二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 死神大恋愛記【リク大募集中】
- 日時: 2010/01/17 21:07
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: 9Urj1l4Z)
永劫に続くかのような長くてただ退屈な旅路
その旅の途中一瞬だけ"アナタ"という名の嵐風が吹き去っていった
それは春風のような温かさと冬風のような寂しさを持っていて
"ワタシ"の中の淡い花弁を散らしながら何事もなかったかのように儚く消えた
タイトル変えてみました^^
もちろん"死神"とありますがバリバリ"破面"も書いていきますww
今回の小説は
何度消去されても挫折しづらいように中編小説集で行きたいと思います^^
短編ではなく、あくまでも中編を(笑
中編と言いながらも絶対無駄に長くなります←
流れとしては
BLEACHキャラ×オリキャラの恋愛小説となります
シリアス、ギャグ何でも頑張ります★
オリキャラのPFは全て物語の最後に載せますね
リクは年中無休で受け付けていますので是非ご利用ください^^
鬼姫はシリアスonlyになる傾向があるのでギャグが読みたい方はリクお願いします
リクの場合は↓をお使い下さい
【リク用紙】
BLEACHキャラ:1人だけ選んで下さい
オリキャラ:1人だけです、どんな子がいいかという希望がありましたら^^
内容:どんな設定の恋愛話がいいかです、シリアスorギャグなど
コメントも年中無休で受付中です!
感想、意見、応援何でもお願いします♪
今回はどこまで続くでしょうか?
鬼姫のBLEACH恋愛中編小説集始まりです
†お客様†
・秋空様
・湯山アヤカ様
・桂 沙弥様
†小説目次†
Page:1 2
- Re: 死神大恋愛記【リク大募集中】 ( No.3 )
- 日時: 2010/01/17 21:11
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: 9Urj1l4Z)
【No.2】深紅の女神
「ノイトラ様っノイトラ様待って下さい!」
俺の背後からあいつの声で名前を呼ばれる
その呼び方に違和感を感じ、その声に懐かしさを感じる
そして同時に苛立ちも感じる
あいつの声で軽々しく俺の名を呼ぶなと怒りたくて、だが何故か沈んだ深紅の顔は見たくない
後ろのことなんて気にもせずさっさと歩みを進めていた俺は漸く足を止める
眉を顰めた顔で振り向いて名を呼び続ける深紅と対峙する
「だから、何で俺についてくる…」
「私がノイトラ様の従属官だからです」
俺の苛立っている無愛想な声を気にもせず深紅は微笑を浮かべてビシッと敬礼めいたことをして従属官だから、と誇らしげに言った
あの後、藍染は俺の意見を聞きもせずこいつを俺の下につけた
テスラ以外はいらないと前から言っているのに聞きもしない
それがあいつだとわかってはいるがやはり気に食わないものは気に食わなかった
「俺はテメェを従属官だとは認めてねぇ」
冷たく突き放すように告げる
こいつ、ネルと全く同じ形の奴が俺の下につくなんてありえないから
深紅のネルはそれでもめげない、そんなところも似ているんだ
「藍染様に言われましたから」
きっぱりとした口調で決定的な言葉を言う
それを言われてしまえば何も言えない
今の俺らの王であるあいつに逆らえる奴などいないのだから
だが、こいつのその言葉が気に食わない
「藍染に言われたから俺についてくるのか」
思わず思ったままが口から出る
何だかこいつの行動が藍染に支配されているのは嫌だった
いつでも翠のあいつは自由だったから
少し考えるように視線をそらして壁を見つめていた深紅が俺へ視線を戻した
にっこりと笑って首を横に振る
「私はノイトラ様に仕えるために生まれてきましたから」
笑顔のまま、恥ずかしげもなく堂々と言うこいつはやはり美しくて
俺の瞳を捕えて離さない
久々に俺の脳裏に映える色は綺麗な深紅
ふいにこいつならつれてもいいと思ってしまった
何を言っても俺から離れることはないと諦めにも近かったが
「テメェは…俺にどこまでついてくる?」
試すような口調と嘲るような笑みを眼下の深紅に向けて
そんな問いを俺はかける
仕えるというのはどこまでか
それが分ってからこいつをどうするかは決めようと思った
何かを決意したような表情で深紅は俺の胸に手を伸ばした
いきなりのその行動を俺は避けることができなくて
俺の鼓動を確かめるようにその温かな手を俺の胸に添えて深紅は静かに口を開いた
「貴方の望むところへついていき、貴方の鼓動が消えたとき私の鼓動も止めましょう」
迷いないはっきりとした口調でそう言って俺を見上げたその顔は変わらぬ笑顔
その笑顔に偽りはないと確信した俺は苦笑を浮かべた
ここでつれて行かないと言えばこいつはどんなに怒るだろう
それを見るのも面白そうだったが、やはりこいつの怒る顔は見たくない
俺が謝ってしまいそうだから
逆らえない、と無意識に思う
ずっと前からこの笑顔に俺は支配されているのだと気づく
悪くない、と思えたから今はこいつを傍に置こうと決めた
「テメェのその誓い、試してやるよ」
「え?」
「……俺について来い」
きょとんとしていた深紅の顔がみるみる内に満面の笑みへと変化する
その幼子のような無邪気な笑みはあいつと変わらなかった
綺麗な笑顔に反応を返さぬまま、再び背を向けて歩き出した俺の背中に衝撃が走る
「はいっノイトラ様!」
その衝撃は勢いよく俺に抱きついてきた深紅の重み
俺はそれが気恥ずかしくて優しい言葉はかけられない
「おい…重い、どけ」
背後で子供のような笑い声が聞こえる
そのばつの悪そうな笑い声は今まで聞いたことのないもので
やはり、こいつはあいつとは違うと思わされる
似ているだけで、同じじゃない
それをきちんと俺は認識した
「テスラ」
自室に戻った俺は従属官を呼ぶ
「はい」
間を空けずに現れるこいつはやはり出来る奴だと思う
俺の傍につき従う深紅には視線を寄越さず、俺は床に座るテスラだけを向く
「ここに…寝具を一式持ってこい」
「は?」
きょとんとしたこいつの顔は普段の機嫌の悪い俺ならば一発殴っていただろうが今日はそんな気にはなれなかった
顎で深紅を示して詳しく説明してやることにする
「こいつが、俺と部屋まで一緒じゃないと嫌だとさ」
そう、さっき自室へと戻りながらの会話
俺は一人部屋をやると言ったのだがそれではこいつは納得しなかった
床でもいいから俺の部屋に住まわせろと我儘を言ってきやがった
ネルと同じくらいに折れないこいつに俺が敵う筈もなく、結局はこいつの思い通り
「そうですか」
やっと納得のいったようなテスラはそれでも心配そうな表情をしていて
俺が首をかしげて発言権をやるとテスラは気まずそうに口を開く
「ノイトラ様は…その、邪魔ではないですか?この者が」
今度は俺が疑問に思う側
邪魔?何が
だが、少しすればこいつの言いたいことは分った
本当にこいつはお節介で、俺のことを考え過ぎ
「邪魔だったら元からつれてきてねぇ」
それだけ言って俺は黙る
長い付き合いのこいつにはそれだけで通じるはずだから
俺の言葉を聞いてテスラは頷くと立ち上がって頭を下げた
「失礼します」
それだけ言って跡形もなく消えるのを見送って、俺は深紅へ視線を戻す
こちらを見上げた深紅は堂々と俺の寝台に座っていて
「テメェ…床でいいんだろ?」
その言葉に不満そうな色はなく、あっさりと頷く深紅
満面の笑みで口を開いた
「私は、ノイトラ様の傍に居れるだけで満足ですから」
「そうか…」
深紅の言葉に無愛想に頷いて俺は寝台に座る
そこから見える窓の外の景色を見てもやはり灰色で
視線を深紅に戻すと、そこだけが鮮やかに染まる
俺の傍に居れるだけで満足、その言葉をネルの声で聞けるとは思わなかった
こいつはネルとは違うけれど、声は同じ
無意識に重ねてしまう俺が嫌になる
ネルはネル、あいつとはもう会えないからその姿はあるのかどうかもわからない俺の心という場所にしまう
深紅は深紅、この先俺がどこまで生きれるかわからないけれどその間だけでも俺はネルとは違うこいつを見つけたい
振り返ればいつの間にか人の寝台で無防備に寝ている深紅を見ながら俺はそう思った
- Re: 死神大恋愛記【リク大募集中】 ( No.4 )
- 日時: 2010/01/17 21:12
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: 9Urj1l4Z)
【No.3】深紅の女神
深紅が現れて数週間
やっと俺も周りの奴らもこいつの存在に慣れ始めていた
「ノイトラ様…藍染様から討伐の任務が入りました」
背後から聞こえる深紅の言葉には答えず俺は口を開く
「…テスラ」
「はい、ここに」
間を空けず現れたテスラを背に従えて俺は深紅へいつもと変わりない言葉を口にする
「留守、任せたぜ」
「はい!いってらっしゃいっ」
明るい深紅の声を背に受けて俺は結局いつものようにあいつの方を向かないまま任務に出る
あいつの方を向かないのは、声には出さぬようにと堪えているのが逆に雰囲気に濃く現れている寂しさの色
俺の後についていけないのが嫌だと訴えるような視線と向き合いたくないからだった
今のところ、そしてこれから先も俺は深紅を任務につれ出すことはしないと決めていた
あいつの力を見たくないから
姿かたち、声だけでなくその実力も翠と同じだったらどうする?
俺はきっとその力に嫉妬する
また、俺の手で壊してしまうかもしれない
あいつは翠とは違う、そう分かっているからこそ前の教訓が生かせないと分かっていた
別人になら同じ様な事をいくらでも繰り返してしまいそうで
深紅は俺が初めて壊したくないと、傍に置いておきたいと思えた奴だからその決意を無駄にはしたくない
深紅をつれていかないのはただの俺の我儘、それに付き合って寂しさを堪えてくれるあいつに俺はどれだけ救われているのだろう
この礼は何を尽くしても払えるものではない
けれど、この時俺は気づいていたかもしれない
こいつの出現があいつとの再会の前触れであると
また美しく気高い翠色をこの瞳に映すのだということを、深紅は知らせに来たのかもしれない
最近、深紅の表情が曇っているのを見る時がある
それはいつも一人でもの想いにふけっている時、俺が見ていないと思っている時
声をかければすぐにその表情は消えて、跡形もなくなってしまう
瞳に残る迷いの光だけが残像のようにチラつくだけだから、俺は何も言うことができないでいるんだ
「……ノイトラ様」
「何だ?」
藍染からの任務から帰った夜、俺は床に敷かれた寝具の上に座る深紅に名を呼ばれた
窓の外を眺めていた俺はその声に短く言葉を返しながら深紅へと体を向けて、寝台の縁に座る
床に落ちた俺の足に手をかけて、深紅が真っ直ぐに俺を見上げる
夜の闇にも紛れない瞳の奥の煌びやかな輝きが俺を刺す
「どうして、私の名を呼ばないんですか?」
瞳に憂いを滲ませて首を傾げながら深紅は問いかけてくる
俺の足に置いた手は無意識だろうか、布を痛いほど握りしめていた
そう、俺は今まで一度も深紅の名を呼んでいない
いつも『おい』や『テメェ』呼ばないことも多かった
何故かって?そんなのは簡単だ
「俺はまだ…テメェの名を聞いてねぇ」
いつものように優しさの欠片も浮かばない無愛想な声で、深紅を見下ろしながら呟く
こいつは最初ネルを名乗った
けれどそれはこいつの名じゃない、それは翠の名前、あいつだけの固有名詞
深紅には深紅の名前があるはずだから
俺の言葉を聞いた深紅が悲しそうな顔をして俯く
俺が見たくないこいつの仕草の一つだ
いつでも笑っていて欲しいというのは俺の我儘、こいつの笑顔を奪っているのは俺だから
暫くの沈黙の後深紅が顔を上げた、何かを決意したかのような強い光は闇に浮かぶように明るい
「私の名前は、ネリエルです」
噛みしめるように、己に言い聞かせているように深紅が呟く
俺はその言葉に静かに首を振った
「それはもうここにはいない奴の名、俺の胸にだけ残っている名だ…テメェのじゃない」
決定づけるように、反論を許さないような口調で俺は言葉を返す
その名前はあいつだけのもの、それを他の奴が使うのは許せない
あいつの名を汚すのはいくら深紅でも許せなかった
俺の言葉を予め分かっていたかのような落ち着いた雰囲気で深紅は黙っていた
堅く閉じられた唇は何かを言おうとするように揺れていて
それを押し止めるかのように俺の足に置かれた手が強く布を掴む
真実が聞きたくて俺は深紅に手を伸ばした
初めてその長く豊かに流れる髪に触れて、俺はもう一度口を開く
「テメェの名は何だ?深紅のネリエル」
俺が触れた事に驚きの色を隠せない様子だった深紅も、その言葉を聞いて表情がなくなる
感情が分からぬほど表情も雰囲気も消して、深紅は口を開いた
「私の名前は、—————」
「は?」
聞こえない
深紅の言葉が聞こえなかった
途中で風が吹いたわけでもない、何か騒がしい音がしたわけでもない
本当に、こいつの声が聞こえなかった
だが、そんな困惑の表情を浮かべる俺に対し、その反応を見た深紅は安堵したように微笑を浮かべた
緊張が解けたように、ゆっくりと俺の足に額を寄せて唇を開く
「私のこの姿はノイトラ様の残像…本当の私じゃない」
上目使いに見上げる瞳には悲しみと苦しみと恐れが浮かんでいて、おそらく恐れは俺に対するもの
真実を知った俺がこいつに愛想を尽かすのではないかという勝手極まりない勘違い
俺はわざと何でもないような顔をして頷いてみせた
「それじゃあ…本当のテメェはどこにいる?」
その俺の言葉に深紅は嘲笑を浮かべて口を開いた
「醜い私はどこかへ消えちゃいました…誰の瞳にも映らないほど遠くへ、ね」
『残像描写』
無意識に発動される深紅の固有能力
深紅を見た者の瞳にはこいつの姿が己の心に一番残っている奴の姿として映る、らしい
唯一違うのは、髪の色
誰の瞳にも髪の毛だけは鮮やかな深紅に映ると言っていた
それだけがこいつである証、ただ一つの個人主張
鮮やかな赤色は誰の目にも残像を残すから
灰色の世界に呑まれた俺の瞳に色を刺すほど、深紅の色は美しい
- Re: 死神大恋愛記【リク大募集中】 ( No.5 )
- 日時: 2010/01/17 21:14
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: 9Urj1l4Z)
【No.4】深紅の女神
己を嘲るような笑みを浮かべた後、寂しげに俯いた深紅に俺はさっきと全く変わらない声をかける
「テメェのその正体…どうやったら見える?」
その言葉に顔を上げた深紅は微笑を浮かべて己を指さした
「私の能力を無効化するのは、私の真名だけ…私の真名を口にした者はもう夢は見れないのです」
己の顔をさしていた指で俺の鼻先に触れ、最後はおどけた口調でそう言った深紅の瞳はさっきと変らず寂しさに曇っていて
そんな深紅の指を退けることなく、俺は真っ直ぐに見つめて問いかける
「テメェの真名は何だ?」
さっき聞こえなかったから、次こそ聞きだそうと再び名を尋ねる
しかし、そんな俺の問いに深紅はただ笑う
「私の真名?さっき言いました…ノイトラ様が聞こえなかっただけです」
「は?」
深紅の言葉に眉を顰める
風が吹いたわけでもなく、何か大きな物音がしたわけでもない
それでも聞こえなかった深紅の名は俺の耳が聞き取れなかっただけだと言うのか
訝しげな顔をする俺に、女神のごとく微笑んだままの深紅は言葉を続ける
「私の真名が聞こえないほど、その人は私の暗示にかかっているということ…私の偽りの姿に心奪われているということ」
深紅のその言葉に俺は言葉を返せない
こいつの姿に心を奪われているのは本当だから
それが翠の姿をしているからなのか、深紅だからなのかは俺自身分からないままだけれど
黙ったままの俺を見上げながら深紅は唇を開く
「でも、それで良いんです…私は破面として生まれた時に、ノイトラ様の傷を癒すと決めたんですから。この姿で、ノイトラ様の色を取り戻してあげようと誓いましたから」
にっこりと笑う深紅に俺は黙り込んだまま
こいつがどうしてそこまで俺に仕えるのか分からなかったから
ノイトラを見上げながら、深紅はその瞳を見つめる
私が生まれて一番最初に見た瞳
その瞳は、この世の絶望を透かしたように暗く曇った灰色だった
その瞳が私の偽りの姿を見てだんだんと色を取り戻していくのををはっきりと見た
それほど、この姿は彼にとって特別なものなのだと悟り胸が痛む
他人の大切な思い出を穢しながら自分の醜さを隠す自分
それがこれほどまでに罪深いものだとは思わなかった
自分でも嫌になるほど、隠したくなるほど醜い本当の姿
それを彼は見たいという
おそらく本当の姿を晒しても彼は私を拒絶しないだろう、それは分かっている
けれど、彼は良くても私は嫌だ
この姿で彼に仕えると決めたから
私の命を彼に捧げると決めたから
せめて、この決意だけは遂げさせて欲しい
その誓いだけが、今の罪深い私の唯一の存在理由だから
急に沸き起こった感情は止まるところを知らず、その想いは素直に口から出ていってしまう
「ノイトラ様…」
黙り込んだままの俺に深紅の声がかかる
俯いていた顔を上げると視線がぶつかった
それは、今まで見たこともないほど激しく必死な色合いで
「どうした?」
俺は何故だか不安になって首を傾げる
いつもの違う雰囲気になられると調子が狂う
何か底知れぬ違和感が体を包んでゆく
「私を…捨てないで下さい」
「あ?」
いきなり深紅の口から出てきた言葉に俺は戸惑う
何故そんなことを言い出すのか分からなかったから
「こんな…こんな、人の思い出を穢すような力を持つ私でもノイトラ様に仕えようという心は本物ですから、最後まで傍において下さい!私に…生きる理由を与えて下さい」
戸惑ったままの俺に構わず、叫ぶように言葉を続ける深紅に俺は驚く
俺の足を縋るように掴んで見上げ、大粒の涙を湛えた瞳で見つめてくる
どうしていきなりそんなこと言い出したのかは想像もつかなかったけれど
「夜から五月蠅ぇ…」
そう言って深紅の頭を引き寄せる
言葉を返す暇を与えず顔を合わせないで済むように、その冷たい仮面に唇を寄せて静かに呟く
「俺は、テメェのあの誓いが本当かどうか知るために傍においてんだよ」
俺の命が終わる時、自分の命も止めると言ったこいつの言葉
それが本当なのか気になるのは本当で
「だから…今更離れるって言っても許さねぇよ。人を信じ切れない俺に一つくらい信じられるものをくれ……俺の後に死ぬ、それがお前の存在理由だ」
離れて欲しくないのは俺の方
傍にいて欲しいのも俺の方なのに
それを素直に口にすることはやっぱりどうしてもできなくて
けれど、最後の言葉だけは綺麗な偽りない俺の言葉
俺の後に死ぬ
それは俺に仕えるために生まれてきたと素直に言えるこいつに対するせめてもの褒美
俺が死んだ後に、別の生き方を見つけきれたら
その方へ歩いていけるように
俺と一緒に終わるのではなく、次の道を見つけられるように
こいつの誓いを少しだけ変えてやった
俺の言葉に頷きながらとうとう泣きだした深紅をそのまま胸に抱いて俺はただ黙りこむ
深紅の頬を流れて俺の胸に落ちた涙の熱さに驚く
これほど、涙とは熱いものなのかと
流したことのない俺には分からない感覚だった
結局俺は、深紅の姿を見るのを諦めた
それほど俺が翠に執着しているのは確かだから
真名を聞き取れない俺を見て、安堵した深紅の顔が忘れられないから
見られたくないものの一つや二つそれは誰にでもあるものだから
俺だって一つや二つでは済まないから
- Re: 死神大恋愛記【リク大募集中】 ( No.6 )
- 日時: 2010/01/17 21:15
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: 9Urj1l4Z)
【No.5】深紅の女神
深紅との一件から数日後
俺ら十刃は大広間に集められた
藍染の話したその内容が俺と深紅の運命を決めることになる
「テスラ…行くぜ」
「はい」
いつものように声をかけただけで後ろに現れるこいつ
それを従えて自分の城から出ようとすると、不安そうな顔をした深紅が顔を覗かせた
「ノイトラ様…どちらへ?」
見ているこっちが不安になりそうなその表情が俺を落ち着かなくさせる
外へ出ようとする足を戻して、深紅のいる場所まで戻る
見上げてくる大きな瞳を見返しながら頭の仮面に手を乗せる
「侵入者が来たんだとよ……死神が一匹と、人間と」
面倒臭そうに呟きながらも心の奥では久しぶりの戦いに覇気が上がっていた
藍染から言われた報告
ウルキオラの奴が連れてきたペットを取り返しに来たという愚かな人間共
一人は死神だと言うけれど、それも代行ならば人間と大差ない
戦いと対峙して楽しみを見つけた子供のような顔は、深紅が好まない
だから必死にその表情を隠して俺は仮面から手を離した
「どーせまたつまらねぇ終わり方になるだろうが…まぁ、せいぜい楽しんでくるさ」
あっさりと未練なく背を向けて後ろ手に手を振って、俺は深紅へ言葉をかける
「いってらっしゃい、ノイトラ様」
振り向かずとも律儀に頭を下げている深紅の姿が目に浮かぶ
「留守、任せたぜ」
いつもよりも元気のない見送りの言葉が気になりながらも、俺はいつもと変わらない言葉しか返さない
否、返さないんじゃない、返せない
ふと感じた不安で普段と違うことをしてしまえば、その不安が現実の事になりそうで
俺は結局、最後まで深紅の笑顔を見ることはできなかった
「………ネリエル」
死神代行とかいう餓鬼を片付けようとした時
過去に捨てたはずの記憶が俺の瞳に確かに映った
色褪せることないその翠の美しさに目を奪われて、言葉を失う
深紅のことなど頭から消え去ってしまうほどに、やはり本物の魅力は絶大なのだと思い知る
彼女の個有技を忘れるほど、俺の意識は戦いからは遠のいていて
ただ、色褪せた世界に色を取り戻すことだけに全細胞が活動していたんだ
"ムカつく女"
どれだけその数字の入った背中を追いかけても、決して追いつけはしなかったその強さ
己の持つ強さを振りかざすことなく、弱い者には手を差し伸べ無条件に守り通す
まさに女神のようなその姿に俺は惹かれながらも苛立っていた
俺には無い強さを持ちながら、それを使うことなく内に仕舞い込む
それが真の強さだと分からなくて、分かりたくなくて
俺はただ、ネリエルの背中を追いかける事でしか自分の存在を主張できなかった
あの夜に頭を叩き割り、虚夜宮の外へと放りだした時
俺はネリエルに勝ったという歪んだ達成感と同時に確かな虚しさを感じていた
こんな俺にも変わることなく見せてくれた柔らかい微笑みに、もう会うことはないのだと
そう思った瞬間、俺の世界は灰色に染まった
名も知らぬ深紅が現れるまで、俺の視界は灰色で
目の前を舞う赤い水さえもどす黒くしか映らなくて
「—————謳え」
ネリエルの呟きは確かにこの耳の届く
その澄んだ声はこの世のどんな音よりも早く確実に聞こえる
「羚騎士————」
砂漠の砂を撒き散らして
霧のような砂嵐から現れたネリエルの姿は美しかった
昔にも数回しか見たことのない彼女の開放
その姿は強く、気高く、堂々としていて、慈愛に満ちていた
その攻撃を避ける事ができずにもろに食らう
目の前に来たネリエルを見上げれば見下ろす冷たい瞳にさえも僅かな温かさが透けていて、彼女の甘さを思い出す
「————命までは取らないわ」
そう、この言葉が嫌いだった
敗北者が命を助けられるのは屈辱、死よりも重い罰
それを救済のつもりであたえるこいつが恐ろしかった
まだ、負けるわけにはいかない
折角再び会えたのだから、今度こそ実力で
ネリエルが餓鬼の姿に戻ったのには驚いた
その小さな体を負け惜しみのように蹴飛ばして、視界から消す
俺の瞳に映るネリエルは美しさの権化だから
あんなみすぼらしい姿は見たくない
そして、俺はあの男と対峙する
- Re: 死神大恋愛記【リク大募集中】 ( No.7 )
- 日時: 2010/01/17 21:16
- 名前: 鬼姫 ◆GG1SfzBGbU (ID: 9Urj1l4Z)
【No.6】深紅の女神
「…名は何だ死神」
「十一番隊隊長、更木剣八」
隊長だと名乗りやがった更木という死神はまさに鬼神のようだった
傷を負うことを厭わない滅茶苦茶な戦法
楽しむためだけに戦いへと身を投じる俺と似たような奴
死神を侮っていた俺にとって奴の存在には驚かされるばかりで
俺が斬れると分かると更に機嫌が良くなったのも事実
硬さになれたという言葉には理解ができなかった
なれなどで斬れる肌ではないと思っていたし、今までは実際にそうだったから
俺を解放させた奴は久しぶりで、それが死神となると予想外という言葉以外は浮かばない
いつの間にかただ我武者羅に立ち向かうことしかできなくなっていた俺は、この時点で己に限界を感じていたのかもしれない
剣道なんざぬかしやがる意味の分からない死神に俺は六本の剣で立ち向かう
まさか、こんなにあっさりと斬り伏せられるとは思ってもみなかった
ぼろぼろになって腕を斬り落されても生きている己の頑丈さが恨めしくて誇らしくて
まだ戦えると吠える負け犬の俺に面倒だと言いながらも付き合ってくれる死神に心のどこかで感謝した
こんな感情、深紅と出会って色を取り戻さなければ浮かびもしないものだったろう
俺の我儘に付き合う必要のない死神が最後の戯れとして相手をしてくれる
それだけで俺の信念は達せられた
『俺は斬られて、倒れる前に息絶える———そういう死に方をしてえんだ』
いつだったかネリエルに言った言葉
その思いが消えることは最後まで無かった
砂へと倒れゆく俺の方を見ているのかいないのか
おぼろげな瞳を開くのは幼いネリエル
微かに名前を呼ばれた気がして、最後までこいつの人の良さには呆れる
最後に俺の脳裏に浮かんだのは
地に倒れる前に、息絶える前に浮かんだのは鮮やかな深紅
いってらっしゃいという言葉には帰ってくるのを待ち続けるという意味が含まれているということも忘れて結局俺は最後まで自分のためにしか生きなかった
あいつは俺の帰りをいつまで待ち続けるのだろう
できることならば、俺の死に気づくことなく帰ってくることを信じて生きていて欲しい
『—————』
途切れゆく意識の中で一つの単語が頭に浮かぶ
それは生まれる前から知っていたように俺の記憶に馴染んで
冷めきった俺の心に温もりを与えるような優しい声で聞こえた
それが深紅の真名だと分かることもなく俺の意識は完全に途絶え
後を追うように体が砂へと落ちた
部屋で一人、寝台の横の床に転がっていた深紅は己の変化を感じ取って飛び起きた
頭を抱えて身が裂けるような激痛に低く唸る
己の中のネリエルという鎧が崩れていくのを感じる
彼が、死んだ
無意識にそう理解した
この体が崩れているのは、きっと彼が最後に自分の名を呼んだから
本当に最後まで鎧の中の自分の瞳を見続けてくれた彼は最後に真実を手にした
それは彼にとっては救いでも、自分にとっては最悪の事態
醜い体で死にたくない
その思いだけで崩れゆく己の鎧を引き摺りながら目指すは藍染のいる場所
藍染には自分の末路を伝えていた
はやく別の誰かの瞳に自分を映さなければ本性が現れてしまう
それは死よりも恐ろしいこと
「藍染様…」
後ろから声をかけると、一瞬驚いたように反応が遅れた藍染が振り向く
その体の向こうには市丸ギンと#1のスタークがいることに気づいた
変わらない微笑を浮かべた藍染は自分を手招く
近づいた藍染の瞳を覗いて、この体が別の人の鎧をまとっていることに気づく
幼い顔立ちをした線の細い、それでも意志の強い瞳を持つ和風の少女
服装から死神であることは一目瞭然、記憶からかつての部下だと認識した
「ノイトラが、死神にやられたようだね」
その言葉に、さっきの痛みは現実のものだと納得する
彼が死んだのならばこの鼓動も止めなければならない
自分が守るべきただ一つの約束だから
その意思を汲み取ったように藍染は刀に手をかける
一歩後ろに下がって適度な距離を保つ
最後は彼の想いの姿で終わりたかったけれど
それも叶わぬ願いだと諦めた
藍染の背後に立つ市丸の瞳は何か言いたげに歪んでいて、それに可笑しさを感じる
自分はノイトラ様だけのもの、他の誰のものにもなりはしない
その横にいる#1の十刃
何も思っていないような気だるげな瞳の奥にも、自分は他人として映っていることに安堵した
私は最後まで真の姿を他人に見られることはない
この罪深いほどの醜さは誰の瞳にも晒されることなく消えゆく
そう、思った時だった
「それじゃあおやすみ……良い夢を『—————』」
刀を振り上げる刹那
自分と彼しか聞こえないほどの声量で名前を呼ばれた
絶望に瞳を見開く
見せないと決めたつもりだったのに
見せるまいと誓ったのに
怒りと悲しみに歪んだ深紅の瞳を見下ろしながら藍染は刀を収め
床に倒れた彼女に囁く
「私は自分の過去の思い出が日の光に晒されるのは嫌なんだよ」
捨てたはずの思い出は綺麗なままで胸に仕舞う
それが他人の手によって穢されるのは許せない
途切れゆく意識の中で聞こえるはずのない声が聞こえる
それは斬られて崩れゆく己の胸の底から聞こえる幻聴
彼の声は自分の名を呼んでいるけれどそれは真名ではない
『深紅』と聞き慣れない呼び方をしていた
真っ赤なこの髪のことを言っているのだろうか
唯一の自己主張であるこの髪
その存在を認めてくれるのが嬉しくて
幻聴だと思っていたのに、振り返ればすぐそばにいた彼に抱き付いた
思いがけず優しく抱きしめてくれた彼の耳に囁く
「ほら…ちゃんと約束、守りましたよ」
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