二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 運命の車輪 ( No.125 )
- 日時: 2011/04/11 16:45
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
第10章 黄緑色の心
「…ねえボルン署長…本当に平気なの?」
薄暗い部屋の中、不安そうな声がボソボソと聞こえる。
「何を言っている。ブン。このわたしの縄抜け技をなめるでないぞ」
ここはレン村長の家。
今は住民たちの収容所ともいえる。
皆、体をロープで縛られている。
見張りは外にいるのか、姿が見えない。
「ちょっとー…本当に大丈夫なの?」
カワサキはいかにも心配そうな口調。
「だから大丈夫と言ってるだろ!警察官を信じろ!」
「声が大きい…!静かに話して…!」
メーベルの声。
どうやらこの様子では、皆無事のようだった。
沈黙の部屋、ボルンの謎の縄抜け(?)の音が、ゴソ、ゴソと小さく聞こえる。
「いやはや…助かるもんだねえ…」
「でも…実際縄が抜けたとしても、どうやって脱出するの?」
「カービィたちが助けに来るでしょ」
「もう丸一日この状態か…」
「でも、助けに来るって保証はあるの?」
「大丈夫だよ。きっと姉ちゃんたちが助けに来るよ」
「でも…」
「きっと外でも戦ってるのよ」
「あいつら強そうだよね」
「まさか殺されてたり…」
「なんでそんなこと言うんだよ!信じろよ!絶対に助けに来るよ!」
「ブン…!ばれちゃうでしょ…!」
一同は、不安と恐怖で焦りを隠せないでいた。
「ああ…俺達どうなっちゃうんだろ…」
「カービィたち…大丈夫かな…」
「もしかしてずっとこのまま…?うっうっ…」
「泣くなよ。イロー、ハニー、ホッヘ。大丈夫だよ」
「どちらにしても。こっちからも何か行動を起こしたいものだな…」
「…ていうか…ボルン…まだ縄は抜けんのか?」
「暗くてよく見えないんだ…くそー…しかも後ろ手だから…」
「がんばって…」
「ああ、フーム…無事でいてくれてるかしら…」
「大丈夫だよメーム…あの子は頭のいい子だ。きっと無事でいてくれてるよ」
「ちくしょー…突破するにしてもあの小っちゃい大量ネズミとでっかい青いネズミをどうにかしなくては…」
「ああもう…窓もいたでふさがれたから、なにもわからないわ…」
「それに、そろそろネズミが中に戻ってくるころだぞ」
「ボルン署長。まだ抜けないの?」
「あと少しだ…最後の最後できつい結び目が…ここが抜けたらいける」
「いそいで…!やつらが入ってきたら、もう終わりだよ」
「ぬおおお…ふん…ふん…!」
ゴソ…ゴソ…と、ボルンは必死で縄抜き技術を使っている。
皆はそれを心待ちにしている。
…そして。
「抜けた…!」
「!」
「やった…!」
「よし…!じゃあ皆の縄をといて言ってくれ…」
小さな歓声があがった。
「なるべく急いで…」
「くそ…暗くさえなければ…」
「ボルン…!今はお前にかかってるんじゃ…!」
「がんばれー…」
「よし…!ガスの縄はとけたぞ…」
「ありがとよ…!」
「ガスも縄をといていってくれ…」
「了解…!」
ゴソ…ゴソ…と、縄をほどく音がところどころで聞こえてくる。
それから約10分後。
「もう少しで全員ほどけるぞ…」
ガタン
「!皆静かに…!」
レンの言葉に皆が息をひそめる。
もちろん縄抜けも中断だ。
入口のほうから足音らしきものが聞こえる。
「やばい…!戻ってきたぞ…!」
「え…!やけに早いような…」
「うそ…!」
「こっからどうするの…!?」
「…」
「考えてなかったよね…」
「強行突破?」
「でも、相手は手練れだよ…!しかも数が多い」
ガタン
「…!」
「団長たちは大丈夫かな…」
「ていうかドクさんあのロボット新作って言っ てたし…」
「だーいーじょーぶー…だんちょーたちはーつ よーいよー…でも…戦いしたかったー…」
「ストロンさん。戦いがないほうがいいんです よ」
「そうですよ。降伏してもらえたらありがたい かぎりです」
「でも、そう簡単にはいかないですよね…」
「わたしたちチューリンも応援にいったほうが よかったですかね?」
「へーきへーきー…それよーりー見張りだー」
「やっぱこっち来てる…!」
「しかもあの青くてでかい奴いるし…」
「くそぉ…ここまでか…」
「ばれたら…終わりだ…」
一同は焦る。
「…まさか脱走なんてしてないですね?」
「…まさかー」
「念のため見に行きます」
タタタタタタタタ…と、こちらに向かってかけてくる音。
皆は、終わったと思った。
脱出するためにほどいた縄。
ばれたら、やばい、やばすぎる。
「うっううう…」
ハニーの泣き声が、合図だったのかもしれない。
固く閉まっていた扉が、チューリン達によってあけられた。
そして、見覚えのあるでかい車が、家に突っ込んできた。
ドッシャアアアアアアアアアアアアアアン!!
「な…なああああああ!?」
「わあああああああああああ!!」
「きゃあああああ!!」
板止めされていた窓どころか、壁ごと破壊される。
1日ぶりの明るい陽射しが差し込む。
「おのれ何奴!」
チューリンたちがすばやく反応し、車に向けて爆弾を構える。
「何奴…?プププランドの民ゲスよ!!」
車の運転手は、エスカルゴン。
派手な行動に、少々度肝をぬかしながらも、きっぱりと言い放った。
「エ…エスカルゴン殿お!?」
住民たち全員が、がれきの山(壁の板とか)の中で、驚き半分、喜び半分で叫ぶ。
「み…皆の者…!今の内に逃げるゲス!」
「ワドルディたちよ!突撃ィ!」
ワドルドゥの合図とともに、どこからともなくたくさんの武器を携えたワドルディたちが家に入っていく。
住民を助けるもの、チューリンたちと戦うもの。
「なに皆ボーっとしてるの!?逃げるのよ!わたしたちが助けに来たのよ!」
「おらおらさっさと立てよ!」
フームとトッコリの声に、住民たちはさらなる歓喜をあげる。
- Re: 星のカービィ 運命の車輪 ( No.126 )
- 日時: 2011/04/11 17:24
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
「姉ちゃん!」
「ブン!」
巨大な穴が作られた壁を越え、ブンはフームに抱き着く。
そんなブンをフームは強く抱きとめる。
「よかった…!無事で…!」
「くるの遅いよぉ…!」
「これでも急いだ方よ…!…でも、よかった…!」
兄弟の絆。
そして、家族の絆。
「フーム!」
「パパ!ママ!」
大臣一家、無事集結。
抱きしめられた家族一同は、喜びの涙を交わす。
「無事でよかった…!がんばったなあ…フーム!」
パームの涙声、メームの涙声。
フームはしかとそれを受け止める。
「でも…姉ちゃんたち壁からやってくるとは思わなかったよ…」
「こりゃレンさんの家は建て替え決定ね」
「しかたないじゃないの!デデデの車でぶち破るしか方法なかっのよ」
「さて…でもここは危険だ…逃げよう!」
「皆!城に避難して!」
フームの指示に、住民たちはメインストリートを駆け出す。
ワドルディたちは激戦状態だった。
「いーかーせなーい!!」
ストロンが前に立ちはだかった。
「ひっ!」
思わずその場に踏みとどまってしまう。
住民たちに振り下ろされる武骨のハンマー。
「のわあああ!?」
トッコリが一番に気づき、続々に住民たちが悲鳴を上げる。
「団長のじゃま…させなーーーーいいいい!!」
「なら私たちの邪魔も…しないでください!!」
カッ!!
まぶしい閃光がハンマーを阻む。
「!?」
住民たちとストロンの間に割り込むように入ってきた妖精。
「リボン!」
「遅くなってすみません!クリスタルに力をためていました!」
「ぐう!」
ストロンは突然の衝撃に、数歩後退する。
「なんだー!そーれー!?お…おおおおでのこうげきーふせいだ!?」
そうとうのおどろきだったのか、顔すらこわばっている。
その様子はリボンは冷静に見ながら、大切そうに抱えているクリスタル
をかざす。
クリスタルはその意思を受け取ったのか、まぶしく輝いている。
「クリスタルの力を…あなたに特別に見せてあげます!その聖なる力をくらいなさい!フームさんたちは逃げて!」
「…!でも…」
「わたしなら大丈夫です!早く!」
「いんや!俺も戦う!」
「カ…カワサキさん!?」
「俺もプププランドを守りたい!今どんな状況なのかよくわからないけど…ピンチなのはよくわかってる!だから俺も戦う!」
「!」
「今こいつと戦わないといけない!そんな感じがするんだ!!」
カワサキは、彼らしからぬようなことを口にする。
でも、それが住民たちに届いたのか…。
「じゃあ俺達も戦う!!」
ボルンたち男性陣全員が、そう言った。
「プププランドを守るんだ!!」
「…!」
リボンは困ったような表情を一瞬舌が、すぐに表情を戻し、
「わかりました!戦いましょう!」
「女子は武器を取ってきてくれ!」
「わかりました!!」
「プププランドを守るんだ!」
「じゃまーをーするなあああああああーーーー!!」
ストロンの方向が大地を揺るがした。
戦い。
そう、戦い。
なにかを得るための、戦い。
なにかを守るための、戦い。
どちらにしても
強い、強い感情があるのは変わらない。
でも
一体全体
どっちが正しいのだろうか。
どっちが正当であり、成立するのだろうか。
それは、誰にもわからない。
プププランドは
今
とにかく
戦いだった。
暗黒が迫ってくる。
戦い。
運命の、戦い。