二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第零章/The Strongest Fighter? ( No.10 )
- 日時: 2012/09/02 03:13
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
- 参照: 第四篇/I'll say that "In Fact " (総員に告ぐ。事実をだ。)
「はい、そこまでー」
にぎやかな声援に見送られて、いざ勝負を開始しようかと指をポキポキ鳴らしたその時、おしとやかな声がその熱気溢れるハイテンションに水を差した。途端、私の実力を見ようとやっきになっていたのを取り上げられたせいか、子供勢の空気が冷めていく。私達の周りだけ体感温度が氷点下に突入した。
一体何じゃと振り返ると、ピーチ姫の微笑みが。
「皆、夜には大騒ぎしなーい。でないと、大人が怒るわよー?」
真顔で見上げてくる子供勢を相手に、姫は春風の中に居るよう。きっとこういうことに慣れているのだろう。
「その代わり、たーんといいもの用意したからね。ゲームは明日しなさーい」
それでも真顔な子供勢にそう言って、姫は白いグローブをはめた手を目の前に突き出す。銀盆の上には、紅茶を入れたポットと、何時の間に焼いたものか、クッキーが山と盛られている。
まさかと視線を巡らせて見れば、他の王侯貴族と女性陣も同じようなクッキーの皿をお盆の上に乗せていた。いや、四十人居るって言っても多すぎやしないかソレ。
——いや、待て。
私の隣には、底なしの大食球が、ギンギラギンのハイテンションで此処にいる!
「よっ、よッ、ヨットゥー! ヨットゥーのクッキーッ!!」
そう、カービィ!
初対面以来なりを潜めていたヨダレが、再び大河のごとく口の端から溢れ出して来る。そしてその状態のまま、その場でぐるんぐるんローリングし始めた。おいこら、レディーの前で汚いものをまき散らすなピンクの悪魔!
「そう、ヨッシーの……あ、ちょっと、こらっ! 止めなさいな。まだお預け、ちゃんと席に着きなさい」
ピーチ姫は手馴れたもの、飛び散ったヨダレを神速かつクッキーの山を崩すことなく避ける神業を披露し、それから優雅にポットとお皿をテーブルへ置いた。そして、にっこり笑って子供勢を手招き。
それに対し、真っ先にカービィがヨダレを拭いて追従、他の子供勢も続々席に着き始める。一人残された私はとりあえず神経衰弱用に並べたトランプをかき集め、放り出されていた箱に収めてポケットへ入れ、席が空いてなかったのでとりあえずその辺に立っておいた。変な目で見られるけど気にしない。
「クッキー! クッキー! ヨットゥーのクッキ……あら、サヨちん? 座ればいいのに」
おい何だ最初の。
「譲っちゃったから」
聞きたい気持ちを喉に押し込んで、私は愛想笑いをしながら軽く手を振る。我ながら冷ややかな心中だ。表面は鉄みたいに熱くて、精神もバカみたいにのめり込んでるくせして、絶対に頭の何処かは氷のように冷たい。そんな自分が嫌になったことが幾度もあった。慣れたけれど。
「え゛ぇー、だってサヨちんお客さまでしょー?」
ぶーぶー口を尖らすカービィに、私はもっと手を振って返した。
「いいのいいの、あたしは平気」
本当に座って休むべきはマスターだろう。私を受け止めたときに背を強打したのか、それとも別の要因で何処か痛めたのかは知らないが、私よりは重症だ。素人が見て分かるのだからそうに違いない。
「ふーみゅ。まあ、サヨちんがいいっていうならいいけどぉ……」
腑に落ちない、といった感じで、青い眼が私とマスターの間を行ったり来たり。当の本人は、さっきから顔を見せないように髪を垂らし、額に手をついて頭を支えている。その様子を見てか、カービィはそれ以上何も言わず、山積みの至福に向かって身を乗り出した。
何となく重い雰囲気。
To be continued...
配管工兄弟よりも喋るピーチ姫とはこれいかに。
そしてカービィの口元が恐ろしくゆるい。
きっと、きっと配管工兄弟も喋るんだ……いつか……。