二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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一片のはなびら。(短編集)
日時: 2011/03/02 18:49
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=20846

どうもですっ←
短編集に挑戦☆しようと思いまして……←
「薄紅桜ニ誠ノ旗ヲ。」や「狂い咲きの桜と約束」とかの番外編です。
でも、時々違うジャンルとかのが出るかも…?
番外編以外の短編はあまりないので、主人公とかの名前は出ません(ぇ

では、どうぞよろしくお願いします!
(本編はURL参照bb)

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憂欝日和。【薄紅桜ニ誠ノ旗ヲ。/番外】 ( No.1 )
日時: 2011/03/02 19:20
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

———あぁ、本当に憂欝だ。
朝からしとしとしとしと雨が降る。正直、うざい。

「あぁぁああぁー……」

長い長い溜息を吐いたって、誰も気に掛けてくれないしそれどころか無視される。親友であるひかりが笑って「だいじょうぶ?」なんて問いかけてきた。
笑ってるじゃん、というツッコミは無視されてひかはルンルン気分でランドセルに教科書を詰め込んでいる。はあ、と短いが二度目の溜息を吐いて亜美—一応、一人称—はのんびりとランドセルに教科書を詰め込み教師の話などには耳を貸さずただぼうっと過ごす。

それが、何時もの事で日常で。



今はランドセルも学校も何もない、異世界。その生活が嬉しくないと言えば嘘になるが正直に言えば寂しさを覚えている自分が居てふるふるとその考えを振り払うかの如くに首を横に振る。そして小さく溜息を漏らせば、雨の降る外を自分まで濡れていくのも気にせずにただ見つめた。
ずっと見つめていれば、不意に白いものが降ってくる。何じゃこりゃ!!と叫びつつ白いものを確かめればそれの正体は布だった。そして冷たい、というよりは呆れたような言葉が降ってくる。

「君は馬鹿ですか」
「——、山崎さん!!」

嬉しさもあり、あからさまに顔を輝かせてやれば山崎さんは苦笑いを浮かべ、「ちゃんと体を拭いて下さいね」なんてまるで子供に言うみたいに言われた。それが少し悔しくて、むっとしつつ「わかってる!」なんて言えば山崎さんは何も言わず亜美の濡れた頭を白い布でわしゃわしゃと拭いてくる。
それが少し心地よくて思わず頬が緩んでしまった。

「何してるのさ、」

通り掛かったらしき沖田さん—絶対通り掛かったんじゃないよね、計算したよねーが亜美たちを見て面白そうに笑えば、「親と娘みたいだね」なんて悪意はないという風に言ってきた。
それが無性にむかついたが、にこにこと笑ってスルーした。こんな雨の降る憂欝日和も、偶には良い事があるのかもしれない。



( あ、そうそう亜美ちゃん )( ん? )
( 土方さんが怒ってたよ )( え!? )
( (全くこの二人は……!) )

ひとかけらのゆめは、【土方歳三/シリアス】 ( No.2 )
日時: 2011/03/03 20:53
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)

——このまま、貴方と共に消えてゆけるのなら、私は、死んでも構わないと笑う。

「———……」

もう、霞んで見えない貴方の頬を撫で、もう、曖昧にしか聞こえない貴方の声を必死で聞く。
貴方は今誰の名を呼んでいる?私?それとも幹部の人?
貴方が本当に愛したのは私なのか、それは不安でたまらない疑問だけれど私は貴方をずっとずっと信じたいとそう願う。たとえ、この戦争で命が絶たれようとも私はずっと貴方を信じ、貴方を照らせる光となる様に頑張るでしょう。

「——、愛している」

そっと私の耳に唇をあてて甘く甘く囁く貴方の表情は切なげに、——そう見えただけかもしれないが——歪められてて。その言葉は、きっと私を本当に愛してくれているという証拠だと信じ続けたいと私は笑みを浮かべた。そっと口の端の血を拭い、静かに髪を撫でてくれる貴方は何時もの笑みを浮かべているんだと信じている。

「……ずっと、お前の傍に居てやるからよ」
「歳三さ、」
「……離れんな」

ふ、と笑い心配するなとでも言うかのように立ち上がる彼。私は桜の木の下に体を預け、彼等を見守るだけだ。——嗚呼、千鶴ちゃんさえいれば彼等は止められたのか。否、私はちっぽけで弱虫なのだ、永遠に無理だ。

「———……」

桜の花びらが舞い、全てが終焉を告げていく。私はそれを、動けもせずにただ何も言わずに見つめていた。頬を伝う雫を拭う事もしないまま、這いずって彼の下へと近づいていく。

「歳三さん」

小さく彼の名を呼び、そっと額に口付けた。段々と冷たくなっていく体を抱き締めつつ、私はぽろぽろと涙をこぼすだけで。彼を殺した風間千景という鬼も、亡くなって憎むものも何もない。ただ、私は彼を抱き締めたまま小さく嗚咽を漏らした。

「——っく、ぁあッ、……」

泣いても泣いても、貴方は戻ってこないのだと私はわかっていた。
それでも、私は———貴方だけを、想ってる。



( ひとかけらのゆめは、 )( 切なさを残して散ってゆく )

桜ノ夢【薄紅桜ニ誠ノ旗ヲ。/番外】 ( No.3 )
日時: 2011/03/11 18:52
名前: ハノ (ID: Gz/gGLCR)


————彼等と過ごした日々は、夢だったのかもしれない。
それでもあたしは、彼等を忘れる事が無いんだと思う。
其れほどまでに、彼等は、大切な存在だったから。


「亜美ぃー……」

そっと、斜め前の席の親友の名を呼ぶ。親友は振り返って、浮かない表情でどうしたの、と尋ねてきた。
あの日、薄桜鬼の世界に行けたのに、あたし達は帰ってきてしまった。此処では事故に遭ったが奇跡的に軽い怪我で済んだ、という設定らしい。
此方の世界で目覚めたその時から、あたし達は明るさを無くした。少なくとも、亜美は無くしている。

「……もう、会えないのかな」

ぼそりと亜美が呟いた。その言葉に、思わず反応してしまう。伏せられた黒い瞳からは、今にも涙が零れ落ちそうな気がした。泣きたくなる気持ちはわかった。それでも、あたし達は一度も泣かなかった。泣かないと約束したんだ。あの日、あの時、彼等とそう、約束した。

「どうしたんですか、夜月さん、空音さん」
「……何にもありません」

担任の言葉にそう返す。後ろを向くな、とでも言いたいのだろうか。
先生は良いよね、苦労も何も、ましてや悲しい今生の別れもない。
それが憎たらしくて羨ましくて、——狡いと思った。

「せ、んせ……具合悪いし、ひかと保健室行きます」
「……顔色が悪そうだし、行って来られ」

先生に許可を貰い、あたし達は廊下を歩き出す。そして、保健室に辿り着けば保健の先生に許可を貰わずにベッドへと倒れこんだ。



———

「ひかりちゃん、起きて!」
「ん、……千鶴ちゃん?」
「うん、そうだよ!ほら、皆行っちゃう……見送ろう、?」

私は布団から飛び起きて、千鶴ちゃんと共に彼等の元へ向かう。
亜美は既に居て、「遅いよ」と笑っていた。

「——行ってらっしゃい!」

そう、三人で笑って言えば——……

「何言ってんだ、ひかり、千鶴、亜美」

土方さんの声が聞こえて首を傾げる。

「遅れるぜ、早く来いよ!」
「そうだぜ。ま、遅れても構わねえんだけどな」

平助君の言葉に左之さんが頷く。
千鶴も亜美も、——あたしも嬉しそうな笑みが浮かぶ。

「遅刻は厳禁だぞ、左之」
「一君の言うとおり。遅刻したら斬っちゃうかもよ?」

左之さんの言葉に斎藤さんが言う。
沖田さんは面白そうに笑って、冗談を言っているだけだ。

「ま、細かい事は気にすんなって!」
「……まぁ、久々に遅刻というのも良いものだ!」
「おやおや……皆さん、遅れる気満々ですか…」

上から、新八っつぁん、近藤さん、山南さん。

「来いよ、千鶴」
「早く来い、ひかり」
「ほら、早くしねえと怒られるぜ?亜美」

千鶴ちゃんは土方さんの言葉に、亜美は左之さんの言葉に、あたしは、斎藤さんの言葉に頷き駆け出す。

『行ってきます!』

行ってらっしゃい、じゃなくて、行ってきます。
彼等と共に駆けていける事が嬉しかった。

———


「——ん、」

ぱちっと目を覚ます。何時の間にかあたしの頬には涙が伝い、隣の亜美が必死で目を擦っているのが視界に入る。
保健室の先生はもう既に居ない。給食の時間らしく、“各自教室で給食を食べてください”というメモがひらりと残っている。
開け放たれた窓から入ってくる、桜の香り。もう既に四月だったか。

「……ひか、皆の夢、見たよ」
「あたしも」

偶然だった。
まさか亜美も見ているなんて。

「皆と、駆けて行けた」
「あたしも」

亜美の言葉にますます涙が溢れてくる。
亜美も既に、涙声だ。

「——逢いたい、よ」
「っあたしも、…!!」

こんなにも願ってるのに、こんなにも追いかけているのに———…彼等には追いつけない。
違う世界という障害。それだけは乗り越えられないのだろう。



まるで、桜のような日々。それが、彼等と過ごした時間。



( また逢えますか、大事な仲間 )
              ( 追いつけますか、大事な仲間 )

( 桜のような日々が、今もずっと記憶から離れません )
                        ( お願い、皆に、逢わせてよ )


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