二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.76 )
日時: 2012/10/24 22:48
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: ptFz04.o)
参照: 第六篇/Secret Reason (棄てられた名前)

 「亜空軍襲来と、その頭がタブーだって話は聞いてるだろ」
 あっという間に撃ちきり、マガジンを取り出しながらの彼に、ぼんやりと尋ねられた。私も弦に、今度こそは普通の矢をつがえて引き絞りながら、辛うじてはいとだけ返事を返す。
 「タブーがクレイジーだって話も、その様子じゃ聞いてるな」
 「聞いてます」
 狙いを定めつつ返答。しばらく答えが返ってこない間に、矢を放つ。今度の矢は悲鳴など上げず、真っ直ぐに飛んでゆき、的の真ん中を綺麗に射抜いた。腕はまだ落ちていないみたいだ。これなら少しやっていればすぐ慣れるだろう。ひゅう、と感心したように口笛を一つ吹き、ウルフが声を投げかける。
 「オレ達の名前を全部知ってるくらいだ、そのクレイジーが色々武器を使ってるのも知ってるだろ?」
 「光の鎖とか……ですよね?」
 答えた私に点頭(てんとう)一つ、口の端を歪めたウルフは、台の上にブラスターを放り出した。重い音と共に、取り付けられた爪が台を傷つけるも、彼はお構いなし。私の問いに腕を組み、おもむろに答えを出してくる。
 「ありゃァ元々クレイジーが使うもんじゃねえ。マスターが使う攻撃用の魔法だ」
 「え゛」
 それ以上声が出ない。立ち尽くす私を指差して、ウルフは意地悪く笑う。
 「ッハァ! そーゆー反応が返ってくると思ったぜェ。あんた、マスターのことヘタレだと思ってる風だったからなァ。言っとくがな、アイツを舐めない方がいいぜ。終点に居さえすりゃあマスターはクレイジーをも打ち負かす。悔しいが、最強の存在だ」
 「それじゃ、何で——」
 ジロリ、と紫色とも臙脂色とも付かない色の眼が、私を睨んだ。声が喉でつかえる。
 「マスターがヘタレに見えるかってェ? 終点に居ねェからだ。奴が創造神だからだ。元々アイツはものを壊すために生まれてきた存在じゃねぇ。闘いなんてのは、奴の管轄外なんだよ。終点じゃ別だがな」
 後は察せよ、と言わんばかりにもう一度私を睨んで、ならず者はさっさと話題を切り替えた。
 「で……恐らくマスターから聞いただろうが、クレイジーってのは「滅びの美学」を掌る神だ。ンなもんだからよ、破壊に関しちゃそれこそ芸術的だが、創造することに於いては壊滅的に下手だ。螺子一本も創れやしねェ。通じて、破壊するための武器も創れねェ。——だが、『なぞる』のは出来ンだな、これが」
 つまりカービィみたいにコピーするのは出来る、とウルフはすぐに言葉を変える。「そんぐらい解ってるわい!」なんて言ってやりたかったが、顔が怖かったから止めた。
 「それじゃあ」
 「おうよ、ヤツはマスターの使う魔法をなぞった。攻撃の手段を丸のまま使うンだよ。マスターも気付いて抵抗策を取ったらしいがな、そこは破壊神だ。破壊にかけては一枚上手だった」
 そこで、ウルフは言葉を切った。天井を斜めに見上げ、重苦しい溜息を吐き出し、腕組みを解く。その手で新しいマガジンを入れ、また放り出してから、もっと低くなったしゃがれ声を、静かに紡ぎ出した。
 「オレ達ファイターを一撃で排除するあの『OFF波動』も、元々はマスターが対クレイジー野郎用に創った、マスターが彼一人で出来る最後の抵抗手段だ。しかし奴はそれもそっくり自分の技にしちまった。まァ、ソニックが羽をへし折ったんで、威力はマスターのそれに比べりゃ大分弱いがな」
 『OFF波動』とは、元々ファイターを一撃で戦闘不能にするほどの威力を持つ、公式チート技のこと。確かに、『亜空の使者』大遅刻組——もといソニックの活躍で羽は折れ、威力も半減したが、それでもこれが全技中最強の威力を持つ技であることには変わりない。そして、そんなチートをあのマスターが扱えると聞き、私は背筋が冷たくなるのを覚えた。

To be continued...

破壊神が使う技は元々創造神のものだった、と言うおはなし。
「ソニックが羽をへし折り〜(云々)」と言うくだりは、スマブラXアドベンチャーモード『亜空の使者』の最後のムービーで出てくる場面。
ニコニコ動画とかにプレイ動画やムービーまとめ動画などが出ているので、それを参照すると楽しいかもです。

マスターとクレイジーが使う『創造』と『破壊』の魔法に関しては、かなり色々と設定があるのですが、この場では省略。
ここではクレイジーが技のコピーを出来る、と言うことだけ覚えててくだされば幸いです。