二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 72章 勝利の糸口を握るのは、 ( No.143 )
日時: 2018/06/09 12:26
名前: 霧火 (ID: RjvLVXA1)

「うふふ。今度はプランBを実行してみましょうか〜」

朗らかに笑うリマだが、娘故か──リオは母から放たれる気迫を感じ取り後ろへ下がりそうになる。
しかし不安そうに自分を振り返ったシビシラスを見て、下がりかけた足を踏み留める。


「……私はお母さん達に勝てる程、経験と知識を持ってるワケじゃない。自分は弱いって自負してるよ」

突然喋りだしたリオに全員の視線が集まるが、リオは静かに言葉を続ける。


「今だって焦るどころか純粋にバトルを楽しんでいるお母さんに、一瞬だけ敵わないって思って…
 気付いたら足が勝手に動いてたわ。どんなに強がっても、私は結局臆病なの」


リオは目を閉じて自嘲に似た笑みを浮かべた。
臆病──その言葉を聞いたリマは目を伏せ、アキラは眉を顰めた。


「リオ、」
「だけど…臆病でも勝ちたい、負けたくないって気持ちだけは誰よりも強いのよね」

小さく苦笑を漏らすと、リオはアキラを見た。


「我ながら思うけどメンドーな性格でしょ?」
「………つーかさ、ずっと言おうと思ってたけど…誰が臆病?」
「え?」

ぽかん、とするリオに「だってさ…」とアキラは人差し指を立てる。


「時速300キロで飛ぶエアームドの背中に涼しい顔で乗ってたり、野宿に抵抗無かったり、バイク乗った
 詩人気取りの変なオッサンに初対面ながら説教する奴が、臆病?」

「な…!そんな真顔で聞き返さないでよ!しかも最後の方は小さい頃の黒歴史!」
「他の人の迷惑なんでバイクを止めて下さい、ねぇ…俺には出来ねぇ説教だわ」
「うっ」

シリアスな雰囲気はどこへやら。
ニヤけ顔で見てくるアキラに一気に顔を赤くしてリオは怒鳴るが、直ぐにアキラの言葉で反論する声は
唸り声へと変わる。

恨めしそうに自分を睨むリオに吹き出してから、


「まぁ要するに、お前に臆病なんて言葉似合わねぇよ。…昔っからリオは強いよ」

アキラはリオの頭を一撫でして微笑んだ。
リオは頭に乗せられた少しだけ大きな手を見上げた後、唇を尖らせる。


(何よ…急にお兄ちゃんぶっちゃって)

心の中でそう思っても、リオの口許はいつの間にか弧を描いていた。


「よし!それじゃあ「反撃開始といくか!」…って、私の台詞取るな!シビシラス、バチュルに体当たりっ!!」

リオは言葉を遮ったアキラの背中を叩いて、シビシラスに指示を出す。
シビシラスは小さく頷くと身体をバネの様に縮ませ、近くに居たバチュルに勢いをつけて突っ込む。


「避けて下さい!」

アヤネの指示も、その指示にバチュルが反応したのも遅くなかった──むしろ早いレベルだ。
にも拘らず、バチュルが動く前にシビシラスの《体当たり》がクリーンヒットし、バチュルの身体は橋の方へ
吹っ飛ばされた。


「バチュルちゃん!」
「ママンボウ、受け止めるのよ〜」

橋にぶつかる前にママンボウが《アクアジェット》で橋とバチュルの間に移動して尾びれで
受け止めた事により、バチュルのダメージは最小限に抑えられた。


「ありがとう」
「どういたしまして〜♪」

リマにお礼を言い、アヤネはシビシラスを見つめる。


(明らかに威力もスピードも上がってる…リオちゃんの勢いに、シビシラスちゃんが影響されてる?)


「…やっぱりこのバトルは正解だったわね」

不意に聞こえた安堵した声。
アヤネが隣を見ると、リマは前を見据えたまま微笑んでいた。
何が正解なのかアヤネには理解出来なかったが、今はバトルに集中すべきだと息を吐き
気持ちを落ち着かせる。


「お返しです!シビシラスちゃんにシグナルビーム!」
「私達も続くわよ〜アクアジェット〜」

バチュルは不思議な光を発射し、ママンボウは水を纏って光の横に並ぶ。


「させるか!モグリュー、岩雪崩!」

モグリューが爪を上に挙げると、突如バチュルの頭上に巨大な岩の塊が現れてバチュルを押し潰す。
ママンボウは次々と落ちて来る岩を身体を捻って躱して行く。
進路を断つ為に目の前に落とした岩も、ママンボウは細い身体を利用して僅かな隙間を通り、
シビシラスへ接近する。


「リオ!」
「任せて!シビシラス、電磁波!」

シビシラスは向かって来たママンボウに微弱な電気を飛ばす。
《アクアジェット》で全身に水を纏っていたママンボウに電気が行き届くのは直ぐだった。


「アキラ!」
「サンキュー!モグリュー、切り裂く!」

動きを止めたママンボウにモグリューの鋭い爪が閃き、赤い痕を付ける。
バチュルは岩に邪魔されて身動きが取れず、ママンボウは痛みにもがいている。


「…今までの戦いで分かった?」
「ああ」

前を見据えたまま問い掛けたリオにアキラもまた、首を動かさず返事をする。


「攻撃を一点に絞るわよ」
「了解。ヘマすんなよ」

リオとアキラの間で交わされた作戦。
内容は聞こえずとも、只1人…リマには2人が何を考えているのか、手に取る様に分かっていた。

何故なら…



「…うふふ。リオ達のお蔭でプランBの発動条件成立ね」


リオとアキラが辿り着いた作戦は、2人がその考えに行き着く様に……リマが最初から
仕向けていた物なのだから。



「行くわよシビシラス!」
「準備は良いかモグリュー!」


リマの笑顔の裏に隠された戦略に気付かずに、リオとアキラは勝利を掴み取ろうとする。
その姿はまるで、吊るされた糸に気付かない哀れで滑稽な操り人形──





お久し振りです、霧火です。連絡もせず約1ヵ月更新しないですみませんでした…!
4月に入ってから異常とも言える程多忙で、パソコンの電源を入れる事も出来ずにズルズルと日にちが
過ぎてしまいました。
今回やっっと時間が取れたので所々修正してあげました…が、また直ぐに多忙な日々が待っているので
5月になるまで更新が出来ないかもしれません。
しかし次の話は半分執筆が終わっているので、追加と修正を繰り返せば
もう1話は4月中に更新出来そうです。


謝罪と言い訳と報告はこのくらいにして…次回、プランB発動、そして決着です。
それでは次回もお楽しみに!