二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 5章 battle for depart ( No.8 )
- 日時: 2020/06/23 18:34
- 名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)
リオとヒトモシが出会い、友達 兼 家族になってから4年の歳月が流れた。
4年というのは長いようで、短い。
しかし周りの景色や人は確実に変わっていた。
勿論、リオも——
「リオー!早くしないと来ちゃうわよ〜」
「はーい!」
キャミソールの上に丈が長いフード付きの白のパーカーを羽織り、短パンと黒のニーソックスを履く。
腰のベルトにモンスターボールを6個セットして左手首には赤色のライブキャスターを装着し、
最後に前日に用意してあった着替えと手鏡とブラシ(手鏡とブラシは母に強引に持たされた)、
地図と方位磁石、ハサミとロープとゴム手袋とゴミ袋、ポケモンフーズと傷薬等ポケモン用の薬、
木の実と擂り鉢と擂り粉木、お財布とバッジケース、その他悪天候に必須の道具を
真新しいリュックに詰め込んで担ぐ。
フードの中にすっぽりと入って寛いでいるヒトモシを鑑越しに確認して、リオは自室のドアを閉めた。
「よっ!」
金色の髪を揺らしながら階段を降りて来たリオを笑顔で出迎えたのは、赤髪のメガネの少年——
リオの幼馴染でライバルでもあるアキラだった。
「久しぶりだなリオ。俺に会えなくて寂しかったんじゃねぇか?」
ニヤニヤしながら頬を突付くアキラにリオは頭に疑問符を浮かべる。
「?久しぶりって……1ヶ月前に会ったばかりじゃない」
「相変わらずお前はツレないっつーか……まぁ良いや。チビ助、じゃなかった。ヒトモシも元気だったか?」
アキラが微笑みかけるとヒトモシは嬉しそうに頷き、フードから出てアキラの肩に飛び乗った。
この4年間でリオとヒトモシは勿論、アキラとヒトモシも大分仲良くなった。
ヒトモシを抱き上げている姿は、まるで妹を可愛がっている兄の様だ。
「お前はいつも可愛げがあって良いよなー」
「人の事ちらちら見て言うのやめてくれない?ところであの子は一緒じゃないの?」
「ん?ああ、あいつなら近くの原っぱで遊んでるぜ。そろそろ『ブィー』ほら来た」
アキラが開けたドアから間髪入れずに入って来たのは、茶色の柔らかそうなふわふわとした尻尾と
首周りに白い体毛を持ったウサギの様な生き物。
このポケモンはイーブイ。
環境に合わせて7種類のポケモンに進化する可能性を持つ珍しいポケモンだ。
「ったく、尻尾に草付いてんじゃねぇか。男なら身嗜みに気を付けろよなー」
尻尾に付いた草を払い、アキラは鞄から取り出したブラシでイーブイの尻尾を梳かす。
アキラは1年前、10歳の誕生日を迎えた日にプレゼントとして祖父母から卵を渡された。
そして卵から孵ったのがこのイーブイで、そのままアキラのポケモン——パートナーとなった。
「……いよいよね」
「ああ。ずっと今日という日を待ち侘びてたぜ」
2人は今日、ポケモントレーナーとして旅に出る。
最初リオは家が離れてるからそれぞれ別々に旅立とうと提案したのだが、アキラはその提案を却下し、
約束の日までお互いポケモンを鍛えようと言った。
その理由は——
「よし!早速始めようぜ!」
「……何となく想像つくけど、何を始めるの?」
「その質問は野暮ってモンだぞリオ。そんなの、ポケモンバトルに決まってんじゃねぇか!」
目をキラキラと輝かせながら拳を固めるアキラにリオは数歩下がる。
そう、アキラはポケモンバトルをする為だけにリオの提案を却下し、こうして朝早くに
わざわざリオの家まで来ていたのだ。
「やっぱ最初のバトルは1番のライバルとしてぇだろ?」
「そ、それについては否定しないけど……アキラって本当にバトル大好きよね」
「リオもだろ?」
「まぁね」
お互い顔を見合わせてニヤリと笑う。
何だかんだ言って、リオとアキラはポケモンも、ポケモンバトルも好きな似たもの同士だった。
「勝負は1対1のバトルでいいな?」
「ええ。相手を先に戦闘不能にしたほうが勝ちね!」
リオとアキラは【電気石の洞窟】の前にある岩場に来ていた。
家の前でやると野生のポケモン達に攻撃が当たってしまうから、というリオの意見でここで戦う事となった。
「では審判はわしがやるからお互い全力で戦うと良い」
「Σお爺ちゃん!?」
(何時から居たの!?というか、何でそんな所に!?危ないでしょ!)
リオ達の身長の倍の高さはある大きな岩場に座っていたムトーにリオは驚愕する。
しかし自分の隣に立つアキラは別段驚いた様子も無く、何時もの調子でムトーに朝の挨拶をしている。
「細かい事を気にしているのは私だけなのね……」
「そんじゃ、お願いしますムトーさん」
「うむ」
岩場に座っていたムトーが2人の間に降り立つ。
「使用ポケモンは1体。先にポケモンが戦闘不能になった方の負けじゃ。では両者、ポケモンを」
リオとアキラはお互い肩に乗っていたパートナーと頷き合う。
「行くわよヒトモシ!強くなった私達の力、アキラ達に見せてあげましょ!」
「行けイーブイ!修行の成果をリオとヒトモシに見せてやれ!」
ヒトモシとイーブイは一鳴きすると地面に降り立つ。
「試合開始!」
「そっちが先攻で良いぜ、レディーファーストだ」
合図の直後に腕を組んで不敵な笑みを浮かべるアキラ。
イーブイもアキラと同じ表情をしていて、どこか自信に満ち溢れている。
「……余裕ってカンジね。まぁ良いか、遠慮なく行くよ!ヒトモシ《鬼火》!」
「《影分身》だ」
ヒトモシは頭の炎を振って小さな火の玉を6個生み出しイーブイ目掛けて放つが、イーブイは瞬時に
分身を20体近く作り出し、飛んで来た紫色の火の玉を躱す。
「さぁ、本物のイーブイはどれだと思う?」
「上手く躱したけど、ヒトモシにそんな小細工通用しないわよ!《弾ける炎》!」
ヒトモシは一回転すると頭の炎から先程の《鬼火》より大きな紫色の炎を飛ばす。
バチバチと火花を散らしながら炎は一直線に1番右端に居たイーブイに向かって飛んで行き、命中した。
命中と同時に分身が消え、攻撃をまともに喰らったイーブイはよろよろと立ち上がる。
「何で本物が分かったんだ……?」
アキラは戸惑いながらヒトモシを見る。
20体近く居た分身の中から迷わず本物に攻撃を当てたのだから、無理もないだろう。
「ヒトモシはポケモンの生命エネルギーを吸い取って炎を燃やしていると言われている。生命エネルギーを
辿って分身の中から本物を見付けるなんて朝飯前よ」
リオは自信満々に言うがあくまで「言われている」だけで真意は定かではない。
しかしこうして本物を見つけ技を命中させたので、生命エネルギーが見える事は間違いなさそうだ。
「オイオイ、マジかよ……そんなちっこいのにチートとか。俺の、じゃなかった。
俺達の活躍する場が減るだろーが!」
言葉とは裏腹にアキラの表情は楽しそうだ。
リオも笑みを浮かべるがすぐに表情を引き締める。
「このまま一気に攻めるわよ!《スモッグ》!」
ヒトモシは今度は口から黒い煙を出して視界を悪くする。
イーブイは鼻を押さえながらも耳を立て、辺りを警戒している。
(視界が悪いのは向こうも同じだけど、ヒトモシはチートだし地形を把握してるリオの方が
圧倒的に有利だな。なら、)
「《電光石火》で脱出!」
イーブイは《電光石火》のスピードを利用して、煙が無い上の方にジャンプする。
しかしその先には岩の上に乗ったヒトモシが待ち構えていた。
「もう1度《弾ける炎》!」
ヒトモシは先程と同じように一回転して火花を持った炎を飛ばす。
足が地についているヒトモシに対してイーブイはジャンプしている為、身動きが取れない。
(……この勝負、貰った!)
リオは勝利を確信して拳に力を入れるのだった。