二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【スマブラX小説】The Promise ( No.97 )
日時: 2012/11/23 22:06
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: 4HUso7p7)
参照: 第二篇/Silent Saneness (狂者は嗤い乍ら泣き喚く)

 深く重く、余韻に激情を含んだ溜息で、我に返る。クレイジーはうつむいていた。
 「そのロンリー、スマブラ結成の半年前だったか——死んだよ」
 「死んだ……?」
 一つ点頭。
 「崖から落ちてな」
 先程までの甲高さはどこに行ってしまったのか、不安になるほど低い声。ふと彼の左手を見ると、拳を握っていた。私には向けられない、しかしありったけ破壊の力を込めた、凶悪な拳を。あまりにも強く握りしめたせいだろう、指の間からは血が溢れ出している。
 「それが、理由?」
 「それだけで俺がこんなに怒るなら、今頃この世界は破滅してるだろうよ。兄貴だって俺をこんな所にのさばらしちゃおかねェ。いいか、ロンリーが死んだのは何もドジで足を滑らせたような、バカな事故じゃねェんだ。あいつは殺されたんだよ! それも、兄貴にだ……ッ!」
 徐々に徐々に、声は低いまま勢いと熱を増してゆく。
 一方で、私の血は凍り切っていた。
 あのマスターが? 人どころか、虫一匹も殺せそうにない、あの彼が。
 「殺したって、マスターが?」
 思わず声を上げた私の胸倉を、クレイジーは服が破れんばかりの力で引き摺り上げる。
 「そうだ、アイツが殺しやがったッ! それも俺だけのものじゃねえ、自分の恋人でもあった奴をだぞ!? 神の掟がどうだ、世界の均衡がどうだ、そんな理由でアイツは人を殺したんだッ!! アイツもそれを分かってやがるから、追い詰めても殺せねぇザマさ! 愛した存在を護りも出来ず、淘汰すべきモノを淘汰も出来ず、そんな奴が世界の管理者だァ!? 嗤わせんじゃねぇ、あんなふざけた奴を上に立てる世界なんざ、消えちまえばいい!」

 あの時——瞳の奥に見えたのは、見たこともないほど、深い悲しみだった。
 そして森中を揺るがしたこの怒号も、根底にあるのは、人の胸を打つ悲壮さ。

 言葉は、出てこなかった。

To be continued...

「狙う側」から見た世界の滅亡について、理由篇。
彼の話を正論判断するか、それとも狂人の戯言と思うかは、各人の判断にお任せします。

ただ一つ言えるのは、この篇での彼は限りなく正気であったと言うことだけです。