二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 46章 明日天気になぁれ! ( No.89 )
- 日時: 2018/02/13 16:51
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
「ところでアキラ」
「……何だよ」
腕を組んで外方を向いているアキラに声を掛ける。
すると返って来たのは、素っ気ない返事とじとっ、とした視線だった。
若干声のトーンも下がっている気がする。
(まだ拗ねてる…こーゆー所が無ければ、素直にカッコ良いって言えるのに)
再び顔を背けた幼馴染に内心呆れつつ、リオは話を続ける。
「このサッカーボールって、アキラの自前?」
「まさか。その辺に転がってたから使っただけだ」
リオが抱えている半焦げのサッカーボールを横目で見て、アキラは首を横に振る。
爆弾が投下されたのは、その後だった。
「じゃあさ、コレって……試合で使うサッカーボールなんじゃないの?」
リオの言葉にアキラの肩が僅かに動いた。
それから暫くして、アキラがゆっくりと振り返った。
不機嫌な様子は消え失せ、今は焦りと恐怖の色が顔に出ていた。
「…マジ?」
恐る恐る聞き返したアキラに、リオは悪戯っぽく笑う。
「さぁね。こんなに焦げちゃったら確かめようも無いし…でも大丈夫じゃない?
サッカーボール1個なら買えるわよ」
アキラの強張った顔が緩む。
「そっ、そうだよな!たかがボール1個くらい──」
「お財布の中は《絶対零度》の如く、冷たく、寂しくなると思うけどね」
「!?」
目を細め、遠くを見ながら力無く笑うリオ。
それを見たアキラは、天国から地獄に叩き落とされたかの様な顔になる。
アヤネは徐にポケットから蝦蟇口を出し、中身を確認して口を開く。
「サッカーボールなら私が事情を説明して弁償します」
「っ、ありがとう母さん!」
感極まってアヤネの手を握り締めるアキラ。
「…良いのよ、お礼なんて」
アキラの手の上に片手を置き、アヤネはふわりと微笑んだ。
優しい笑顔にアキラもまた、微笑む──
「この分はアキラの出世払いって事で、いつか利子付きで払ってもらうから♪」
人差し指と親指をくっつけて笑う母に、アキラは笑顔のまま固まる。
(そういえばアヤネさんって…守銭奴だった)
母から聞かされた悲しい事実を思い出したリオは、先程よりも目を細くして2人を見つめるのだった……
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
「いい食べっぷりね!」
「あ…!す、すみません私ばっかり食べてっ」
「遠慮なんかしないで!アキラは少食で好き嫌いが多いから、こっちが張り切って作っても残しがちなの。
でもリオちゃんは一杯食べてくれるから作り甲斐があるわ!」
鼻歌混じりに次々と野菜や果物を切っていく母親に、アキラは顔を引き攣らせる。
(そうやって後先考えずに沢山作っから、食費が馬鹿にならねぇんだよ…それなのに金には煩いとか、
矛盾してんじゃねぇか)
アキラは決して小食ではなかった。母──アヤネの作る量が物凄いだけで、アキラ自身は普通の男子並みに
ちゃんと食べているのだ。
好きで残しているのではない。残さざるを得ないのだ。
(…まぁ母さんが勘違いしてくれてるお蔭で、前よりは作る量は減ったかな。それでも多いけど)
悲しい事に、自分の心情を察する者は居ない。
アキラは重くなりかけた気持ちを頭を振って吹き飛ばし、リオに声を掛ける。
「リオ」
「む〜?」
タイミング良く口にナポリタンを入れたリオが、モゴモゴと口を動かしながら振り返る。
「俺が居ない間、変な奴に絡まれたりしなかったか?特にヤローに」
「[ゴクンッ]えーとね…」
「待て」
アキラは人差し指でリオの口の端を触り、指を見せる。
親指にはソースが付いていた。
「料理が美味いからってがっつき過ぎだぞ。色気より食い気だなお前は…」
「それを言うならアキラだって同じじゃない。人のソースまで舐めるなんて卑しいわよ」
リオは溜め息混じりに指を舐めたアキラに反発する。
「分からねぇのか?この俺の仕草その物が、色気があるじゃねぇか」
「ごちそうさまでしたー」
「いや、スルーすんなよ!!」
目の前で繰り広げられる漫才(?)に笑うアヤメ。
そして笑顔のまま、彼女がビデオカメラを回しているのをリオ達は知らない。
「…ったく。それで?どうなんだよ」
「絡まれたというか、色んな人には会ったよ」
「へぇ。具体的には?」
ミックスオレで喉を潤してから、リオは口を開く。
「【スカイアローブリッジ】ってあるでしょ?そこでレイドっていう意地悪な男の子と会ったわ。
ヒウンシティではサパスと戦って勝ったけど、逃げられたのは悔しかった!アーティさんとはジム戦して…
苦戦したけど、なんとかバッジはゲットしたよ。あ、あとは白衣着た男の人にお世話になったの。
名前はパイソンさん…って、アキラ?」
アキラの周りの気温が数度下がった事に気付いたのはアヤネと、パートナーであるイーブイだけだ。
「さっきから聞いてりゃあ、お前よぉ…」
「う、うん?」
「関わった奴、全員ヤローじゃねぇか!!」
卓袱台を引っくり返す様な勢いで(ここには無いので実行は出来ないが)怒るアキラ。
しかし肝心のリオは目をぱちくりと瞬かせる。
「レイドはともかく、アーティさんとパイソンさんは良い人よ?特にパイソンさんは
色々親切にしてくれたし…」
「こんの馬鹿!そういう人畜無害そうな奴に限って、腹ん中で何考えてっか分かんねぇんだぞ!?」
拳を、肩を震わせる幼馴染に、リオは息を吐く。
「アキラ、そーゆーの偏見って言うんだよ」
「駄目よリオちゃん。あの状態のアキラに何を言っても聞こえないわ」
「それは………そうですね」
アキラの性格を知り尽くしている2人は、結局そのままアキラを放置する事にした。
──哀れ、アキラ。
「リオちゃん、明日はどうするの?」
「明日ですか?そう、ですね…ジムに挑戦したいけど、遊園地も気になるし…正直迷ってます」
「じゃあ、まずは遊園地に行ってみたら?明日、なんだか面白いイベントやるらしいの!」
(面白いイベント…気になる!)
「よし。明日は遊園地に行ってみる事にします。貴重な情報、ありがとうございます!」
リオは窓から外を眺める。
眩しい夕日をバックに、観覧車が静かに回っている。
もうすぐ、夏が始まる──
お久しぶりです。最近、話に合った良いタイトルが思いつかない霧火です(おま
毎回そうなんですが、次回から物凄い捏造とオリジナルティ溢れる展開でお送りします。
亀更新が続くと思いますが応援よろしくお願いします。
それでは、次回もお楽しみに!