二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第零章/The Strongest Fighter? ( No.8 )
- 日時: 2012/08/30 01:34
- 名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: x40/.lqv)
- 参照: 第三篇/In the Kitchen/With Children(台所にて。子供勢と共に。)
椅子に座ったメンバーからの視線を避けるように、私は台所に走る。
底なしの大食漢が二匹もいるせいか、台所は普通の家にあるそれより倍以上広い。冷蔵庫に至っては業務用が五台も並んで、来る出番を待っている。扉に張られた「Today」「Tomorrow」「Day after tommorow」と言う付箋は、あえて気にしないことにした。
「手伝います。何かありますか?」
寝巻き姿のままヤカンでお湯を沸かしているキノコ王国の姫のところに走る。ネットに流出しているワガママ姫ではなくて、しごく上品なお姫様が私の声に答えてくれた。
「あら、ありがとう小夜子さん。それじゃあ、そこのカップとソーサーを暖めて」
「はーい」
指したのは洗濯機と見まがうばかりの食洗機、の横にある、見上げるほどの食器棚。同じ食器が四十強枚一組になって並んでいる光景はなかなかシュールだ。見上げてばかりで首が痛くなり、私は少し足を引いてカップとソーサーを探す。お姫様がお茶会でもするのか、下の方にまとめて置いてあった。
が……。
「ど、どう出したらいいんですか?」
「あっ……」
食器棚のスペースを節約するためなのか、カップとソーサーの組が、横ばかりでなく縦にまでみっちり詰められているのだ。それだけなら無理矢理でも掴み取ってしまえるが、横にも入れすぎて手を差し入れる隙間がない。いや、隙間自体はあるのだ。それが五ミリと言うだけで。
どうしようかと私が顎に手を当てかけたとき、背後から特徴的なピコピコ音が近づいてくる。ああそうか彼が、と振り向いた私の横を通りすぎ、薄暗さに紛れてしまう真っ黒な奴が、私の横で食器棚に手をかけた。
「ど、どうも」
五ミリの隙間から手を伸ばし、奥の方からカップとソーサーを用心深く引っ張り出して、携えたお盆に載せてくれるその人こそ、“平面人間”ことミスターゲーム・アンド・ウォッチ。ホームランコンテストではガノンおじさんと共にお世話になってます。長いので以下ミスターと呼ばせていただく。
チリリリ、と鳴るベル一つ。
私の耳に掛けた翻訳機は、それを少し掛かった後で言葉に変換した。
「ヤルコトはしました。オヤスミなさい」
「……あっ、ハイ」
言ったとき、既にミスターの姿は何処にもなく。
私は薄暗がりに消えたミスターに頭をちょっと下げて、お盆に乗せられたカップとソーサー、全四十四セットを流しに持っていく。言っておくが、無論何度かに分けてだ。ミスターはあの短時間で私の出せない所を全部出してくれたけれど、女子高生の腕力で陶器二十セットを一息に運ぶのはちょっと出来ない。
To be continued...
「Today」は今日、「Tomorrow」は明日、「Day after tomorrow」はあさって。
冷蔵庫が五台あってもスマメンの前では三日分に過ぎない。