二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 鋼の錬金術師 —黄金の女神— ( No.9 )
- 日時: 2010/06/01 18:26
- 名前: ちー ◆m6M0e7LQrQ (ID: klNaObGQ)
第1章 神教の町、ルフォード
緑の木々の中を、汽車が通り過ぎて行く。太陽に明るく照らされている汽車の表面は、太陽の光が反射している。
木の上で休憩していた鳥達は、汽車が迫っているのが分かると、いっせいに飛び立っていった。後に残されたのは、虫のわずかな体の一部だけだ。
そんな汽車の中から、その光景を見ている者が1人。たいくつそうに頬づえをつき、だるそうな目で景色を眺めている。
「兄さん、退屈そうだね」
少年の目の前に座っていた鎧が、本を持ちながら少年に話しかける。兄さん、と呼ばれた少年は、外に顔を向けたままで、目線だけをチラッと鎧の方に向けた。
次には頬づえをつくのをやめ、鎧と向かい合う状態になった。そして、大きなため息をつく。
「大体よアル。オレとお前、何時間この汽車に乗っていると思ってるんだ? この椅子はかたくて乗り心地は良くないし、景色は山ばっかりだし!」
少年は鎧に半分やつあたりしている。今度は鎧がため息をついた。そして、自分の片側に置いてあった本を少年に向かって差し出した。
「その本、読んでみなよ。すっごくおもしろいからさ」
「断る。この本はもういやだというほど読んだ」
少年は虫を追っ払うかのように手をひらひらさせた。鎧は本を元に戻し、もう片側に置いてあった本を少年に向かって差し出した。
少年はその本を一瞬見ると目を閉じて、また手をひらひらさせた。鎧は深くため息をつく。
「もう。兄さんってば。自分ですること考えてみなよ」
「考えた。そして何度もそれを実行した。そして今、もう考えつかない」
「鋼の錬金術師の、エドワード・エルリックのこの様子を大佐さんに見せたら、どんな反応するだろうね」
少年の名前は、エドワード・エルリック。最年少で国家資格を持つ、鋼の錬金術師だ。体格は小柄だが、年齢は15歳だ。
金髪の髪に、金色の目が印象的な少年だ。黒い服の上に赤いコートを纏った身体に、生意気そうな眼差しをしている瞳は一見普通の少年だが、その右腕と左足の機械鎧<オートメイル>が、不釣り合いな重い過去を背負っている事が分かる。
その向かい側に座っている鎧は、エドワードの弟、アルフォンスである。兄よりも遥かに大きな鎧姿で、一見ものすごい風貌の者と思われるかもしれないが、実際にその鎧の中身は空洞であり、誰の身体も入っていない。青銅色の鎧の内側には、血文字が描かれていて、その血文字によってアルフォンスの魂は鎧につなぎとめられている。
この2人は母親を生き返らせようとしたのだ。その結果、エドワードは左足を失い、アルフォンスは全身を失った。
しかし、たった1人の弟を救うために、エドワードはアルフォンスの魂を鎧に定着させた。しかし、その代償にエドワードは右腕までも失ったのだった。
だが、2人は絶望に打ちひしがれているのは短く、身体を取り戻そうと誓い、今は『賢者の石』という存在の物を探す旅に出ている。
「何で今大佐が出てくるんだよっ」
エドワードは不満そうに言うと、再び目を閉じた。エドワードとアルフォンスが今向かっているのは、ルフォードと言う町で、そこにかなり腕の立つ錬金術師がいるという。
エドワードとアルフォンスは、その錬金術師に興味がわいて、その町に巨大な図書館があるという事も含めて、ルフォードの町に向かっているのだった。
「なんとなく。それより兄さん。少し寝たら? 目がすっごく疲れてるよ」
「あぁ。悪いけど、ちょっと寝る……。ったく、暇すぎて眠くなってきたっての」
エドワードはそう言うと、静かに目を閉じた。アルフォンスはまた本を手にとり、それを読み始める。その場は静かな状態となった。
聞こえるのは、汽車の音と、鳥達の鳴き声と、アルフォンスが本のページをめくる音だけだ。
その時、エドワードとアルフォンスが乗っている車両が開き、女性が入ってきた。茶髪を三つ編みにしていて、朱色の目をしている。服は軍服だ。いかにも真面目そうな雰囲気だ。
女性はカツカツと車両内を歩くと、エドワードとアルフォンスの前で立ち止まった。そして、アルフォンスを見て、半分眠っているエドワードを見た。
「鋼の錬金術師、エドワード・エルリック様ですね?」
女性が言うと、エドワードは不機嫌そうに目を開けた。それでも女性はその表情を崩さず、エドワードの腕をつかんだ。
アルフォンスが止める間もなく、エドワードは女性に腕をつかまれ、ひっぱられた。
「ちょっ……何すんだよ!」
「エドワード・エルリック様。少し、ついて来て下さい」
エドワードは女性にひっぱられながら、アルフォンスのいる車両を出た。