二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.16 )
- 日時: 2012/04/30 13:03
- 名前: さくら (ID: te9LMWl4)
- 参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。
ゆら。ゆらり、ゆらり。とある島の、何処かの森に、黒い髪のあの少年は居た。
黒い髪の、髪飾りを付けた瞳までもまるで闇に閉ざされた様な少年は、恐らく樹齢1000年を超えるであろう大木のしっかりとした枝の上に座り、幹に背を委ねる様にしてぼんやりと空を見上げていた。
ゆらゆら、雲はゆっくりと流れている。額に手を翳し、木の葉のお陰で隠れていた日光が顔を出す、その眩しい位の光を遮る。この森は彼、彼ら“堕ち過ぎた善なる運命”が活動の拠点としている森だ。部外者の侵入は一切認めない。認められていない。はぁ、シュウは溜息を付けば音も無く自然と消えていく息も同じ様にぼんやりと眺めながらうつらうつら、脳内を眠気に侵略され様としていた。
「そんな所で寝ていたら、風邪を引くぞ」
ビクン。、突如頭上から聞こえて来た低く、そして筋の通った深い声に背中が跳ねた。
人物を確認し、その張本人が安堵出来る者だった事に脱力し、またもや深い溜息を零すシュウは、彼の言葉———否、存在までもを無視する気なのだろうか。
咄嗟に起き上がった身体を、溜息と共に元に戻す。そして数十秒が経つのだが、それから一歩も動こうとしない彼の痛い視線を浴びながら、伏せていた瞳を片目だけ開いて表情を確認する。言うまでも無く、彼は顔に不機嫌という文字を貼り付けたような表情だった。The,Hukigen.
これ以上無視し続ける様な、冷酷では無い為、否、実を言うと彼は根はとても優しい為、これ以上無視し続ける様な事は出来ず、諦めて身体を起こした。
太く伸びた枝に座る彼の体重は、一体誰が想像出来ただろうか。
「—————、で。どうしたの?、白竜、・・・って言うか寝てないし。」
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「それは此方の台詞だ。こんな時に暢気に昼寝など・・・。・・・・・まさか知らないとは言わせんぞ」
「あはは、冗談だよ。明日だもんね」
全く、冗談で済む話では無いだろ。と愚痴を零しながらちょいちょいと手招きをする。
彼等は悟っていた。今回は、前代未聞の大接戦になる事を。円堂守とその同志達。彼等は前回の魔聖大戦で聖書を手にした猛者である。何故今回の魔聖大戦まで歳を取らなかったのか。何故今回の魔聖大戦にも出生するのか。何故伝説に“なりかけた”男達は、今回で伝説に“なろう”としているのか。それは未だ謎である。何故聖書管理組織は、彼等を聖なる場に招いたのかは、聖書管理組織の中核を成している白竜とシュウでさえ、知らされていない。
そして、聖書管理組織にとって、最大の脅威であろう魔族、革命軍も招かれたのである。革命軍の大黒柱“松風天馬”とその同志達。嘗て聖書管理組織の狗であった“剣城京介”。白竜やシュウは、その狗の中でも究極と呼ばれる存在であり、聖書管理組織の従者の中では最高位の位を担う少年達である。そして、革命軍の指揮を取る“神指揮”、“神童拓人”。この3人を中心に、革命軍は動いている。この時代最高位の革命の芽だろう。
他にも、招かれた客は、強い猛者達だらけだ。
「今回も惨劇になりそうだね・・・。否、今回は特に、」
「ああ。七瀬を中心とするオリキャラ軍は皆強いがな、」
「ちょ、リアルを語らないw」
今の二つの会話は尋常に無視して頂いて結構だ。否、無視して下さい。
「特に、七瀬にはバックに柱刺団が付いてるらしい。其方の情報は、此方にも届いている」
「知ってるよ。本当、ふざけてるのかと思ったよ」
「ああ。柱刺団の団長は七瀬。副団長はシンデレラ。団員に、赤頭巾、ジュエット、眠り姫、人魚姫、ラプンツェル、アリス。」
「何時ぞやの童話キャラばかりじゃないか!」
「だが油断はするな。あの七瀬が仕切る柱刺団だ。実力は確かなものだろう」
「そして問題は、“冠羽祈咲”だ。」
「かんば・・・?誰なの?」
「やはり、お前も知らないか。・・・あいつは、あいつに関する情報の殆どが明かされていないんだ。」
「如何いう事・・・?」
白竜が言っている事。それは、冠羽祈咲についての情報の殆どが謎のまま、という事だ。
普通、主催者の聖書管理組織には出生する全ての魔族の能力やらステータスやら年齢、出身などの情報が全て届けられる訳だが、祈咲に関しては如何いった手違いか、殆どの情報が届けられていないのだ。なので、白竜やシュウ、他の聖書管理組織の配下の魔族達は“冠羽祈咲”という人物が如何いった人物なのか、全く把握仕切れて居ないのだ。
「その子…。強いの?」
「分からん」
「へぇ、」
何処か意味有りげに、シュウはニタリと笑った。
- Re: 金木犀で創るシャングリラ (inzm/小説集) ( No.17 )
- 日時: 2012/01/02 11:39
- 名前: さくら (ID: z2eVRrJA)
- 参照: 明けましておめでとう御座います。 正月企画。
此処でこそもう遅いが、此処で少し彼等の紹介をしよう。白い白銀の髪を束ねた何処か神々しい雰囲気を纏うこの少年の名は「白竜」。フルネームは不明。彼は、“失われし理想郷”に存在する不落した“天国宮殿”及び“絶対白殿”に住み着く神官である。“絶対白殿”は“王亡き城”とも呼ばれており、文字通り前世に住み着いていた王族は全滅。それを見つけた聖書管理組織が彼等に与えたといわれている。
その目的は、宮殿の地下に眠り、同時に彼の化身でもある“聖獣・シャイニングドラゴン”を守護する為である。元よりこの島で生まれ、この島で育った島人である。だが今では聖書管理組織の手に堕ち、同志のシュウと一緒に“聖書”の管理を遂行している。
そして、先程まで樹の上に居た、黒い髪の可愛らしい少年の名は「シュウ」。白竜と同じく、“失われし理想郷”に存在する“雲海の森”の奥深くの神殿に祀られている“暗黒神・ダークエクソダス”を守護する神官。白竜と同じく、この暗黒神は彼の化身でもあり、同志の白竜と一緒に“聖書”の管理を任されている。
「僕達は、只、此処で待つ事しか出来ないのだけどね」
「否、その方が良いだろう。戦い方も知らない雑魚共と一戦見えるとは、屈辱過ぎる」
彼等は、余程プライドの高いのだろう。
其処でふ、と、白竜はある事に気がついた。
「松風天馬・・・も、彼も、出生するらしいな」
「うん。そうだね。・・・あれ、フィフスは怖くないのかな。天馬は“革命”すスキルを持っているというのに」
シュウが松風天馬の事を「天馬」と呼ぶ事には意味がある。彼とは随分と親しい仲だからだ。あの時は、お互い敵になろうとは微塵も思って居なかったのだろう。少なくとも、未だに松風天馬はシュウが自分の敵だという事を知らない。
「何か、考えがあるのだろうがな。“あいつ”は其処まで馬鹿では無い」
白竜が“あいつ”と称した人は、今はまだ伏せておこう。只、今後七瀬虹彩や松風天馬、円堂守達にとって、最大の脅威になるに違いない人物だ。
シュウは、良い様の無い思いを胸に刻み止め、反射的に瞳を閉じながら呟いた。
「裏切り、か。多分、キリスト教の話その物なんだろうな。……イエスが天馬で、ユダが、———…僕、」
12L:( 神官達の静宴。 )