二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.108 )
日時: 2012/12/08 16:09
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: 4HUso7p7)
参照: 第三篇/Like Wolf or Like Me? (泣き虫の傲慢)

 「無理矢理飲んでしまわなくてもいいよ。その怖さも辛さも、皆知ってるから」
 「でもっ……でもッ」
 出来ない反論に返されるのは、優しい声。
 「狼があれだけ誇り高く生きているのなら、人も誇り高くあっていいんじゃないか、とは思う。でも、こんな所でまで誇り高くあることはないんじゃないかな。泣きたい時は泣いていいと思うし、無理に弱い部分を隠そうなんて考えなくても、僕はいいと思ってる。人は弱いものだからね」
 人は弱いもの。それは肯定しよう。
 しかし、この彼にも等しく言えることだろうか。
 そうは思えなかった。スマブラとは別の話だが、ゲームの中で彼は、ピーチ城を丸ごと持って行かれた上宇宙の果てまでぶっ飛ばされていた。が、当人はまったく平然として、宇宙空間を飛び回りお姫様を助けたのだ。そんな人がそんなことを言っても、あまり説得力がない。
 「まあ、僕がこんな事を言っても、信用しがたいかもしれないけど。でも本当のことさ。僕だって怖いよ。あんな怪物を目の前にして、それだけでも腰が抜けそうだって言うのに、皆のリーダーとして一番前に立たなきゃならない。何度も逃げ出しそうになって、実際何度か逃げ出したしね」
 へたり込んだ私の隣に腰掛けて、遠い眼で笑う。一方で私は唖然としていた。
 「逃げた……」
 「そう、逃げた。戦場から逃げ出すのは当たり前だったし、そもそも闘いの場に立たなかった、なんてこともあったよ。皆は僕をヒーローだと扱ってくれるけど、本当はただの臆病者なんだ」
 だけど、とマリオは軽く手を打ち合わせて、辺りに漂った空気を入れ替える。遠くの何処かを眺めやっていた碧眼はいつの間にか、握られた拳に焦点を合わせていた。
 「怖気づいて逃げ出したときも、闘いの場に現れなかったときも、皆は僕を責めてこなかった。ええと……サムスだったかな。『戦場に立ったあの恐怖は誰も耐えられるわけではない、むしろお前がそうやって恐怖を感じられる人間だと分かって安心した』とも言われた。そう、だからね」
 拳は解かれて、私の肩に置かれる。
 「辛ければ泣いてもいい。苦しければ逃げてもいい。どちらも、僕達は責めないよ」
 言葉が鋭く心に突き刺さった。不思議と痛くはない。
 続くやさしい声も。
 「でも、必ず戻っておいで。今すぐでなくていい、何時かきっと、でいいから」
 次の瞬間、
 自分の意思で声を止めることは、出来なくなっていた。

To be continued...

キザな言葉を言わせたらマリオは一級品。
後から見返して画面にパンチしそうになりました ドシャァァァァ>Σ ◆・。゜* ○≡(・ω・`)
でも「戦場で怖いのは当たり前」という意識は、この世界のファイター全員が共有しているものです。様々な世界からファイターが招集されたからこその意識なのかもしれません。

ちなみに「ピーチ城ごとピーチ姫を〜」の話は「スーパーマリオギャラクシー1」のこと。
あの時って酸素とか気圧とかどうなってたんでしょうね……。