二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ケルベロス〜狼たちの夜行〜
日時: 2010/08/20 11:08
名前: 謎の人 (ID: sVNEYKm0)

 

どうも初めまして。謎の人と言います。
高校生17歳、特技は・・・なんでしょうか?特に
無いかな。あまり自分では得意なことがあっても意識してません。余計なところで闘争心が出るところでしょうか。それはいいとして。
僕はいろいろとアニメ映画とか見たりしてます。
エヴァンゲリオン、ガンダムとかロボット系とかSF近未来系とかです。
今回初二次創作をするのはアニメ界の鬼才、押井守監督の人狼という作品です。
といっても、この作品もともと実写で、人狼がゆういつのアニメ映画なんです。
 最初のプロローグを読んでいただければ世界観は伝わります。
 この作品を知ってる人、知らない人もどうか読んでください。

 ではどうぞ。  




 194X年、第二次大戦の十年後、強引な経済対策により大量の失業者が首都に集中し、治安が悪化。凶悪犯罪を多く発生させ、ついに反政府デモが開始された。徐々に激化したデモ運動に対して日本国政府はそれらを鎮圧するため首都警察部隊、通称首都警を組織。治安維持のために活動を開始。
 当時アカと呼ばれる反政府過激派に手を焼いていた首都警だったがそれ以前に、彼らが警戒していた過激派組織が存在した。人数不明、名称不明、拠点不明の組織である。
 一方、首都警に特殊強化服・プロテクトギアを装備した機動隊が組織され、その中に十人で構成される第十六凶悪犯罪班係特殊機動隊とゆう部隊が存在していた。

 —そんな彼らが戦い抜いた記録である—

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Re: ケルベロス〜狼たちの夜行〜 ( No.1 )
日時: 2010/08/17 16:56
名前: 謎の人 (ID: sVNEYKm0)

 
 冷たい風が肌をきる一月の夜。東京の一角にある下町の近くに居酒屋が道に沿って店を構えている通りがある。通称居酒屋通り。連なっている店には赤い提灯や明かりがぼんやりと灯っている。その道は鉄橋の下にも続いていた。いつも何か醤油で煮込んでいるようないいにおいとかすかな酒のにおいが香っている。
 今夜も様々な客が訪れている。額に傷のあるヤクザ、仕事帰りの役人、遊女たち。その中に一人黒いジャンパーを羽織り、人混みを通り抜けるようにしてそそくさと歩く男の姿があった。
 居酒屋通りを抜け、鉄橋をくぐり、左に曲がった。
今は静かな住宅地を歩き、一軒の廃ビルにたどり着いた。元は何かの商社ビルだったが今では窓ガラスもほとんど割られ、外装も何か黒ずみかかったような薄汚さを残していた。周りを見渡し、誰もいないことを確認すると男は外れかかったドアに近づき、ゆっくり開け、下に続く階段を降りていった。7Mほど降りていくと明かりがかすかに見えてきた。
 階段を降りきると通路があり電球が数個天井についている。そこを真っ直ぐ辿っていくとそこにはドアがまたあった。今度は廃ビルの外にあるオンボロドアではない。厚く強固な金庫の扉である。
 男はノックした。
 ゴンゴンという金属が耳に響くような鈍い音を出した。すると扉の向こうから声が聞こえた。
 「桜。」
 男はすかさず
 「島。」
 一瞬しんと静まりその後ガガガと重い扉が開いた。
 男が中に入るとその部屋は畳40畳ほどの広さである。中には数名の男と所狭しとある銃器や弾倉など。昔金庫として扱われた形跡は一切無い。それは彼らが活動のために全ての機材を廃したためである。
 「矢田部か。どうした。こんな夜遅くに武器庫に来られちゃ、足がつくかもしれねぇぜ。」
 扉を開けた大柄な男が静かに問いかける。
 「川田さん。・・・・寺腰が捕まった。」
 問いかけた男と武器を確認していた男がこっちを驚いた目で見た。重い空気が流れる。
 矢田部が続ける。
 「容疑は銃刀法違反の容疑だ。職質されて、持っていた手提げの中のものを見つけられた。」
 川田は立ったまま目をつむって聞いていた。
 「これっす。はっきりと名前まで。」
 矢田部が差し出したのは新聞だった。川田は目を開けるとゆっくりと取った。周りにいた男衆も集まってきた。
 記事には、本人の顔写真と名前、細かい経歴などが掲載されていた。矢田部は訴える。
 「川田さん、やるしかないよ。もうこれで五人目。
足がついてきてるのは、俺らじゃないっすか?」
 抑えた声で、かつ怒った口調で川田に言った。
 川田は新聞を片手で持ちながら腕を組んだ。
 「矢田部、ご苦労。お前は今日とりあえず帰れ。明日の集まりで蜂起を提案してみる。もう限界なのはわかっていたしな。」
 川田は静かに呟いた。

Re: ケルベロス〜狼たちの夜行〜 ( No.2 )
日時: 2010/08/19 09:34
名前: 謎の人 (ID: sVNEYKm0)

 朝8時、冷え込んでいた。そんな中、グラウンドに二列で掛け声をしながらマラソンを行っている集団がいた。
 「い〜ち、に〜、いちにっ!!」
 ここは首都警第七支部のグラウンド場である。数年前に急遽作られたグラウンド場だ。周りのほとんどが民家と林に囲まれており、本部から一番離れたところにある支部である。
 野太い掛け声を出しているのが第16凶悪犯罪班係特殊機動隊隊長の吉田である。警察と言っても、この機動隊は別格の存在で、当時の凶悪犯罪を取り締まるとゆうよりか銃火器で鎮圧する立場である。今で言うところの自衛隊にあたる。機動隊には他に特機隊というのが存在するが、凶悪犯罪班係特殊機動隊は特機隊の編成以前に組織された試験部隊に過ぎない。むしろ、末端の存在といって良いかもしれない。その証拠に隊員のうち約3、4名は数ヶ月前に訓練を受け始めた隊員がほとんどである。
 「止まれー!!」
 隊は支部の入り口近くにて、吉田の合図とともに全員びしっとその場に止まった。再び吉田は隊員に合図する。
 「二列横隊に直れ!!」
 隊員はすばやく横隊を作った。
 「今日の早朝訓練はこれまで。二時間後動甲冑を装備の後・・・。」
 と言って吉田は支部の裏側にあるビルを指さした。
 「あのビルのA8ドアに全員集合。以上解散!!」
 隊員は敬礼をした後すばやく支部に戻っていった。
 吉田はそれを見、自分も戻ろうとしたら後ろで声がした。 
 「吉田。」
 吉田が振り返るとそこには初老の男が立っていた。
 「柊警部補殿。」
 吉田は敬礼した。
 「お前さんにちょっと教えておきたいことがある。」
 柊はそう言った。
 
 
 

Re: ケルベロス〜狼たちの夜行〜 ( No.3 )
日時: 2010/08/19 09:38
名前: 謎の人 (ID: sVNEYKm0)

 朝9時ごろ、例の廃ビルの一室。汚れたタイルのような床と電灯以外何も無い部屋で川田は一人自前の機関銃の点検をしていた。日が昇り、多少の暖かさを感じていた時5人の男が入ってきた。皆作業着や普段着やそれぞれ違う格好をしている。
 「川田さん。」
 一人の男が話しかける。
 「うむ。」
 川田は銃を床に置いた。
 椅子も床も無いその部屋なのでそのまま地べたに座った5人の男と川田。
 少し黙っていたが5人のうちの色白の男一人が話を切り出す。
 「川田さん、寺腰のことは聞きました。もう我々の隊は3人目です。他の隊にも数名パクられた隊員がいるそうですが。」
 その男は他の男に目を配る。川田は例によって腕を組み、目をつむっていた。
 「もう実行前にすでに総勢13人ですよ。やつらの目がこちらにまで来つつあるんです!!いい加減
やらなければ。勿論、やるからには事前に決めておかにゃならんことはあるでしょうが・・・。」
 隣にいた男が言った。
 川田は相変わらず黙ったまま。また沈黙が続く。
シーンとしている。遠くでは居酒屋通りの酔っ払いが何か大声を出しているのが微かに聞こえるだけである。
 なぜ川田はデモ実行を躊躇ってるのか。それは度重なる隊内部での揉め事である。
 そもそも川田は十年前、軍人だった。戦争が終わり、清掃員に就職し、生活をしていたものの、度重なる政府の不祥事、下級軍人への配慮も無く十何年が過ぎ状態はさらに悪化。それに激しい怒りを覚えた川田は別の過激派組織「アカ」に伴い反政府組織を結成。ドイツやアメリカのマフィアと繋がり、銃器を違法輸入。軍隊さながらの武器を手に入れていたのである。
 しかし、問題はそれを扱う人間だった。軍人を集めようにも消息が不明な人間がほとんどだったため、川田が収集した隊員のほとんどがヤクザまがいの人間や血の気の多い若人、川田と同じ元軍人。政府への怒りを煮えたぎらせる激しい気性の者が多い上に、思想的な対立も度々あったようでこのままでは内部分裂の可能性が高い。
 一方川田は純粋に政府に怒りをぶつけたいと願っており、彼らとは逆に冷静沈着である。故に燻ったまま計画を実行することができないと考えたからである。
 川田は重い口を開いた。
 「すまなかったな。」
 5人の男は一瞬きょとんとした。
 「俺はもっと早くに決断を下すべきだったかもしれん。」
 「川田さん!」
 男たちは口々に言った。
 川田は目を開き立ち上がった。
 「今日隊員全員の状況を確認しろ。武器を取って、ただ俺たちは殺るだけだ。できれば深夜にでも決行する。今日の9時、この地下倉庫に集まれ。」
 「そうですよ、川田さん!!」
 「あんたが黙ってたって俺たちはどうすることもできないんすから。」
 口々に男たちは言った。

Re: ケルベロス〜狼たちの夜行〜 ( No.4 )
日時: 2010/08/19 10:21
名前: 謎の人 (ID: sVNEYKm0)

 隊の集合場所として指定した廃ビルの植え込みの近く。吉田と柊は簡易のベンチに腰掛けていた。柊は腰掛けながらタバコをふかしていた。ゆっくりと吸い、そして青い空に向かって煙を吐いた。煙が空中で完全に消えるのを見て地面にタバコを落とし足で2,3度踏んでから言葉を発した。
 「お前さんも相変わらずのようだね。この支部も空気が悪くねえしな。」
 「・・・・。」
 吉田は黙って聞いていた。
 「俺がここでお前さんにいろいろと仕込んでたのを昨日のように覚えてるよ。一番の優秀生だったな。だが堅っくるしさがあってよく対応に苦慮したものよ。真面目なのは俺も見習わないといかんが。」
 柊が何の話をしに来たのかわからなかった吉田は率直に聞いた。
 「今、アカの勢力が横行してますけど、何の話をしに来たんでしょう?」
 柊は吉田の方を向いてたがゆっくり下を向き、いいか、と吉田に言い聞かすように話し始めた。
 「話題が二つある、切り出すところがわからなかったんだが。もう率直に話す。一つはお前のいる凶悪犯罪班特殊機動隊以外に動甲冑を着けた部隊が編成されているらしい。お前のいる部隊は急遽編成された上に動甲冑の試験運用も思慮されてた。しかし、扱いにも多少の下手上手がある。何となく行き詰った感覚になったんだろう。特機隊は訓練を重ねたエリートの機動隊員からなる。お前や多少動甲冑を着込んだ連中を特機隊に引き込んで、他のやつは恐らくもっと訓練を受けなけりゃならんだろ。」
 吉田は静かに聞いていたがある考えが浮かぶ。
 「解体の可能性があるということですか。」
 「・・・ああ。」
 柊はちょっと口ごもってから言った。
 「それから二つ目、多分お前らに近いうちに出撃があるかも知れない。」
 また柊はいいか、このことに関しては何も聞くな、と釘を刺す。
 「最近10人ほど銃とナイフを所持していた男が捕まった。アカの勢力拡大を見計らって警察の巡回範囲を広げた。すると不思議なことにその10人のほとんどがアカがよく出没する地区とは別の地区に住んでいる。取調べの中で4人はなんとか我々に誤魔化をしているが残りの6人はだんまりだ。問題なのはその6人。アカではないのは確実だ。彼らの自宅にもどこにもアカと関わった形跡が無い。それならそう言えばいい。にも関わらず黙っている。夜な夜な出歩いて銃を所持し、しかもアカとのつながりが無い。とすると別の可能性が生じる。」
 吉田の眉がピクッと動いた。柊ははっきりと言った。
 「・・・アカ以外に何か別の組織が動いている。だがそれもまったく活動経験が無い人間が多い組織だろう。」
 柊は立ち上がり吉田を見ないで空を見ながら呟くように言葉を発する。
 「特機隊の編成にはもっとかかる。動甲冑は簡単に破壊される代物じゃない。だが、扱いぐらいはちゃんと仕込んどけ。」
 柊はじゃ、と言って後ろにいる吉田に右手をひらひらと振って見せた。
 遠ざかる柊を吉田は見つめていた。
 

Re: ケルベロス〜狼たちの夜行〜 ( No.5 )
日時: 2010/08/19 15:16
名前: 謎の人 (ID: sVNEYKm0)

 午後1時、下町の裏路地にある空き地。ドラム缶が2つと雑草が一面に生えている。その空き地は薄汚れたビルの谷間にあり、日の光をほとんど浴びない目立たないところにある。元は商店があったそうだ。
 日の光のない陰りの下にあつまるように男が6人集まってきた。朝、川田に会っていた男がそれをドラム缶に寄りかかりながらじっと待っていた。男たちはその男に近づくと止まった。
 ドラム缶に寄りかかった男は男たちに言った。
 「目だったいざこざはないか。」
 「無いよ。いざこざがないんじゃねえよ、いい加減萎えてきたんじゃねえが?」
 周りの男がくくっと引き笑いをした。
 川田に会ったその男は首をかきながら気だるそうに呟く。
 「お前らが毎度毎度喧嘩おっぱじめるからいけねぇんじゃ。だからあんな良いチャカがあっても一回も活動ができなんだ。川田さんもやっとやることを決心したんだよ。」
 まぁ、いいやと男ははき捨てる。
 「川田さん曰くもう殺るだけだ。もがくだけもがき通すだけだ。集合場所は改めて連絡する。これに参加する連中に伝えろ。今日の深夜にでも決行すると。」
 男たちはすっと散った。


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