二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN日常】Distance【参照2000超企画】 ( No.177 )
日時: 2013/01/27 16:40
名前: 北大路 ◆Hy48GP/C2A (ID: cFR5yYoD)

#0「出会いの旋律」参照2000突破企画


/*ユウ目線


私は、毎日学校へ行く。

自分の音楽をするために。

学びに行くんじゃない。あくまで私は吹奏楽部で部活をしに行くだけ。
私にとっての仲間は、共に音楽を奏でる為のそれだけでしかない。

——ごめん、ちょっと話盛った。

でも確かに、授業とか行事は、あくまでも部活のオマケぐらいにしか考えてなかった。これは本当。

それに、部員のみんなは「自分と音楽を奏でる為のそれ」だとかは微塵も考えたことはない。かけがえのない仲間であり、友であり、ライバルだ。これも本当。

クラスの中では、小さな輪を作りながらも、目立たず埋もれず、まろやか〜に過ごしていた。
目立つ瞬間と言えば、せいぜい合唱のピアノ伴奏に指名された時くらいだ。

爽やかなクラスの人気者や、学校で一番のダメ男、学園のマドンナ、最凶の不良委員長達。
彼らとは、卒業するまでに何度話せるのだろう。両手……下手したら片手の指で収まる程度か。

私は、ただただそういう風に、そこそこ無益な学校生活を送っていた。

そんなある日だった。

ふとしたことで、まずは指を一本折りたたむきっかけは現れた。



1年前の、6月上旬。

梅雨を迎えた並盛の空は、テストを間近に控えて淀みきった並中生の心模様を、そのまま写したような、重い鈍色の空。

だが、私はテストなど気にかけてなどいない。何とかなると思うだろうと高をくくっていた。

そんなことより、部活だ。

夏休みの始めには、地区大会がある。
今から、最終的に曲を詰めていかないと間に合わない。

並盛の吹奏楽部は、何かイマイチぱっとしない成績しか残せていない。「今年こそは」という3年の無言の圧力が、1年生部員をビビり上がらせていた。

が、顧問の先生は、職員室に私を呼びだし、何故か私にだけソロコンテストに出ろと言った。
お前以外、もう皆納得している。
お前は、ソロやってる方が断然光ってるとか言って。

私は、1人納得いかなかった。

皆で奏でて、初めて『音楽』になる。
私と、ピアノの伴奏で奏でる音楽なんて、そんなのしょぼくさい。やってられない。

嫌だと言えなかった。

皆が私だけを除け者にしたいわけじゃないのは分かってる。先生も「意地悪で言ってるんじゃない」と言ってた。

だから絶対、嫌だと言えない。

私は、職員室から、楽器だけ持ったままフラフラと出て行った。
このまま帰って、不貞寝したかった。

廊下で、3年の先輩とすれ違った。そのとき、先輩からソロの楽譜を渡された。

「頑張れよ♪」

先輩は、激励のつもりで言ったんだろうけど、私は素直に受け取れなかった。

大丈夫かな、私。

Re: 【REBORN日常】Distance【参照2000超企画】 ( No.178 )
日時: 2013/01/25 20:03
名前: 北大路 ◆Hy48GP/C2A (ID: cFR5yYoD)



いくら居心地が悪いとは言え、さすがに帰るわけにはいかず、渋々空いていた1-Aの教室で練習を始めた。

なんだか見たことあるような教室だと思ったが、よく考えたら、私は1-Aだったようなそんな気がした。もはや興味がなかったのかも。

とりあえず、残響を消すために、教室の窓という窓を開け放った。窓を開けても、じめじめとしていて蒸し暑いのに変わりはなかった。

「あーあぁ」

思わずあくびが出た。普段なら絶対練習中に、あくびなどしないのだが。

やる気のない練習ほど無駄なものはない。さくっと気持ちを入れ替えて練習しないと……。

やる気を入れるために、手首に着けていたヘアゴムで、ミディアムの金髪をまとめた。少しだが、やる気が出てきた。

楽器ケースをあけて、楽器を取り出した。
10センチ程度の堅い木の筒を黒く塗って、金具を付けたようなものが、3つ。
これらを組み立てると、クラリネットと呼ばれる木管楽器になる。

そしてケースの中から「リード」と呼ばれる、楽器を吹くのに必要なアイスの棒っぼいものを取り出し、くわえる。
何かものを食べてるみたいに見えるのが難点。
そして、それを楽器に付ける。

軽くリードを咬みながら、息を入れる。
すると、音が鳴った。いつもの感じ。

30分ほどウォーミングアップをしていたようだ。ウォーミングアップが終わったのは3時30分を回っていた。