二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 10章 リオvsコーン② ( No.22 )
日時: 2020/06/24 13:27
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

「ご苦労様でした、戻って下さいヨーテリー」

コーンは戦闘不能となったヨーテリーをボールに戻し、新たにボールを取り出す。

「流石ですね、僕のヨーテリーを倒すなんて。では、最後のポケモンにコーンの全てを
 賭けるとしましょう!出て来て下さい、ヒヤップ!」

コーンが最後に繰り出したのは水かけポケモンのヒヤップだ。

「ありがとう、ヒトモシ。戻って休んでて」

戦闘不能ではないが、ヨーテリーとの戦いでかなり体力を消耗したヒトモシをボールに戻す。
そしてベルトに付けてあった、もう1個のモンスターボールを手に取る。

(昔馴染の子で2ヶ月前に快く仲間になってくれて、それからずっと鍛えてたけど何故か新しい技を
全然覚えなかったのよね……お母さんとお爺ちゃんは笑うだけで何も教えてくれないし、
お姉ちゃんには「初心者なのに面倒なポケモン選んだわね」って鼻で笑われたし)

一瞬不安が過ぎるが、リオは頭を振って雑念を振り払う。

「考えても仕方ないわよね。女は度胸!私の2番手はこの子!出て来て、シビシラス!」

コーンのヒヤップに対してリオが繰り出したのは、ふわふわと宙に浮くレプトケファルスに似た
外見をしたポケモン——電気魚ポケモンのシビシラスだ。

「電気タイプですか。確かにヒヤップの方が不利ですが、だからと言って
 簡単に勝てると思わないで下さいね」
「分かってます。私はただ、全力で挑むだけです!」
「バトル、再開!」
「ヒヤップ、《奮い立てる》!」

ヒヤップは体を震わせて息を吐くと、シビシラスを睨み付ける。
その顔は《奮い立てる》の効果なのだろうか、真っ赤に染まっていて怒っている様にも見える。
異常なまでのヒヤップの豹変ぶりにリオの額から汗が垂れる。

「ヒヤップもヨーテリーと同じ技を覚えているのね……様子見しようと思ったけど作戦変更!
 シビシラス!《スパーク》よ!」

シビシラスは全身に電気を纏い、ヒヤップに突進する。

「《水鉄砲》で迎撃です!」

しかしパワーアップしたヒヤップの《水鉄砲》が、いとも容易くシビシラスを吹き飛ばす。

「シビシラス!」

そのままリオの後ろの壁に叩き付けられたシビシラスだったが、効いてないのか無表情なのか、
顔色ひとつ変えずにフィールドに戻って行く。
そんなシビシラスの姿にリオは安堵するが、すぐに表情を引き締めヒヤップに視線を移す。

「……やっぱり《奮い立てる》は厄介ね。これじゃあ無闇に近付けな、」

そこでリオはヒヤップの異変に気付いた。

ダメージを受けていないのにヒヤップの顔が歪んでいて、何かを我慢している様なのだ。
目を凝らしてヒヤップを見つめると、ヒヤップの顔の周りに一瞬電気の様な物が走り、
ヒヤップの体の動きが遅くなった。
ポケモンの状態異常の1つ、麻痺だ。

(麻痺状態になってる?でも何で?攻撃は当ててないのに)

リオは先程のヒヤップとシビシラスの行動を思い出す。

(もしかして、)


リオの中で1つの仮説が出来る——と同時に、コーンが動いた。

「ヒヤップ!最大パワーで《水鉄砲》です!」

ヒヤップは足を開き、息を大きく吸い込む。《水鉄砲》を発射する構えだ。

「シビシラス、そのままヒヤップの攻撃を待って!」

シビシラスは静かに頷き、ヒヤップの攻撃を待つ。
そんなリオとシビシラスにコーンは怪訝な顔をするが、ヒヤップのパワーが溜まった事を確認し、
口を開いた。

「発射っ!」

ヒヤップは口に含んだ大量の水をシビシラスに向けて発射する。

(来た!)


「《水鉄砲》に向かって《チャージビーム》!!」

シビシラスは体に蓄積した電気を束にして、そのまま《水鉄砲》に向けて放つ。
2つの技の威力は互角で、力を抜けば押し負ける、そんな状態だ。

「もっとパワーを溜めないと、ヒヤップに攻撃は当たりませんよ!」
「当たらなくて良いんです。電気が通りさえすれば!」
「?どういう、」

コーンが言葉の真意を問おうとした時、戦況が変化した。
技の威力は未だに互角だ。しかし、シビシラスの電撃がヒヤップの《水鉄砲》を通して、
徐々にヒヤップの口に向かって上り始めたのだ。

「これはっ……!」
「さっきのシビシラスの攻撃、技が当たってないのに何でヒヤップが痺れていたのか
 不思議だったんです。だけど、よく考えたら分かる事でした。水は電気をよく通す……
 攻撃が直接当たらなくても《水鉄砲》を通して、電撃はヒヤップに届いていたんです」

(さっきは水鉄砲ですぐに吹き飛ばされたから痺れる程度だったけど……)

リオはシビシラスを見つめる。
シビシラスは闘志に火が点いたのか(もしそうなら遅い気もするが)火事場の馬鹿力のような力を発揮し、
ヒヤップを押し始めた。

「このまま行けば、間違いなく電撃はヒヤップに到達します。今《水鉄砲》を止めたとしても、
 抑える物がなくなった《チャージビーム》が直接ヒヤップに命中します」

つまり、どちらを選択してもヒヤップは間違いなくダメージを受ける。
究極の選択にコーンは拳を固めるが、やがて


「僕は水タイプを愛し、使いこなすコーンです。最後まで水タイプの技で勝負しますよ」

覚悟を決めたように口元に笑みを浮かべた。
それにリオも楽しそうに微笑む。

「それなら私達も電気タイプの技で迎え撃つだけです。シビシラス!!」
「ヒヤップ!!」

コーンの想いが届いたのか、押され気味だったヒヤップの力が戻り、今度はシビシラスを押し始めた。
そして《水鉄砲》がシビシラスに直撃したと同時に《チャージビーム》がヒヤップに命中、
お互い壁に勢い良く叩き付けられて地面に落ちる。


「ヒヤップ!!/シビシラス!!」

コーンとリオの声が重なり合う。
トレーナーの声に、ゆっくりと起き上がったのは……


「ヒヤップ!」

シビシラスだった。
コーンはヒヤップの名前を呼ぶが、ヒヤップは地面に突っ伏したまま動かない。
審判がヒヤップの顔を覗き込む。そして、


「ヒヤップ戦闘不能!シビシラスの勝ち!よって勝者は……挑戦者リオ様です!」


審判の声がジムに響き渡った。



リオvsコーンは、リオの勝利で幕を閉じました。
昔から攻撃技である水鉄砲に電気技を当てるとこうなるんじゃないかとずっと思っていたので、
今回こういう形で書けて満足です。上手く表現出来てるか不安ですが……

次回、ジムを出て次の街に——は行かず、忘れかけてたあの人が登場します。
それでは次回もお楽しみに!