二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 少年陰陽師*安倍紫春伝* ( No.22 )
日時: 2011/03/25 04:30
名前: 翡翠 (ID: Nco2fuPq)

*紫春*

「おい、何をしている」

後ろからかけられた声、それは今まさに考えていた人物のものだった。

「…宵藍」

後ろに立っているであろう人物の名を私は呟いた。

「何度言えば分かる、その名で呼ぶ事を俺は許可した覚えは無い」

いつもと同じ鋭い言葉。
そう、私もいつも通りなら笑ってすませていた。
けど、今はそれができそうに無い。

「そう、だよね、私何かが呼んだら嫌だよね…」

いつもの私らしくない返事に宵藍が戸惑っているのは気配で感じた。

「…お前、何か変だぞ」
「変?そうかな…いつも通りだよ?」

宵藍の言葉に私は曖昧に返す。
…言えない。
宵藍の言葉で泣いてるなんて言えないよ…。

「…おい、こっちを向け」

宵藍の言葉に自然と肩が跳ねた。

「…やだ」

泣いてるとこなんて情けなくて見せられないもん。

「良いから、俺を見ろ…」

いつにも増して低い声。
僅かに怒ってるのが分かる。
だけど、私は振り向くつもりなんて無い。

「…いい加減に!?」

宵藍が何かを言いかけたときだった。

『ねぇ、貴女も私と同じなのね…』

脳裏に響く声がある。
さきほど聞いた声と同じ…否、違う。
前に聞いたときは哀しい辛い声音だった。
だが、今響き渡る声は…。

「…私が貴女と同じ?」

勤めて冷静を装って言う。

『そうよ、貴女と私は同じ、同じように抱いてはいけない感情を持っているわ』

女の声は憎悪に満たされていた。
この世の全てを憎むかのような…。

「…違う、私はそんな感情持ってない!」

声を荒げたのと宵藍が大鎌をなぎ払うのとはほぼ同時。

『貴女は後悔するは…きっとね、また会いましょう』

女は意味深な言葉を私に言うのと同時に気配を消した。

「ちっ、逃げたか…」

鎌をしまいながら舌打ちをする、宵藍。

「一体どうやって…この屋敷に?」

疑問が頭を過る。
ここは安倍邸、並大抵の妖怪が侵入できるはずがない。
だってこの屋敷は強靭な結界で守られているのだから。

「一旦、晴明の元に行くぞ」

宵藍の言葉に私は一度頷いた。