二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 91章 泥と変化 ( No.171 )
- 日時: 2014/11/04 14:20
- 名前: 霧火 (ID: ow35RpaO)
「チルットに弾ける炎!」
「躱して木の実よぉーい!」
チルットは飛んで来た炎を躱すと羽の中に嘴を突っ込み、紫色のイボイボが付いた木の実を取り出した。
「何をする気…?」
「失敗は許されない一発勝負!きのみパワーを喰らえ!自然の恵み!」
チルットが木の実を両脚で勢い良く掴むと木の実が光り輝いた。
そして光った状態の木の実を地面に刺すと木の実は弾け飛び、代わりにこの遺跡には場違いな岩が出現して
ヒトモシを突き上げた。
「ヒトモシ!!」
「《自然の力》は持っている木の実の種類でタイプも威力も変わるのだ!ちなみに今使ったウイの実の場合は、
岩タイプの攻撃になるよ!」
(つまり木の実が無くなれば使えなくなる技なのね。《リサイクル》を覚えていたら話は別だけど、Aは一発勝負と言ったから恐らく覚えていない。…でも空を飛べる向こうが優勢なのは変わらない)
「お返しよ!弾ける炎!」
突き上げられた事により、飛んでいるチルットの真上を取ったヒトモシは効果抜群の技を受けた直後とは思えない速さで炎を放った。
『チィッ!』
運良く攻撃が急所に当たったが、チルットは地面に叩き付けられる前に体勢を立て直す。
「やったな!外さないよ!燕返し!」
Aの命令と同時に地面スレスレに居たチルットの姿が一瞬で消える。
ヒトモシが目の前に姿を確認した時には、小さな嘴が身体に減り込んでいた。
「目覚めるパワー!」
痛みに顔を歪ませながらもヒトモシは攻撃を受けた身体が飛ばされる前に冷気を纏った球体を放つ。
しかしチルットは直ぐさま上昇して攻撃を回避した。
「至近距離からの攻撃だったのに…やっぱり簡単には当てさせてくれないわね」
落ちて来たヒトモシを受け止め、リオはAの頭の上で毛繕いをしているチルットを見る。
(毛繕いなんて随分と余裕ね…どうせバトルで汚れるのに)
そう思いながらリオはヒトモシを降ろし、戦いの邪魔にならない様に後退する。
──ぐちゅり。
「?」
まるでベトベターを踏んだ様な音と感触に足元を見ると、泥の中に片足を突っ込んでいた。
(何でこんな所に泥が?…あぁ、さっきの攻防で飛び散った火の粉とヒトモシの蝋燭の熱で地面に張っていた氷が
溶けて泥になったのね)
視野を広げてみると、他にも泥になっている箇所をいくつか確認出来た。
(でもこの泥をバトルに活かす事は出来ないわね)
相手が接近戦タイプの飛べないポケモンだったら、接近した際に泥をかける・投げる等して怯ませたり
目眩しとして使う事が出来たが、相手は至近距離の攻撃も躱したチルットだ。
「クマシュンみたいに攻撃に癖があれば隙をつく事が出来たのにね」
「残念、チルットにそんな癖は無い!上空ドラゴン注意報!ドラゴンダイブ!!」
「煉獄!」
チルットは青い龍のオーラを纏い、急下降する。
龍のオーラから殺気に似た何かを感じ取ったヒトモシは攻撃も回避する事も出来ず、チルットの体当たりを
諸に受けた。
リオは衝撃で起こった砂埃の中に、小さなヒトモシの姿を確認した。
「大丈夫!?」
飛ばされて来たヒトモシに駆け寄って傷を確認する。
直撃はしたがダメージは大した事無さそうだ。タイプが一致していなかった事と、地面の砂がクッション代わりになったのが救いだったらしい。
「あと1歩分後ろに飛ばされてたら危なかったわね」
傷の浅さに安堵しつつ、リオはヒトモシに再び汚れた靴と泥を見せる。
蝋燭が濡れてしまっていたら炎を灯せないし、蝋燭の炎を種火にして技を出す事も儘ならなかったかもしれない。そうなっていたら、それこそ絶体絶命だった。
「怯みが発生するなんて、ますます不利になって来たわね」
「ふっふっふ。風はA達に向いている!外さないよ!燕返し!」
「…ごめんねヒトモシ。耐えてから、目覚めるパワー!」
ヒトモシに《燕返し》を回避する術は無く、自分にもどうする事も出来ない。そんな歯痒さからリオはヒトモシに謝り、攻撃の準備をする様に指示を出す。
頷き、すぐに攻撃が出来る様に冷気を纏った球体を空中で待機させる。
チルットの姿が消えた──
(また正面から来る!)
身構えるリオとヒトモシ。そして予想通り真正面にチルットが現れた。
しかしチルットは攻撃をせずに上昇して迂回、ヒトモシの後頭部を攻撃した。
リオがAの様子を盗み見ると明らかに動揺しているのが分かった。背後から攻撃したのは作戦では無く、
チルットの独断の様だ。
しかし攻撃は命中したので良しと考えたのか、Aは口許に弧を描いた。
「やったやった!これはもうAの勝ちじゃないかな!?」
ぴょんぴょん跳ねて喜びを表現するA。
一方リオはチルットの動きが変化した原因を推測する。
「まさか、あのチルット…」
リオは自分の推測が当たっているのか確認するため、口を開いた。