二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク-
- 日時: 2012/08/09 21:43
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
この物語は、
銀魂の世界で起こった奇妙なコラボ作品であり、
温かくて冷たい——駄作である。
と、言う訳で意味深長な言葉から始まりましたが!!
お久しぶりです。ここで書くのは5カ月ぶりです、山下愁です!!
皆様、覚えていらっしゃいますでしょうか。炎神暴君★リシタニアを!!
そうですそうです。山下愁による突拍子もないあの駄作です。しかも銀魂と戦国BASARAのコラボと言う異様な小説です。
なんと、そのコラボ作品がついに新しく変わって参上します!!
新たに加わるのは。
オリジナル×銀魂×戦国BASARA×青のエクソシスト(NEW)です。
お分かりいただけるだろうか。あの神作とコラボです!!
と言う訳で、早速注意。
その1……山下愁の超駄作。原作を汚しまくってます。原作を汚すなと言う方は、即バックをお願いします。
その2……原作のキャラ、完全に崩壊します。
その3……ストーリーも破たんします。ゴメンなさい。
その4……オリジナルキャラが出現します。というか主人公はオリジナルです。
その5……新たに加わる可能性高いです。
その6……亀更新です。兼用してます。
以上です!!
では、あなたの心に残るような小説を書ける事を願って。
お客様(Thank You)
柚莉様
目次
序章『なんやかんやで再スタート!!』
>>03 >>04 >>05
第1章『最初が肝心とか言うけど大体踏み外す』
>>6 >>11 >>12 >>13 >>14
第2章『レズとか剣とか男の娘とか』(柳生編スタート!!)
>>15 >>16 >>17 >>20 >>21 >>22 >>23
第3章『幽霊は本当には出ないから安心して』(スタンド編スタート!)
>>24 >>25 >>28 >>29 >>32 >>33 >>34 >>35
第4章『こたつの魔術は偉大である』(あの面倒くさがりになってしまうコタツ編)
>>36 >>37 >>38
第5章『一夜の夢は遊女の町にて開かれる』(吉原炎上編スタート!)
- Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.42 )
- 日時: 2012/09/06 22:31
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第5章 一夜の夢は遊女の町にて開かれる
「ふぁ……」
優奈は大きな欠伸をした。
ここは吉原桃源郷。朝が一生来ない常世の町。女の国。
そんな女の国であるはずの吉原に、どうして最強戦闘傭兵部族・夜叉である篠宮優奈がここに来ているのか。
「……私も協力しないといけませんかぁ?」
金砂族(キンシャゾク)であるミウ・メイガスは小首を傾げた。
隣で再び大きな欠伸をする優奈は、目の前にいる連中に声をかけた。
「で? どうしてアタシも呼んだんだい? 何か理由があるんだろう?」
目の前にいるのは、万事屋銀ちゃんのメンツである。言わずもがな翔達だ。
晴太という子供をさらわれてしまったので、晴太を助ける事にした一行はその作戦会議をしていた。
「そりゃそうだ。夜兎よりも強い夜叉族の最後の生き残りに協力してもらおうかと」
「ここ、植物さんがないから嫌いです」
ミウが唇を尖らせて、早く帰りたいアピール。それを翔がチョップをして黙らせた。
「相手は夜兎が4人も。……軍隊1つあっても足りぬぞ」
そんな時、月詠が口を挟んできた。
夜叉族に劣るとはいえ、相手も戦闘民族。戦う事を好み、戦場を求める血の部族。
そして問題なのが、神楽の兄である神威が本物の夜兎を体現しているかのような奴である事。
「俺なら問題はない。体を一瞬でミンチにされなければ、どんな重傷を負っていても必ず生き返る。だけど、テメェらはそうはいかないだろ?」
と、目を向けたのは戦国武将どもとエクソシスト諸君だった。
彼らは人間————政宗達は戦争を経験しているが、エクソシストになると話は別だ。ここは魔界でもないし、悪魔もいない。戦う心得はあるだろうが、今はそれが無駄になってくる。
「政宗達は数人相手でも戦を経験しているからこそ、人間を相手どれる。しかし燐、雪男達。ここには悪魔がいない。エクソシストに人を殺せる覚悟があるか?」
完全なる問いかけだった。
お前らに、人を殺せる覚悟があるか————答えにためらう質問である。
「それで、誰もが救えんのか?」
その問いに答えたのは、燐だった。
翔はにやりと笑うと、
「できるさ。俺が保証してやる」
自信満々に言い放った。
その事を聞いたエクソシスト諸君、声をそろえて「やってやる!」と言った。その目は意志あるものになっていた。
翔は月詠の方を振り返り、
「こう言っているんで、まぁ本気って事さ」
へにゃりと笑う翔。
月詠は仕方がないとでも言うかのようにため息をつくと、「わっちも共に行こう」と言った。
***** ***** *****
「アブトさーん。これって一体なんでしょうねぇ?」
カクリと首を傾げる銀色の髪の少年。その手にはどこにも汚れが見当たらない鎌が握られていた。
くすんだ目をした夜兎——アブトと先ほど呼ばれていた男は、「あーん?」と言って足元を見やる。
そこにいたのは、殺された夜兎の1人だった。春雨第7師団団長の神威が殺した同族である。
「……生き返らせた方がいいの?」
「いいや。それはお前さんらの掟に反するんじゃあないのかい? どうなんだ」
「確かにね。やっちゃうと何をされるか分からないよ——あの死神にも」
少年はにっこりと笑う。
先ほど、神威と鳳仙の話を聞いていた。あの少年の話も入っていた。
待ち望んだ。この時をどんなに待ち望んだか。あぁ、あの少年に会いたい。今すぐ。飛びついて愛の言葉をささやいて——殺してしまいたい。
「俺は死神だ。だからこそ、人を同族を愛する事は殺してナンボ。戦場はまさに、絶好の愛の囁き場所だよ」
「ずいぶんと酔狂な考え方だ」
アブトの方も腕を持って行かれたらしく、肩腕がなくなっている。血がしとどにあふれ出ている。
少年は哄笑を鉄の空に響かせて、
「早く会いたいなぁ! 炎の死神!」
——月の死神、ルアはそう言った。
***** ***** *****
一方の城の門では。
「主らはここの守りを引き続き頼むぞ」
月詠が門を守っていた部下に命令をしていた。
そのあとに引き続き、4人の女が月詠のあとをついて行く。
「頭。誰ですか、こいつら」
「……新入りじゃ」
苦々しげな表情で、月詠が言う。表情を言葉で表すならば、「やっぱりか」。
4人のうち3人ははちきれんばかりの爆乳を携えていた。優奈もびっくりの。
「……無理があるだろ」
最後の1人である案外美少女である、漆黒の女は顔をうつむかせてつぶやいた。これはさすがに無理があったと思う。
「誰ですかこいつら!」
「パー子です」
「パチ江です」
「グラ子です☆」
「「「3人合わせてはちきれピーチ3太夫です」」」
「おr——違う、私は翔子です」
完璧な笑顔で翔子と名乗った黒髪美少女は言う。
まぁそれでも通してくれないのは当たり前である。月詠が何とか説得してここを通させてもらう事にした。
ゆっくりと門が閉まって行く中で、門番をしていた部下がこう言う。
「行ってらっしゃいませ————死出の旅路へ」
口元を隠しているから、表情は見えなかった。
瞬間、四方八方から苦無が飛んでくる。
- Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.43 )
- 日時: 2012/09/13 22:45
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第5章 一夜の夢は遊女の町にて開かれる
こうなるだろうとは思っていたが。
翔は飛んでくる無数の苦無をぼんやりと眺めながら、胸中で思う。こうも怪しい人間を簡単に通してくれるとは思わなかった。いくら上司の命令でもそんな言う事は聞けないだろう。迷わず斬られている。
そんなだと言うのに、彼女達は入れてくれた。裏があるに決まっている。
「……ま、俺にとってはどうって事はないんですけど」
翔は炎神を一瞬で引き抜くと、地獄の業火で壁を作った。
「地獄業火——守護円舞(シュゴエンブ)」
壁に触れた苦無は、瞬きの間で蒸発する。鉄をも溶かす地獄の業火だ。
だが、炎の壁が消えた時には、すでにもう翔達は囲まれていた。
「うぉい。どうしてこうなった」
翔は両手を上げてホールドした。
「今までの猿芝居は全部お見通しって訳か」
銀時が自嘲気味に笑った。そして木刀を抜き、にやりと笑った。
まぁ、その頭には苦無が刺さっていたのだが。
翔はそれを見て、銀時に向けて静かに炎神を構えた。完全に仕事モードへ移行し、表情という表情を顔から消し去る。
「おいおいおい? どうして俺に炎神を向けるんだよ。向けるならそっちだろ、そっち!」
「いや、銀時。テメェはあれか、痛覚が鈍いのか。安心しろ——来世はまともな人間に生まれるはずだ」
「おいぃぃぃぃ?! 何来世の話をしちゃってんだよ、これはあれだよ? 演出だよ? 何を言っちゃってんのかなぁ!!」
翔をガクガクと揺さぶりながら、頭に苦無が刺さっていた事は完全に否定する銀時。しかし、血が流れているのでごまかしは効かない。
そこへ、横から神楽が口を挟んできた。
「おいおい、決める時はバシッと決めろよなぁ」
その額からは血が流れ、背中には苦無が隠されていた。
思い切りため息をつく新八と翔。
「こいつらさ、本当に黄泉へ送った方がいいのか?」
「いや、どうでしょうね……」
「ぬしら、好き勝手動いてもらっては困る。そんな調子じゃ、夜王に100年かかっても倒せんぞ」
そういう月詠も、背中に複数の苦無が刺さっていた。ぽたぽたと下に血が垂れている。
もうため息も何も出なかった。放っておこう。もう、彼らの気持ちをくみ取ってやろう。
「そんなんじゃ先が思いやられる…………?!」
翔はバッと上を向いた。
何かが上にいる。とてつもなく強大な力を持った何か。夜兎でもこんな気配はしない。
まさか、この先に死神がいるとでも————?
「……この力」
それと同時に、百華の奴らが武器を一斉に構えて襲い掛かってきた。
銀時は思わず口笛を吹き、
「やっぱりいいねぇ。遊女総出でお出迎えとか、男冥利に尽きる——だが、貧乳ばかりもちと飽きるもんだ」
それ雫の前で言っていたら殺されているぞ——とは言わなかった翔。
銀時は着物の襟首を持ち、上半身だけ脱いだ。同じように新八、神楽も。
彼らの胸に取りつけられていたのは——巨大な爆弾だった。
「女はやはり、爆乳でござんしょ」
月詠がくわえていたキセルで、銀時が持っていた爆弾に火をつける。ジジジ、とゆっくりと導線が縮んで行く。
翔は今後起きるであろう事を思いながら、静かに合掌をした。
どうか、次に生まれてくる時は平和でありますように。
「さぁ、楽しいパーチーの始まりだ」
銀時はにやりと笑った。
一方、空華と優奈、ミウや武将達、エクソシスト諸君らは裏口から侵入していた。もちろんそこら辺を警備していた百華の者は空華の手によって気絶させられる。空華も曲がりなりにも忍者ですからね。
「しっかしまぁ……何もないね。夜王・鳳仙の屋敷だって言うからもっと豪華かと思ったんだけど案外普通の和風の屋敷じゃん——縦に長いだけの」
空華は上へ視線を向け、天守閣を見やった。
鉄でできたはずの天井がやけに高い。本当に青い空を見ているような感じであった。しかし、薄暗くぼんやりしているので常世の町——という表現も頷ける。
「思うのであるが、吉原桃源郷とは一体どういうところなのでござるか?」
幸村が至極もっともな質問を——っていうか17歳だからまだ知らないかそんなの。
空華は「んー?」と、幸村の方へ振り返り、
「女の人と男の人が『ピ——————』で『バキューン』をするところだよ」
放送禁止用語を使ってどうする。
それを聞いた幸村、顔を真っ赤にして叫んだ。
「は、は、破廉恥でござる!」
「何が破廉恥だか。男はな、股間にバズーカを搭載して生まれて来た時から性の生き物なんだよ! こんなところで破廉恥破廉恥言っている君はあれか! ゲイか! 男しか愛せないのか!!」
「某は武士——そのような破廉恥極まりない場所は好かぬ!」
純情のくせによく言うわー、と睨まれた。話を戻そう。
空華はフンと鼻を鳴らすと、
「こいつらを見てみろ、こんなところに着ているのにもかかわらず飄々としているぞ? お前がそんなんでどうするんだよ。晴太を救えんのか? これも立派な人助けだと思って我慢しろ、女の国を突っ切るぐらい」
「む、むぅ……やはりそうなのか。そのようなものなのか……人を助ける為、人を助ける為……」
ぶつぶつと自分に暗示をかけ始める幸村。頭を抱えてうずくまり始めた。
その時だ。
「あは。こんなところに人がいる」
楽しそうな声が降ってきた。それと同時に、殺気。
空華は苦無を構えて、声の方を睨みつけた。そして目を見開く。
そこに立っていたのは、銀色の髪の少年だった。優奈のように透き通るような銀色、ではなくて、もっと白い——白金のような色だった。まるで夜空にぽっかりと浮かぶ月だ。
「ねぇ、君ら。東翔って奴、知ってるよね?」
「……テメェは何者だ」
政宗が低い声で、少年へと問いかけた。
少年はにっこりと笑ったまま、
「質問になってないよ? 僕は面倒くさいのが大嫌いだから——ね?」
手に出現したのは、汚れも何もない白い鎌。
嫌な予感がした。
空華は引きつった表情を浮かべ、叫ぶ。
「逃げろ! 月の死神だ!!」
***** ***** *****
翔は走っていた。時折やってくる百華の奴らを叩きのめしては、ひたすらに廊下を走っていた。
殺気がする方へする方へ、徐々に近づいて行っている。このままいけば、殺気の正体が分かる。
「こ、こか!」
バンッ! と襖を開けた先には——
「「「「「ぎゃぁぁぁああ——!!」」」」」
何故か逃げ惑っている空華達がいた。
翔は唖然とした。違う意味で。
「何してんだ、お前ら」
呆れた様子で言う翔。
空華は半泣きの状態で、翔へとすがった。
「たっけて! 太刀打ちできないよ、だって死神だよ?!」
「ハァ? 何をい——」
向かいの襖が吹っ飛ばされた。
武将達&エクソシスト諸君が悲鳴を上げる。
「あは、見つけたぁ」
翔は眼を見開いた。
そこに立っていたのは、銀色の少年。見覚えのある、銀色。
「ルア……ッ!」
「やっほー、翔。お久しぶり」
ルアはにっこりと笑って見せた。
- Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.44 )
- 日時: 2012/09/20 22:57
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第5章 一夜の夢は遊女の町にて開かれる
見覚えのある銀色の髪の毛。確かにあれは、月の死神の特徴である。
月の死神、ルア。
翔と同じような攻撃専門の死神であり、幻術を操るのを得意とする死神である。
「……どうしてここに」
「脱獄してきた。あっはー、覚えてないんだっけ? 何にも。自分がこの世界に何をしに来たのかも」
白い鎌を肩に担ぎながら、ルアは笑う。
「僕らは死神だよ? 人を殺し、部族を殺し、老若男女誰であろうと殺す。生きとし生ける者はみな殺す。そういう神様なの、僕らは。それが何? ただの人間を『主』だの何だの勘違いしちゃって。逆に従えるべきなのはあっちの銀髪天パの方でしょ?」
「違う、銀時はそんな奴じゃない! 俺を利用し、世界を滅ぼそうと考えたあいつよりか——!」
「へぇ。それを君が言うんだ?」
ゾクリと、翔の背中に何かが這い上がった。
そして始めて思った。相手に対して、恐怖心を抱いていると。口がからからに乾き、心臓が走った後のような鼓動を打つ。
何だ。何だ? 何かを忘れている。目的? そんなの知るか。ここにいるだけで幸せである。
違う。もっと他の何か。こいつの、月の死神に対する思い————
「——ッ、うぁ」
頭を押さえて、翔はうずくまってしまった。
どうしようもできない。体の奥底からじわじわと上ってくる恐怖心のせいで、思うように反応できない。握っていた炎神を取り落とし、がくりと膝をつく。
「翔! おい、一体どうしたんだよ!」
佐助が翔を抱き起こすが、固く目をつむって現実から逃れるべく耳をふさいでいる。
翔がこんな状態では、彼に勝つ事は叶わないだろう。それどころか、皆殺しに決まっている。死神に敵うすべなどないのだから。
「……どうすれば、いいんだよ?!」
「あーうん。ここはその、俺に任せるとかそういう風でいいんじゃない?」
え? と首を傾げた。
ここにいるはずのメンツで、そんな勇気あるような奴はいない。いや、いるにはいるが死神の恐ろしさを分かっているので口出しはしないのだ。
後ろを振り返ると、そこにいたのはへらりと笑っている昴と春夜、そして希実の3人だった。真選組1番隊隊員メンツである。
「……昴、どうして」
「どうしてって、そりゃお前らが吉原に行くところを見たからね。今ちょっとヤバい状況じゃない? 俺がここはいったん引き受けるから、希実ちゃんは翔のケアをよろしくね。春夜は俺の補助をよろしく」
「了解しました、副隊長」「分かってらぁ」
2人は了解を返すと、希実は佐助の腕から翔をさらい、春夜は昴の後ろへついてバリアを張る。
希実は治癒が得意であり、春夜はバリアを張るのが得意である。そして昴は、最速とも言われている闇の踊り子である。
「で、お前か。翔をあんなにしたのは。一体どうやったら俺様少女容姿死神な翔をあんなまでにできるのかね?」
「さぁね? 向こうが怖がったんだよ。僕は悪くない」
「みんな誰でも『俺悪くないから別にいいか』で済ますからね」
昴は足につけたアンクレットへと手をかざした。緑色の炎がともり、腰を低く落とす。
その姿を見たルアは、その黒い瞳を見開いた。まるでまさか、とでも言うかのように。
「……闇の踊り子。災厄を招き、神の闇の部分を一手に引き受けた巫女の末裔か」
「よく知らないけど、よほど俺ってすごい者らしいわ。だって翔が『定期的に俺のところへ来い』って言うぐらいだもん。ま、その原因は分かってるよ」
今まで非番の時や休憩の時は、大体昴は万事屋にいる事が多かった。しかし、ここ最近では忙しかったのか出番がなかったのか、いる事は少なかった。
「神の闇を一手に引き受けるぐらいだ。闇って言うのは人の負の感情——特に翔は溜め込みやすい体質だからね、恐怖感とか絶望感とかその他もろもろ色々吸い取る訳だね。だからいつも、翔は凛と振る舞い、堂々としていた。本当は怖がりなんだよ」
人に利用されそうになり、坂田銀時のおかげて翔は人間不信を克服した。しかし、それでも恐怖心は残る。全てに対する恐怖心は彼の心に根強く残った。
そんな中、翔を堂々とした死神にしたのは昴だった。心に残った全ての負の感情を根こそぎ吸い取り、中和した。
だから、翔は昴に『定期的に俺の元へ来い』と命令した。
だから、昴は翔へ『いいけど。だったら俺の話し相手になってくれるよね?』という約束をした。
「……俺から話し相手を、友達を奪わないでよ」
わずかにその声が低くなる。
反閇技を発動させ、昴は激昂した。
「俺から——何も奪わないでよ!!」
***** ***** *****
一方の新八、神楽の方は。銀時と別れ、いつの間にか翔はいなくなっていた。
まぁどこかで合流できるだろうと思った矢先、彼らの前に現れたのは晴太をさらって行ったあの夜兎の男だった。
「おんやまぁ、哀れだね。俺にあった時点で君らは外れだ」
飄々とした口調で言うが、その声には殺意が込められている。
新八はヒッと喉を鳴らしたが、隣にいた神楽は逆に問いかける。
「あの馬鹿兄貴はどこに行ったアルか」
「馬鹿兄貴——? もしかして、団長の? おんやまぁ、まさかの身内とはね……でも、それでも容赦しないつもりだけどねぇ?」
にやりと、男は不敵に笑った。
神楽は番傘を構えると、男へと飛びかかる。女らしかぬ怒号みたいなものを上げるが、今はそんな事に構っている暇などない。
しかし、女と男。大人と子供の力の差は大きい。簡単に受け止められてしまった。
「ふんごごご!!」
下から切りあげるが如く振り上げられた番傘を足で押さえる男。そして神楽の顔面めがけて、そのつま先を振り上げた。
もろに顎へと入った。天井へ叩きつけられそうになる神楽だが、天井に手をついてハンマーの如く足を振り下ろす。
男は神楽の足を掴んで、窓の方へ放り捨てた。
「神楽ちゃんんんん!!」
新八の声が響き渡る。
神楽はゆっくりと立ち上がると、ペッと唾を吐いた。そしてにやりと笑う。男の耳からは血が流れていたからだ。
「あらら。やるねぇ。さすが夜兎——同族だよ。兄貴と似ている」
「うるさいネ」
「何なら兄弟喧嘩の仲裁役になってやろうか?」
「私の邪魔をするなら、同族だろうが家族だろうが関係ないアル!!」
拳を握って、神楽は男へ特攻して行く。そして男の顔面を殴りつけた。
だが、男は吹っ飛ばなかった。神楽の拳がめり込んでいるのにもかかわらず、男はその場で踏ん張っていた。
「さて、クイズだ。戦う拳と殺す拳——威力はどっちが強いと思う?」
呆気に取られている神楽に、答えを許さないかのように攻撃を叩き込もうとする男。
選択肢にはなかった蹴りで神楽を殺そうとし————
「んー、殺す——投げ?」
と、そこへ素っ頓狂な声が割り込み、銀色のフープが男の足へと直撃した。
バキィという音を響かせて、バウンドさせて投げられた方向へ戻って行くフープ。
「やっほ、新八と神楽ちゃん。元気してるかい?」
倒れた襖の向こうにいたのは、
「シノさん! ミウさん!」
宇宙最強を誇る絶滅戦闘部族、夜叉族の最後の生き残り——篠宮優奈とミウ・メイガスの姿だった。
- Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.45 )
- 日時: 2012/09/27 23:29
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第5章 一夜の夢は遊女の町にて開かれる
戦闘傭兵民族、夜叉。夜兎よりも、その他の先頭民族よりよりも遥か上を行く『最強』の存在。
戦場に君臨するその姿、まるで鬼神。美しく舞うその姿、まるで姫。
極寒の星で育った彼女達は、いつしか『最強』の名前をほしいままにしていた。
「————別名、雪蟷螂かい」
男は苦笑をその顔に浮かべた。
優奈はへらりと笑うと、鉄製のフープを肩に担いだ。
「その名前で呼ばれるのは懐かしいね。戦場に君臨するその姿、さながら鬼神。美しく舞うその姿、まさしく姫。いつしか人々はこう呼ぶようになった」
極寒の地で育った彼女達。フープを得物にして戦う。
それはまるで、対象を確実に倒す為に掲げられた鎌のようで。
だからこそ、彼女達はこう呼ばれるようになった。——雪蟷螂(ユキカマキリ)と。
「まぁ、そんなのは昔の話さね。夜叉族は、今では絶滅部族。アタシはその最後の生き残りって言っても過言じゃないね」
「そうかい。そんな奴とお目にかかれて幸せだね、俺ぁ」
「うん。できればアタシも夜兎を相手してみたかったんだけど……残念だよ。それはどうやら敵わないらしい」
優奈は力なく首を横に振った。やれやれ、とでも言うかのような様子だった。
「君の後ろ、見てみなよ?」
男は後ろを振り向いた。
そこに立っていたのは、神楽である。体中に傷を作り、だけど今から始まる戦いに対して満面の笑みを浮かべていた。
ただし、その笑顔は、果実を引き裂いたかのような怖いものだったが。
「君の上司の妹さんなんだっけ? 神楽ちゃん。だったらどうなるかな?」
楽しそうに、心の底から傍観者としているかのように、優奈は言った。
「アンタ、死なないといいねぇ」
***** ***** *****
一方その頃、翔達のメンバーはと言うと。
恐怖から何とか立ち直った翔は、ぼんやりと目を開く。まだ体が震えているが、だいぶましになってきたのではないかと思う。
(……月の死神に、対する恐怖心)
分からない。何故、自分はそんなものを抱いているのだ?
いや、今まで昴に根こそぎその『恐怖心』を吸い取ってもらっていたのだから、怖いものがないのは当たり前である。さすがに船に対する怖い思いは取り除けなかったが。
記憶がない事が恨めしく思った。
そもそも、どうして自分は記憶がないんだっけ? この世界に何しに来たっけ?
「……目覚めましたか?」
「……希実か。悪いな」
上半身を起こし、翔は申し訳なさそうに希実へと言う。
あれ? どうしてここに?
「安心してください。これは副隊長の命令ですから」
「副隊長——まさか、昴が?」
「そのまさかだ」
希実の代わりに答えたのは、孫市だった。腕を組みながら、顎を上の方へやる。
ふと上を見上げると、天井にぽっかりと穴が開いていた。その上空で、白と黒の人物が壮絶な戦いを繰り広げている。
白い人物の方は、言わずもがな月の死神のルアである。
そして黒い人物は、真選組の1番隊副隊長、椎名昴だった。
「……どして、何で!」
「何でって言われてもね……。勝ち目がないかと思ったら、昴がいきなりこの戦いを引きうけたんだよ」
佐助に説明してもらっても、訳が分からなかった。
どうして昴は、命の危機まで冒して自分を守ろうとしているのだ? そもそも死神に真っ向から立ち向かって勝てると思っているのだろうか。
「——クッソ!」
翔は舌打ちをして、近くに乱暴に転がっていた炎神へと手を伸ばす。そして2人の間に特攻しようと鎌を掲げ——
「どこへ行くんですかィ?」
ストップがかかるように、声がかけられた。
風月春夜。昴の部下である1番隊の隊員。
「……怖くてびくびく震えていた炎の死神さんが、副隊長の喧嘩を邪魔してもらっちゃ困るんですけど?」
「何、言ってんだよ。死神に正面から立ち向かって、勝てると思っているのか?!」
「思っちゃいませんが、それが?」
きょとんとした様子で答えた春夜。
翔は春夜の胸倉を掴んだ。鶴姫としえみが悲鳴を上げた。
「テメェ……それで、いいと思ってんのかよ! 上司だぞ!」
「それが副隊長の意思だからでィ。意思をくみ取ってやらな、部下どころか男じゃねぇや」
翔の腕を振り払い、春夜は続けた。
「で、あんたはそれでも行くって言うんですかぃ? 行ってどうする? 副隊長を助けるんですかい」
「……俺は、」
嫌だ。
失いたくない。
でも、この恐怖心はどうにもなりはしない。
どうにもできないのが現状である。翔は、ただその場で力なく、うつむくしかできなかった。
その時、
爆発じみた音が、吉原中に響き渡った。
ハッとした面持ちで顔を上げると、昴が地面に叩きつけられている。馬乗りになって楽しそうに笑いながら、昴の首へと白い鎌を押しつけているルアの姿が次いで入る。
「副隊長ッ!」「昴!」
春夜、希実、戦国武将ども、エクソシスト諸君が昴へと駆けよろうとした。
が、彼らの中で1番早く昴へと近づいたのが、翔だった。
「地獄業火!!」
炎神を構えて、ルアへと刃を向ける。少しでも傷つけない為の配慮か、それともただ向けるのを忘れただけか。柄の方が向けられていた。
刃に赤い炎がともる。
軌跡を描いて、刃がルアへと牙をむいた。
「獄炎乱舞!!」
「っとぉ!!」
翔の不意打ちにルアは慌てて昴の上からどき、宙返りをしてから翔と距離を取った。
「あらら? どうしたの。復活早いね」
「……黙れ」
自然と、翔の声は低くなっていた。
恐怖心で指先が震える。だけど、だけど。このまま怖くて倒れたら、昴はどうなる? このバリアの向こうにいる奴らはどうなる?
簡単だ。皆殺しにされるだけだ。
「……しょ、ちゃん。怖くなく、なったの?」
「……しゃべるな。希実に回復してもらえ……。頼むから、俺にテメェを判決させるような事をさせないでくれ……」
つまり、死なないでくれ。
弱弱しく発された翔の声を聞いた昴は、地面に埋まりながらも翔へと手を伸ばした。小刻みに震えていた足へと、優しく触れる。
昴は、へらりといつものように笑った。
「俺は大丈夫。いっつもあのマヨラー副長にしごかれているんだよ……? それなら、翔が目の前から消えちゃうのがよほど辛い、かも」
「あはは、何なに? 愛の告白ですか。うわー、寒いわ。別館行ってくれませんかそんなの」
ルアが冷やかすように言う。
翔はそんなルアへ向けて、再び獄炎乱舞を放った。割と本気で。
間一髪で炎の刃をよけたルアは、翔を睨みつけた。
「何する訳?」
「何も。殺されたくなければ、大人しくしっぽまいて帰るんだな」
にやりと、翔は不敵に笑った。
その笑顔には、その雰囲気には、いつもの俺様少女容姿死神があった。
- Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.46 )
- 日時: 2012/10/04 22:43
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第5章 一夜の夢は遊女の町にて開かれる
うーん、と優奈は唸った。目の前の戦場を見て、唸らずにはいられなかった。
神楽と男が戦っている。まぁそれだけならいいのだが、神楽が夜兎の血に覚醒してしまった為、男の方が劣勢となっている。
変わらずに、神楽は笑顔のまま戦っていた。怖いぐらいの笑顔。果実を押しつぶし、ぐちゃぐちゃにしたかのような愉悦の表情。全身ボロボロで、しかも男が槍を刺してきた際に手のひらで受け止めてしまったから両手は血だらけである。
「……ミウ」
「どうしましょうか、これ。そよ風さんを呼んできますね」
「いや、呼んでこなくていい」
現実逃避をしようとしていたミウを引き戻す優奈。まったくどこへ行こうと言うのだ、この子は。
ミウはじたばたと暴れていたが、やがて観念したように大人しくなった。
「神楽さんは大丈夫ですよ。きっと……大丈夫です」
「そうかね。だってあの暴れようだし……あの男の人が死んじゃったら、仕事が回ってくるのは翔だよ? アタシは怒られたくないな」
「どうして怒られなきゃいけないんですか?」
「『テメェは夜叉族だろ、どうして神楽を止めなかった。おかげで俺に仕事が回ってきたじゃねぇかこの野郎』的な感じで」
口調まで完全に再現して、優奈はため息をついた。
そろそろ本気で止めないとやばいかもしれない。男はついに瓦屋根に埋められ、傍に神楽が立っている。足を大きく振り上げ、笑顔のまま、それを振り下ろそうと————
「止めろ! 神楽ちゃん!!」
したところを、新八が止めた。
これには驚いた。何より、新八は神楽にも劣る——人間である。侍ではあるが、神楽よりも弱いはずの人間である。
「神楽ちゃんは、そんな事をしない! 大飯ぐらいで、ぶっきらぼうで、生意気だけど! とっても優しい女の子なんだ!」
だが、瓦屋根の方が重さに耐えられなくなったらしい。ビシビシと亀裂が走る。
その時、優奈が動いた。床を踏みぬかんばかりの脚力で走り、新八と神楽を引っ張る。そして男も引き上げようとしたが、哀れ空を切った。
男は笑っていた。
深い闇に落ちて行く際に、細い声で優奈へ、新八へ、神楽へ問う。
「……さぁて、ここで第2問さ。夜王鳳仙を殺さずに鳳仙に殺されるか。鳳仙を殺そうとして鳳仙に殺されるか、どっちか選べ——なぁに、たかがクイズだ。簡単だろ?」
深く深く落ちて行く。地面に叩きつけられる音は、聞こえなかった。
優奈は舌打ちをして、フープを肩にかける。
その際に、すすり泣きを聞いた。
「私、悔しいアル」
神楽が泣いている。夜兎の血に負けたゆえに、暴走してしまったから。その悔しさで泣いているのだろう。
「……神楽ちゃんはそれでいーよ。自分の強さは自分でしか分からない。だけど……だけどね」
神楽の体を引き寄せて、優奈は抱きしめた。ポンポンと子供をあやすように、背中を叩いてやる。
優奈から見れみれば、神楽はまだ子供のようである。妹のような存在だ。
「……アタシが、神楽ちゃんの修行にでも何でも付き合ってあげるからさ。いつでも公園においで?」
赤い髪をぐしゃぐしゃと掻きまわしてから、優奈は気づいた。
そーいや、神楽の腕って血だらけだったよな?
「……神楽ちゃん。まずは手当てをしようか。問答無用だからね。さっきのように暴走しても、アタシには多分敵わないよ?」
***** ***** *****
一方その頃、翔とルアの戦いも佳境に来ていた。
白い光と赤い炎が入り乱れ、混じり合い、爆ぜる。黒と白が飛び交う。
「おおおおおおおおおおおおおおお!!」
「あああああああああああああああ!!」
雄叫びを上げて、翔は炎神を振り上げた。対してルアも、銀色の鎌を振り上げる。
互いに叩きつけた瞬間、風が吹き荒れた。
「アッハハハハハハ! 楽しいね、楽しいね。僕はやっぱり、君を怖がらせた方が好きみたい!」
「趣味悪いな、テメェはよ!!」
銀色の鎌を弾き飛ばし、1回転してから屋根に降り立った。数メートル先に、ルアも降り立つ。
ルアは笑っている。疲れなんか感じません、とでも言うかのようなすがすがしいほどの笑顔。何だかムカつく。
対して、翔は疲れ切っていた。精神的にも肉体的にも。銀時と鳳仙との対戦があるから、その為に体力を温存しておきたかったのだが、どうやらそれは無駄なようだ。
「……なぁ、ルア——と言ったか? 1度銀時に会ってみた方がいいんじゃないのか?」
「ん? どーして。人間に会ったところで、それは死を意味するんじゃないかな?」
ルアは首を傾げた。その通りである。
本来、死神が人間の前に姿を現す時は『その人に死が近い時』だけだ。それなのに、翔は坂田銀時という人間を主と呼び、彼に仕える死神である。
記憶がないというのもあるが、何より彼は銀時を信頼していた。
「……俺は変わった。ただ人を殺すだけの神じゃない——人を守る神になる」
「なれるの? 死神が? それも、世界を一瞬で焦土としちゃうような最強の死神が?」
「望むなら、俺はこの世界を焦土とし、全人類を屈服させる。だけど、1度もそんな事は望まれなかった。だから、俺は守る」
この世界を。
坂田銀時が守ろうとしている世界を。
たとえ『お前は必要ない』と、彼に言われてもこの世界を守ると決めた。それが人を壊す為にある者だとしても。
「……へぇ。その志は褒めてあげるよ、東翔。だったら僕は、この世界を、君が守りたいものを壊してあげるよ!!」
「させるかよ!」
赤と白が拮抗し合う————が、異変が起きた。
翔の力が増した。
「?!」
ルアは目を見開く。一体どうして?
翔の鎌から、何か糸のようなものが垂れていた。垂れていた、というよりつながれていたという方がいいだろう。その線をたどると、空華が見えた。
彼の指から、金色の糸が垂れている。
「死神操術(サーリットコントロール)って知ってるか?」
空華は不敵に笑った。
「死神を調教し、操る為にある術なんだけど……その力に、死神の力を増幅させる力があるのよね。術者の生命力と引き換えに」
「そんな、」
「大丈夫だって。これでも俺様、しぶといのよ?」
そして、翔の背中へと声を叩きつけた。
「これで負けたりしたら、末代まで呪ってやるからな! 覚悟しておけ、東翔!!」
「フン。俺を誰だと思っていやがる、この馬鹿忍者!!」
グッと炎神を持つ手に力を込めた。
温かい。翔はゆっくりと目を閉じて、息を吐き出す。
この世界を、仲間を、守る為に!
「地獄業火————獄炎乱舞!!」
炎が爆発した。
次に目を開いた時は、白い死神の姿は見えなかった。