二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- この世は金と知恵
- 日時: 2011/11/05 18:57
- 名前: song (ID: LqhJqVk8)
こんにちは。songです。ご存じ『バクマン』から亜城木夢叶の『この世は金と知恵』を想像と妄想で小説にしたいと思います。『KTM(金・知恵・見た目)』でもいいかなと思ったんですが、正直描写が大変なので金と知恵に絞ることにします。余裕が出てきたら書こうかなぁ……
★あらすじ★
現代より少し先の未来。機械はついに人間の脳のシュミレートを完了する。それにより、人の持つ『知恵』を『金』で買うという新たなビジネスが誕生した。
この技術を利用し、日本政府は年々の学力低下や会社の業績低下の対策として、深夜0時日本国民全員に自分の知的順位を脳へダイレクト発信するという法案を国会に提出し、可決した。
この物語は、その日本に住む一人の青年・天草 タケル(19)と『知恵』と『金』で埋もれた頭脳戦である———
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- Re: この世は金と知恵 ( No.1 )
- 日時: 2011/11/05 20:58
- 名前: song (ID: LqhJqVk8)
episode.1 順位
2076年某月某日。東京の空は今日も鉛色。最近は青空を拝むことがあまりなくなった。あったとしても雲の切れ間からほんの少しだけ。これが影響してか、俺達の人間まで少しばかり暗く見える。
「天草所長……外に何か珍しいモノでも?」
ずっと外を眺めていると、俺に質問する声が。
「いや、何でもないよ。勝」
「そうですか」
勝 リョウコ(23歳)。俺が経営する事務所のいわゆる秘書だ。器量も容量も良く働き者だが、小柄でいかんせん貧乳だ。
「これでもっとグラーマーだったらn——っ痛でッ!!! 」
俺の独り言が勝の耳に入った瞬間タウンページの角で脳天を殴って来た。
「今のは誰に対しての発言ですか?」
勝は笑顔で詰問する。
「ごめんなさい。なんでもないです」
「よろしい」
もうどっちが上司か最近分からなくなってきた。
ここはアマクサI&M(インテリジェンス・アンド・マネー)事務所。先の『知恵』を『金』で売るビジネスの仲介を生業にする場所だ。
個人の知恵の売り買いは法律で禁じられているため、こういった国営の事務所が仲介して専用の機器(インテラー)で売買を行っている。まぁ、中には独自でインテラーを作り上げて商売をする犯罪者も多いが。
「勝! 今日のスケジュールは?」
俺は窓をガラッと開け、仕事にとりかかる。
「今日の仲介の予約は43件あります……それから昨日仲介した上田様より、トラブル解決の申し出があります。続いて——」
勝は淡々と今日の日程を説明していく。俺はあらかた頭に入れ所長の席を立ちコートに身を包んだ。
「先に上田さんの仕事かたづけてくる。仲介は頼んだぞ、中条。
俺は長椅子で居眠りをしている男に声をかけて事務所の部屋を出た。
「んあ……りょーかいっす」
中条ハジメ(20歳)。女ったらしで低たらくな男だ。この前は公費で女の子とデートいたのが勝にばれて1年間減給になった。しかし仕事に関しては割とまともにこなしてる。彼の主な仕事は『知恵』をインテラーでデータ化して対象人物にコピーする、一番肝心な仕事だ。
現アマクサI&M事務所の構成員は俺を含んでこの3人だ。色々問題の多い事務所だが、案外楽しくやってる。ちなみに、俺は天草タケル(19)。事務所では一番若いが所長を務めている。仕事の主は『知恵』を売り買いする上でのトラブルを解決することだ。『金』が関わるとどうしてもトラブルはついて周るもの。
「さて、依頼先はっと……」
俺は車に乗り込み、カーナビに依頼先の住所を登録した。
「よしっと! さぁ出発だ」
入力が終われば後は全自動で車は走ってくれる。便利になったもんだ。
***
「ここか」
車を路上に止めて、目の前の豪邸に少しキョドった。
「一体いくら稼いだらこんな家が建つんだ……」
緊張しつつも、外壁のインターフォンを鳴らす。
しばらくすると……
「はい」
依頼主だろうか、男性の声が聞こえた。
「アマクサI&M事務所の者で、天草タケルと申します」
俺は愛想よくインターフォンに向かって挨拶をした。
「これはこれは……お越しいただきありがとうございます。少々お待ち下さい」
そう言って、依頼主らしき人物はインターフォンを切った。
「どうぞお入りください」
玄関のドアが開き、声の主が現れた。今回の依頼者・上田シンヤだ。
丁寧な口調で俺を自宅に招き入れる。
「失礼いたします」
俺は家の中に入り、さらにキョドった。ブルジョワぶりは内装のいたるところまで尽くされている。
「小さな家ですが、ご容赦ください」
上田氏のその言葉に俺はものすごい嫌味を感じた。
「はい」
怒りを抑えて愛想よく俺は返事をする。
長い廊下をしばらく歩くと、俺は広いリビングに通された。
上田氏と俺はイスに座り、2、3分この家の自慢をされたあと、本題に入った。
「申し遅れました、私が依頼主の上田シンヤです。今回依頼したのは昨日の取引の件です」
上田氏は話を切り出した。
「まぁ、大方の予想はついていますよ。上田さんの『知恵』を買った飯塚サトシという人物……どういう富豪か知りませんが大層な金額で購入なされた」
俺は上田氏の話が長くなることを予想して勝手に要約する。
「そうです。その額およそ1億3000万円。そんな大金を出してまで、この私から何が欲しかったのか……想像に難くないが……しかし万が一『記憶』が見られるようなことがあってはなりません」
上田氏は脂汗をタラタラ流し、震えながら話す。
「通常、『知恵』の取引においてプライバシーを考えて『記憶』はプロテクトをかけます。普通の取引なら全く問題はありませんが……」
「これを見ろ……」
上田氏は机の上に一枚の封筒を置いた。
「これは……」
俺は封筒を開け、中の紙を取り出す。
「いわゆる……脅迫文です。スキャンダル写真を公開されたくなければ云々ってやつです。ビデオに残したはずのない危ない映像の記録が一緒に送られてきました。知っての通り、私はテレビでタレントとして働いている。これを公開されたら、私の人生は真っ暗です」
上田氏はうつむいてうなだれている。
「なるほど……加えてこの脅迫文の差出人が飯塚サトシ」
俺は封筒を裏返して飯塚の名前を確認した。
「お願いします! この飯塚って男から俺の記憶を消していただけませんか!?!」
上田氏は俺に懇願して泣きじゃくる。
「……わかりました。しかし、私たちはボランティアでも正義の味方でもありません。依頼料として、1億3000万円を請求します」
「い、1億3000万! なぜそんな大金をッ!!!」
上田氏は俺の発言に怒号する。
「俺ははあなたのためを思って言っているんです。飯塚からアナタの記憶を消すなら『知恵』の契約をしたこと自体を消し去るのも道理。よって、飯塚との契約金1億3000万円を頂く……ということです。もっとも、拒否するのはアナタの自由ですが」
俺は上田氏の視線をそらし、玄関の方向へを歩きだした。
「ま、待ってくれッ!!! わかった。契約金は渡そう……その代わり、必ず依頼は達成してくれッ!!!」
上田氏は机を掌で叩き、承諾した。
「了解致しました」
- Re: この世は金と知恵 ( No.2 )
- 日時: 2011/11/06 23:07
- 名前: song (ID: LqhJqVk8)
「それで、どうするんですか?」
勝は俺からの報告を受けてジト目で睨む。
「いやー……どうしようk——ッ痛で!!!」
本日2回目のタウンページ攻撃。
「責任感が無いのはいつものことですが、依頼が完遂できるかどうかもわからないで勝手に承諾しないでください!」
さすがに勝も怒った。
「何勘違いしてんだよ! 飯塚を捕えてインテラーで記憶抜くくらい朝飯前だ。俺はその手順をどうしようかって言ったの!!!」
俺は殴られた頭を押さえながら言い返す。
「なんだ……そういうことなら手早くお願いしますよ。仕事はたくさん溜まってるんですから」
しらっと勝は自分の机に戻って書類にペンを通して行く。
「勝……他に言うことあるだろ」
タウンページで俺の頭を殴ったことを謝れと言わんばかりに俺は睨みつけた。
「あぁ、そういえばありました。政府からI&Mの新しいCMを作ってくれと……」
あまりの白々しさに俺も怒る気が失せた。
「あーもーいー。明日あたり考えとくから。それより飯塚サトシの詳細について教えてくれ」
俺は机に顔をうつむせながら勝に聞いた。
「……飯塚サトシ(45)。無職。元(株)四菱の社員だったようですが、上司の責任を被り自主退職しました」
つまりリストラってやつか。
「何年経っても責任ってやつは重いね」
俺は他人事のように言った。
「そーそー。俺たちは責任を負うために会社勤めしてるんじゃない。『金』のためだ」
すると、インテラーがある部屋から中条が出てきた。
「中条……今日の予約は終ったのか?」
「あと2件残ってます。予約の時間までまだ少し時間ありますから、休憩していいすか?」
軽々しい態度だが、中条はどこか憎めない。
「いや、俺の仕事を手伝ってくれ。よくあるトラブルだからすぐ終わる」
「えー! 俺これから女の子とデーt——アーッ!!! 」
勝の金的が中条の股間にクリーンヒット。
「二度と使い物にならないようにしてもよくてよ」
床に伏せてビクンビクン痙攣している中条もそうだが俺の股間もゾッとした。
「何もそこまでしなくても」
俺は青い顔で勝の様子をうかがった。
「中条さんの扱いはこれでちょうどいいくらいです」
勝はしれっと言う。わからんでもないが二度と使い物にならい状態にはなりたくない。
「でも所長……ちょっと気になることがあるんですが」
勝は話を元に戻した。
「ん? なんだ?」
「上田の『知恵』に約1億3000万円の価値があると思いますか?」
上田氏が聞いたらグサッと来ることを勝は普通に言ってのける。
「そこは俺も気になってた。それに急にリストラされたサラリーマンにそんな金があるはずもない」
そう。ここだけはずっと引っかかってた。
「通常取引の相場は高くて1000万円程度です。どう考えても額が目立ちすぎて『注目してください』と言っているようにしか見えません」
少し緊張した声色で勝は言う。
「別にいいんじゃないか? 罠を張ってるなら掛ってみるのも面白い」
俺は顎に手を添えて答えた。
「またそんな無茶を……」
呆れたように勝はため息をつき、別の書類に手をつけた。
「無茶なもんか。相手はザコだ」
「そうやって油断してるから足元すくわれるんですよ」
「へいへい」
俺は適当に返事を返して、床に転がってる中条を抱えて事務所を出た。
***
「ん……」
後部座席に転がした中条が目を覚ました。
「おう、起きたか」
「ゲッ!!! 車の中! もう仕事ですか!?」
若干股間をさすりながら、中条は絶句した。
「あたりめーだ。さっさと終らせるぞ」
「あーあ。デートの約束が……」
中条は泣きながら座席で体育座りしている。
「残念だったな」
そんなこんなで目的地まで30分、談笑していた。
「お、ついた見たいすね」
「そーだな」
そこには小さなアパートが一つ。周りには木が生い茂って、あまり人の気配を感じない。
「どうします? 少し様子を見て——」
慎重な中条をよそに俺は……
「そんなまどろっこしいことするか」
俺はずんずんアパートに向かって歩いて行った。
「マジすかぁ……」
嫌な顔をしつつも後ろから中条も付いてくる。
「ここだな……201号室」
俺は何の躊躇もなく、部屋をノックした。
「…………」
しかし返事はない。
「飯塚さーん! いらっしゃいませんかー? アマクサI&M事務所の天草タケルと申します」
それでも返事がない。
「ほんとに居ないんじゃないですか? まだ真昼間だしどこかでパートしてるとか……」
まぁそうかもしれない。一応ドアノブをひねると……
「……! 空いてる」
201号室のカギはかかってはかなかった。
「不用心っすね」
「入るぞ」
思いっきり不法侵入だが、今は気にしないことにした。
中は4畳半一間の狭い部屋だ。ゴミやら服やらであふれかえっている。ものすごい腐臭がした。
「ほんとに誰もいないみたいすね」
「あぁ……しかしついさっきまでいたようだな。腐ってない生ゴミがある」
俺も中条も足の踏み場を探しながら奥へ奥へと進んだ。
「パソコンやその他機器類はあらかた撤収されてるな……まぁそりゃそうか」
「もうもぬけの殻ってことっすね」
「このゴミの中から何かヒントを……とでも言いたいが、これは骨だな」
俺は床に落ちてるバナナの皮を拾って適当に放った。
「えー!この中から何を探すっていうんですかッ!」
面倒くさいがために中条は吠えた。
「監視カメラ」
俺はしれっと言う。
「はい?」
中条はすっとんきょうな声を出した。
「俺たちは今まさに逮捕されるてもおかしくない泥棒行為をやってんだ。それを映像に残して警察に提出されたら、俺たちは犯罪者だ。マジで動きづらくなる。そうなる前に部屋のどこかにあるカメラを壊すか、中身を調べさせてもらう」
そう言いながら、あたりのゴミを漁る。
「しかし、これはちょっと時間かかりますね」
「いや……カメラは常に俺達の姿を捕えてないと意味がない。だから大抵は天井に近い部屋の隅に置かれてることが多い。逆にいえばそこになければ探す必要はない。顔映らんからな」
「なるほど……って、あッ!!! ありました! あそこです!」
そこには棚の上に積み上げられたバックの中に録画中のビデオカメラがあった。ずいぶん古いカメラだ。
「まぁ……こんなもんだろ」
俺はビデオカメラの中のメモリーを拝借し、カメラの本体はその場で分解しバックアップメモリーも引き抜いた。
「よし、撤収するぞ」
「あれ?でもまだ監視カメラあるかもしれないですよ」
「部屋全体を映してるカメラがあるのに、他にカメラをつける理由があるか? 」
「あ、それもそうか」
こうして俺たちはその部屋を出て、車のテレビを使い、拝借したメモリーとバックアップを再生した。メモリーに前半飯塚と思われる人物がカメラをセットする映像が流れていた。そして飯塚が部屋から出てわずか30分ほどで俺たちが到着していた。これが意味するところは——
「おい中条! 急いで事務所に戻るぞ!」
俺は車をマニュアルに変換して自分で運転した。
「え! どうしたんすか所長!」
「飯塚が殺されるッ!!!」
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