二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 42章 砂漠の先の輝きの街 ( No.80 )
日時: 2018/02/13 16:36
名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)


「…うわぉ」

リオは目の前に広がる風景に、感嘆にも似た声を漏らした。

4番道路。
【フリーウェイ】と呼ばれるバイパスがある一方で、肝心のライモンシティへと続く道は
吹き荒れる砂嵐のせいで未だに整備されておらず、長く険しい砂漠が続いている。


(ヒトモシ達を事前にボールに戻しておいたのは正解だったわね)


考えている間にも砂嵐は容赦なくリオを襲う。
普通なら目や口に砂が入りそうだが、リオは動じず歩を進める。

旅立つ前の日…リオは旅先で何があるか分からないという理由で、リュックの中にありとあらゆる物を
詰め込んでいた。
天気の影響で旅が長引いたりする可能性だってある──町中から外れて自然の中で暮らし
育って来たからこそ、リオはそういった事に敏感だった。

そして今、リュックの中に入っていた物が活躍していた。


(念のために準備しといてよかった)


目と口を保護してくれているゴーグルとマスクに感謝しながら、リオはライモンシティへと向かった──



ライモンシティ。
遊園地を中心としたテーマパークが立ち並ぶ活気溢れる街だ。
遊ぶ所が多いため娯楽都市と呼ばれる一方、夜になっても街から光が消えない事から
輝きの街とも呼ばれている。


「…やっと、着いた…!」

そんな明るい街とは対照的に、リオのテンションは珍しく低かった。
決して疲れたわけでも砂漠の暑さにやられたわけでもない。リオの元気が無い原因は、
靴の中に入った砂にあった。


「うぅ…ジャリジャリして、嫌な感じ……」

靴の中に入った砂の感触が靴下を通して足の裏に伝わる。
気分がいいとも言えない独特の感触に、自然と眉間に皺がよる。

こうなるのが嫌でリオは最初から裸足で砂漠を歩こうとしたが、近くに立っていた山男に危険だと止められ
渋々断念するしかなかった。


「…早く砂を洗い流そう」

フラフラとした足取りでポケモンセンターに入る。


しかし…


「ごめんなさい。今、お部屋は空いてないんです」

困ったように笑ったジョーイさんに、リオの願いは儚く崩れ落ちた。


「え…も、もしかしてシャワーも使えなかったり?」
「ええ。今日の砂嵐は特に酷いから、シャワーを使うトレーナーさんも多くて…だから番号札を
 配っているんですけど…」
「そ、そうなんですか。…ちなみに、今何人ぐらい待ってるんですか?」

部屋が空いてないのは仕方ない──そうリオは思った。
ライモンシティを訪れるのは家族連れや観光客が多いが、その一方で宿泊施設が少ない。
そのため、ポケモンセンターに泊まれないのはある程度想定済みだ。

野宿でもいい、お風呂に入れなくてもいい──この砂を落とすためにシャワーさえ使わせてもらえれば、
リオは満足だった。


(30〜40人くらいなら待てるから、それまで時間潰そう)


そう、思っていたのだが。


「え、と…600人くらいですね」


(ろ、ろっぴゃく……)


ジョーイさんの口から出た桁違いの数字を聞いて、目眩に襲われたリオはそのまま後ろに倒れるのだった。



 ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼



「…」

シャワーを諦めたリオは遊園地の前を流れる川をボーッと眺めていた。


(この川で砂を洗い流して、…なんて、それは流石にダメよね。公共の場なんだし。やっぱりここは、
チラーミィの《アクアテール》で…)


チラーミィのボールを手に取った時、視界に沢山の人が映った。


「…?何かしら」

ライモンシティに着いた時には出来てなかった人集りに首を傾げる。
そして1度ボールをベルトにセットして、好奇心の赴くまま、リオは人集りの中に入って行く。
どうやら2人の男女が【ビッグスタジアム】の前で何やら口論しているらしい。

リオは人混みの僅かな隙間から耳を傾ける。


「これは俺が決めた事なんだ!何と言われようと、譲るつもりはねぇ!」
「!」

リオは聞き耳を立てるのをやめて、屈んで隙間から声のした方を覗き込む。
そしてリオの瞳に映ったのは、


「やっぱり!おー……きゃっ!?」

誰かの足がお尻にぶつかり、リオは漫才で見るような滑り込みで人混みから弾き出される。







 。

長い沈黙と突き刺さる視線に、徐々に顔が熱くなるのをリオは感じた。


(どうしよう。流石にこの気まずい空気の中、顔を上げるなんて事出来ない…!)


冷や汗を流すリオ。相変わらず周りは静まり返ったままだ。
そんな沈黙を破る猛者が居た。


「大丈夫か?」

素っ気ない、しかし優しい声音にリオは少しだけ顔を上げ──笑った。


「…うん、大丈夫。ありがとう」

差し出された手を取り、起き上がる。
擦りむいて赤くなったリオの額を見て、手を差し出した人物は目を細め、口許を緩める。


「相変わらずだな、リオ」


嬉しそうに言ったアキラに、リオは苦笑した。


そんな2人を、1人の女性が見ているとも知らずに…



お久しぶりです、霧火です。
今回リオはライモンシティに到着、そしてアキラと再会しました。
「何でアキラが先にライモンシティに?」…という疑問は次回明かされます。
そして、謎の女性の正体も…

それでは、次回もお楽しみに!