二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 71章 プランA ( No.142 )
日時: 2018/06/09 12:23
名前: 霧火 (ID: RjvLVXA1)

そんなこんなで、リオ&アキラvsリマ&アヤネの、タッグバトルの始まりである。


「使用ポケモンは皆1体ずつ。2体共戦闘不能になったコンビが負けで良いかしら〜?」
「OK!」
「その方が手っ取り早いし、私も構いませんよ」
「俺も意義無しです!」

人差し指を立てて提案したリマに、リオ、アヤネ、アキラの順で返事する。
それを確認してからリマはボールを手に、アヤネに目配せをする。
アヤネは頷くとボールを手に取る。
続けてリオとアキラもボールを構える。


「それでは早速始めましょう。出てらっしゃいバチュルちゃん!」
「私はこの子で行くわね♪ママンボウ〜」

アヤネのポケモンはダニの様に小さくて黄色い身体に、青い目をしたポケモン──くっ付きポケモンの
バチュル。

リマのポケモンはピンク色で、ハートの形をしたマンボウの様なポケモン──介抱ポケモンのママンボウだ。


(母さんはバチュル、リマさんはママンボウか…)
(電気・虫タイプと水タイプが相手ね)

((それなら!))


「頼んだぞモグリュー!」
「シビシラス、お願い!」

対するアキラはモグリュー、リオはシビシラスを繰り出した。


「モグリューちゃんに電気タイプの技は効果が無い。そしてママンボウちゃんが苦手なシビシラスちゃんを
 選択…うん、悪くない判断ですね」
「でも相性だけじゃ決まらないのがポケモンバトルよ〜」

「ええ。そう簡単に勝てるとは思ってないわ。でも…」
「悪ぃけど勝つのは俺達ですよ!」

ポケモン達は共に戦うパートナーに笑いかけ、そして倒すべき相手を睨む。


「先制は頂きますよ。バチュルちゃん!シビシラスちゃんに毒突き!」
「ママンボウ。モグリューにアクアジェットよ〜」

バチュルは毒に染まった手を前に出してシビシラスに突っ込み、ママンボウは背びれと尾びれを
左右に動かして水を纏うと、目にも留らぬ速さでモグリューに迫る。


「シビシラス!右に移動してチャージビーム!」
「モグリュー左に移動!切り裂く!」

シビシラスは突っ込んで来たママンボウを束状の電気を発射して吹き飛ばす。
そしてモグリューもまた、鋭く丈夫な爪でバチュルの攻撃を耐え抜くと、そのまま空いた爪で
バチュルを切り裂く。


「あらあら。返り討ちにされちゃったわね〜」
「咄嗟に配置を換えて対処するなんてやりますね。先制を貰ったのはこっちなのに…少し悔しいかも」
「アヤネ。ここは1つ、プランA発動よ〜」
「発案者はリマなんですから、失敗しても文句言わないでね」


(プランAが何なのかは気になるけど、相手は私達のお母さんで遥かに経験があるトレーナー。
余裕を持たせちゃいけない)


「…どんなプランか知らないけど、ガンガン行くわよ!ママンボウにスパーク!」
「迎え撃つわよ〜アクアジェット〜」

シビシラスは体内から放出した電気を自ら纏うと、そのままママンボウへと突進する。
ママンボウも水を纏ってシビシラスへと突っ込む。


「モグリュー!バチュルに切り裂く!」
『グリュ〜…』

負けじとアキラも早口でモグリューに指示を出す。
しかしモグリューは困った顔で首を横に振るだけで、動く気配は無い。


「どうしたんだ?バチュルはそこに居……」


言いかけて、止める。


先程まで小さくても確認出来たバチュルの姿が──消えていた。




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(何だ…プランAって言うから警戒してたけど、特に何も無さそうね)

突進するシビシラスと迎え撃つママンボウ。
水色と黄色がぶつかり合うのは直ぐだろう。そして、衝撃で両者が後方に下がるのも想像出来る。


(そこをどう攻めるか…それがカギね)

シビシラスとママンボウの距離が10m、5m…と縮まっていく。
そして1mを切った時──突然ママンボウが急上昇した。


『!?』

驚いて上を見るシビシラスにつられて、リオも顔を挙げるが、風を切る何かの存在に気付いて前を見る。


「…!シビシラス、前よっ!!」
『!』

切迫したリオの声に、シビシラスは数秒遅れて前を見る。


「遅いわリオちゃん!バチュルちゃん、シザークロス!」
『バチュッ!』

風を切りながら、バチュルは交差させた爪でシビシラスを真正面から切り裂いた。
不意打ちの攻撃を喰らったシビシラスは目を瞑ってヨロヨロと後ずさる。


「何…今の攻撃のスピードは…?速すぎる…!」

狼狽えるリオ。目にも留らぬ速さとは、正にこの事を言うのだろう。
それ程、今の攻撃は《アクアジェット》にも勝る速さだった。


(いつ目の前に?それに、まだ何か忘れて……)


分かりそうで分からない、モヤモヤした物がリオの中を駆け巡る。
モヤモヤが解消されたのは水滴が落ちる音と、のんびりしたリマの声が聞こえた時だった。


「まだ終わってないわよ〜」
「!」


(そうよ、終わってないじゃない……ママンボウの攻撃は!)

ママンボウはシビシラスとぶつかる直前に上昇した。
ポケモンは攻撃を躱されると驚きとショックからか、今まで出していた技を中断するが、自ら…意図的に
攻撃をしなかったとなると話は別だ。

リオが上を見ると、ママンボウは上空でアクアジェットを維持した状態で待機していた。


「攻撃再開よ〜」

リマの指示でママンボウは顔を下に向けるとそのまま急降下、再びシビシラスへと迫る。


「チャージビーム!」

シビシラスは上に向かって束状の電撃を発射するが、向こうは落下の勢いも加わって威力が増している。
《チャージビーム》を受け続けているのに一向に止まらないママンボウに、リオは汗を流す。


「動きを止めて!電磁波!!」
「残念。もう遅いわ〜」

リマが言ったと同時にママンボウが地面に激突した。
大きな音がした刹那、砂埃が舞い、水飛沫が飛び散る。


「まずはシビシラスちゃん撃破ですね」
「…いいえ。まだ決まってないわ〜」
「え?」

嬉しそうに言ったリマにアヤネは首を傾げる。


「あれを見て〜」

リマが指差す先には、ママンボウと…大きく亀裂が入ったコンクリート。
しかし攻撃を喰らった筈のシビシラスは、バチュルの近くへと移動していた。
ダメージを負った様子は無さそうだ。


「あの状況で躱したの?でもどうやって…」
「ママンボウの横に、穴が空いてるでしょ〜?ママンボウの攻撃が当たる前にモグリューが穴を掘って、
 シビシラスを穴の中に引っ張って助けたのね〜」

「正解です」

自分の方を見て話すリマにアキラは頷いた。


「俺のモグリューは攻撃の対象から外れてたんで、シビシラスの援護に回りました。間に合うかどうか、
 正直ヒヤヒヤしましたけど」
「モグリューが《穴を掘る》でシビシラスを助ける事は想像してたけど、あの決断の速さは
 想定外だったわね〜…1歩間違えればモグリューも巻き添えを食らう可能性もあるのに…
 凄いわ〜」

「それは俺の台詞ですよ」

リマは何の事か分からず首を傾げる。


「攻撃をするんなら、わざわざ正面から仕掛けなくても済むハズです。それこそ背後から攻めた方が
 良い…にも関わらずわざと真っ向勝負を仕掛けたのは、シビシラスの視界にママンボウだけが
 映る様にして、本命──尾びれの後ろに隠れたバチュルの存在に気付かせない為ですよね?」

アキラの言葉に、今まで静かに聞いていたリオは目を見開く。


「そっか…あの速い攻撃は《アクアジェット》の勢いを利用した物で、急に目の前にバチュルが現れたのも、
 バチュルがママンボウと一緒に移動していたから。バチュルは一際身体が小さいから、ママンボウの大きな
 尾びれで見えなかったんだわ」

「コレがリマさんの言ってたプランA…ですよね?」
「本当ならママンボウの攻撃が決まって、初めてプランAと言えるんだけどね〜」

小さく息を吐くリマ。
落ち込んでいるのだろうか──そう思ったリオとアキラだったが、次に出たリマの言葉は、
2人が想像していた物とは全く違う物だった。



「…でも失敗して良かったかもね〜バトルを続けられるし、別のプランも試す事が出来るんだから♪」


笑みを深くしたリマに、リオ達は戦慄に似た何かを感じるのだった──