二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 88章 トレジャーバトル開始! ( No.168 )
- 日時: 2018/05/01 20:24
- 名前: 霧火 (ID: fjWEAApA)
「…トレジャーハンターの割には薄着だけど」
呆気に取られたリオが辛うじて出せた言葉がソレだった。
しかしリオの言う様にトレジャーハンターを名乗る割に2人の服装は黒のパーカーにスカート、白のパーカーにショートパンツと、冗談かと思ってしまう程に軽装だ。
「ふっふっふ!A達はトレジャーハンター界に革命を起こす、オシャレなトレジャーハンターなのだ!」
「だからこのカッコでも問題ないもん」
胸を張って断言されてしまったら、こちらからは何も言えない。
そもそも、今日初めて会った人間にこれ以上何かを言う必要も無いとリオは自分に言い聞かせた──突っ込んだら負けだ、と。
「…貴女達がトレジャーハンターなのは分かったわ。でも、どうしてその人達を縄で縛っているの?」
「だって、こいつ等が邪魔して来たんだもん!」
「邪魔?」
リオが首を傾げると、縛られていた女性が声を荒げた。
「私達は注意しただけよ!子供2人だけで奥に進もうだなんて、危険すぎるわ!!」
「あー、もー!五月蝿い五月蝿い!!A、お前等みたいに子供子供言うヤツ大っ嫌い!トレジャーハンターが
お宝目指して奥に進む事の何が悪い!」
「Cも、Aを馬鹿にする人間は嫌い。本当は許せないけど、大きな騒ぎを起こせば迷惑かけちゃうもん…だから、
縛るだけにしてあげたのに」
地団駄を踏むAと、じとりと睨むCに女性は唇を噛む。
「成る程ね。私も子供だし、貴女達の気持ちは分かるわ。でも、その人達は解放してほしいわね」
「解放しろと言われて、はいそうですねって解放するAとCじゃないぞ」
「ええ。だからこういうのはどう?」
リオは不敵に笑ってボールを取り出してAに見せた。
「今から私と貴女がポケモンバトルをする。バトルで勝った方が、この人達を好きに出来るって事にしない?」
リオが出した提案に縛られている大人達が反応する。
「何言って…!?勝手に決めないで!!」
「そうだ!早くこの縄を解きなさい!!」
「いくら子供でも、こんな事をして許されると思っているのか!?」
騒ぐ大人達の事など素知らぬ顔でAはリオに笑いかけた。
「あははっ!金髪、お前おもしろいなっ!」
「金髪って言わないでよ。私にはリオって名前があるんだから」
「そっかそっか!それならリオ!お前にトレジャーバトルを申し込む!」
すっかり上機嫌になったAが口にした名前にリオは首を傾げる。
「トレジャーバトルって何?」
「ふっふっふ!教えてやろう!C、説明よろしく!」
(…って、貴女が説明するワケじゃないのね)
若干呆れるリオ。
そしてAに促されCはバトルの説明をし始めた。
「これからCが宝を埋めに行く。バトルは3分後に開始する。バトルをしながら遺跡に隠された宝を探して、
先に宝を見付けてCの所に持って来た方が勝ちとなり、宝も見付けた方の物となる。だから使用する子達が
戦闘不能になっていても、宝を持って来れば勝ち」
「そういうワケだからバトルを避けて宝を探しても良いけど、相手のポケモンに妨害される可能性があるから、
戦闘不能にしてから探した方が効率は良いぞ!」
(勝敗が宝で決まるなんて変わってるわね…でもトレジャーハンターを名乗る、この2人らしいバトルね)
「OK、受けて立つわ」
「あはっ!そうこなくっちゃね!」
「リオが負けたらこの人間達は好きにさせてもらう」
Cはそう言って大人達を指差した。
先程まで抗議の声をあげていた大人達だが、騒がれると面倒…という理由で全員ガムテープで口を塞がれて
しまった為、唸る事しか出来ない。
「…そうだ、2人に忠告。いつ新しい流砂が出来るか分からないから、無闇にこの中を走り回るのは危険。
移動する際は駆けずに早歩きでお願い」
「うん!分かった!」
「私にまで教えてくれるなんて親切ね」
「トレジャーバトルは平等、敵味方関係無いもん。じゃあ、隠しに行く前に…」
Cはモンスターボールを投げた。
くるりと一回転して、地面に着地してお辞儀をしたのは左右に髪を分け、リボンを付けた少女の様な容貌の
ポケモン──操りポケモンのゴチミルだ。
そしてCは重そうな、黒光りした球体を地面に置いた。
「2人にはCが宝を隠し終わるまで目、瞑っててもらう。良いよって言うまで目を開けちゃ駄目だからね。
もし言う前に目を開けたりしたら…」
言った直後、ゴチミルの力で球体が浮き上がり、音を立てて壁にぶつかった。
その場に居る全員が粉々に砕けた球体とゴチミルを交互に見る。
「ゴチミルの痛いお仕置きが待ってるもんね」
Cの言葉に目を細め妖しい笑みを浮かべたゴチミルに、全員沈黙する。
そしてAとリオを入り口前に移動させてから、Cは持っていたストップウォッチをゴチミルに手渡した。
「じゃあ、目、瞑って?」
首を傾けて言ったCにリオとAは慌てて目を閉じる。
どの宝を隠すか迷っているのか、将又お目当ての宝が出て来ないのか、色んな物を掻き集める音がする。
しかし隠す宝が見付かったのか、ギュッと紐をきつく縛る音がした。
「…よし。今から宝を隠しに行くから、ゴチミル、見張りお願い」
砂を踏み締める音の後、階段を下りる足音が微かに聞こえた。
Cが居なくなった事を確認してから、リオは隣に居るであろうAに話し掛ける。
「…気付いたんだけど、このバトルって私が圧倒的に不利よね」
「何で?」
「貴女達はトレジャーハンターで宝探しは得意だろうし、あの子が宝をドコに隠すか、貴女なら見当はつくんじゃ
ない?双子みたいだし」
サラサラと砂が落ちる音が近くで、遠く(恐らく階段近く)で大人達のくぐもった声が聞こえる。
Aは少し唸ってから長い溜め息を吐いた。
「双子…双子かー」
「違うの?性格はともかく、あんなにそっくりなのに」
リオが言うと、Aは再び唸り始めた。
大人達のくぐもった声は未だに聞こえるが、砂の落ちる音はいつの間にか止んでいた。
(聞かない方が良かったのかしら)
そう思い「答えなくて良い」とリオが言おうとした時、階段を駆け上がる足音が右側からした。
大人は全員縛られて身動きの取れない状態、リオ達はゴチミルに監視されている身。
今、自由に身動きを取れるのはCだけだから、当然足音は彼女の物だろう。
(…でも、いくら何でも戻って来るの早すぎない?)
本当に宝を隠したのかと疑ってしまう程に、Cの帰りは早かった。
「はぁ、はぁ…お待たせ。目、開けて良いよ」
疑問は残っていたが、バトルに集中すべくリオは疑問を頭の片隅に押しやる事にした。
目を開け、互いにボールを手に取る。
「制限時間は無し、使用出来る子は2匹までだよ」
「「了解」」
「じゃあ、バトル始めっ」
Cの合図で2人は持っていたボールを投げた。
「お願い、バルチャイ!」
「遊びの時間だよ!クマシュン!」
リオの1匹目はバルチャイ。
対するAのポケモンは鼻水を垂らした、クマのぬいぐるみの様なポケモン──氷結ポケモンのクマシュンだ。
「凍っちゃえ!冷凍ビーム!」
「砂を巻き上げて!」
クマシュンは勢い良く鼻水をすすると、凍える様なビームをバルチャイ目掛けて発射する。
バルチャイは慌てずに羽撃いて周囲の砂を巻き上げる。
巻き上げられた砂は《冷凍ビーム》で凍りつき、薄い氷の壁となった。
「ふっふっふ!そうやって防御される事は想定内!…って、あれっ?」
砂と泥を含んだ氷の壁は茶色っぽく、バルチャイの姿を完全に隠してしまった。
「むむっ…姿は見えないけど標的は多分、まだ壁の向こうだよっ!確保!」
クマシュンは流砂に注意して早歩きで氷壁へ向かい、裏側を覗き込んだ。
しかしバルチャイの姿はどこにも無い。
「騙し討ち!」
『!?』
頭を翼で叩かれ転けるクマシュン。
クマシュンは何が起こったのか分からず頭を抑える。
しかし入り口前の壁に寄り掛かってバトルを眺めていたCには、状況が読み込めていた。
(リオ、上手い。クマシュンが裏側を覗いた丁度そのタイミングで、バルチャイに目配せして壁をぐるりと回らせてクマシュンの背後を取った)
「今のうちに…行くわよ、バルチャイ!」
リオはクマシュンの横を通り過ぎ、階段を駆け下りる。
バルチャイも飛んでリオの後に続く。
「くそーっ!待て待てー!!」
鼻水を出してボーッとしているクマシュンを抱き上げてAが後を追う。
CはそんなAの背中を目を丸くして見送った。
「いつもなら、じっくり調べてから別の場所に移動するのに…Aらしくない」
『ゴチュ』
「…うん。でも、楽しそう」
ゴチミルに頷いて、Cは緩みそうになる頬を手で隠した。