二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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【dance;wits:the:DEVIL 】
日時: 2010/07/02 15:50
名前: EN (ID: tHinR.B0)
参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/

ドラゴンボールとDevilMayCryのコラボ小説書いてみました。
戦闘重視でがんばります。
※注意※
此方の作品には女性向け・暴力表現が含まれています。
作品に登場するキャラクターの性格はドSが基本装備となっています。

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Re: 【dance;wits:the:DEVIL 】 ( No.10 )
日時: 2010/06/27 20:01
名前: EN (ID: P3xeYQNF)
参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/

激突した衝撃で壁が崩落し、激しい振動で真上に取り付けられていた古びた蛍光灯が砕けた破片と瓦礫ごと倒れた悟飯に落下する。

「悟飯!!」

焦った悟空が悟飯を助けに行くよりも、不気味な紫電を纏った球体が無慈悲に哄笑と唸りを上げまだ起き上がらない悟飯に襲い掛かる方が早かった。
それでも気を高ぶらせもう一度、黒髪を黄金色にたゆたせる悟空が走り出そうとした瞬間、悟空は背後から一陣の風が吹いたのを感じた。

振り向いた視界の端に、銀色の髪と深紅の長外套を捕らえた。


球体が悟飯を圧し潰そうと直落下してきた瞬間よりも、その飛び蹴りは素早かった。
使い慣れたくすんで色褪せた焦げ茶色のブーツが、球体の顔面にめり込む。
右足は頬を抉り、左足は唯一突起していた鼻をへし折っていった。
痛恨の横槍を入れられた球体は間抜けな悲鳴を上げて、失速することなく地面にバウンドし顔面を潰しながら飛んでゆく。
着地音よりも、深紅の長外套が羽ばたく音が響いた。
美しい銀糸の髪が赤い月光に反射して、アイスブルーが悪戯に輝き細まった。

「おいおい、おかしくねぇか?」

ジェスターの口調を真似して、瀕死の筈だったダンテが笑ってクルリと舞った。


「俺を差し置いてパーティー始めるなんざ、」
「100万年早い、なんてそんな古くさいこと言いませんよね?」

ダンテの言葉を冷たく遮ったのは、悟飯の声よりも瓦礫が吹き飛ばされる轟音だった。
ダンテの左肩すれすれに通り過ぎた瓦礫は風と欠片を撒き散らしジェスターに直撃したかに見えたが、惜しくもジェスターは必死に回避していた。
ダンテが恐る恐る後ろを振り返れば、既に悟飯は立ち上がっていた。肩に掛かった瓦礫の欠片を振り払い、乱れた前髪を撫で上げている。
耳腔を震わせる爆音を立たせた衝撃だったのに、悟飯は掠り傷だけだった。

「このスーツ、まだ3回しか着てないのに…」

瓦礫を蹴り飛ばしたのは悟飯だ。
息も上がっておらず、喉が灼熱の痛みに倒れるまで見ていた悟飯の冷たい表情は全く変わっていなかった。
倒れている間も、全身で感じていた鳥肌を覚える圧倒的な力は、ダンテを無意識に唇を引き結び、悔しさに呻いた。
だが怒りではないとダンテは分かっている。
これは、高揚感だ。
己と同等、いやそれ以上の力を持つ者の存在に、畏怖と興味が強く沸いた。

凝視するダンテの視線に悟飯は埃を払い終えると、立ち尽くしているダンテに歩み寄る。

ダンテの視界には、掠り傷だらけの悟飯の端正な顔立ちが映った。
顎に指を添えて、悟飯の視線はダンテの首もとへ向かう。

銀の槍で深々と貫かれ、出血死だと思うしかない重傷だった筈なのに、そこには傷跡どころか妙に赤みがかって綺麗な肌色をしていた。
まるで、傷が完治して全く新しい細胞が生まれたような。
何か結論付いたのか、うんうんと頷いて悟飯は眼を細めて顔を上げると、にっこりと笑った。


「化物ですか?貴方は」

ポカンと立ち尽くして絶句するダンテに、悟飯は冷たく問い掛ける。
きっちり5秒有して、ダンテは固まった舌を無理矢理動かせた。

「…て、めぇこそ。あの攻撃喰らって掠り傷とか、あり得ねぇだろ」
「僕は、人よりちょっと頑丈なだけです。急速な肉体再生はどうやったって無理ですよ」

どの口がそれを言う、とダンテとケルベロスが同時に思ったが反論する前に悟空が遮った。

「こら悟飯!!」

さっきまでの心配顔は消え失せ、悟空はプクゥと頬を膨らませ悟飯に歩み寄る。


「あぁお父さん、怪我は…」

極上の蕩けるような微笑みを浮かべた悟飯に、ダンテはうっと表情をひきつらせる。

「うちのクソ親父より強烈…」

ダンテの苦々しい呟きは父子には聞こえず、悟空は両手を腰に当てご立腹だった。

「助けて貰ったんだろ?化物は言っちゃダメだろぅ!!」
「そうですか?じゃあ彼は何者なんでしょうね」

父に向けた微笑みはそのままに、悟飯は冷たい視線をダンテに向ける。

「『普通じゃない』のはお互い様ですよ」

己を見上げてくるケルベロスに、ダンテは見返すと困った顔をした。別に正体を明かすことに今更戸惑っているのではなく、説明するのが面倒といった顔だ。






「彼は魔剣士スパーダの息子」

笑い声を立てて、ジェスターが優雅に踊っていた。無傷なのが無性に腹が立つが。

「悪魔でありながら反旗を翻し、人間の女との間に子供を…」
「だから、何でテメェがでしゃばんるだよ!!」

ダンテが叫んだ瞬間、耳をつんざく金属が火花を散らす音が闇夜を引き裂いた。
悟空が驚いて耳を塞ぐよりも、その音は数十メートル向こうに居たジェスターに届き、間抜けな舞いで風渦巻くソレを避けた。

Re: 【dance;wits:the:DEVIL 】 ( No.11 )
日時: 2010/06/27 20:02
名前: EN (ID: P3xeYQNF)
参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/


ジェスターの背後の壁に罅が入る。
その罅に埋め込まれた、煙を立てる鈍色の空薬莢に悟飯は出かかった言葉を飲み込んだ。
ダンテへと視線を戻せば、ダンテはジェスターに背中を向けたまま、長外套に隠していたガンベルトから銃を抜き取って射ち放った後だった。
だが悟空も悟飯も、ダンテが銃を射ち放つ瞬間を肉眼で確認できなかった。
弾挿に美しい装飾を施されたカメオの、恐らく速射ちを得意とするダンテの為に造られた銃らしく、しかもよく見ればその銃は双子だ。
そもそも速射ちとは、相手と技量を計るものであって攻撃に適応した技ではない。
どんなに天才的な器用さを誇ろうと、速さに伴う数ミリ単位を有する正確さと、急速な反射神経による体に掛かる銃の反発力に敵う力が必要だ。
動かない標的なら数万分の確率で超高速の技を切り出すことも可能かもしれないが、動く標的となれば可能なのは映画やドラマのアクションの中だけだ。

だがそれは普通の人間であったらの話だ。
ダンテが背中を向けたまま、正確にジェスターに射ち放った弾丸は壁に大きな皹を作るほどの威力だ。
冷静に物事を分析する悟飯が、思考が再起動するのに数秒かかったのだ。


「おめぇ、なにもんだ?」

ケルベロスのみっつの頭を撫でながら素直に問うたのは悟空だ。
悟空の眼は警戒を示していない。ただ純粋に、ダンテの力に興味を示しているだけのようだ。
悟飯は口には出さないが表現は僅に強張っているが、ただ其れだけの事だ。
特殊な能力を気味悪がる様子も、恐れさえも抱いていない2人に、ダンテは笑みが抑えられなかった。

「あの馬鹿に先に言われたのがムカつくげどな…、ママは美人の人間で、パパは魔界でちょ〜有名な悪魔だったよん」

おどけたダンテの口調に、悟飯が小さく笑った。少しだけ和らいだ空気に悟空も無意識に安堵する。

「話すの面倒っちいから略す。色々あってデビルハンターやってんだ」
「それって、悪いヤツを倒すのか?」
「まぁ、人間にちょっかい掛けるヤツはな」

ああいう奴とか、とダンテがジェスターを指射せば、悟飯が苦笑した。

「まるでテレビゲームみたいな設定ですねぇ…」
「そりゃ、お互い様だろ。漫画みてぇな無茶苦茶振りだな。どんだけ強いんだ?」
「そうですね…、その気になれば5分で世界征服できますよ」


悟空に聞かれると怒られるのが分かっているのか、悟飯がダンテに冷たい笑みを浮かべながら耳打ちする。

「試してみますか?」
「いや、止めとく」

一歩下がり、ダンテは両手を上げて薄ら寒い誘いを丁重に断る。
何だか楽しげな会話をして居る様子に見えたのか、悟空はケルベロスに目を向ければ、ケルベロスは鼻を鳴らせて悟空の足に頭を押し付けていた。
頬を緩ませて悟空はケルベロスの頭を撫でると、またおかしな会話をし出す二人に割って入る。

「ダンテは、ジェーを殴っても平気なのか?」
「お父さん、ジェーではなくジェスターですよ…。そうですね、気になるとしたらソレですよね」
「なぁ、もっと気にする所あるんじゃねえの?」
「え、何かありますか?」

心底、不思議そうな顔をする悟飯にダンテは無言になりそうになる。

「物理攻撃は此方が有利ですが、あの薄気味悪いパワーは僕達の気功波を一方的に吸収して反発し合うんですよ」
「…気功波って何?」
「そうですね、簡単に言えばこんなモノです」

悟飯が軽口にそう言ったと同時に、徐に右手を翳した。
すると野太い哄笑を上げながら、3人と一匹の真上から此方に急降下して来た球体に気功波を放つ。

掌で包めるほんのちいさな気功波だが、鈍色に輝く気弾は風を唸らせる音を響かせ、球体に触れる直前に爆発した。重い爆裂音は球体の軌道を強引に変え、その先に居るジェスターに直撃した。

「ふむ。ブロリーの真似をしたんですが、難しいですね」
「ブロリー、てだれ」

見事に微細調節された気弾は、相手の力と反発する前に、その反発力ごと粉砕するためにわざと、爆裂で膨大した風圧を加え球体を殴る形で吹き飛ばしたのだ。
悟空が相手の力を読み取るのが得意なら、悟飯は相手の力をどう覆すかを考えるのが得意のようだ。
特にダンテとケルベロスが感心したのは、父子が持つ強靭な肉体だ。
俊敏さと機転の速さは、体が付いてこなければ何の意味を成さない。
ダンテは身震いを感じたが、高揚感の方が勝った。







「たぁの、し、ぃ、ぃいいぃ、た、のしぃぃねぇぇ、ぇぇあぁ」

途切れ途切れの不気味な笑い声が、球体の下から響いてくる。
水気を含んだ木をへし折る様な嫌な音が続き、ジェスターはゆっくりと立ち上がる。
球体に直撃された衝撃で、顎が粉砕されジェスターはまともに喋れなかったのだ。

Re: 【dance;wits:the:DEVIL 】 ( No.12 )
日時: 2010/06/27 20:03
名前: EN (ID: P3xeYQNF)
参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/


「まま、ま魔剣士しし、すす、すスパーダだ、のの血を受け継ぐちち、力、そそそして次元を、をくつ、がえ、す純粋で高潔な魔、りょくく…」

胸が苦しいような気持ち悪い発音が、濡れた音を立てて、粉砕されたはずの顎が治ってゆく。
悟空が気持ち悪さに息を飲むのを感じた悟飯は、蠢く闇が増えたのを視界の端に捉えた。ダンテを横目に見やれば、ダンテも気付いたのか苦笑するだけで、律儀に警戒するのはケルベロスだけだ。

「ふたつの力を捧げれば、此度、テメンニグルが復活する」

紫の唇が愉悦の笑みを浮かべ、優雅に両手を広げたジェスターの伸びた影が、音もなく膨張した。

「避けろ!!」

膨張した影はすぐさま闇色の、ケルベロスよりふた回り大きい獣が現れ、血の色の瞳で3人を捉えた。
ダンテが叫んだ瞬間、悟飯が直感的に2歩下がれば、獣から伸びた影が具現化を果たし、まるで天を無情に刺し貫く巨大な針のようなものが真下に居た悟飯を攻撃したのだ。
絹を引き裂く音に、悟飯の胸板辺りのシャツと、額を薄く切り裂いた。
後ろへ下がらなければ、文字通り串刺しになるところだった。

「っ、こいつ!!正確に心臓を狙って…」


いくら体が丈夫だろうと、刺し貫かれても死なない訳はない。額を流れる血に、悟飯は少しばかり驚愕した。

「何ですか、アレはっ」
「シャドウだ!!また面倒なもん連れやがってっ」

憎らしげに叫べば、シャドウと呼ばれた影の獣は楽しそうに唸る。
次の瞬間、今度は真正面から巨大な針が3人に襲い掛かる。
ダンテと悟飯は右へ、悟空とケルベロスが左に横転すると、シャドウが次に狙いを定めたのは左だった。
上半身だけを膨張させ、さらに巨大化したシャドウの鋭い左脚がまだ立ち上がらない悟空の頭を抉り取ったかに見えた。
吃驚した大きな瞳をシャドウの大きな顔で視界いっぱいにして、シャドウの振りかざした左脚が悟空の髪を乱した瞬間、黄金色の輝きがシャドウの左脚を弾いた。
穏やかで柔らかな表情の悟空に、黄金色の風が吹く。黒い瞳は静かな海を連想させる碧玉へ、艶やかな黒髪は太陽に負けないくすみのない美しい金色へと変化する。
シャドウの弾かれた左脚が煙を上げて削られた。痛みに呻き、怒りにシャドウは長い尾を鞭の如くしならせ、悠然と立つ悟空に叩き付ける。
だが抉り削ったのは地面だけで、見上げればケルベロスを両腕に抱えた悟空が飛翔していた。


『お主、飛んでおるのか?!』

まさか空中を自在に飛ぶなど、思いもしなかったケルベロスは声をあげた。

「ん、まぁ、な…」

悟空は悪戯をしたような幼い笑顔を浮かべているが、真冬の寒さに淡く輝いた肌に汗が伝っていた。
不規則に乱れた呼吸に溜め息が出て、美しかった碧玉の瞳が段々と黒へ戻れば、悟空とケルベロスは空中に舞う事が出来ずに地に落下してゆく。
それを狙ってシャドウはもう一度、尾で攻撃を放とうと振り上げたが、シャドウは直ぐ近くに迫った気配に気付けなかった。



「おすわり」

ダンテの低い声にシャドウが反応する前に、こめかみに銃口が押し付けられる。
赤い電糸を纏った銃が重い音を放つと、シャドウは逃げる暇さえ与えられず頭蓋を射ち割られた。
生身の生物ではないので影が砂に成り果て崩れたが、完全に消え失せるまでダンテが放った赤い電糸は失わなかった。

「父さんっ」

体が重力に逆らわず、膝を付いた悟空に悟飯が駆け寄る。
輝く金の髪はすでに黒髪に戻っていて、呼吸はまだ乱れていた。

「どうしたんですか?」
「わ、かんねぇ…。あん時、から…変だと、は感じたんだ」

深く息を吐いて、悟空は汗を拭う。

悟飯を助けた時にもなったSSにも、悟空は妙な違和感を感じていたのだ。
ただの気のせいだと思っていたのが痛手だと、悟空は悔しげに呻いた。

「SSになったら、いきなり力が出せなく…」

噎せて咳き込む悟空に気遣っていれば、此方を凝視するダンテとケルベロスの視線が背中に刺さるが、無視はできない。

「あんたら、何者だ」

その台詞は、悟空も言っていた。
お互い様だろうと悟飯は苦笑した。
闇はまた増えただけで、やはり簡単には帰れないと嘆くよりも頭痛が先に悟飯を悩ませた。

Re: 【dance;wits:the:DEVIL 】 ( No.13 )
日時: 2010/06/28 00:01
名前: EN (ID: tHinR.B0)
参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/

寂れたビル郡でつくられた、幾つもの曲がり角が引き締め合う細い道を、3人と一匹が迷いなく真っ直ぐ走り抜ける。
その後ろを追うように闇から生まれた巨大な獣が赤い瞳を光らせて迫り来る。
だが3人はそれほど焦った様子はなく、追われているのだという状況すら無視して、掠り傷だらけだがスーツ姿の青年と、深紅の長外套を羽織る銀髪の青年が言い争いをしていた。

「飛べるなんてそんなの聞いてねぇぞ!!」
「別に隠してた訳じゃないですよ」

悟飯が頭を低くすれば、その真上すれすれをシャドウのしなる鞭のような尾が空を掴む。

「んじゃ、アンタもあのスーパなんとかになって、金髪に変身するのか?」

ダンテがジャンプすると、足元にシャドウの鋭い牙が連なる上下顎が襲い掛かる。

「いえ僕の場合は、SSよりも簡単にパワーが引き出せるので、必要性はありません」
「だから、SSってなんなのよ!!」

言い合いが半端に途切れ、2人が同時に前転すれば、その瞬間3匹のシャドウが襲う。
だが先に読んでいた2人は既に前転を終え、飛び起きる反動で加速した。
しかしシャドウ達は諸ともせず執拗に追い掛ける。

ビルの屋上ではマリオネットとジェスターが跳び跳ねているのが見えて、腹立たしげにいっその事、ビルごと破壊したい衝動に駈られるが、自分の力がどれ程の影響を及ぼすか推測できないため、怒りを堪え走り続けるしかない。







「駄目だ起きろ!」

まだ呼吸を落ち着かせない悟空の右腕を、ダンテは引っ張り起こす。悟飯は父の左腕を支えた。
ダンテが警戒する視線の先には、廃ビル内や影から蠢く数体のシャドウが、赤い眼を怪しく光らせている。

「シャドウは実体がない。一筋縄じゃ倒せねぇんだ」

そう言って背後を一瞥すれば、ダンテが倒した筈のシャドウはまた影を纏い巨体を震わせていた。

「実体がないって、じゃあどうやって倒すんですか!」

悟空の背後から飛び掛かってくるシャドウの額に銃を撃ち抜き、今にも悟飯の左頬を喰い千切ろうとしたシャドウの喉元にケルベロスは渾身の力で噛み砕く。
しかしシャドウは影に溶け込んで、また現れ隙を狙ってくる。

「ケル!退路はないのか?!」
『あるにはある』

まだ朦朧とする悟空をケルベロスの側に行かせれば、唸りを上げて向かってくる尾と闇の大針の同時攻撃に、悟飯は近くに捨て置かれた廃車に手を掛ける。


「ちょっ、コラまてまてまて!!!」

不良達がエンジンやら金目の物を剥ぎ取って骨だけとなった廃車とは言え、乗用車よりもふた回り大きいワゴン系だ。重さは軽く見て250kgはある。
そんな廃車を悟飯は右手だけで持ち上げると、胸を張って投げた。放物線が弧を描くなど、そんな生易しい投げ方ではなかった。

おおよそ野球選手がボールを投げるが如く、ボールであれば超ストレートだが生憎、悟飯が投げたのは廃車であり、時速400kmで滑空する廃車は慌てて頭を低くしたダンテを通り越し、見事にシャドウに直撃する。

「おいっ、投げるなら先に言え!!」
「言ったら避けられちゃいますよ」
「てめぇっワザとやって…、あ、ウソごめん、バイク2台は止めろ!!」

ダンテの左右を音速に近い早さで、どういった理由か知らない焼け焦げたバイクが駆け抜ければ、シャドウは地に叩き付けられる。
どうやら投げる物が小さければ小さいほど、投げる速度は速まるわけで。
そして直撃した威力は、ダンテには最早予測できない。
だが投げつける物にも限界がある。

廃車が一台も無くなって、至って冷静な態度で悟飯は困ったな、と苦笑する。

「シャドウには実体がないと仰いましたね」
「あぁ、まあな」

じりじりと距離を縮めてくるシャドウに、ダンテと悟飯もゆっくりと後退し出す。
だが悟飯の表情は焦りに変わることはなかった。

「でも、弱点はあるんでしょう?」

悟飯が首を俯かせれば、頭上を過る大針は壁に突き刺さる。
延びたままの大針に、ダンテは背負った大剣を手にして抜刀すると、その大針を一太刀でへし折る。
垂直に斬り捨て、それをそのままの勢いに乗せて右へ旋回。背後に迫っていたシャドウの胴を斬り落とす。


『ダンテ!!』

ケルベロスがダンテの名を呼び背後へ視線を向ければ、小さな抜け道へと続く暗闇がぽっかりと出来ていた。
どうやら廃材等で埋もれていた細道を、悟空とケルベロスが見付けたようだ。

「ケル、先頭を行け!」
「お父さん、後から追い付きます。先に行っててください」
「分かった」

悟飯の横を通り過ぎて悟空に襲い掛かろうとするシャドウの、噛み砕こうと開いたその口に、悟飯は足元にあった錆びた鉄パイプを拾い素早い動きで投擲すれば、シャドウの後頭部を突き刺し喉を貫いた。


「さっき、面白い事を言っていましたよね…」

トラック5台分の圧力を加えた投擲で、喉を貫かれて痙攣するシャドウの頭を踏みつけ鉄パイプを引き抜けば、悟飯は冷たい眼差しをジェスターに向ける。

「僕と父の命を狙うなら、高く付きますよ」

怒り任せに崩れ掛けた影を踏み潰せば、廃ビルの窓ガラスが激しい音を立てて全て割れ砕けた。
しかし悟飯の怒りは無情にも空回りしてしまい、シャドウは無傷で再び甦ってしまう。
悔しさに呻けばそれさえもパワーに変換され、何者をも貫かずにすり抜けるだけだ。

Re: 【dance;wits:the:DEVIL 】 ( No.14 )
日時: 2010/06/30 23:50
名前: EN (ID: tHinR.B0)


愉悦に笑うジェスターが踊り出せば不気味な球体も跳ね回り、シャドウが一匹、また一匹と列を成して悟飯とダンテを壁際に追い詰めようとする。

「ダンテさん」
「なんだよ」

真剣な顔で悟飯がダンテを呼んだ。
視線をシャドウから外すわけにもいかず適当に応えれば、悟飯は苦笑を滲ませて笑った。

「僕だけ飛んで逃げるのは、やっぱり卑怯ですよね」

言った側から、悟飯はダンテの返答など待たずに地を蹴った。軽くジャンプした筈なのに、悟飯の跳躍力は尋常を逸脱していた。
ビル5階まで跳躍すれば、途端にシャドウが悟飯に向かって大針をけしかけてくる。
しかし悟飯はそれをやんわりと避けている。
その様は、壁を歩いているが如く迫り来るシャドウの鋭い爪を軽々と飛んで避け、唖然として見上げるダンテの視界は上下感覚が狂ったように見えただろう。

完全に空中に『立った』悟飯は身構えると、ジェスターに向かって気功波を放つ。
だがジェスターは笑うだけだ。
ジェスターに届く前に消滅する程度の気功波だが、もう一発強烈な気弾を放っていたことはジェスターは気付けなかった。

鈍色に輝く気弾が最初に放った気弾に包み込まれた瞬間、それは眼を覆うほどの強烈な光を生み出した。

凄まじい熱波を放つ極光はジェスターやマリオネット達の皮膚を焼き、光に怯えたシャドウは驚愕の悲鳴を上げて影を拡散させる。

悪魔の不気味な悲鳴の中、あまりの突然さに自らの腕で極光を遮ったダンテの襟首を、急いで掴んだのは悟飯だ。

「ま、待った!!転ぶ転ぶ!!」
「急いでください。極光は直ぐに収まります」

悟飯も少し視界を焼いたのか、ぼやけた視界を頼りに歩き出す。

「さっきのは何なんだ!!」
「閃光弾の一種ですよ。尤も、僕が放ったのは通常の300倍です。おまけに熱波も加えたので、間近で喰らえば大抵は死にます」

本来目眩ましとして用いる閃光弾は、瞬間的な極光を除けば熱は極力抑えられている。
しかし悟飯が放った物は完全に、抑制された極光ではなく、力と力の超摩擦で起こった熱量の百倍数にあたる白炎を使ったものだ。
太陽の表面温度に一番近い熱波は赤から白へと変化し、普通の人間なら生きながら体が溶解できる威力だ。

「だから!!何でいきなりなんだって!!」
「ダンテさんが半分不死で良かった」
「そういう問題でもねぇ!!」

いくらか叫んだからか、ダンテの視界は次第にクリアになってゆく。
乾いた足音を立てて長く暗い細道を、悟飯がダンテの手を取りながら前を走っていた。
目眩ましとは確かに良い作戦だが、やはり納得がいかないダンテは悟飯の隣に並んで走り出した。
耳をすませば、怒り狂ったシャドウの唸り声が復活し、ふたりは小さく溜め息を吐いた。

「この道、何処に続いているんでしょうか」
「知らねぇ、…が、とりあえず」

飛べるなんて聞いてねぇ、とダンテが叫んだ瞬間、シャドウが追い付いたのは同時だった。


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