二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【短編集】 True liar 【inzm】 ( No.2 )
日時: 2012/04/06 10:15
名前: 海穹 (ID: fQORg6cj)

時間的にはFFIが終わった頃です。どんだけ前だって話ですねww
ってか、FFIの話書き終わってないのにこれ書く私って……
早速オリキャラ出してるし、駄文だしで……すみません!!
氷歌の設定についてはまた今度!!


イナイレ 鬼道×氷歌


   「その言葉の意味」






「よく勝てたよな」

徐に鬼道がそう呟いた。何気なしという顔で、海を見つめるその姿は凛々しいとも言うべきだ。

氷歌と鬼道は二人で砂浜にいた。ヤシの木の陰で、海を見つめる二人。
海に沈む夕日はひどく綺麗で、目を奪われるようにその景色を氷歌は見ていた。鬼道のゴーグルに隠れた目は海へと向けられている。きっと、有人も綺麗だと思っているんだろうな、と氷歌は心の中で考えた。

「何のこと言ってる?」

そう、氷歌が聞き返せば、全部だ、と優しい言葉が返ってきた。風と共に流されて行きそうな鬼道の声が氷歌の耳を通過していく。何気ない時間に流れる、静かで何処か優しい空気。氷歌はその時間を鬼道と共に過ごしていた。

「ガルシルドとかのことも含めてってこと?」
「そうだな」

ふーん、と何気なしに氷歌が返せば、鬼道は急に氷歌の手を取った。

「……有人?」

名を呼んでも、鬼道はこちらに目を向けるでもなく、ただ海を見ている。何がしたいのだろうと不思議に思う。透ようと思えば透れるが、氷歌はそれをしなかった。信頼されているのに、そんなことしたくはなかったからだ。

「おまえは……」

やっと口を開いたと思ったら、聞こえてきた声はさっきと違い、か細く頼りないことこの上ないものだった。

「おまえは、この後どう…する、んだ?」

どういう意味?
少し途切れながら発せられたその声を不思議に思いつつ、有人の横顔を覗おうと、顔を近づけてみれば、急に有人がこちらを向いた。

「……どうしたの?」
「いや、なんでもない、忘れてくれ」

あれだけ頼りない声を出しておいてなんだそれはと一瞬戸惑うが、こちらから顔をそむけて、海を見る横顔があまりにも悲しそうでさっきの質問の意味を聞けそうにもない。だが、凄く気になる。こうなれば何が何でも聞いてやろうと氷歌は決めてじっと鬼道を見つめた。

「あのさ、私さ、楽しかったよ」
「何がだ」
「FFIが」
「そうかそれは良かったな」

鬼道がテンポ良く返してくるからこれは行けると氷歌は確信し、少しずつ聞きたいことに話題を近づけていく。

「皆といられて良かった」
「そうか」
「有人は私といられて良かった?」
「あぁ」

もう少し、と思って目にさっきより少し力を込めて見つめる。その視線に少し違和感を感じたのだろう有人がこちらを見る。が、無視だ無視。ここまできたら聞きたいし。

「じゃあ、さっきのはこれからも一緒にいれたらいいと思って聞いた?」

「あぁ」

言ってから自分の言ったことの重大さに気付いたらしい鬼道がハッとした顔をするが、時すでに遅し。氷歌はにんまりと有人を見つめ、自慢げな顔。

「っ、おまえ……」

「あれだけいておいて忘れろなんて言うからだよ」

はあと溜息をつく鬼道、呆れていると言うよりは後悔しているような感じだ。

「……で、どうするんだ?」

改まったように、真っすぐな目を氷歌に向けて、鬼道は聞いた。真っすぐなその目ははぐらかすことをさせようとはしない、氷歌の好きな、鬼道の目。ゲームメイクしているときに似ている目だ。

「う〜ん……そうだねえ……ホントにまだ分かんないんだよね。月空中に戻ってもいいし、機関に戻ってもいいし。有人に会うなら機関にいた方が楽かなぁ」

そう言ってみればそうかと少し悲しそうな声。なんかいたたまれない気がする。さっきまで凄くいい空気だったのに。

「氷歌」

改まったように名を呼ばれる。何と返して、有人と同じように真っすぐな目をして見つめてみれば、唐突に体を引き寄せられ、肩口に顔を押し付けられた。

「わぁ!え、ちょっと?」

驚いて間抜けな声が出てしまったが、それどころではない。何で急にこんな?と頭がついてきてくれない。ただ、有人が強く強く思っていることが脳に流れ込んできた。あまりにも強すぎる思いをテレパシーが勝手に受信してしまったらしい。


いかないで、また作り笑いなんかしてほしくないから、いかないで。
雷門に来ればいい、そうすれば……


脳に流れ込んでくる、有人の感情、思い。
それがひどく嬉しくて泣きそうになる。それを必死にこらえながら、有人の背に手をまわした。身長差のせいで肩に手を回すのが少しきついがつま先に力を入れて背伸びをして、有人の服を掴む。
それに驚いたのか背を抱く腕の力が少し緩んだ。しかし、氷歌は掴む手に力を込める。

「いろいろ考えてみるよ。それで、出来るだけ任務もやって、サッカーもやって、皆といれるように」

口を挟ませまいと流れるようにそう言えば、有人の腕に今度は力がこもった。

「……あぁ。それがいい」

そう言って頭をなでられた。
嬉しくて、でも恥ずかしくて有人の肩口に顔を押し付ける。その状態でいろいろと考えてみる。どうしたらいいか。今はあまりいあんが浮かばないけれど、でもきっとあるはずだから。

有人のそばにいたいから、いろいろ機関と話してみよう。鬼瓦さんに相談するのもいいかもしれない。


氷歌はそう考えて嬉しそうに笑った。昔の、作り笑いとは違う、本当の笑顔を溢れさせながら。