二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: バトテニ-If you can become happy- ( No.9 )
- 日時: 2010/02/09 19:30
- 名前: 亮 (ID: 2nrfRM.C)
06 数々の疑問
「邪魔が入ったが、説明を続けるぞ」(竜崎)
日吉の死を“邪魔”と言った竜崎が、香澄は信じられなかった。
人が1人、死んだんだよ?
先生、状況が分かってるの?
どうして・・・何もなかったかのように、平然としていられるの?
日吉くんは・・・何も悪くなかったのに、殺された。
私は、怖くて出て行くことさえ出来なかった。
跡部さんや宍戸さん達のように、怒りをぶつけるコトなんて、出来なかった。
後悔しても、仕切れない・・・
自分の命が、惜しかった。
自分の命を優先させてしまった。
香澄は、自分がどうしようもなく愚かに思えた。
でもそれは・・・ここにいる全員が同じだった。
もう、後悔はしたくない。
跡部は「チッ」と舌打ちをし、その場に静かに座った。
俺は氷帝学園テニス部の部長だぞ?
部員200名を束ねる、帝王だぞ?
その帝王が・・・人1人助けられねェなんてな。
情けねェ・・・
何が帝王だよ。 名前ばっかりの・・・
大人は何をやっているんだ?
これが、子供にやらせるべきコトなのか?
これが・・・今の政府なのか?
自分への情けなさと同時に、政府への怒りがこみ上げる。
跡部は、唯一の女、香澄の方を見た。
涙を流していた。
でもその涙は、ウジウジ面倒くせェ女の涙とは、どこか違った。
決意に満ちた・・・そんな涙だった。
大切な人・・・か。
「ルールを言うぞ、聞きのがすんじゃないよ!
皆もよく知っているように、ここは無人島じゃ。
BRのための島だから、学校・病院・民家は政府が設置している。勝手に入って休んでもいい。
それから、1日4回、6時間ごとに放送をする。
禁止エリアと・・・死亡者の放送だ」(竜崎)
竜崎は淡々と話す。
何度も聞いたこの声と話し方。
なのに、違う人の話を聞いているようだった。
もう、青学レギュラーの知っている、“竜崎先生”ではない。
「これから配布するデイバックの中に地図が入ったいる。
地図にはA-1というようにアルファベットと数字が書いてあるから、
禁止エリアの参考にするといい。
禁止エリアになって5分をすぎてもその場を離れなかったり、
期間は5日間。 もし、最終日に複数の人が生き残っていたら・・・」(竜崎)
竜崎は、ボロボロの日吉のユニフォームを見た。
「ヤツの様に、ボロボロになるぞ」(竜崎)
その言葉を聞いた長太郎は、涙を流した。
顔を隠してはいたが、宍戸も、ジローも、泣いていた。
「それじゃァ、1人ずつ、名前を呼ばれたら出発だ。武器はランダムだから、文句は言うなよ」(竜崎)
武器・・・
自分が、そんな物を持つ日が来るなんて、思いもしなかったな・・・
お父さん、お母さん、ゴメンね?
絶対に人は殺さないよ?
だけど・・・もう、会えないかも。
「1番! 芥川慈郎!」(竜崎)
「え・・・あ・・・」(ジロー)
「・・・行け」(跡部)
「う、うん・・・」(ジロー)
「後で、必ず会おう」(跡部)
ジローはデイバックを受け取り、駆け足で教室から出て行った。
「2番ッ 跡部」(竜崎)
「はい」(跡部)
教室から出て行く跡部は、堂々としていて、まさに帝王だった。
大切な人を守る。
跡部はもう心に決めていた。
「・・・3番、香澄」(竜崎)
「・・・はい」(香澄)
「か、香澄ッ」(桃)
「香澄先輩・・・」(リョーマ)
2人は心配そうに、香澄を見る。
そんなに心配しないで。
私は大丈夫だから。
「どこかで必ず会おう。私、桃達のこと、信じてるから」(香澄)
「香澄・・・」(桃)
信じてるよ。
だから、桃も信じて。
もう、後悔はしたくない。
だから、私は・・・
信じられる皆のためなら、自分の命を省みない。
信じられる皆のためなら、死ねる・・・
だから、ゴメンね。
お父さん、お母さん。 私、きっと死んじゃうから。