二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入!
日時: 2011/12/18 11:00
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)

はじめまして。冒険者といいます。ここでは書くのが初めてです。
二次創作が好きなので、最近初めて遊んでいるととモノというゲームをオリジナルを踏まえて書きたいと思います。
これまで多くのキャラ、ありがとうございました!必ず出します!

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Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入! ( No.51 )
日時: 2011/12/18 15:55
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)






第一話 傷ついた闇の化け物



「げほっ!げほっ!!」
ゆうのは方膝で座るようになり、また吐血した。昨晩、学園の保健室から脱走して、もう丸一日経過した。絶対学園では脱走が知れている筈。
「……冗談じゃないわ」
口の端から血を流しながらゆうのは立ち上がる。半端じゃない吐血の量だ。青白い顔に、爛々と瞳と髪の毛だけが闇夜に紅く輝く。
夜の街道に、ゆうのの吐血のあとが所々に存在した。
道を真っ直ぐ来て、脱走したが。そろそろ休まないとまずい。
休んだところでこの体じゃいつ死んでもおかしくない。
初戦のときの吐血が、ずっと収まらない。薬をもらっても、回復魔法をかけてもらっても、謎の吐血はずっと続いた。
原因は分かっている。自身の魔力が本格的に暴走を始めて、体という器を破壊しようとしているからだ。器には再生能力があって、それがありえないほどで傷を修復、魔力が傷を生成、それの繰り返す。
ゆうのの再生能力がこんな場所で仇となった。
「元々、死ぬつもりで入った場所だし……退学でも、いいわ」
自分に言い聞かせる。杏樹を裏切ったのは必然、グレイを裏切ったのは必要経費、レイスは……どうでもいい。
それでも心が痛い。杏樹とグレイには全部話しておくべきだったと後悔だけが心を締め付ける。
「言って、どうなるのよ……二人なら、絶対止めるわ。これでよかったのよ、これで」
そういって走り出す。所持しているのは最初から両親から持たされていた莫大なお金。二人はいつかこうなることを予想していたのかもしれない。だから入学当時にこんなにお金をくれたんだろう。死地を探す旅に自分が出ることを見越して。この時はゆうのは両親に生まれて初めて感謝した。
今まで呪詛や罵倒しかしなかった両親に、せめてありがとうと言っておけばよかった。後悔がまた増える。
「どうせ、あたしはイリーガル……化け物、人外、どうせあたしは居場所なんてない……ちょっとぐらい気持ちいい陽だまりにいたくらいで。大切なことを忘れていたわ……」
初心に戻れば見えてきた。自分の願いが。
あたしは死にたい……死にたいだけなのに。仲間なんていらない、悲しませる人たちなんて、いらない!
結局それだった。杏樹はああ言ったけど、結局ゆうのの本心は誰も知らなかった。
杏樹に悲しんで欲しくない。グレイに泣いて欲しくない。
それだけだ。
——どうせ離別するなら、早いほうがいい。誰も知らない場所で野垂れ死にしたほうがいい。そのまま行方不明で、歴史に消えていく方がいい。
開き直れば、簡単だった。追われることを危惧し、先手を打って魔力をバッテリーに出来るだけ搾り出して流し込む。そのときもかなり吐血したが関係ない。誰もいない真夜中に窓を蹴破り破壊。そして逃走。
それだけで今までの生活は簡単に壊れた。
だから逃げる。ゆうのという女の子は心が脆く、いまや決死の覚悟と震える勇気だけが彼女を動かす。行く先はこの世の果て。
地価迷宮を巡ってその果てで死ぬ。力ある限り走り続ける。
「あたしは……あたしはっ!!」
走りながら彼女の頬から一滴の涙。風を切って流れていた。
涙は月光を浴びて輝く。紅い化け物はただ走る。
(あたしに、もう誰も関わらないで!!)

Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入! ( No.52 )
日時: 2011/12/18 16:31
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)





第二話 異世界の少女?




「……げほっ!!がはっ!」
夜が明けた。吐血、198回目。走り続けて、とうとう地価迷宮に入り込んだ。中は真っ暗、骨だって転がっている。ゆうのは途中で倒れて血を吐く。
もう全身の血が抜けてきたと思ったのに。どうして自分にはこんな大量の血が残っているの?
「……貴方、大丈夫?!」
「!?」
見上げた、先に誰か書いた。セレスティアだった。
赤と蒼の半そでとスカート、その下に短パン。
首にはエメラルドのはめ込まれたロケットペンダントをしていた。変わった格好だとゆうのは思った。規律を重んじる天使にしてはラフすぎる。学生じゃない?じゃあこんな場所で何を——?
「血……貴方、血吐いてる!」
「うるさい……知ってるわよ、何?何か用?」
ギロッと睨み上げる。少女は怯む様子もなくむしろ怒るような剣幕で近寄ってきた。
「貴方ね、血を吐いてるのにここで何してるの?まぁいいや、この世界の人に会えてよかった〜……」
表情がころころ変わる。今度は安堵したような笑顔。
「……あんた、誰?」
「私?私はショコラ・ガトー・クラシック・ア・パラ・グランジェス・ミカエル」
「は?」
「え、えっと。わかんなかった?じゃあもう一回」
「うるさい。長い、名前だけでいい」
「……ショコラ」
「そう。あたしはゆうの」
ゆうの言い方が気に入らなかったのか、むっとした顔で言った。ゆうのも睨み返し空気が険悪な状態になった。
「で、「このせかい」の人間とかいったわね。あんた、異世界の人間なわけ?」
「え……う、うん」
「ふぅん。道理で……見たこと無い魔力ね。あんた、光以外にも魔力持ってるんだ」
「視えるの?」
「一応ね。あたしは魔洸が極端に高いだけだけどね」
「まこう?」
「……言ってもわかんないか」
異世界というのはこの世界では認められ、平行世界と呼ばれる場所から実際物質が飛来したこともある。冒険者なら基本だ。
「あのさ。この世界の名前はなんていうの?」
「は?名前?世界は世界しかないでしょ?」
「ないんだ……テレジアとかグラニデとか、パスカとかルミナシアとか」
「……それ世界の名前?」
「そうだよ」
ケロリとショコラは言った。左腕のブレスレットがきらりと銀に光る。よくみれば腰には脇差のような西洋風の剣が纏われている。
「……この世界には名前なんて無いわ」
「え?じゃあ……世界樹もないの?」
「世界樹?ああ……神々の時代にあったっていう始原の樹か……」
この世界は世界樹なる大きな木から始まったと言う説だ。
「そんなんあるわけないでしょ」
「ええっ」
ショコラはががーんっ!と効果音が聞こえるくらい驚いていた。
そもそもゆうのはすんなり対応しているが、異世界という説だってあやふやなのだ。彼女は見た目は普通のセレスティアだし。ゆうのには視えるからまだいいけれど。普通だったら即監獄行き決定だ。
「あんた、回復魔法使える?」
「回復魔法?えーと、ファーストエイドのこと?」
「はぁ?何それ?」
「知らないの!?初級の回復魔法だけど……」
「知らないわよ!あんたほんとに何処の人間——げほっ」
叫んだせいで傷が開いた。吐血してしまう。思わず手で口を塞ぐ。
「ああ、大丈夫?!」
「……異世界の、者か」
ゆうのは座り込み、壁によりかかる。ショコラが傍までよって気遣ってくれる。
「異世界の、者。荒唐無稽な話よね……。いいわ、教える。あたしがここにいる理由はね、死ぬためよ」
「死ぬ、ため?」
「そう。あたしはね、通ってた学園から逃げ出したの。死ぬために、大切な人に悲しんで欲しくなかったから」
「……私でよければ、お話聞くよ?」
「そうね。気まぐれよ、一回しかしないから言わないから聞いてね」
ゆうのはショコラに語る。本心を。会って間もない彼女に、泣き言。
ショコラは何だかそういう雰囲気だった。懺悔を聞いて、裁いてくれるような、本物の天使のような、そんな雰囲気だった。

Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入! ( No.53 )
日時: 2011/12/18 16:48
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)






番外話 ゆうのの痛み




どうせあたしは助からない。やっぱり神様って奴は最低だ。
今も闇の魔力が暴走していることが分かる。自覚があるだけ最悪だ。痛みを伴うこの暴走はそのうちあたしの心まで壊すだろう。
耐えたくない。死にたい。楽になりたい。杏樹の薬のせいでも、グレイとの感応のせいでもない。
元々あたしの体が毒しかないのだ。体を、心を、確実に、ゆっくり壊す毒。治す方法は無い。改善する方法もない。ああ、あったか。暴れること。常に解放し続けること。
でもんなことしたら回りの生物は闇の瘴気に当てられて死滅する。
あたしはもう歩く兵器というわけだ。
周りに迷惑をかけて、命の危険に曝す外道。まさに人外っていう表現がぴったりじゃないか。
人の外。つまり化け物。最低だな、と思う。
化け物が嫌で嫌で仕方なかったのに、今は化け物でもいいと思う。
だってしょうがないでしょう。
あたしは化け物なのだから。
どうせあたしは神様に喧嘩を売ると啖呵を切って、自分の毒に犯され自滅、挙句の逃走して運命を受け入れる。どうせあたしは今も運命の手の平で踊っているピエロなのだろう。
最低だ。世界なんて嫌いだ。他人なんて嫌いだ。感情なんて嫌いだ。痛みなんて大嫌いだ!
恨む感情が嫌いだ。慈しむ感情が嫌いだ!信頼も、友情も、愛情も、借りも、悲しみも、寂しさも、みんなみんな大嫌いだ!!!!
どうせ笑っている。命が擦り切れるその瞬間まで世界はあたしを嘲笑する。失笑する。冷笑する。滅んでしまえ、そんなもの!
呪詛を形にして口から吐き出す。感情を爆発させて口から言葉として発散する。





「どうして、あたしは生まれたの?どうしてあたしはここにいるの?
どうしてあたしは戦うの?どうしてあたしは強いの?どうして……どうしてあたしは!あたしは何のためにここにいるってのよ!
もう嫌よ!こんな世界!消えちゃえ!
いらないわ!痛みも感情も何もかも!
こんな世界なんて消えちゃえ!滅んでしまえ!!!
——馬鹿あああああああああああああああ!!!!!!」

Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入! ( No.54 )
日時: 2011/12/20 13:28
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)






第三話 呪詛の終わり




一頻り叫けび、再び凄まじい量の吐血をしながらも説明を終えたゆうのは、最後にこう告げる。
「つまりね、あたしには今は居場所があるの。でも、そこにいれば確実にその居場所を作ってくれた人たちに、いずれは涙を流させることになる。悲しませることになる。だからあたしは自分で自分の居場所を壊して、逃げてきたのよ。あたしに関わった人たちに泣いて欲しくないから。死んで悲しむより、微かでも生きていると思わせるように、行方を分からないようにしたほうがいいでしょ?そして時間がみんなの悲しみを癒すのを待つの。その頃には、あたしはしゃれこうべになってるでしょうけど。
偽善と言えばそうよ。自己満足に過ぎないわ。これは人がどうこう言おうが、あたしは最善の手を尽くした。あとは逃げ続けて、そして誰にも気付かれず死ぬの。絶対見つからない場所まで行って、くたばるの。そうすれば、もうあたしを覚えている人はいない。逃げ出したのよ。あたしは弱いから」
「……」
ショコラは、黙ってそれを聞いていた。
「ありがとうね、ショコラだっけ?あたしはもう行くわ。どうせ、あんたが生きて会う最後の人だから」
とよろよろと立ち上がる。制服は吐血でぐちゃぐちゃ、顔色は蒼白く、瞳には光があまり宿っていない。実際ゆうのの目には暗闇の道が奈落の底に続く穴のように見えている。微かな光などもう見えていない。
それに反して長い紅の煉獄は燃え上がり、煌々と輝き生気に満ちている。瞳だって戦いの最中のように鮮血の色に光る。何ともアンバランスな状況になっていた。
ショコラも泣きそうな顔で立ち上がる。
「バイバイ。話聞いてくれてありがと。あんたがどう行動しようが、あたしはもう関わらない。助けを呼ぼうが。でもあんたの話がほんとならあんたはこの世界で孤独でしょ?だからそんなことはしないと思うけどね」
ふらふら、ふらふらと壁を伝って歩き出す。体が言うこときかない。四肢に鉄球でも取り付けたように、凄く重い。視界だって四隅が暗くてよく見えない。でも闇に向かって歩き出す。
生きている感覚は体中を蹂躙する激痛をリアルタイムに常に伝える触覚、自分の血の匂いを伝える嗅覚、鉄の味を伝える味覚、そして先ほどから遠くで何かが動いている様子を空気を媒介にして教える聴覚。視覚だけがピンポイントで使えない。殺すなら痛覚を殺してよ、と自身から湧き出る魔力に悪態をつく。
「待って」
後ろから少女の声。ゆっくり振り返ると、ショコラが涙を流しながら睨んでいた。ゆうのはその様子に少し驚く。
「何?」
「ゆうのさんは、後悔しないの?」
「……さっき言った筈。後悔しかないわよ、あたしには。でも名迷う程
余裕が無いの。どうせ理解されないわ。あたしは化け物、人外なんだから」
「……じゃあ怖くないの?一人で闇の中で墜ちることが」
「怖いわ。でもそれ以上に涙が怖い。悲しむ顔を見るのが怖い。だから帰らない。帰りたくない、あたしは日溜りは似合わない。闇のほうがしっくりくる」
「……」
「もういい?ぶっちゃけ、もう人と関わるのは嫌なの。だから、消えて。殺されたいの?」
「……っ!?」
ギロリ、と刃物のような視線で睨んだ。彼女は怯えた動物のようにびくりと身を震わせる。
「今のあたしは死を恐れない。あんたと戦って死んだっていいのよ?でもあんたを攻撃するのは気が引ける。一応、自棄とはいえ本音を言っちゃった相手だし。だからさっさと行きなさいよ。あたしはもう行くわ」
と踵を返してゆうのは闇に向かって歩き出す。後ろでショコラが何か叫んでいたが今だけ耳の聞こえない人になろうと彼女は決めていた。

Re: 剣と魔法と学園モノ 一緒に冒険しませんか?第二章突入! ( No.55 )
日時: 2011/12/20 14:34
名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)






第四話 お節介な少女、死に進む少女




「お疲れ様、ゆうの。顔色悪いよ、痛い?」
「……痛みはないわ、ショコラ。だけど、ごめん。見えないから手を引っ張って」
「オッケー。ゆっくり行くから、ちゃんと捕まってね?」
「ええ」
ゆうのが脱走して、時間の経過は早かった。もう一ヶ月。一ヶ月も彼女は生きていた。傍らにはショコラ。手を引いて、星空の下大陸街道をゆっくり歩く。
初めて会った日、結局ショコラはゆうのについていくと言って一緒に来てしまった。最初は怒るゆうのだったが、ショコラの一言で最後は折れた。真面目顔でこう言ったのだ。
「ゆうのの、貴方の最後の道まで、私がついていくよ。ゆうのの道には、孤独だけは連れて行かせない。私は泣かない、嘆かない、悲しまない。それがゆうのの願いって分かったから。
ゆうの、一人で死ぬのはね。すごく辛いんだよ。だから、絶望の片道切符でも、それでもいいから。私が一緒に行くから。孤独だけは、信用しちゃだめ」
「……言ったわね。その言葉、墓場までも持っていくから……」
「うん」
睨むゆうののとは対照的に彼女は笑顔で言った。



「ゆうの、今調子、どうなってる?」
「何も見えない。ダルさ感じる。激痛はいつもどおり。んでもって声も聞き取りにくい。味はもう完全に死んでる……う、げほっ、ごほっ」
手を引っ張られながら、彼女はいきなり血を吐いた。最初の頃に比べると明らかに大量だ。一回でこれだけ吐血すれば普通なら死んでいる。
二人の通ってきた街道には、まるでその場が殺害現場のような多くの血溜まりが大量に生成されていた。全てゆうのの吐血だ。
いまやゆうのは、瞳の光を失い、虚空を彷徨うように視線を泳がせ、一人で動くことすら出来ないような状況に陥っていた。歩けない、ものが視認できない、時々聴力を完全に失う、味覚は完全に死んでおり、食べることすらマトモにできない。末期だと、ショコラは思う。
こんな症状みたことがない。もといた世界だって、こんな病気はないはずだ。ゆうのの言うとおり、彼女特有の症状だろうともう納得していた。
「……ショコラ、今何時?」
「……お星様の位置と、お月様の位置からして……多分、7時くらい」
「時計無いのも不便よね。買っとく?」
「ゆうののおごり?だって私無一文だよ?」
「死体から剥ぎ取った金品売ったら結構金になったじゃない」
「だからって……」
この一ヶ月。ゆうのたちは地下迷宮をうろつき、道中力尽きたであろう冒険者の白骨死体から金品を奪うような追い剥ぎ行為をしていた。もう冒険者でもなんでもない単なる放浪者だ。だがゆうのの指示通り動いた。だってそれ以外方法がないから。最低な、外道だと分かっている。だけど自分が死んだら元も子も無い。偽善かもしれないけど、貰っていくたび「ごめんなさい」と何度も謝り、そして奪った金品を質屋に。
幸いなことに、ゆうのの放つ強烈ともいえる闇の魔力のせいで、迷宮内でモンスターに会うことは稀だった。運悪く出会っても(相手側にとって)ゆうのが見えない瞳で睨んだだけで怯えるように逃げていった。
日に日に彼女の闇の魔力は強くなり、今では彼女の紅い髪の毛は真紅のように昼夜を問わず輝き、瞳は煉獄の炎のように常に爛々と煌くようになっていた。これでは人前に出ればモンスター扱いされてしまう。
ただでさえ吐血してるわ、追い剥ぎはしてるわで犯罪者かおまけの容姿なのに、目立ったら逃げている意味が無い。
「……急ぎましょう。この近くに、迷宮の入り口が隠れてるわ」
「いつも思うけど何で分かるの?」
「魔力を辿るの。モンスターの魔力をね」
とにやりと血の滴る顔で笑う。邪悪だ。
「……ねえ、そろそろ休もうよ。私、眠たい」
「そう?じゃあまた野宿ね」
「あ〜ぁ。野宿やだー。お風呂入りたいよー」
「いいわよ。この間みたいな騒ぎがお好みならね」
「……やっぱいいや」
この間、というのは冒険者向けの宿に泊まった時だ。ゆうのの吐血が宿の人にばれてあやうく学園に連絡が行くところだった。ショコラがモンスターにやられただけで、回復魔法をすれば治るといい、すぐにヒールをかけて事なきをえた、ように見えた。
実際は吐血を我慢しただけで、結局風呂場で大量に吐いたが。そんなこんなでよっぽどのことが無い限り、二人は野宿を続けていた。幸い、この地方は暖かい地方なので、風邪を引いたりはしない。
「……おやすみ、ゆうの」
ゆうのを大きな木の陰に隠してショコラも座る。
ゆうのはぐったりとしていたが、聞こえる方に向かって「おやすみ」とだけ言って眠ってしまう。これでも眠れればいい方だ。酷いと苦悶の声を一晩中聞くハメになる。
「……」
彼女の絶望の終着駅は何処にあるのだろう。


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