二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 47章 消失 ( No.90 )
- 日時: 2018/02/13 18:01
- 名前: 霧火 (ID: OGCNIThW)
「すっかり暑くなったな」
「うーん。でも、まだ今日はマシな方じゃないですか?」
「まぁな」
「…………」
アキラとアヤネのほのぼのした会話を聞きながら、リオは1人、遊園地の前にある噴水を見て佇んでいた。
(昨日は暑くなかったのに、この急激な気温差は何なんだろう……)
リオは垂れて来る汗を拭い、空を見る。
只でさえ暑いというのに今日行われるイベントに興味を持った人々が皆、遊園地に集まったものだから
人口密度が物凄い事になっている。
そして人が多ければ多い程、熱気は凄くなるわけで…
「…早く、始まらないかしら」
照り付ける太陽と熱気に耐えられなくなったリオが上着を脱いでから既に30分経つが、
イベントの趣旨どころか主催者らしき人物も未だに現れない。
少しでも暑さを和らげようと、リオはタンクトップの裾を捲ってパタパタと動かす。
生暖かい風が下から入り込むが、風が吹いていない今だと涼しく感じて、リオは少しだけ頬を緩めた。
(最近ゲットしたらしいバルチャイに《風起こし》させりゃー良いのに)
そんなリオを見る男達に睨みを利かせながら、アキラは思った。
しかし暑さのせいで思考が働かないのか(地元に住むアキラにとっては大した暑さではないが)、
リオは「噴水の水って綺麗なのかしら?飲んで良いのかな…」等と呟いている。
「…母さん遅いな」
これ以上帽子も冠らずに外に居たら、リオが熱中症になってしまう。
(イベントなんて、この際どうでも良い。この炎天下の中、待たせる方が悪ぃんだ)
今にも溶けてしまいそうなリオを早く家で休ませたいが、少し前に飲み物を買いに行った母を
置いて行くワケにもいかない。
どうしようかと考えていた時、ガガッ、というメガホンの音が聞こえた。
「あー、あー…テステス。えー、大変長らくお待たせいたしましたー」
のんびりした口調で出て来たのは曝け出された額と大きな丸い眼鏡、鼻の上のそばかすが特徴的な、
両サイドの髪を三つ編みにした女性だった。
「おい!どれだけ待ったと思ってんだ!!」
1人の体格の良い、強面の男が苛立たし気に前に出る。
しかし全く臆する事なく、女性は眼鏡を持ち上げて男に謝る。
「たははー…すみませんねー、ちょーっと色々準備に手こずっちゃって」
「…?」
持っていた団扇でリオに風を送りながらアキラは首を傾げる。
普通、こういったイベントは事前に準備を済ませておく物ではないだろうか。
(主催者側が鈍臭いだけか…?)
ぺこぺこと頭を下げている女性と、自分に向けられる視線に居心地が悪くなったのか
逆に謝り始めた男を見る。
「それではお許しも頂いた所でー、早速ですが観覧車をご覧下さーい」
観覧車を指差す女性につられ、その場に居る全員が観覧車を見上げる。
そこには、〝何か〟が居た。
「?何だ、アレは」
「と、…り……?」
呟いた1人が倒れた。
驚く暇も無く、観覧車を見た人が次々と倒れて行く。
リオとアキラも、例外ではなかった。
観覧車の上に居る何かを理解した時には、意識は闇に飲まれていた。
「へへへー、おやすみなさーい」
静寂に包まれた中、女性の楽し気な声だけが響いた。
「ごめんなさい!どの自販機も飲み物が売り切れで、遅くなっちゃっ…」
両手に飲み物を持ったアヤネの声が小さくなる。
「アキラ…?リオちゃん……?」
アヤネが飲み物を買いに出掛けて10分。
その10分の間に、遊園地に居た人々は皆、姿を消した──
前回「面白いイベント〜」と執筆しておいて、遊園地が観覧車とジム以外、
特に話のネタになるような物が無い事に気付き(完全に自分のミスですw)
今回は驚きの短さで終わりました。
次はもう少し早く更新して、内容も長くなる様に頑張りたいと思います!
それでは、次回もお楽しみに!