二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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スマブラより「ピットくんのお使い」
日時: 2010/09/07 03:47
名前: まり (ID: Nw3d6NCO)

一応、ピットくんと読者様の分身。いわゆるオリジナルキャラ二人の会話で成り立っているお話です。ピットくんが無邪気で、良くも悪くも天使なので、それが受け入れられる方にどうぞ。



「ねぇ君」
突然頭の上から声がして、アイリはピタッと歩みを止めた。
(え・・?)
「うん、君。良かった〜気づいてくれて」
振り返りつつ見上げてみれば、陽の光を遮るように、人間が空に浮かんでいる。
(空・・・飛んで・・っ)
「飛べなくなる前に見つかって良かったよ。僕の声が聞こえる人間て、案外いないんだね」
驚きすぎて声の出ないアイリに向かって絶えず笑顔を向けながら、その空飛ぶ人間は降りてきた。姿は13〜14の青年のようだ。魔物のような禍々しい姿ではないので腰を抜かすような事はなかったが、突然の事に頭は真っ白なままである。
よく見れば、背中には羽根が生えていた。羽根の生えた人間なんて、この世にいるはずがない。
本の中で見た天使と、その青年はそっくりだった。
「・・・?僕の姿、見えてるよね?」
何も喋らないアイリに、青年はグッと顔を近づけてきた。
「僕はピット。天使だよ。女神パルテナ様のお使いで人間界に降りてきたばかりなんだ」
そう言いながら、ピットと名乗る天使は人差し指でアイリの心臓の辺りに指を差す。
すると、一瞬その指先が淡く光ったかと思えば、たちまちアイリの心はいつもの平常心に戻ってしまった。もうピットを見ても、我をなくしたりはしない。
だから、自然に声も出てきた。
「あなた、天使様なの・・?」
「うん。そうだよ。ピットでいいよ。名前で呼んでね」
「天使なんて初めてみたの。女神パルテナが従える天使が、魔物を倒して世界を平和に導いてくれるって本で読んだ事があるわ。まさか本当に会えるなんて!私あの本大好きだったの!」
興奮したアイリの声に、ピットはやや怯んだ様子を見せた。だがすぐにまた笑顔になって笑う。
「君の言う本は知らないけど、そんなに喜んでもらえると嬉しいな」
「私本が大好きなのよ。他にも人間に恋した魔物の話とか、沢山色んなのを読んできたわ」
アイリは元々好奇心の強い少女だった。心が落ち着いてしまえば天使の青年に聞きたい事が、次々と浮かんでくる。
「どうして私に声かけてくれたの?」
「聞きたい事があってさ。レノアの村って」
「レノアの村は私が住んでる所よ。この先」
「うん、それはわかってるんだけど」
アイリの態度は、まるでアイドルを前にしたファンのようだった。
「レノアの村には、『パルテナの鏡』があるって聞いてきたんだ。それを持ち帰るのが僕のお使いなんだけど」
それは、村に伝わる伝説の鏡の名前だった。遥か昔、女神パルテナから賜ったと言う宝物で、村の宝物殿で祭られているらしい。
「毎年、お祭りの時だけ見る事が出来るの。でもあれが本当に魔法の鏡だなんて、本気で思ってる人はいなかったわ。そりゃ、中には熱心な信者もいるけどね。そんな人多くないわ。確かにウチは古い村だけどまさか言い伝えが本当だったなんて・・・」
ピットに鏡について教えてあげながら、アイリは伝説は本当だったんだと感動していた。


ピットを連れて、アイリは村へ帰る事にした。本物の天使を連れてきたとなれば、さぞや村人達も驚くだろう。
二人の歩く山道は、所々の木がなぎ倒されており、決して快適な道のりとは言い難かった。
「つい最近、魔物が村の近くに出たのよ」
「そんな場所を君は一人で歩いてたの?」
「そうよ。危険だけど・・・ここは茸が良く生えてるとっておきの場所に続いてる道なの。村は貧しいから、少しでも食べ物を増やさないと家族が困るから。前は弟のソラも手伝ってくれたんだけど、先月から行方不明で・・・きっと魔物に食べられてしまったんだわ。でも・・・だからと言って他人と一緒にいくと、その分採れる量が減ってしまうし・・余裕がないの」
村の側にある山には魔物が住み着いていて、実際、魔物に襲われて亡くなる村人は毎年後を絶たない。アイリの弟も、その一人かもしれないとアイリは思っている。山を抜けた東にある街へ向かい、その先にある王都へ魔物討伐を頼めれば良いが、王都までの道のりは長く、たどり着く前に襲われて命を失ってしまうとなれば、村は魔物と共存していくより他に、道がないのである。
「そっか・・・大変だったね。でももう大丈夫!僕が魔物を退治してあげるよ!」
そう言ったかと思うと、ピットはフワリと羽根を光らせながら飛び上がった。
「僕、連続して飛び続けるの5分しか持たないんだ。だからちょっと待っててくれる?すぐ戻ってくるよ」
あれよと言う間に、ピットは光の矢になって飛んでいってしまった。残されたアイリは、呆然とその姿を見送る。
夕方近くになっていたので、空がオレンジに染まりかけていた。しばらくすると、山の上のほうで無数の爆発音と共に光が飛び散り、魔物の声が風に乗って辺り一帯にこだました。
(すごい・・・っ。ピットくんが魔物をやっつけてくれるんだわ!これで街や王都にも平気で行けるようになるかも!)
もしそうなれば、働き口も出来て村は今より豊かになるかもしれない。そしたら、村で貧しいながらも自分を育ててくれる両親に楽をさせてあげられるかもしれない。
(ピットくんは私達のために働いてくれるんだわ。きっと女神様が私達の声を聞き届けて下さったのね。感謝しなくては)


やがて、魔物を倒したピットがアイリの所へ戻ってきた。
「お待たせ。もう大丈夫!魔物は僕が退治したからね」
「ありがとうっ!あ、ねぇ・・・大丈夫なの?」
 魔物退治を終えたと言うのに、ピットは怪我や衣服の汚れがなく、息を乱したりもしていなかった。
「うん大丈夫。僕は人間じゃないからね。じゃあ行こうか。早くしないと夜になっちゃうよ」
「ええ。村長さんに合わせてあげる。とっても頭が良くて頼れる方なのよ。ピットくんの話をしたら絶対歓迎されるわ。だって天使様が村にやってきたんだもの」


村に戻ると、アイリはまっすぐ村長の家に向かった。すでに村は夕食時で、家の煙突からはおいしそうな匂いが漂っていた。

「・・・何て事をしてくれたんだ」
話を聞いて歓迎してくれるはずの村長が口を開いて言ったのは、アイリにとっては予想外な言葉だった。
顔を青ざめ、唇がわずかに震えている。
「て、天使・・その天使はどこにいるっ」
「え?」
村長には、自分の横にいるピットが見えないらしい。
(困ったな・・どうしよう)
「どこにいるんだっ!」
強く言われて、アイリの体はビクッと震えた。外にも響くような、大きな声だ。
まだ12歳のアイリにはとても耐えられなかった。泣きたくなくても、怖くて勝手に涙が滲んでくる。
「い・・・いるものっ。ピットくんここにっ」
「いるのはわかってるっ。どこにいるんだ!」
「僕はここだっ!アイリをいじめないで!」
突然まばゆい光が部屋の中に満ちたかと思えば、ヒラヒラと純白の羽根が舞う中ピットが村長の前に姿を現した。
「パルテノ様の力は限りがあるから、あんまり使いたくなかったけど、アイリに怒鳴るなんて良くないよ!」
「て・・・天使様っ」
声を聞きつけて、近くにいた村人が数人家の中に入ってきた。そして、皆同じように天使であるピットの姿を見て驚き声を失う。中には跪いて祈りを捧げるものまでいた。
「この村にある「『パルテナの鏡』と呼ばれるもの」を持ち帰るようパルテナ様に言いつけられたんです。返してもらえますね?」
「あ、あれは・・・」
「この地上に、パルテナ様の名のついた偽物がある事に、パルテナ様は酷く悲しまれているんです。どうして偽物を祭ってるんですか?そんなもの、意味がないでしょう?」
「ピットくん。本当はそのために来たの?」
「うん。だから持ち帰らなくちゃ」
二人の言葉に、村人達は驚きながらもやっぱり、という表情で村長を見た。古くから伝わり祭り続けてはいたが、言い伝えを除けば加護を受けたと体験したものは、これまで村の中に一人もいなかったからである。
「村長さん・・・偽物だったの?」
そうと思っていたとはいえ、やはり実際に告げられればショックであった。それはアイリも同じで、祭りの度に家族全員で祈りを捧げていたのである。皆が健康でありますように。皆が魔物に襲われませんようにと。

騒ぎは次第に大きくなり、村中が村長の家で起きている騒ぎに気づくのは時間の問題だった。これ以上の騒ぎにならないよう、村長は広場に村人達を集めるよう指示して、自室に入ってしまった。
「困ったな・・・早く戻らなくちゃいけないのに。こんなに沢山の人間に姿見せるのも予想外だったし」
「え、もう?」
「うん。こんな騒ぎになっちゃって。パルテナ様怒るだろうなぁ」
しょんぼりするピットの姿が可愛らしくて、アイリは思わず笑ってしまった。
「ピットくん可愛い。私と同い年くらいなのにね」
「そう?これでもパルテナ様の親衛隊長なんだけどな」
あまりにも神々しくて、村人はアイリを除けば誰一人ピットに話しかける事が出来なかった。だが遠巻きに聞こえる声に耳を澄ませば、意外にも村人達が好意的に見ているばかりではない事に気がついた。
(どうしたんだろ・・・何か・・・皆ピットくんを怖がってる・・?)
やがて、全ての村人達が広場に集められ、ピットとアイリは村人達の作る輪の中心に置かれた。
(お父さんやお母さんどこかな・・・)
キョロキョロと探したが、両親や弟の姿が見えない。
「ねぇ。どうして皆怖い顔してるのかしら」
「どうしてだろうね?魔物はもういないのに。これでこの村は平和じゃないのかな?まだ何かあるのかな?」
「天使様」
村長が、手に布で大切そうに包んだ鏡を持って二人の前に現れた。
「どうかお許し下さい。女神の名を語り、偽りの神器を祭るなど・・・祖先が始めた事とはいえ、我々の罪には違いないでしょう」
先ほどとは違い、落ち着いた村長の声だった。
「これは女神の鏡ではありません。ですが、ただの鏡でもないのです。これは・・・魔物を呼ぶ鏡なのです」
「なんだって?!」
ピットも知らなかったらしい。驚いた顔で、村長の持つ包みを凝視している。
「これは村長になった者だけが知る村の秘密でした。この村は、魔物から離れる事は決してないのです。されとて、魔物を祭るような事など出来るはずもありません。ですから、何も知らない者達には、これは女神様から授かったパルテナの鏡であると祖先は偽ったのだと思います」
「どうして・・・どうして魔物がいないとダメなの?そのせいで死んだ村の人は沢山いるのに!どうして?!」
アイリには、村長の言葉が理解出来なかった。
「アイリっ」
その時、アイリの名前を呼ぶ鋭い声がした。
「アイリっ。ああ・・・何て事をっ」
「お父さん?!お母さん?!」
「アイリ・・・お前にはちゃんと話しておけば良かったね。そうしたらこんな事には・・・」
「気づかなかったな・・・魔物の匂いがする。そうか・・・この村の人達の中に、魔物がいるんだ」
(え?)
アイリは、ピットの言葉がすぐに理解出来なかった。
「すぐ気づけなかったのは、人間の匂いが強いからだね。もう随分前から同化してるみたいだ。そう、もう何百年も前くらいから」
「ええ、そうです。ここは人間と魔物とその混血が住む村なのです。天使様が倒された魔物は、村人の中でたまに本来の姿に戻ってしまい、そのまま気がおかしくなってしまったものなのです。長く人間と交じり合ったおかげで、魔物の血は随分薄くなりました。けれどたまに、覚醒遺伝で突然目覚めてしまったり、魔物の血の濃い子供が生まれたりするのですよ。そういった者が生まれた家の者には、きちんと真実を話して聞かせてきました。この村の、約十分の一がそうなのです」
知らない村人達にバレそうになると、記憶を消したり、山に捨てられた魔物となった者の餌食にしたりして秘密を護ってきたのだと言う。
「酷い・・」
アイリは涙ぐんだ。
「そうするしかなかった。この村の秘密を王都に知られれば、間違いなく滅ぼされるだろう。魔物人間のように住む村などは」
「アイリ」
アイリの母親がフラフラと近づいてくる。
「貴方は、本当ならもう今日戻らない子だったの・・・目覚めてしまった・・・一月前・・・貴方は弟のソラを・・」
「そうか。だからアイリは僕が見えたのか。君は人間じゃなくて、魔物だから」
異常な空気の中、ピットの声だけが変わらずはっきりと空を裂いて広場に響く。
「どうしてアイリの中の魔物に気づかなかったんだろ。ああ・・・あの鏡は、魔物の気配を誤魔化すのかな?それとも僕が鈍感だからかな?」
何を言われたのか理解出来ないアイリの歯が、ガタガタと震えだす。
先ほどピッドに頼んで退治してもらった魔物たち。その魔物が自分と同じだと言うなら、もし自分とピッドの出会いが少しでも遅ければ、今頃ピッドに退治されていたのはアイリ自身という事になる。
「嘘っ!!」
「嘘じゃないよ。真実は一つさ」
アイリの狂乱めいた声を受けても、ピットは悲しそうに話はしても動揺したりはしない。
(まさか私を、これから殺そうとしてる?!)
それは、本能に近かった。
一瞬間があって、それからアイリの姿は広場から消えた。
「アイリっ!」
『ピット』
その時、闇夜の空から光が射し、女神パルテナの声が村に届いた。
「パルテナ様っ」
『この村の者達は、元は魔物ですが善良な心をもっています。貴方に渡した矢を使って、村人達に眠る邪悪な気配を消し去って下さい』
「はいっ。パルテナ様」
ピットが両手を広げると、その手には輝く弓と矢が現れた。
「アイリ。君をこれで助けてあげる。だから逃げないでっ」
翼をはためかせ、ピットは空へ飛び上がった。アイリの気配を探すと、山へと向かって強い魔物の気配を感じた。ここまで魔物の気配が強いと、もう鏡の力など及ばない。心が暴走して、無意識に押さえていた魔物の気配が体から弾けとんだみたいだった。
ピットを天に向かって矢をつがえた。すると、空の星星の光が、ピットの矢の先に向かって降り注いでいく。
「いっけぇーーーっ」
力いっぱい天に向かって打ち込んだ矢は、数え切れないほどの流星となって村へ、山へ流れ落ちていく。それは魔物の気配を持つ村人達の中へと吸い込まれていき、光を受けた者から黒い影が抜け霧のように霧散していった。
「あっ」
アイリに伸びた光はアイリの胸に吸い込まれて、ひときわ大きな影が霧散して消えていった。すると、暴走していた狂気は治まって、いつものアイリに戻った。
(私・・・どうしてこんな所に?)
いつの間に村から飛び出したのだろう。広場から山道まで来た事を、殆ど覚えていなかった。
「アイリっ」
「ピットくん!」
闇夜に光を撒き散らしながら、仕事を追えたピットが降りてきた。
「もう大丈夫だよ。魔物の気配は消えたから。君たちは普通の人間と変わらないよ」
「ホントに?!」
「うん。パルテナ様の力のおかげでね。あの鏡は、魔物の気を誤魔化すためにあったんだ。でも多分、今頃割れてると思うよ。パルテナ様の光を受けたからね」
そもそも何故魔物と人間が交じり合ったのか、それは遠い昔話のような話が、本当にあったのではないかとアイリは思った。正確には、思いたかったのかもしれない。それ以外の理由は、あまりにも悲しすぎる。
「私が・・・ソラを殺したんだね」
行方不明の弟は、アイリが殺してしまった。茸を取りに山へ入ったと言うのはそう思い込まされていただけで。本当は完全に魔物になる寸前だったから、山に捨てられたのだ。
もう魔物になる事はない。けれど、犯してしまった罪が消える事はない。
「私、帰ってもいいのかな」
「アイリ・・・」
「だって、ソラは帰ってこないもの。私がお父さんとお母さんの傍にいるのは、おかしいよね」
「そんな事ないよ」
力強く、ピットが言った。
「アイリの両親は、アイリの事愛してるよ。だから帰った方がいい。僕ももう帰らなくちゃ」
ピットの翼が光って、フワリと浮き上がる。
「それに・・・もしまた魔物になって、今度はもう戻れなくなったら。僕が君を退治してあげるよ」
「えっ?」
「僕、戦うの大好きなんだ。だから迷わない。殺したくなかったって言いながら殺すのって、良くないと思うし」
「・・・酷い天使様ね。ピットくん」
「そうかな?僕はパルテノ様のために戦うんだ。世界の平和のために。じゃあね」
そう言って、ピットは高く飛び上がり、そのまま光の矢になって飛んでいってしまった。

(行っちゃった・・・)
あっけない別れに、アイリはしばらく動けなかった。だが、そんなものなのかもしれない。名残惜しいと感じる暇すらなかったが、おかげで感傷的にならなくてすむ。
村へと戻る山道を歩きながら、アイリは両親の事を考えた。本当に、自分は戻っていいのかと。
『アイリの両親は、アイリの事愛してるよ』
その言葉が、少しだけアイリに勇気をくれた。

やがて、村が見えてくる。
「あ・・・」
村の入り口からアイリをみつけた両親が駆け寄って来るのが見えて涙が溢れてくる。
アイリは自分をみつけやすいように、腕をあげて笑顔で大きく手を振った。






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Re: スマブラより「ピットくんのお使い」 ( No.1 )
日時: 2015/10/11 23:32
名前: 霊空 (ID: ZBBdYuyf)

初めまして!霊空れいあと申します!
小説を拝見させて頂きました!とても良かったです(*´ー`*)
よろしくお願いします!

Re: スマブラより「ピットくんのお使い」 ( No.2 )
日時: 2016/03/20 17:10
名前: 百合子 (ID: 6hC8ApqV)

すごくいい
ちゃんとしたサイトで書いてほしいな
ブログでも開設して(6年前なのはしってる)


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