水入らずの時間を過ごしている。コーヒーの匂いがサザエの鼻をくすぐる。すると、突然タラオが一枚の紙を見せてきた。紙にはコーヒーを飲んでいるサザエが描かれていた。サザエは驚いたように
「いつのまに写真を撮ったの?タラちゃん」
とタラオに聞く、タラオもびっくりしたように
「カメラなんて使ってないです。勝手に絵が出てきたですよ。」
と答えた。タラオがついた可愛い嘘だと思い、この絵を部屋に飾ろうと思うサザエであった。
夕方になってマスオと波平が一緒に帰ってきた。子供達が仲良く二人を玄関まで迎えにいく、夕食になって家族が今日あったことを話し始めた。ワカメがいつの間にか教室に居たこと、フネが拾った財布の持ち主の顔が鮮明に浮かんだこと、タラオが写真のような絵を描いたことなどが話題に上った。しかし、その中でカツオが黙って食事を食べている。彼はテストで20点を取ってしまったことを波平から隠そうとしていた。カツオが焼き魚に箸を伸ばしたとき
「カツオ、テストで20点だったのか」
波平が口を開いた。カツオは心臓が止まるほど驚いた。それと同時に口を開き
「ど、どど、どうして分かったの!?」
「仕事中、急にカツオの声が聞こえてな」
「お兄ちゃんは、なんて言ってたの?」
興味津々なワカメが波平に聞く。
「うむ、お父さんに見せたらマズイ!と言ったおったな。それに今、テストを小さく畳んで服の中に隠しておるだろ」
これを聞いた、マスオが茶碗を卓袱台に置き、こう切り出した。カツオはテストの隠し場所まで当てられ動揺している。
「まるでテレパシーと透視みたいですね、お父さん」
「テレパシーって何ですか?」
幼いタラオが母親であるサザエに聞いた。
「そうね・・・・離れていても言葉が伝わるっていうことかしら」
「すごいです〜!」
無邪気な声が食卓に響いた時、マスオが叫んだ。
「みんな、急いでテーブルの下に隠れるんだ!」
全員が何事かと思ってマスオを見たが、彼は本気で言っているようだ。その言葉に従い、猫のタマも含め7人と1匹がテーブルの下に集まる。数秒後、家が激しく揺れた。震度3はあるだろうか、かなり大きい地震が襲ってきたのだ。しばらくして、揺れが収まり全員が落ち着いた時にカツオがマスオを見ながら
「マスオ兄さん、なんで地震が来るって分かったの?」
「僕も分からないんだ、急に地震が起こる映像が現れて・・・・・」
その時、地震の影響で不安定になった花瓶がワカメの頭を目掛け落ちてきた。
「あっ、危な〜〜い!!」
サザエが叫んだ瞬間に花瓶の動きが止まり、宙に浮き始めた。
「えっ、花瓶が宙に浮いてる・・・・・」
「サ、サザエ!花瓶を棚に戻せるかい?」
マスオに聞かれ、サザエは花瓶を棚に戻れと念じた。案の定、花瓶はサザエが念じた通りの動きをした。
「間違いない、僕らは超能力を使えるようになっているみたいだね」
ずれた眼鏡を直しながらマスオは確信した。
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.6 )
- 日時: 2010/12/08 13:26
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
「ちょ、超能力ですって!?」
サザエが声を震わせた。マスオは自分の部屋に戻り、帰ってくる、手には一冊の本を持っていた。タイトルには「超能力の存在」と書いてある。本を開き、ページを繰りながら話し始めた。
「少し前に面白そうだから買ってみたんだ。この本には色々な超能力の種類が書かれているよ。今までの話をまとめると・・・・・」
ワカメも一緒に本を覗きながらマスオに聞く。
「私はどんな超能力を持っているの?」
「ワカメちゃんは、いきなり教室に居たんだよね?ということは一瞬で場所を移動できる(瞬間移動)を使えるようになったみたいだ。」
フネも気になったようで、マスオに同じ質問をした。
「お義母さんは、財布に触れた瞬間に落とし主の顔が浮かんだ、ということは触れた物体の残留思念を読み取る事が出来る(接触感応)ですね。」
「接触感応って何?マスオさん」
「物体には持ち主の記憶ってものがあってね、それに触れることによって、その物体の持ち主の顔、どういう時に使っていたかなどの色々な情報を読み取れるんだ。」
カツオは眉をひそめた、どうやら理解できていないらしい。
フネの次はタラオの超能力を調べた。
「タラちゃんは写真みたいな絵を写し出した。ということは(念写)が使えるんだね。」
「パパ、ネンシャって何ですか?」
「タラちゃんが見たものをクレヨンなどで描かなくても頭で念じれば絵が浮かび上がるんだよ、だから写真みたいなものになったんだね。昔の記憶も未来も念写できるんだけど、記憶が曖昧だとぼやけた絵になってしまうみたいだ。」
「格好良いで〜す!」
タラオは体を使ってものすごく喜んだ。
次は波平とカツオの能力をマスオは調べていく。
「お義父さんの能力は恐らく(透視)ですね、カツオくんのテストの隠し場所を当てましたから、カツオくんは(テレパシー)だよ。相手に自分の言葉を声を使うことなく伝えられるんだ。」
どうせなら瞬間移動が良かったとカツオは思いつつ一つの疑問が浮かんだ。
「超能力を使おうと思っていないのに、どうして使うことが出来たの?」
「たぶん、超能力を得たばかりで精神が不安定だったから無意識で使ってしまったんだろうね」
最後にサザエとマスオの超能力を本から探し出した。
「サザエは花瓶などの物体を宙に浮かせた、つまり物体を手を使わなくても操れる(念力)を使えるんだね。ちなみに僕は地震など、これから起こることを予測できる(予知)が使えるみたいだ。」
その時、台所に居たタマの口から火が出た。ライターほどの小さな火だったが、これも超能力かと思いページを再び繰り始めた。
「あった、タマの能力は火を自在に発生させる(発火能力)だね。みんな、危ないから気をつけてね。」
「まさか、私達が超能力を使えるようになるなんて思いもしなかったわ。」
食べ忘れていた夕飯に再びありついたのは、サザエが花瓶を浮かせてから30分後だった。しかし、一口食べたあと居間の窓を叩く音がする。全員が窓を見ると一人の男が外に立っていた。
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.7 )
- 日時: 2010/12/07 17:15
- 名前: ACT (ID: nrzyoCaD)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
すごいおもしろいです!!
ホントおもしろい!!
僕もサザエさんの小説書いてるんですけどお互い頑張りましょう^^
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.8 )
- 日時: 2010/12/07 17:35
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
ACTさん、感想ありがとうございます^^
爆想サザエさんも、すごい面白いですよ!
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.9 )
- 日時: 2010/12/08 11:48
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
「玄関からお上がりください」
フネが男に言う、男はにっこりと笑いながら玄関へ向かった。窓から見ると暗くて分からなかったが、男は40代ぐらいで身長は170cmほど左目の下にはホクロがあった。男は自分の名刺を一家の主である波平に差し出した。名刺には内閣総理大臣秘書官と書かれている。
「いきなり押しかけて申し訳ありません。私、総理大臣の秘書をしております宇凪登(うなぎ のぼる)という者です。」
非常に丁寧な自己紹介を受け、サザエ達は宇凪を居間に迎えた。
宇凪が腰を下ろした瞬間、波平が宇凪と話し始めた。
「総理大臣の秘書というと、あの城宮竜雄(しろみや たつお)さんの?」
「はい、本来は首相も来るはずでしたが忙しい身でして私だけがこちらに参らせていただきました。」
何故、総理大臣ともあろう方が一般の家庭に来るのかと疑問に思ったのだ。
「こちらに来た理由は外でもありません。昨日、こちらに隕石のようなものが落ちてきませんでしたか?」
「ええ、透明色をした隕石が落ちてきました。」
波平は隕石の特徴を交えながら宇凪の質問に答える。
「その隕石はどこへ?」
「家族全員で庭に片付けましたが・・・・・何か?」
宇凪は詰まった声でこう答えた。
「ここだけの話ですが私ども政府の研究機関で70年前から超能力の研究をしてきたのです。そして近年、超能力を使える源となる物質が発見されました。しかし、その物質は宇宙にあり採取することが困難だったのです。」
家族が沈黙する。自分達が隕石に触れたことで超能力を手に入れてしまった事実を知ってしまったからだ。続けて宇凪は
「その物質は地球の空気と化合する事によって超能力を人体に流し込めるようになるのです。空気と化合してから12時間で効果は無くなります。私は隕石の落下地点から、この家を割り出しここに来ました。窓から覗かせていただきましたが、あなた方は家族全員が隕石に触れてしまったようですね。」
宇凪はサザエの念力を見ていたのだ。時計の針は午後8時を指している。長針が動いたとき、宇凪はこう切り出した。
「あなた方の超能力を政府に譲っていただきませんか?」
その一言が磯野家の時間を止めた。
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.10 )
- 日時: 2010/12/08 13:14
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
長い沈黙をサザエが破る。
「超能力を譲るって・・・・・どうやって?」
その質問に丁寧に宇凪は答えた。
「超能力は特殊な脳波を使います。その脳波をコピーし、通常の脳波と結びつければ念力などが使えるようになるのです。もちろん、あなた方の特殊な脳波を通常に戻すことによって超能力を消滅させることも出来るのです。」
マスオは理解をしたようだ、それと同時に気掛かりなことを質問した。
「超能力をどのように利用するのですか?」
その一言で目を輝かせた宇凪が答える。目が輝いた理由は期待していた質問をされたからだ。
「たくさんの人間が超能力を使えるようにします。たとえば、マスオさんの予知を使えば地震や津波などが来る前に国民に一刻も早く避難指示が出来ます。フネさんの接触感応は殺人事件などの遺留品から犯人を見つけられますし、ワカメちゃんの瞬間移動とサザエさんの念力を使えば他国の災害現場に一瞬で駆けつけて念力で瓦礫などを持ち上げて人を助ける事も可能です。」
興奮しながらも丁寧に超能力の応用例を説明した宇凪に警戒心を解いた一家の主が口を開いた。
「素晴らしいお考えで感動いたしました、協力いたします。」
「本当ですか!ありがとうございます!」
礼をしっかりと受け止めたフネが続けて
「それで、どうすればいいのですか?」
「来週の日曜日に私がお迎えに上がります。しかし、それまでに超能力は極力使わないようにしてください。なにしろ、現段階では公式に認められていませんからね。」
ハンカチで軽く汗を拭ったあと、宇凪が立ち上がり玄関に向かった。
「ご協力感謝いたします、良き日本になるように首相と一緒に努力していきます。」
宇凪はそう言うと深いお辞儀をし、黒い外車で帰っていった。
「ふ〜、緊張したわ。まさか政府に協力するなんてね」
サザエが大きく深呼吸をすると、カツオがサザエを見ながら
「僕達、日本を救うヒーローになるんだね!」
と興奮しながら自分の部屋へ戻っていった。
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.11 )
- 日時: 2010/12/10 22:46
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
あっという間に約束の日曜日が訪れた。ワカメが外を見て午前9時の天気を確かめる、もうすぐ雨が降りそうだ。車のエンジン音が聞こえたので玄関を覗くと宇凪が車から降りてくる姿が見える、サザエが大きな声でそれぞれの部屋で支度をしていた家族を呼び出した。
「姉さん!その格好は恥ずかしいから止めてよ!」
カツオがサザエの服装を見て目を覆い隠した。サザエはいつものメイクよりも厚化粧と言ってもおかしくないほど施し、派手な黄色のドレスを着ていた。さらに玄関では赤いハイヒールを履き、カツオの顔を赤くさせる。外に出ると宇凪が待っていた。
「皆様、お待ちしておりました。それでは車内へどうぞ」
見るからに高級であろう外車に近づくと黒服の屈強な男がドアを開ける、恐らく磯野家のSPであろう者だった。
「まるで有名人の扱いだな、緊張してしまうな。」
声を震わせた波平が先に乗車した。続いてフネ、カツオ、猫のタマと順に乗っていく。最後にマスオを乗車させるとSPは家族の人数を確認した。
「7人と猫1匹で間違いないですね?」
「ええ、これで全員ですわ」
「それでは出発いたします、ここから研究施設までは1時間ほど掛かります。」
SPが運転を務め、エンジンを発進させる。エンジン音は意外と静かであった。
出発して早々、緊張感の無い子供達がはしゃぎ始めた。冬の終わりであったが外は寒かったので車内の暖房が一家を暖める。はしゃいでいる子供の声の中から宇凪の声が聞こえた。
「これからの日程を説明いたします。施設に到着しましたら健康診断を受けていただき、異常が見つからなかった場合は私が超能力の脳波をコピーする場所までご案内します。全行程が終了するのは夕方ですので昼食はこちらでご用意させていただきました。」
そうしている間に景色は一気に都会へと変わってしまった。サザエ達が住んでいる町の雰囲気は無い。高級車の心地良さに慣れてきた頃、ついに研究施設に到着した。頑丈そうな門が独りでに開く。外車から降りると一家の目の前には東京ドームを遥かに上回る大きさの建物がそこに広がっていた。
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.12 )
- 日時: 2010/12/11 21:49
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
施設を見上げながら足を進めていく、施設内に入ったのは車から降りて5分が経ってからだった。中はとても広く、宇凪が言うには地下3階、地上10階建てらしい。サザエ達は2階でレントゲンを撮られ、病気などは無いか調べられた。結果は家族全員が健康であり宇凪は早速、一家を超能力の研究室がある地下3階にエレベーターで案内した。
「こちらが超能力の研究室でございます、それではお入りください」
「いよいよ、超能力が実用化される時が来るのね!」
ワカメは心臓が高鳴る音が聞こえるような気がした。宇凪はカードキーで研究室の扉を開ける。その瞬間、眩しい光が宇凪の目を襲った。
「くっ!なんだ、眩しくて目が見えない!」
何が起こったのか分からくなった時、高い声がした。
「みんな、私に付いてきて!」
光の中で一つの影が家族の前を通り過ぎる、気が動転したまま家族は影と一緒に走り出した。
エレベーターに入ると影の正体が分かった。黒く長い髪が印象的な女性で身長は高く175cm以上はあるだろう、女性は一呼吸すると口を開いた。
「いきなり驚かしてごめんなさい。私の名前は海老野サクラ(えびの サクラ)ここで超能力の研究をしていたの。」
マスオは呼吸を整えるとサクラに聞いた。
「なんで、宇凪さんから逃げたんだい?」
「最初、私は超能力で人助けをするという宇凪の言葉を信じて研究を続けていたわ。だけど一週間前に宇凪が首相と電話していた内容を聞いてしまったの。」
「宇凪さんは何と言っていたのですか?」
続けてフネがサクラに聞く。サクラは数秒黙って口を開けた。
「驚かないで聞いて欲しいわ。奴らは超能力で世界を支配しようとしているの。」
その言葉に猫のタマも鳴き声を上げる。猫でもこの事態は危険だと気づいたらしい。
「あなた達に説明した超能力の利用法は全て嘘よ。瞬間移動でいきなり各地に現れて念力や発火能力で襲い掛かり、予知でいつ他国から攻撃が来るのかを知ることが出来る。つまり、超能力を悪用してこの世界を我が物にすることが奴らの目的だったのよ。」
全員が黙り込んでしまった、エレベーターは屋上に向かうらしい。
「私はあなた達がここに来た瞬間に超強力発光装置で宇凪の目を眩ませて、この施設から逃げる事を決意したわ。」
エレベーターが屋上に辿り着いた。目の前に現れたのはヘリコプターが置かれている。その瞬間、非常階段から宇凪とその部下達が上ってきた。
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.13 )
- 日時: 2010/12/12 15:54
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
宇凪は凄い形相でこちらを追って来る。一家とサクラはヘリコプターに向かって必死に走った。
「海老野サクラ、裏切りやがったな!お前達、数人のグループに分かれてそれぞれ家族を捕まえろ!」
数十人の部下が一家に襲い掛かる。まだ小さなタラオの体に部下の一人の手が触れたとき、宇凪と部下達の体が何かに弾き飛ばされた。
「ぐはっ!こ、これは念力か!」
「あなた達、私達のタラちゃんに触らないで!」
サザエの念力が発動し、宇凪達を屋上のコンクリートに叩きつけた。その隙にサクラはヘリコプターに乗り込んだ。
「みんな、早くヘリに乗って!このままじゃ、ずっと研究所の中で生きなきゃいけないのよ!」
その言葉にサザエは我に返りヘリコプターに乗り込んだ。家族全員が乗ったときヘリコプターが浮き始める。どうやらサクラはヘリの操縦が出来るらしい。ヘリが動き出した事に気づいた宇凪は、ある装置を取り出した。
「逃げられてしまうのは惜しいが、まだ策はある。これでも喰らえ、浮遊物撃墜砲!」
宇凪は浮いているものを撃ち落とすことが出来る砲弾をヘリに打ち込んだ。見事にヘリに着弾し派手な爆発が起きた。
「きゃ〜!助けて〜!」
ヘリに乗っていた全員が空中に放り出された。下には歩いている沢山の人が見える。近くでフネやマスオの叫び声を聞いたワカメの様子が変わる、瞬間移動を発動させるらしい。
「今から一人一人に瞬間移動を使うわ!それぞれ、どこに移動するか分からないけどまた会えるって信じているから!」
「そんな、ワカメ!」
カツオがワカメに向かって叫ぶ、タラオはタマを抱えたままだ。
「世界が支配されるよりかはいいわ!」
「それじゃあ、使うんじゃな?」
波平の問いにワカメは黙って頷く、波平はワカメを信じるようだ。
「いくわよ・・・・・瞬間移動!」
突然、景色が光り始め空中から家族の姿が消えた。宇凪は悔しそうな顔をしている。真昼の太陽がコンクリート・ジャングルを照らしている。サザエが瞬間移動の直前に聞いたカラスの鳴き声が引き裂かれた家族の冒険を知らせる合図であるような気がした。
- Re: サイキック!サザエさん〜日常を求めて〜 ( No.14 )
- 日時: 2011/01/02 21:15
- 名前: 気まぐれ (ID: i0zh.iXe)
第2章「神の落としもの」
僕は時々、自分に嘘を吐いてピンチを乗り越えてきた。特にテストで悪い点を取ったときやイタズラが見つかったときだ。本当にこれでいいのかなと思うときもある。だけど自分が可愛くて、自分を守りたくて・・・・・
施設の屋上からテレポートする瞬間、神様みたいな光を見た気がする。その神様が僕に指差してにっこり笑ったんだ、あれは何だったのだろう。嘘つきの僕を面白がっていたのかな?これから、どうすればいいのだろう?
僕、磯野カツオは家に落ちてきた透明な隕石に家族全員で触った瞬間にテレパシーという超能力を手に入れてしまったんだ。それが原因で世界征服を企む総理とその秘書の宇凪によって家族がバラバラになっちゃった。目を覚ますと僕は見慣れた景色の中に居た。どうやら、僕に使ったワカメのテレポート能力は運良く家の近所の公園へ移動させたらしい。とりあえず歩ける距離だったので家に帰ることにした。
家に着いたが誰も居ない、みんな遠くに飛ばされたらしい。今までのことは夢じゃない、信じたくもない。
「誰も居ないの?」
大きな声で叫んだが返事はない、急に寂しくなってきた。何かニュースになっているかもと思いテレビを点けたが昼のワイドショーを放送しているだけで、どこの局もニュース番組はやっていない。
「みんな、何処に行ったんだろう・・・・・」
その時、庭で大きな音がした。駆け足で庭へ向かうと、サクラさんが倒れていた。
「サ、サクラさん!?」