二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 [ しずく様リク ] ( No.11 )
日時: 2011/07/05 19:14
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: TEtEJYHD)
参照: 蓮くんの女の子の呼び方が曖昧です← おひさま女子だと違うのかな?

「蓮くん!」

 背後から聞こえた柔らかい声色に僕——白鳥蓮は、ゆっくりと振り向いた。そこにいたのはやはり、長い金色の髪を艶やかに垂らすアフロディで。ただ、朝早い時間帯だというのにその顔に眠気というものが感じられない。おかしいな。むしろ、ご満悦そうににこにこしているその笑顔に悪寒が走る。よく晴れたサッカー日和の朝、のどかな宿舎内、小鳥の愛らしい囀り……こんなに素敵な日なのに、どうして嫌な予感しかしないのだろう。
 とりあえず、その妙な違和感は無理やりにでも呑み込み、笑いながら「おはよう、アフロディ」と短く告げる。はっと何かに気付かされた表情でアフロディは「おはよう!」と付け足した。その様子は焦っているようにも見えて。う〜ん、僕に言いたいことでもあるのかな? ……もし、そうなら。嗚呼、どうしよう、嫌な予感しかしないよ!

「きみに見て欲しいものがあるんだ」

 待ちきれない、とでも言うようにそわそわしている彼の言葉を脳内で再度、転がしてみる。見て欲しいもの、か。この時間帯だから朝ごはんでも作ってくれたのかと思った。そしたらきっと、それを頂くだけで終わったのに。……勿論、チャンスウに話を聴きに行ってからだけどね。そんなことを考えていたら、何を見せられるのかと僕が不安がっていることを察したらしく、アフロディは優越感を含んだ微笑を浮かべると背中に隠していた右手をさっと、自慢げに取り出した。予想外の展開に、そしてここにあるはずのないそれに無意識に「えっ」と不安げな呟きが漏れる。
 ひらりと取り出されたのは、もう何年も前の日付が刻み込まれたセピア色の写真だった。そこに映っていたのは——少し長めの黒い髪、羞恥からか微かに潤んだ黒曜石のような瞳に女の子のような洋服。少女、と言ってもきっと誰一人として疑わないであろうその人物は、

「おひさま園時代の蓮くんさ! 懐かしいだろう?」

 幼き日の、自分で。

「な……なんでこんなものが……」

 あり得ない展開にくらり、と眩暈がする。こんな黒歴史を今更、掘り返されるなんて。恥ずかしさと憤りと疑問で頭がいっぱいになる。ただ、自分で呟いた愚問の答えなどとうにわかりきっていて。わなわなと震える身体を必死に押さえつけアフロディを退けると、すぐさま犯人達の元へ向かった。
 勿論、アフロディの細い指からあの写真は取り返したけどね。



***

「晴矢! 風介! いったい何なんだよこの写真は!?」

 怒りに身を任せドアを乱暴に開ければ、思った通り。彼等はやはり、そこにいた。ぽかんと口を開け呆然としている二人を問い詰めようと一歩、部屋に踏み出す。が、そこにはたくさんの写真が散らばっていて。二人の手の中には古ぼけたアルバムがそれぞれ開かれていた。
 さぁっと血の気が引く。

「おう、蓮。お前も見るかー?」
「今、ちょうど幼い頃の思い出話をしていたのだ。蓮もこちらに来ると良い」
「どうして宿舎にアルバムなんか持ってきてるの!?」

 はぁ、零れる溜息。
 がっくりと俯けば足元にも写真は放置されていた。そこに映っていたのは紅い髪がぴょん、と跳ねているヒロトの写真。サッカーボールを両腕で抱え嬉しそうに笑っている。一枚手に取れば、センチメンタルな気分に襲われ。上がっていた熱と息が、少しずつ和らいでいく。

「荷物に偶然、紛れ込んでいたのだ。それを見つけてな」

 へぇ。ツッコミどころが多い返答に曖昧な言葉を返し、もう一枚、写真を手に取る。そこに映っていたのは玲名や杏、クララに愛などの女性陣が可愛らしい仮装に身を包みポーズを決めているもので。日付は十月三十一日、ということはハロウィンか。普段はクールで笑顔を安売りしてくれない玲名も、小さい頃はこんなに愛想が良かったんだっけ。もっともこの時は、ハロウィンという雰囲気に流されたのだろうが。杏や愛がにっこりとした笑顔なのに対し、照れ笑いというところが彼女らしい。くすりと小さな笑みが零れる。
 もう一枚拾い上げてみれば、それは緑川と砂木沼くんのツーショット。そしてもう一枚は、若かれし頃の瞳子姉さん。セーラー服を着ているあたり、中学生か高校生時代だろう。幼い笑顔が見慣れず、くくくと喉の奥で笑ってしまう。本人に言ったら怒られてしまうのだろうけど。

「懐かしいね」

 自分が何の目的でこの部屋に乗り込んだのかを忘れ、思い出話に華が咲く。
 順々に拾い上げては懐かしみ、見つけては思い出を語り……もうすぐ朝食の時間というのに構わず話し続けた。そしてふと、足元に裏返った一枚の写真を見つけた。くすんだ白にたどたどしい字で『さいきょうトリオ』と書いてある。見覚えのある字だなぁ、なんて。何気なく裏返せば、そこには楽しげに笑う三人の少年の姿が映っていた。
 はっと息を呑む。

「これって……」

 どうしたと覗き込む晴矢。ちらりと彼のほうへも向ければ「おっ」なんて声が返ってきた。風介も覗き込んだところで、三人向かいあった中央にその写真を置く。無意識に笑み崩れてしまった。

 そこに映っていたのは——先ほどの写真より少し髪の短くなった自分と、憎らしい瞳で歯を見せて笑う晴矢、そして翡翠色の瞳を細めふんわりとほほ笑む風介の姿だった。ぱっと顔を上げ、そして二人と視線を交差させる。懐かしいなあと小さく呟くよりも先に、誰かがプッと吹き出した。そして続く大きな笑い声。何だか面白くて、楽しくて。訳も無く笑い続ける。薄らと滲んだ視界にあの日と全く変わらぬ笑顔を浮かべる二人が映り込んだ。無性に嬉しかった。

「さいきょうトリオ、だって!」
「これは、晴矢の字じゃないか? この乱暴さは晴矢としか……」
「何か言ったか風介」
「ご、豪快な字だね!」
「アンタまで笑うな蓮っ!」

 くすくすと笑う僕らを横目に、不服そうに視線を逸らす晴矢。こういうのを書きたがるのは晴矢しかいないから多分、合ってると思う。本人も覚えてるんだろうけど恥ずかしいんだね。
 まだ笑いが堪えられない僕たちに痺れを切らし、晴矢が怒鳴ろうと息を吸い込んだ瞬間——

 ばたん、とドアががさつに押し開けられた。

 [ しずく様リク/その2 ] ( No.12 )
日時: 2011/07/10 17:23
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: SjhcWjI.)
参照: 続き。


「やあ、盛り上がってるね」

 金色の揺れる長髪。にっこりとほほ笑んでいるのは、アフロディで。ここでようやく、自分が何故ここに来たのかを思い出したけれど、もうどうでも良かった。アフロディは遠慮なく部屋に入ってくると僕ら三人が映った写真を手にする。ぴらっとひっくり返すと声を上げて笑った。むすっ、と晴矢の表情が険しくなる。

「さいきょうトリオ、か」
「悪かったな下手な字で」
「いや、違うよ。僕はそういう意味で言ったんじゃない」

 物悲しそうな微笑。アフロディは少し間を開けると、

「羨ましいと、思ってね」

 ぽつりと呟いた。
 しんみりとした雰囲気は居心地が悪く、しかめっ面になってしまう。黙りこくってしまう二人は、困り気味の表情で『どうする?』と訴えかけてきた。さてと、考えるよりも先に、言葉が先走る。

「もう僕たちはトリオじゃないよ、アフロディも僕たちの仲間さ」

 夢中で口走ってしまった為、言ってからかなり恥ずかったことに気付く。きょとんと僕を見つめるアフロディを見て、急に沸き上がる羞恥心。かぁっと火照る頬を隠そうと視線を不自然に泳がせる。だからアフロディが小さく笑ったことになんか、気付かなかった。

「ありがとう、蓮くん」

 さすが僕のベストパートナーだ、と呟かれたのは空耳だということにしておこう。
 呆れ顔の晴矢と風介に対し、悪戯っぽく笑って見せる。そのままアフロディを見やると彼は、それにしてもと呟き再度、あの写真を見つめた。嬉々とした表情に安堵する。

「やっぱり小さい頃の蓮くんは、女の子みたいだね」

 ぴきり。
 何かに亀裂が入る音が耳に残る。晴矢と風介がマズイ、という顔で僕を見たが僕は笑顔で彼らを見ることができなかった。固まった表情はそのままに、気付かずに話し続けるアフロディに視線を向ける。

「本当に可愛らしいよ。特に目元とか」

 ぴきぴき、

「ねえ蓮くん、一回、女の子の恰好をしてみないかい? きっと似合うと思うんだ」
「お、おいやめろアフロディ!」
「そうだぞ、アフロディ、蓮は男なんだから」
「僕が美少年だとしたら、この時の蓮くんは可憐少女か……」

 ばきっ、
 何かが壊れる破壊音が響く。びくりと大げさに反応した二人に、精一杯の笑顔を送った。ぶるぶると震える彼等と、きょとんとしたまま僕を見つめるアフロディ。遅かった、そんな晴矢の呟きが聞こえたような気がした。

「あははは……冗談きついよ〜」

 黒い、そう風介が零す。アフロディの表情も固まってしまった。
 もう遅いよ、心中で静かに呟くと最上級の笑顔を振りまいた。

***

「ど、どうしたんだい蓮くん……」
「可憐少女か。よくできた肩書きだなあ」
「落ち着け蓮! い、今のは冗談なんだ!」
「そう言えば晴矢も昔、女装させられた僕のこと見て大受けしてたよね」
「悪かった、蓮。だが私はそんなこと思ってないぞ——」
「風介って小さい頃、僕に向かって『もしれんがおんなだったら、わたしのおよめさんにしてやる』って言ったんだよ? 覚えてる?」
「それあんまり関係無い気が、」
「晴矢、うるさい」
「すいませんでした」

 かなり困ったような三人。頬や首筋には大粒の冷や汗が吹き出ていた。あははは、と笑ってみせるとさらに固まってしまった。誰かな、今、氷点下の微笑だって呟いた人。

「蓮くん、本当に悪かった! 何でもするから赦してっ」

 頭をがばっと下げるアフロディ。続いて晴矢、風介もプライドなんて関係なしに謝ってくる。本音を言えば、まだ赦せなかったんだけど……アフロディの言葉の後半が耳に引っかかる。極上の笑顔を浮かべ、「もういいよ、僕も気にし過ぎた」と言えばたちまち輝く三人。僕の名前を口ぐちに呼び、歓喜に満ちた表情で安堵の溜息を零す。
 だから、その代りね……と僕が囁いたとき、三人の目が揃いも揃って見開いたのは、ある意味当然だったのかもしれない。
 そっと三人に耳打ちすれば、口ぐちに悲鳴が上がる。

「マジかよ……」
「何でもしてくれるんでしょ?」

 最高の笑顔を振りまく。
 嗚呼、練習が終わったあとがとても楽しみだ。焦燥感が張り付いた三人の横顔を見て僕は、くすりと小さく微笑んだ。




そしてこの後、素敵な制裁が食らわされるという←

遅くなってしまい申し訳ございませんでした(土下座
炎龍ということで頑張ってみたのですが、ほのぼの要素は何処へ←

前半なんかしんみりしてるし後半忙しすぎて雑な文だし……
でも、これが私の全力ですから(キラッ(殴

リク有難う御座いました!そして全力ですいませんでした!
これからもお付き合いして頂けると嬉しいです。ではでは^^*