二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 魔法募集中 ( No.614 )
日時: 2011/09/27 21:31
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
参照: 明日は休みじゃァァァ!!!!!



44 決意と思い

《お前の仲間を一人残らず叩き潰してやる》

あの時の修也の瞳は、真っ赤な憎悪の色で染まっていた。獣のような視線で睨まれた。

「サッカーが好きなのに…どうして…」

ベッドに転がり、天井を見つめながら、円堂は呟いた。

——自分の気持ちの嘘をつくなんて、そんなこと、辛いだけじゃないか…

《お前とは戦えない》
《円堂、俺はお前みたいに強くないんだ…》
《風丸さんの言う通り、エイリア学園に勝てる訳ないでヤンス》

——俺って自分勝手なのかな?
エイリア学園の時もそうだった。ただ、エイリア石の野望を打ち砕くことしか考えていなく、結局、豪炎寺や風丸たちのことを考えていなかった。吹雪も、二重人格に苦しんでいることに気付いてあげられなかった。

すると、ドアがコンコンとノックされる音が部屋に響いた。

「円堂くん、ちょっといいかな?」
「夏未?」

声も同じで、一瞬雷門かと思ったが、口調が明らかに違う。
ドアが開けば、ポニーテルの少女。守の様子を見た後に、すぐここへ駆けつけた。彼の様子が気になった、ということもあるが、もう一つ重大な話が彼女にはあった。

「一つ話があるの」
「話?」
「う〜ん、ダークエンペラーズの事なんだけど……あの世界に———」





「だから、君たちにとっても、あの世界に行くことはお得、というよりも、絶対に行かなくちゃ行けなくなるのよ」

夏未の話は衝撃的だった。その話が本当ならば、自分たちは必ずあの世界に行かなければならない。

「それ本当なのか?」
「さぁ〜、私もよく分らないのよね…秋からの情報だし……」
「でも、その話が本当でも嘘でも俺は行く、いや、行かなくちゃいけないんだ…守たちにもう一度サッカーをやらせるためにも……」

円堂の視線は下を俯いていた。しかし、その瞳はいつにも増して強い意志がこもっている。

「本当にそっくりなのね、郁斗に…」
「えっ?」
「フフッ、あなたの意志は分かったわ。後はゆっくり休んでて」
「……あっ!」

気が付いた時には、夏未はもうこの部屋には残っていなかった。

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 魔法募集中 ( No.615 )
日時: 2011/09/27 21:31
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
参照: 明日は休みじゃァァァ!!!!!

「痛い痛い!!!」
「動くな…」
「動くな、つったって…ぃたい!!!どうやって治療してんだァァ!!!」
「何してんのよ〜アンタ達」

再び、医療室に来た時には、すでに先客がいたのだが、それとともに、守の叫び声が響いていた。

「傷が完全に治ってないから、治療……」
「治療じゃねぇだろ!!!暴力ッ、分かったから!痛いんだってばッ!!」

秋には少しだけ面倒くさがり屋のところがある。自分の魔力を無駄にはしたくないし、使えば体力だって消耗する。だから、小さな傷は森の中でとれる野草をすり潰した物を使うはずだが、今、秋が持っているものは、透明な水が入っている瓶……あれは一体何なのだろうか。しかも、空いている右手には銀色のはさみのようなものに、白い綿が挟まれてある。

「あ、秋さん?そ、それは〜何でしょう?」
「もう一人の私から借りた…いつもの草薬がなかったから…」

《傷薬がないの?だったら、これ先に使ってて、消毒液だから、傷薬は私が探してくるわ》

「って、言った…」

いきなり触れたこともないものを使え、と言われても、普通の人なら使い方が全く分からないだろう。さすが、秋だな、と言ったところか。

「よく使い方分かったわね」
「音無に教えてもらった…」
「あっ、そうなの…」

さっきの考えは間違えだったようだ。まぁ、当たり前の事だろう。
すると、守は片目をつぶりながら、人差し指で秋を指しながら、文句を投げつける。

「こいつ、荒いんだよ!やり方g痛いぃぃいい!!!」

さすがに秋も少し頭にきたのか、たっぷりと消毒液をつけ、守の傷口に向かって思いっきり凶器(白い綿)を押し込んだ。

「夏未さん、来てたんですか」
「あっ、木野さん、ありがとうね、薬貸してもらって」

次に医務室に入ってきたのは、木野だった。両手にはいろいろと道具を抱えている。大体見たことのないものだった。

「いろいろ、あるのね」
「はい、傷薬持って来ましたけど」
「いらなぃ…うぅ〜!!ったいぃぃ!!!」
「動くな…その口、二度と開かないようにしてやろうか?」

銀色のピンセットがキランと怪しく光った。そして、それをもう一度消毒液へとブチ込む。

「あっ、つけ過ぎだよ!!!」
「ほら!人の体を実験台にするんじゃねぇ!」
「…これを全部ぶっかけてやろうか?」

瓶を守の目の前までに近づけた。さっきから、強い匂いが漂っているのは分かっていたが、近くで嗅ぐとより一層匂いが鼻を刺すように刺激する。

「ごめんね、うるさいだろうけど、いつもこうだから」
「ハハッ…そうなんですか…」

今、目の前では、もう一人の自分が無表情で守を攻撃している。いや、無表情と言っても、少し楽しそうだ。さっき、注意したばかりなのに、未だに消毒液を背中の傷口に塗ろうとしている。

「しょ、消毒液はもういいから、次は傷薬を塗りましょ」
「あっ、木野さん、適当にやっていいから。守の体丈夫だし、少しくらい殴っても死にはしないからね」
「人の体をなんだと思ってんだよ!!!」

夏未を怒鳴りつけても、彼女はちっとも動じない。それどころか、窓から見える景色を眺め、完全に守の声など耳には入っていない。

「ちょっといい?」
「……」

木野が来ると、秋はさりげなくその場を彼女に譲った。
改めて近くから見ると、傷口がとても大きい。鎌のようなもので、大きく×を描くようにつけられている。それに、血は止まっているが、傷跡がとても痛々しい。
それと、もう一つ気が付いたことがあった。

——円堂くんと同じ背中だ…

無茶をして、いつも自分の体をいじめている彼の体は、ボロボロだが、とても勇ましく見える。その体を張って、雷門中のゴールを守ってきた。それと同じ。守の強くなろうと、ひたすらに体を傷つけ、冬花をこの国を必死に守ろうとしている。冬花が「似ている」と言ったのが、今となっては分かる気がする。

「ちょっと、しみるかもしれないけど、我慢してね」

クリーム状の薬を人差し指ですくいあげ、背中の大きな傷に塗りつけた。
少しだけ、守の体がビクッと小さく跳ね上がった気がするが、今のところ彼が叫ぶ様子はないので、大丈夫だろう。

「塗り慣れてるんだな」
「えっ?」
「いや、薬の話」
「一応マネージャーだから、それに円堂くんもよく怪我をするし…しかも、皆に心配かけないように、隠しちゃうときもあるけど、本当に嘘つくの苦手みたいで、バレた後は引っ張り出してまでも、休ませるんだけど」

普段の円堂を思い浮かべて、木野は小さくクスッと笑った。
その表情を見ただけで夏未は勘付いていた——この子も円堂に魅かれたのだ。
皆そうだった。円堂の話をしている時は幸せそうで、笑顔が輝いている。彼と一緒にサッカーをしている子たちも、いつも楽しそうだ。自分も彼のその力に魅かれたのだろうか。気づいた時には、封印していたサッカーの除縛を、自ら解き放っていた。

「本当、魔法にかけられちゃったのかな?」

ひょっとしたら、円堂は魔法が使えるのかもしれない。この世、いや、すべてのパラレルワールドの中で最強の魔法が。

「?夏未、どうした?ボケッとして」
「別に」
「いや、勘付いてはいたけれど、ついに頭がおかs「背中の傷、もう一つ追加してあげましょうか?」…ごめんなさい」
「塗り終わったよ」
「……少ないかと」

秋がそういうのは、当然だ。さっき彼女は守を懲らしめるため、大量に薬を塗っていたのだから、感覚がおかしくなっているのではないか、と守は心の底で思っていたが。それを言ってしまうと、また何をやらされるか分からない。

「さ、さっきのは〜ちょっとつけ過ぎかな?」

木野も苦笑いを零すしかなかった。

Re: イナズマイレブン 異世界の危機 魔法募集中 ( No.616 )
日時: 2011/09/27 21:32
名前: 桜花火◇16jxasov7 (ID: /HyWNmZ0)
参照: 明日は休みじゃァァァ!!!!!

「円堂、本当にいいのか?」
「あぁ!俺はやっぱりダークエンペラーズと戦う!」

風丸の問いに、円堂は力強く答えた。やっと、自分の気持ちに整理がついたらしい。

「アルティスを引きづり出すにも、それが一番いいんじゃないか?」
「アルティス、か…でも、アイツは俺たちを狙ってるんだろ?」
「えっ、うん…」

豪炎寺と鬼道の二人を交互に見つめて、円堂は少し俯いて、返事をした。

「わざわざ俺たちが、火の中に飛び込む必要はあるのか?」
「僕はキャプテンの意見に、少し賛成の気持ちもあるな〜」

おっとりした口調で、吹雪はテーブルに置いてある、水を一口飲み込んだ。

「だって、この気持ちのまま、僕たちが元の世界に帰ったとしても、残るのは後悔だけ。だったら、後悔が残らないように、全力でやり抜くことが、イナズマジャパンなんじゃないのかな?」
「でも、少しって…」
「うん、やっぱり、危ないかもしれない。僕たちは魔法が使えないし、何より、こっちのキャプテン達みたいに、体術もそんなの上手ではない。護衛をつけている、って言ったって、五人でこんな大人数を庇いながら戦うなんて、無茶だよ。それに、僕たちに魔法の発動は有効だ」

最後の一言だけ、吹雪の表情がガラリと変わった。簡単に言えば、明るいものから暗いものへと。

「それはどうかしらねぇ」

コッコッと靴音を響かせて、円堂たちの溜まり場(食堂)にやってきたのは、このタイミングからして——

「夏未」
「盗み聞きかよ」

少しグレたように綱海が吐き捨てた。

「ごめんなさいねぇ、私、盗み聞きが趣味だから」
「さっきのはどういう意味なの?」
「そのままの意味よ。庇いながら戦うのは無理って言う話」

そのまま、夏未はすぐ近くにあった椅子に手を掛けると、ドカッと足を組んで、座り込んだ。お嬢様である雷門では到底ありえない行動を、同じ顔の人物が思いっきりその顔を壊している。
だんだんと円堂たちの中に固定されている雷門が、最近崩れ落ちていく気がしている。
お構いなしに、吹雪は言葉をつなげた。

「自分の腕にそんな自信があるんだね」
「そりゃあね、一人だけだったら、私でも無理よ。でも五人だったら話は別、コンビネーション技とか、互いの息とか合ってれば、百人力よ。まっ、合ってれば、の話だけど」
「……」

確信のない言葉に、言葉を失う一同。しかし、夏未は笑ったまま話を続けた。

「大丈夫よ。幼いころから一緒に特訓してるんだから、それに国では結構有名なのよ、コンビネーションのよさが。一番いいのは、修也と守かな?って、こんな話をしているんじゃなかったわね。う〜ん、あの世界に私たちもいろいろと用があるの。だから、アンタ達が行かなくても、私たちは行くと思う。まぁ、ダークエンペラーズ?は関係ないから、放っておくけどぉ」
「放っておくって……」
「しょうがないじゃない。見れば分かるでしょ。やる気の全然ない、彼らにいきなり「サッカーやれ!」なんて言っても反抗されるだけよ。反抗期なのかもね」

夏未の話は一理ある。確かに、今の守たちにサッカーをやらせるのは、とても困難なことだろう。

「で、そうするの?行くの?行かないの?」
「…俺は行く!」

もちろん、一番最初に立ち上がって答えたのは言うまでもない。彼しかいない。———円堂だ。
その決意のこもった表情を確認すると、吹雪もゆっくりと立ち上がり、円堂に笑いかけた。

「うん、僕も行く」
「本当に相変わらずだよな、円堂は…俺も行く。もう同じ過ちは起こしたない」
「風丸…」
「皆の同意を聞いて行ったら、日が昇っちゃうわ〜単刀直入に、もう行くことでいいのよね?反対の人がいるなら、直接円堂くんに言ってね〜私は無関係だから」

そろそろ疲れてきた、というよりも面倒になってきた夏未は小さく欠伸をしてから、踵を返し扉へと向かう。
呆れたような顔でそれを見送った円堂たちが、心で「無関係って…」と呟いた時には、夏未の姿はもう廊下の向こうへと消えてしまった。