二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.11 )
日時: 2012/09/02 17:11
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
参照: 第四篇/I'll say that "In Fact " (総員に告ぐ。事実をだ。)

 「うひゃっ!? わっ、わ、わ、わぁぁああああだだだだだいだだだだだだででででで!」
 それを打ち破ったのは、階段の方から響いた誰かの大声。全員の目が一挙に集中し、一部の人はまたかといった風情で顔を元に戻したけれど、リビングの扉が蹴飛ばされる音でもう一度そっちを見た。で、また呆れて元に戻す。
 私はそんなメンバーの様子をぼーっと横目で追い、それから音の方に眼をやって、次の瞬間無意識にマリオの方へと眼をやっていた。当人は至って飄々(ひょうひょう)と紅茶を啜り、繰り広げられるクッキー争奪戦を半眼で眺めているばかり。もう一度視線を元に戻す。
 ……同じ人。
 「何だ、何だ、何だ何が起こった! ん、貴女は誰だ?」
 一言で言おう、医者姿のマリオだ。
 外見の違いといえば、帽子がキャスケットなのと少し背が高いのと眼の色が緑色なことくらい。後本人よりもかなりテンションが高い。そして雰囲気がドジっぽそう。

 「なあ、さっき何かなかったか?」
 「あったけど……遅いよドクター。もうずいぶん前に自己紹介終わってるよ。ニブいね相変わらず」
 落ちてくる間にぶつけたらしい、イテテと言いながら腰をさすっている医者の方のヒゲに、カービィの魔手からクッキーを奪いつつ、ネスから錐のような呆れ声が浴びせられる。おい、間違っても「我々の業界ではご褒美です」とか得意げに言わないんだぞ。
 「何、鈍いって? あははは、僕にとっちゃホメ言葉みたいなもんだよ。で、貴女は?」
 おい本当にご褒美って言うなよ! 言っただろ言うなって!
 と一人突っ込みを入れていたら、いきなり矛先が私に向いた。のんびりした声だけど言葉は結構荒い。どうにも深夜テンションみたいだし、喰われやしないかとどきまぎしながら、声を上げる。
 「小夜子です。マスターさんから呼ばれて『こっち』に来ました」
 「右手が呼んだ……嗚呼、今日来るかもってそういえば言ってたな。ホントに来たのか。あ、そう、貴女のことは良く聞いてるよ小夜子嬢。僕は此処の専属医。本名は違うけど、マリオと一緒くたに呼ばれている。ドクターとでも呼んでおくれ。そうそう、一週間だけ同居人だ。これからよろしくね」
 シェイクハンドを求めてくる手を、私は掴めなかった。
 さりげない一言に血の気が引いていく。

 ……同居、人。
 そう言わなかったか、このひと。

 「え、その、一緒の部屋なんですか?」
 「そう、一緒。でも一週間だけだよ。いやさ、『あっち』の人間が『こっち』に来てくれるかどうかは正直賭けだったからねぇ、空き部屋の整備がまだ全然済んでないんだ。部屋中に爆弾が散らばってたりして。大丈夫大丈夫、取って喰ったりしないって。僕の恋人は顕微鏡の接眼レンズさんだけだっ」
 無邪気なほど快活な笑顔で「恋人は接眼レンズ“さん”」……。
 いかん、爽やかすぎるほど変人だ。顔は同じでも中身が全然違う。
 何か脳味噌の防衛本能が退却命令を発してるので、とりあえず足を引いた。尻がごつんと結構強く誰かの椅子に当たった。へんじがない、ただのしかばねのようだって違う! 後ろは誰だ! 縞パジャマで眠りこけてるリンクだ! なんちゅー格好なんだハイラルの勇者。
 すっかり撃沈したリンクを避け、更にじりじりと後ろへ下がる私にひょいと肩をすくめて、ドクターは苦笑いを口の端に残しながら、素早く踵(きびす)を返した。階段からずっこけて来た割には結構身軽な動きだ。
 「ま、とにかく貴女に何かちょっかいを掛けようなんて気はさらさらないさ。それじゃあ、僕はやることが山積みなんで、ここらで失礼。詳しい話は全部聞いてるから」
 「あら? 折角階段を転げ落ちてまで来たんですもの、少しくらいはいかがですか?」
 ばいばい、と手を振ってリビングを出ようとした彼を、物腰柔らかな敬語で引きとめようとしたのはハイラルのお姫様ゼルダ。寝巻きもドレスぽくて可愛いじゃないですかー。リンクとえらい違いだー。
 で。そんな可愛いお姫様のお誘いに、ドクターは振り返って少し笑っただけ。
 「明日……いや、今日は僕の貴重な休みだ、今日明日明後日と荷物が重くなるのなら、最初から軽い方がいい。交代人員は五試合も今日に控えた多忙なファイターだしね。それじゃ」
 誘いも虚しく、ドクターはとっとと出て行ってしまった。

To be continued...

 スマブラリストラ組第一弾、Dr.マリオ登場? 配管工のマリオとは別人。
 こっちはけっこう喋る。

 リンクのパジャマが縞パジャマなことは突っ込んではいけない。