二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】
- 日時: 2011/01/13 21:32
- 名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: lBubOowT)
どうも、初めまして。
前から小説を書きたいと思っていたのでかかせてもらいます。よろしければ感想などいただけると嬉しいです。
何かいろいろと変な部分があると思いますが、生暖かい目で見守ってやってください。
注意
・東方の小説です。
・色々とカオスです。
・めちゃくちゃです。
・ちょっとした暴力表現あり。
・下克上あり。
・キャラ崩壊あり。
・設定無視あり。
目次
第一編 おじさん編第一部
序章 >>1
第一章 一話>>2 二話>>3 三話>>4 四話>>5 五話>>6 六話>>7 七話>>10
八話>>11 九話>>12 十話>>13 十一話>>14
第二章 十二話>>15 十三話>>16 十四話>>17 十五話>>18 十六話>>19
十七話>>21 十八話>>22 十九話>>23 二十話>>24 二十一話>>25
二十二話>>26
第三章 二十三話>>31 二十四話>>34 二十五話>>37 二十六話>>38 二十七話>>39
二十八話>>42 二十九話>>43 三十話>>45 三十一話>>46 三十二話>>47
三十三話>>50 三十四話>>51 三十五話>>52 三十六話>>55 三十七話>>56
三十八話>>57 三十九話>>58 四十話>>61 四十一話>>62 四十一話>>63
四十二話>>64 四十三話>>67 四十四話>>68 四十五話>>69 四十六話>>70
四十七話>>71 四十八話>>72 四十九話>>74 五十話>>74-75
終章 >>76
番外編 >>20 >>27 >>28-30 >>77-78
第二編 テン編
序章 >>79
第一章 第一話>>80 第二話>>84 第三話>>85
では、奇妙な幻想入りをお楽しみください。
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- Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.87 )
- 日時: 2011/02/11 12:36
- 名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: lBubOowT)
第四話
一難去ってまた一難。こういう言葉を聞いたことはあるだろうか。
災難が来て去ったと思ったらまた災難が来るという意味だ。
こういう不幸なことが起こった後はそれなりに幸福が訪れるというのが筋だ。
しかし私に幸福など訪れて来なかった。
いや百億歩譲って幸福が来なくても、それ以上不幸な事は起こらないはずだ。
なのにどうして私は大天狗様に会いに行かなくてはならないのだろうか。
天狗——まあ妖怪の山全体に言えることなのだが——では所謂縦社会で構成されている。
その中でも実力を持つ天狗が『大天狗様』である。
そんな偉い天狗が何故私のような下っ端哨戒兵を呼び出したのか。
十中八九あの人間の事だろう。
もういっそ見捨てていればよかったと思えるほど私の心は荒んでいた。
さっきまで晴れていた空はいつの間にか曇っていた。
嫌な気持ちになる。雨は私の嫌いな天気だ。どんよりとした気持ちになる。
しかしそれを表に出しては大天狗様に失礼なのでなるべく平常を装って大天狗様の待つ部屋に入る。
大天狗様、とは言ってもあの有名な鼻が高くて顔が真っ赤なわけではない。
私や射命丸のような人間の姿をした妖怪だ。
見た目は初老を迎えた男性だろうか。
髪はところどころ白髪が混じり、顔は人受け(天狗受け?)が良さそうな顔だった。
「よく来た犬走。まあそこに掛けるといい」
「はぁ……」
大天狗様が椅子を指差し掛けるようにただす。私は断るに断れないので座るしか無い。
沈黙が続く。最初にその雰囲気を壊したのは大天狗様だった。
大天狗様は言葉を選ぶような感じで、
「……お前に来てもらったのは他でもない。お前が拾ったという人間だ」
「——」
息を詰まらせる。私は搾り出すような声で言った。
「あの人間が、どうかしましたか」
「否定はしないのだな。まあその方が楽ではあるが……」
大天狗様は一回間を置いて、
「どういうつもりか知らんが、あの人間を拾ったのは何故だ?」
私はもう一回息を詰まらせる。
正直に言って私にも何故拾ったのか分からない。
ただ何故か拾わなければいけないという衝動に駆られただけなのである。
私が言葉を選んでいると、大天狗様がもう一度聞いてきた。
「何故、あの人間を拾ったのだ?」
「……分かりません。何故私もあのような行動をしたのか分からないんです」
「分からない?」
大天狗様が眉をひそめる。
そりゃそうだ。自分でも分からない行動を他人が分かるはずがない。
「分からない、ふむ……」
「その、あの人間を拾ったら何かまずかったですか?」
すると大天狗様は額に深いシワを何本も作り、しばらく黙った。
しばらくして、押し殺すような声で大天狗様は言った。
「……いや、特には無いんだが、最近外の世界から『侵入者』が入っていると報告がきていてな」
『侵入者』……? 私はその言葉に強い違和感を覚える。
そんなことは私は聞いたことがない。
そんな私の考えも知らずに大天狗様は話す。
「その『侵入者』は毎日のように人里を襲っているらしい。お前が拾ったという人間が害悪がないとは限らないんだ」
つまりは、こういうこと。
大天狗様はあの人間を疑っているのだ。
記憶を失って見知らぬ所で右往左往していたあの人間を。
「そこでお前に『仕事』だ。あの人間を監視しろ」
「…………」
「返事がないようだが」
「……分かりました」
そこで大天狗様はようやく安堵の表情を浮かべた。
しかし私の心は晴れない。
別にあの人間に同情しているわけではない。
あの人間がどうなろうと知った事ではない。
……変なやつだ、と自分でも思う。
なんともやりきれない気持ちが私の中で渦巻く。
「そして、お前にはもう一つやってもらいたいことがある」
「……?」
私の頭の中は疑問符だらけだった。
あの人間の処置についてはもう終わったはずだ。なのに、まだ何か話がある?
「お前にはこの妖怪の山を降りて周辺の状態を見てきて欲しい」
「何故そのようなことを?」
「例の『侵入者』だよ」
どうもです。第四話です。
実は五話とは一緒になる予定だったワケですが……文字数制限をオーバーしてしまったので不自然ですがここで切らせてもらいます。
それでは第五話で会いましょう。
それではー。
- Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.88 )
- 日時: 2011/02/11 01:15
- 名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: lBubOowT)
『侵入者』。
ここでもまた出てきた。
私は返答に迷った。
私たち白狼天狗は『妖怪の山の中』が哨戒対象だ。それ以上先はいけない。
それは幻想郷の賢者との取り決めだった。
『妖怪と人間の境界を分けるため』ということで、この幻想郷が出来た当時からその取り決めはあった。
それを分かった上で、大天狗様は『妖怪の山の周辺』を調べろと言った。
「……どうしてそこまでして警戒しているのです? 『侵入者』はそれほど脅威になる存在なのですか?」
私は口にしてからしまった、と後悔する。
大天狗様は質問を嫌う傾向がある。不機嫌になってしまえばそれこそ有無を言わさず任務に駆り出されるに決まってる。私はそれを何度も体験してきた。
しかし。
大天狗様は急に立ったかと思うと勢い良く頭を下げてきた。
「は……?」
驚いたのは誰でもない私だ。
質問したかと思ったら急に頭を下げられた。
これで驚くなというほうが無理である。
「すまない……」
大天狗様は搾り出すような声で、確かに言った。
すまない? どういうことなのか分からない。
私には謝られる記憶はない。むしろ謝る方が沢山あるというのに。
なのに何故大天狗様は頭を下げる必要がある?
「あ、あの! 顔を上げてください! 一体どうしたんですか!?」
「すべては私のミスなんだ」
私の動きが止まってしまう。
大天狗様はただ言葉を続ける。
「アレは私が呼び寄せてしまった。本来なら私がケリを付けるはずだった。……力を失うまでは」
「は、え……つまり、どういうことですか?」
「あの人間は能力持ちだったのだ」
能力。
幻想郷では割と珍しくはないが、外界においては別だ。
文献では外にも能力を持つものはいるらしい。しかしそれは幻想郷に比べるとかなり少ないらしく、その文献では(本当かどうかは知らないが)『100年に一度の天災』だと称されていた
その『天災』が、幻想郷に来たという。
それも大天狗様が手助けをしてしまったが為に。
「一体、どんな能力なんですか……? どうしたら大天狗様の力を奪うことが出来るんです!?」
つい声を荒らげてしまった。
突然言われて混乱してしまったのと、訳がわからない感情が入り交じったせいかもしれない。
大天狗様はポツリと、しかしハッキリ聞き取れる声で言った。
「『能力を奪い、その能力を他人に与える程度の能力』」
「…………」
最初は現実味を帯びていなかったその言葉は、徐々に私の体に染み渡っていく。
そして大天狗様はこう言った。
「名は『アッシュ』。確かにそう言っていた」
「……ッ!?」
そして私の体に電流が走る。
アッシュ。
それは今朝の事件を思い出させる言葉だった。
——『アッシュ』。うん、『アッシュ』って言葉覚えといて。それが今後お前らに関係してくるから
あの時の言葉。
あの時の状態。
あの時の口調。
それが今鮮明に思い出される。
「無茶だということは分かってる。しかし私にはもう外を出歩いて戦える力など残っていない。犬走。お前だけが頼りなんだ。頼む。」
「いや、でも……何故私なんですか? 実力だけなら癪ですけど射命丸のほうが上です。それに射命丸は頻繁に妖怪の山を出て様々なところへ行っているんですよ? なら尚更じゃないですか?」
ここまで言っておきながら私は心のなかで結論を出していた。
大天狗様が射命丸ではなく私を使う理由。
つまり、
「……射命丸も、徐々にだが力を奪われつつある。本人は不調だと思っているみたいだが……」
「——ッ」
心のなかで思っていて、しかし肯定してほしくなかった結論。
『射命丸も力が奪われている』。
私は全身の力が抜けるかと思った。
いつの間にか、外は雨が降っていた。
どうもです。第五話です
さてさて今回の話はいかがでしたでしょうか?
なんかもう主人公が椛になっているような気がしますが、多分気のせいです。
別に主人公の出すタイミングが分からないなどではありません。
ではまた第六話でお会いしましょう。いつになるか分かりませんけど。
それではー。
- Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.89 )
- 日時: 2011/02/21 17:25
- 名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: lBubOowT)
第六話
いつの間にか雨が降っていた。
椛さんが出かけてから既に数時間は経とうとしている。
もしかして、僕が迷惑を懸けたのではないんだろうか。
ここのことはよく知らない(と言っても名前と場所の概要だけ教えてもらった)けど、なんとなくここは『自分の元居た場所』とは違う感覚がする。
記憶を失っているのに、なんとも可笑しな感覚だった。
僕は別の場所から来た、有り体に言えば『異世界人』みたいなものだ。
そんな異世界人を、元の住人は心良く受け入れてくれるだろうか?
答えはまた別々だろう。
ある人は受け入れて立派なご馳走を食べさせてくれるかもしれない。
また別の人は一切何もせず、もしかしたら殺してくるかもしれない。
今回は恐らく、後者。
いくらなんでも感じさえ受け取れば馬鹿でも分かる。
ただ分からないことと言えば、これから自分がどうなるか、という事だけだった。
雨は激しく窓を打ち付けるほどに強くなっていた。
私は体が濡れることすら気にせず山を駆け下りていた。
正確には飛んでいるのだが、この言葉以外に表現の仕様がないので仕方ない。
何故こんな悪天候で出てきたのか。
何度も言うようでしつこいが、私にも分からない。
もしかしたら大天狗様の言うことがショックだったのかもしれない。
もしかしたらただ逃げるように飛び出しただけかもしれない。
——……射命丸も、徐々にだが力を奪われつつある。本人は不調だと思っているみたいだが……
歯を食いしばる。考えるな。
しかしそういう時に限ってたくさんの事を考えてしまう。
——アレは私が呼び寄せてしまった。本来なら私がケリを付けるはずだった。……力を失うまでは
——『能力を奪い、その能力を他人に与える程度の能力』
——名は『アッシュ』。確かにそう言っていた
——……射命丸も、徐々にだが力を奪われつつある。本人は——
やめろ。
やめろ。やめろ。
——……射命……、徐々…だが力を……れつつあ…。
やめてくれ。
もううんざりなんだ。
——はいはい分かりました分かりました。ですからはやく取材させてください!
不意に思い出されるアイツの顔。
何故?
何故急に出てくる?
アイツは嫌いだ。
いつもヘラヘラしていて、飄々としていけ好かなくて。
新聞は嘘が殆どのゴシップでそれに私は気に入らなくて。
私は微塵もアイツのことなんか心配してない筈なのに。
なのに何故明るい顔で笑いかけてくる?
いつの間にか降りだした雨は、私の体と心を揺さぶるように強くなっていた。
「……いくらなんでも遅すぎやしないかな?」
もうすぐ日は沈もうとしていた。
雨が降っていても日が沈みかけるかそうでないかぐらいは分かる。
確か椛さんが出たのは昼過ぎ。今の季節から考えると……6、7時間程度は掛かっている。
いくら初対面とはいえ流石に心配する。いや、初対面だからこそか。
どうやら自分は心配性な面があるようだ。
雨はもはや豪雨だった。何を話してもかき消されるような音を鳴らしながら雨は降っていく。
椛さんは傘を持っていったっけ? 持って行っていないような気がする。
かと言って夜の山は暗すぎるし、なによりここは人の家だ。勝手に留守にするわけにはいかないだろう。
と、ここで扉を乱暴に開けるような音がした。僕は玄関を見やる。
そこには、
「あやややや。すみません、椛居ますか?」
……びしょ濡れの文さんだった。思わず、
「なんだ文さんか……」
「なんだとは失礼ですね。……もしかして、椛居ないんですか?」
知らずにこの扉を開けたのか……。よく見ると扉の蝶番が壊れている。
力技にも程があるんじゃないだろうか。
「えーと、椛さんが居ないと何か困りますか?」
「いやー、居なくてもいいんですけど、居たほうがいろいろいいんですよね。あはは」
濡れた頭を掻きながら文さんは照れた。
多分僕の予想が当たっていればだが……。
「もしかして、何か拭くものを借りに来たんですか?」
「そうです。よく分かりましたね」
「まあこんな豪雨ですからね」
今もかなりの豪雨がこの家を打ち付けている。
そりゃあんなにびしょびしょにもなるだろう。
しかしここで問題が浮上する。
そう、ここの家主の椛さんに怒られないか、だ。
いや怒られないはずがない。
そんな僕の気持ちを余所に文さんはずかずかと家に入ってくる。
僕は慌てて止めに入る。
「ちょちょ、待ってくださいよ」
「え? 何か問題でも?」
文さんは本当に分からない、擬音で説明するならばキョトンという顔をして質問をしてくる。
「問題大有りです。まずこの家が濡れます。それに——」
「こちらとしては早く拭きたいんです」
「……怒られますよ?」
「椛に怒られるのは慣れっこですから」
あはは、と文さん。
まあ本人がそういうならそこまで止めはしないけど……。
「僕のせいにするのは無しですよ?」
「あやややや。清く正しい射命丸文になにを言っているんですか」
雨はまだ止む気配を見せない。
どうもです。第六話です。
いやーようやく稼動しましたよ主人公。射命丸との絡みもまずまずですかね。
ところでこの豪雨ですが、この頃のおじさんの居たところ、つまり永遠亭ですが、あそこは晴れていました。
といっても描写がないので分からないんですけど。
しかしここではかなりの大雨が降っているようです。
どうやら、局地的な豪雨のようです。
さてこの天気の違いが今後どう関わっていくのかそれとも関わっていかないのか。
ぜひとも続きをお待ちください。
それではー。
- Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.90 )
- 日時: 2011/03/13 22:48
- 名前: 昨日の今日 ◆7LxmAcs00. (ID: lBubOowT)
第七話
そんなわけで今は文さんと二人きりだ。
正直に言うと女性と一つの部屋に居るというのは中々恥ずかしいものだったりする。
そりゃ僕だって男だ。女性が近くに入ればドキドキしたりもする。
更にその女性は雨で濡れていて今近くで体を拭いている。
……これで動揺しない男はいないと思う。
「こっち向かないでくださいよー」
「わ、分かってますよ……」
対して文さんのほうはそこまで気に止めてないようである。
たくましいんだと思った。そう思っておくことにした。
「よし、終わりました。こっち向いてもいいですよ」
やっと開放される。
体感時間がやけに長かったような気がした。勿論気のせいだ。
文さんは椛さんのタンスから勝手に引っ張り出して勝手に服を着ていた。
やけにサイズが合ってないが……。
「大丈夫です。着れればいいんですよ」
そういう問題なのだろうか。どうみても息苦しそうにしてるけど。
「た、確かにちょっと胸が苦しいですね……あはは」
これは文さんの癖なのだろう。照れるといつも頭を掻いている。
「それにしても、椛はどこまで行ったんですか? 遅いですね」
「……そうですね。もう辺りは暗くなってますから心配です」
何度も言うが、外はかなりの豪雨だ。
更に外は真っ暗。とてもじゃないが出歩ける状態ではない。
もしかしたら椛さんはどこかで立ち往生しているのではないだろうか。
そう思うと今すぐにでも迎えに行きたいが、しかし僕はここの地理に詳しくない。
ここは、大人しく留守番していたほうがいいかもしれない。
「ふむ……椛の部屋はこうなってたんですね」
と、考え事をしていたら文さんは椛さんの部屋を物色している。
「あまり観察してたら怒られますよ」
「いやー私ってつい観察する癖がありましてね。あはは」
ポリポリと乾いて間もない頭を掻く文さん。
まあ観察ぐらいならいいだろうと思っていたが、やはりここは人の(天狗の?)家なので注意しておく。
「そうは言っても、文さん観察だけじゃないでしょう。……何写真撮ってんですか」
「あなたの顔ってよく見ると整っていたので」
ただ単に記事に載せるだけではないだろうか。
「ともかく、ここは椛さんの家なんだから大人しくしてましょうよ」
「天狗っていうのはせっかちな性格が多くてですね」
「理由になりませんよ」
とりあえず大人しくしててと言っておいた。
すると文さんはそこらの椅子に腰掛けて、ジッとしていた。
やれば出来るんだな、天狗って。
……視線を感じる。
どうやら文さんがこちらを見ているようだ。
僕は文さんの方に向いて、
「何でこっちを見るんですか」
「暇なもので」
暇なら仕方ない。もとより僕が大人しくしててと言ったんだから、見られるぐらいなら我慢しよう。
「しかし、不思議ですね。こんな辺境の地に人間がやってくるなんて」
「やってきた、というか、いつの間にかきていた、というか……」
「それも、よりにもよって椛に拾われるとは。あの子も災難ね」
そういえば、椛さんと文さんの関係ってなんなのだろうか。
初めて会ったときはかなり椛さんは邪険に扱っていたけど。
「まあ、腐れ縁って奴です。私が先輩で、椛が後輩みたいな」
「椛さんがあれだけ嫌ってるとなると、意地の悪い先輩なんですね」
「あ、あはは……」
文さんは苦笑する。そして話を続けてきた。
「もともと、私と椛の歳の差はたった数十年なんです。小さい頃はよく二人で悪さをしましたよ」
……たった数十年、と言う辺りやはり妖怪ということなのだろうか。
そんな僕の考えを知らずに文さんは話を続けていく。
「でも、その二人の妖怪は身分が違ったんですね。一人はそこそこ優位な位置にいる鴉天狗。もう一人は天狗の中でも下っ端の下っ端である白狼天狗。勿論、その頃はそんな身分の違いなんて分かりませんでしたよ。そんなことは知らずに、二人は友達だったんです。……そして、ついに二人が分かれるきっかけが生まれました」
それは本当に突然のことでした。
ある日のこと、二人はいつものように悪さをしていました。
悪さ、といっても簡単な、子どもが思いつくようないたずらなんですけどね。
二人はいたずらをして、いたずらされた人は追いかけて、ふたり仲良く怒られるのがいつものことでした。
しかし、その日は違いました。
いつものようにいたずらをしたにも関わらず、私だけ先に帰らされました。
帰ったフリをしてこっそり覗いたら、椛は暴行を受けていました。
その後は殆ど覚えてません。
気がついたら、ボロボロになった椛を抱えて二人にしか分からない秘密の場所にいましたから。
そして私は思いました。
——ああ、椛は私とは違うんだな、と。
それ以降はあまり椛と一緒に遊ぶなんてしませんでした。
いや、出来ませんでした。
また、椛を傷つけてしまったら——
そう思うと、どうしても椛と遊ぶのに躊躇ってしまいました。
情けないですよね。その頃の椛は自分が傷つくにも関わらずまだ私を友達として接してくれてたのに。
そして私は、とうとうやってはいけないことをやってしまったのです。
——もう私に関わらないで! 付き纏って迷惑なのよ!
——あ、文ちゃん……?
——うるさい! 私を下の名前で呼ばないで!
——どうして……どうしてそんなこと言うの……?
——……ッ!!
「それ以来、椛は私に近寄らなくなりました。私もまた、椛に近寄らないようにしました。……これが、椛が私を嫌う一番の理由です。あはは、すみませんね。こんな暗い話をしてしまって……」
顔を引きつらせながら笑う文さん。
僕は、何も言うことが出来なかった。
「もしあの時、椛と仲良くやっていたら、身分なんかに惑わされず一緒に付き合っていたら……未だにそんなことを考えています。過去に戻ることなんて出来ないのにね」
それきり、文さんは黙ってしまった。
部屋に沈黙が走る。
うるさかった雨の音がより一層大きく聞こえた。
どうもご無沙汰です。
今回の第七話。射命丸と椛の過去を軸にしました。
何故、椛があのような態度を取るのか。その秘密が今回で明らかになりました。
そして未だに帰ってこない椛。彼女は一体なにをしているのか。
それは、次の話で明らかになるかも?
それではー。
- Re: 【東方】幻想郷放浪記【オリジナル】 ( No.91 )
- 日時: 2011/03/13 23:13
- 名前: トレモロ (ID: vQ/ewclL)
どうも。
ずいぶ〜ん昔に小説にコメをいただいたものです!
実は私も東方の幻想入り小説を書いており(リレー式ですが)、参考にカキコの方の幻想入り小説を探していたのですが。
まだ、ちょっとしか見てないのですが、面白い!
是非参考にさせて頂きますw
更新頑張ってください!
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